「さてと・・・・」
誰もが羨む金色の髪を揺らし、紫色のドレスの少女は双眼鏡からソウルジェムを取り外す
「魔法少女」が使う魔力
それは魔法少女が「魔獣」の討伐にのみ使用するだけではない
こうして特定の器物に魔力を付与することで、さまざまな能力を発揮する
今彼女は織莉子と真の婚約パーティー会場だったホテルが見える建築中のビルの一室
桑島桂子が変じた「魔女もどき」を差し向けたのは彼女だった
聡明な彼女なら、この「メッセージ」を理解できるはずだ
悪意の種 ― イーヴル・ナッツ ―
彼女「三国織莉子」は「かつての世界」では全てを失い絶望の果てに魔法少女となった
故に、彼女は「世界」を守る為にありとあらゆる手段を講じた
「呉キリカ」を操って、魔法少女を闇に葬りインキュベーターの関心を「まどか」から逸らし、その上で「まどか」の抹殺へのプランを進ませていた
最後は自分の命と引き換えに、その「救世」を実現させた
・・・・・彼女の献身は報われた
結局、世界を滅ぼす「絶望の魔女」は生まれず、「ワルプルギスの夜」はただ過ぎ去っていった
多くの犠牲者を残して・・・・
あの世界では今日も「少女」達は「魔法少女」となり、そして絶望の果てに「魔女」となる
さやかは「甘酸っぱい青春」を満喫し、ただの平凡な少女として生きている
ただ、彼女の傍らには「まどか」はいない・・・・
私が「魔法少女」となって、最初に訪れたのは「私の成長」を喜んでくれた人の場所
今でも宝物だ
十二歳の誕生日に贈られた「魔女の辞典」
全ての文字が魔力を介してでなければ読むことのできない「魔女文字」で描かれた、これは・・・・・
私の「母」からの贈り物だった
「魔法少女」に変身して、初めての魔法
途端に白い家と、黒い森は消失した
『驚いたね。あの世界自身が結界だったなんて』
傍らのキュウベェが抑揚のない声で喋る
「結界?」
『ああ。魔法少女は戦う際や固有魔法の特性から魔力を展開して、周囲を思うままに作り変えることができる。でも、僕自身が見抜けない結界を張れるなんてなかなかの素質のある魔法少女だね。』
世界が消え去った後に残ったのは、広大な邸宅
それこそ、おとぎ話に出てくる「お姫様」が住んでいるお城のような邸に私とキュウベェは立っていた
でも、そこには生き物の気配すらない
「誰かいませんか~?」
しとしとと積もってくるような孤独から私は声をあげた
しかし、その問いかけに答えてくれるものはない
『真琴。微弱な魔力を感じるよ。』
「魔力?言っていた魔獣の?」
『いや・・・・これは魔法少女のものだよ』
「案内してくれる?」
『ああ。当然だよ』
白い獣と一緒に大広間を抜ける
かつては豪華な食事と、人々の歓談の声に包まれていたであろう、そこは白いシーツが掛けられ、ただ朽ちていくのみだった
私はふと上を見上げる
白い髪のドレスを纏った少女と灰色の髪の少年を描いた肖像画
なぜか懐かしいものが込み上げる
私は二人のことを知らない
でも、なぜだか涙が零れ落ちた
「あ・・・あれ?」
『どうしたんだい真琴?埃が目に入ったのかい?』
「ごめんキュウベェ。今行くよ」
邸の中央
キュウベェに案内されてきたそこは頑丈な鍵で施錠されていた
『ここはボクがあけるよ』
キュウベェが触れた瞬間だった
バリバリバリ!!!!!!
強力な電流が流れて、一瞬のうちにキュウベェは黒い消し炭に変わった
「そんな・・・・・!」
身近な生き物の死
死という現象は知っていたが、こうしてみるのは初めてだった
『これはかなり高度な結界だね。ボクでは解除は不可能だ』
背後から聞きなれた声が聞こえる
振り向くと、今死んだはずのキュウベェが立っていた
「なんで・・・・!」
『僕らに個という概念はないんだよ。だから、もし外的要因で行動不能になったらこうしてスペアが用意されている』
彼らの抑揚のない声が不気味に感じた
『でも、収穫はあったよ。これは魔法少女のみでしか通り抜けられない結界さ。だから今の真琴なら問題なく通れるよ』
「・・・・大丈夫なの」
『キミ達の身体は君が考えるほど脆弱じゃない。ソウルジェムに異常がなければ何度でも再生できるし、痛みも消せる』
「・・・・・・」
『断言できる。ここには真琴が望んでいるものがあるよ』
私は意を決して、扉に手を掛けた・・・・・
ギィィィィィィィ
『どうだったかい?真琴』
「ええ・・・・あなたの言うとおりだったわ・・・」
そっとキュウベェを抱きしめる
『どうしたんだい?』
「・・・だって別れを言う前には礼を言うものでしょ?」
ギュビィィィィィィィィィィィ!!!!
両手に魔力を這わせ、私は・・・・キュウベェの身体を真っ二つに引き裂いた
「ありがとうお母さん、私を生んでくれて・・・・」
私は扉の中を見る
クロームの拘束具を取り付けた「白い少女」が静かに椅子に座っていた
その表情はまるで人形のように動かない
少女は自らにかけていた「魔法」を解除する
盟友であるジュ二にさえ見せたことのない、本当の「姿」を
輝くような「灰色の髪」
エメラルドのような「緑色の瞳」
「お母さんは幸せに生きてほしい・・・それが私が貴方に返せる唯一のモノだから・・・・」
ビルの一室で少女は呟いた
翠星のガルガンティアよかった~~~~
ヒールのウロブッチャーでも、あんなに感動できるホンが書けるとは驚き!
でもこれじゃあ、第二期なんてないよね?