鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ではでは投下します


イーヴル・ナッツ

美国邸

織莉子の自室

部屋の主である織莉子は念入りに結界を張る

特に「インキュベータ―」の侵入は阻止せねばならない

これから得られるであろう情報はそれほどまでに重要なものだ

彼女は「三国織矢」として盟友の「呉キリカ」とともに、絶望に飲み込まれた人々や「魔法少女」達の引き起こす事件を日夜解決している

 

「・・・・・・・」

 

彼女は慎重に金色の円盤に「ソレ」を乗せる

 

ヒュォォォォォォォォォォ!!!!!

 

金属盤は織莉子の手の内で高速回転しはじめる

彼女の「固有武装」である「アカシック・レコード」

この円盤は武器として転用できるほか、このように物体の情報を読みとることも可能だ

円盤の上に置かれたソレ

その形状は、例えるなら歪んだ黒真珠の両端から捩れた針が飛び出したような姿をしていた

それは織莉子、いや「かつての世界」の記憶を持つものにとって最も忌むべきもの

忌み嫌いながらも生き長られるためには「ソレ」に頼らざるを得ない存在

魔女の卵 ― グリーフ・シード ―

「かつての世界」に存在していた「ソレ」に瓜二つといえた

 

 

パーティー会場で織莉子と真は、魔女と化した「桂子」を倒した

真は織莉子の誘導で目の前の魔女が「桂子」であるとは知らず、「人間に擬態する魔獣」としか理解していない

当然だ

「鉄仮面」の魔法少女 ― 宇佐美真 ― は「かつての世界」の記憶を一切持っていない

故に、その理解も「救済された世界」での尺度に依る事になる

 

「織莉子さん!!!見てください!」

 

真が指し示すところ

そこには滅したはずの「桑島桂子」が倒れていた

魔女化は不可逆

故に魔女の滅殺は「人殺し」に他ならない

はずだった・・・

 

「見てきます!!!」

 

「待って!!」

 

織莉子が真を止めた

 

「真さんは手負いよ。さっきのような不意打ちをもう一度喰らったら、今度こそ危ないわ!」

 

織莉子が桂子を追い包むように円盤を展開する

 

「まず私が確かめるわ。真さんはいざという時の為に準備しておいて!」

 

「わかりました」

 

彼女が円盤を展開したのは彼女自身を守ると同時に、真を魔女の亡骸に近づけさせない為だ

織莉子が彼女に近づく

 

「何で・・・・誰も・・・・私を・・・愛してくれ・・・ないの・・・・」

 

消えかかるような、弱弱しい声が彼女から聞こえた

 

「?!」

 

織莉子の記憶では彼女は既に死んでいるはずだ

声なぞ出せるはずがない

慌てて織莉子が彼女の心音を確かめる

 

ドクン・・・ドクン・・・・

 

「な・・・なんで!」

 

魔女化した「桑島桂子」は確実に生きていた

そして・・・・・

彼女の傍らには「グリーフ・シード」に似た「何か」が落ちていた

 

 

「これは・・・・・・」

 

彼女の「アカシック・レコード」が弾きだした答えは驚くべきことだった

たった一人の魔法少女が、「接続」の魔法で複数の魔法を組み合わせることで生み出した「対魔法少女兵器」

普通の人間を「魔女もどき」へと変え、そしてそれを魔法少女に打ち込むことで「魔女」へと変えることができる、恐るべき代物

悪意の実 ― イーヴル・ナッツ ―

その実物が目の前にある

幸いなのは、「まどか」の「救済」のおかげか、これには「魔法少女」を魔女化させる力はないという点だ

 

「・・・・警告ね」

 

これは「警告」

わざと織莉子と父親である久臣に近しい人物にイーヴル・ナッツを与えて「魔女モドキ」に変えたのは、彼女にこれ以上の調査を行わないように警告するため

彼女の父「美国久臣」を恨む人間は多い

もしも、その一人にイーヴル・ナッツを与えたら・・・・・

彼女の願いも全て「無」に帰する・・・・

「かつての世界」では、彼女は全てを失っていた

故に、失うものはなかった

だが今は違う

守るべき「妹」がいて、見守ってくれる「父」もいる

 

「彼女に相談するしかないわ」

 

そして、頼れる「仲間」もいる

自分と同じ「かつての世界」の記憶を持つ少女「暁美ほむら」が

 

 

 

 

NGシーン

 

呉キリカは悩んでいた

それは・・・・・

 

「・・・・・・」

 

彼女の目の前には一人の少年

 

「此処のお勧めはですね・・・」

 

少年の名前は中沢直人

数週間前に彼女に告白した少年だ

何故二人は喫茶店にいるのか?

話は昨夜に遡る

 

「私が中沢とデート??????」

 

キリカが飲んで?いた紅茶ペーストを吐き出しそうになる

しかしそんな状況でも織莉子は動じなかった

 

「キリカ、貴方は少し働き過ぎよ。だからこれは休暇と考えてくれていいわ」

 

「でも何でアイツと?」

 

「真さんから聞いたわ。中沢はああ見えても行動力がある。もし、私達の正体を知ったら・・・」

 

「わかったよ!私がスパイしてくるよ!」

 

「ありがとうねキリカ」

 

 

美国織莉子は悩んでいた

「かつての世界」のようにキリカが彼女に依存しつつあるのだ

かつての世界では彼女をあくまで手駒として考えていた

だからその方が都合よかった

織莉子は「キリカ」も救済するべき対象と考えていた

アカシック・レコードを使って中沢を観察する

彼は善良な人物だ

彼ならキリカを任せられる

 

「幸せになってね・・・・」

 

喫茶店で中沢の頼んだ毒ぺとルートビアの謎ドリンクに舌鼓を打つ、キリカの姿を見ながら織莉子は静かにその場をあとにした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




きらら☆マギカ最新刊読了

ゆまが幸せになったところがイイ

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