鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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「あの花」映画版
なんだかひっそりと公開して終わりだったり・・・・


重い扉

ギィィィィィ~~~~

 

何かを引き裂くような音が響く

牧カオルはサッカーの練習を早めに切り上げ何時ものようにあすなろ市公会堂の一室、「劇団プレアデス聖団」が根城にしている稽古部屋の扉を開いた

稽古部屋の扉は相変わらず重くて建付けが悪いが、この日のカオルはいつも以上に重たく感じていた

 

「カオル・・・・来てくれたのね・・・」

 

今日は劇団の練習日だというのに、稽古場には一人の少女の姿しかなかった

プレアデス聖団の脚本担当兼女優だった「御崎海香」

彼女はあまり感情を表にだす性質ではないが、その表情は暗い

二人だけの練習室

冷え冷えとした空間

それは冬の夜明け前の寒さに似て、心も思い出も全てを凍らせる冷気のように感じる

冷え冷えとした此処はいつもは仲間達と仲良くスナック菓子を食べたり、それぞれの学校のことや女性同士では許されるたぐいの猥談に花を咲かせていた

通う学校も目指す道もまったく違う、けれども掛け替えのない仲間達

ずっとこんな「ありきたりの幸せ」が続くと思っていた

でも彼らは・・・・・もういない

 

 

切っ掛けは前回の公演で「ミチル」の替りとして、サキが知り合いのつてで客演を頼んだ二人の人物、「宇佐美真」と「佐倉杏子」だ

二人は演技は素人だったが、真君は物腰が柔らく優しくて、杏子さんは真君と対照的にとても賑やかで、ミチルが突然居なくなった喪失感を埋めてくれた

私も海香も・・・劇団のみんなも暗い影から束の間目を逸らすことができた

だけど・・・・

公演当日、全てが「壊れた」

劇団の実質のリーダーの「浅海サキ」が「偶然」ミチルを目撃した

ミチルをただ見かけただけならまだいい

彼女が見慣れない服を着て、白い僧侶のような化け物を倒す姿を見てしまったのだ

その現場にはあの「真君」も居た・・・・・

彼もミチルと同じように「見慣れない服」を着て、化け物と戦っていた

ミチルの告白で私達は全てを知った

なぜミチルがなにも告げずに、急に私達みんなから離れたのか?

それは・・・・・

 

「海香・・・・みんなも受け入れるのに時間がかかるさ・・・・だって」

 

カオルの表情が翳る

 

「ミチルが魔法少女になっていたって事実に・・・・」

 

 

― 魔法少女 ―

 

ミチルが言うには「たった一つの願いを代償に人を辞め、死ぬまで戦い続ける人外の存在」のこと

彼女がプレアデス聖団から離れたのは、私達を戦いに巻き込まない為だった

魔法少女でいる以上、危険はつきものだ

現に、サキは偶然とは言え、ミチルと真の戦いに巻き込まれている

サキは例え人外に堕ちようともミチルの傍らにいることを願った

それを諦めさせたのは、もう一人の「魔法少女」宇佐美真だった

彼は言葉ではなく行動で、私達に「魔法少女」となること、その真実を教えた

魂の宝石「ソウルジェム」

文字通り、彼女達の魂を人外の力で結晶化させたものだ

つまりは魔法少女達の肉体は既に「死んでいる」

それを伝えるために、真は敢えて杏子に自らのソウルジェムを渡して、自分がどうなるのかを私達に見せた

今でも脳裏に焼き付いて離れない

糸の切れたマリオネットのように、身体から力が抜けて肉塊へと変わった真君の身体

その重さを・・・・

 

「カオル・・・・私夢にみるの・・・」

 

「どんな夢なんだ?」

 

「私がこの稽古小屋に来るの。みんないつもと変わらなくて・・・・・でも、何かが砕ける音が響いてみんな・・・・糸の切れたマリオネットのように死んじゃう夢」

 

「・・・・・所詮は夢さ」

 

「怖いのよ。皆がミチルのように魔法少女になって私から去っていくのが・・・・」

 

カオルは御崎海香を抱きしめた

 

「海香・・・・私の身体は冷たい?」

 

「ううん・・・暖かい。それに・・・」

 

「それに?」

 

「暖かくて安心するわ」

 

「私には海香みたいに小説の才能もないけど、いつでも胸は貸してやれるから・・・・」

 

カオルは海香の髪を撫でた

その顔に浮かぶのは決意

彼女は知っている

海香が本当は弱い少女であることを

 

~ 海香を守れるのは自分だけだ! ~

 

彼女は知らない

その一部始終を何時の間にか置かれていたテディベアが見つめていたことに

 

 

NGシーン

 

カオルは、自らの胸に海香の熱を感じていた

彼女にとって、海香は最愛の友人だ

新進気鋭のライトノベル作家として活動している「御崎海香」

だからこそ、彼女に媚び取り入ろうとする輩も多い

でも、彼女は鼻にも掛けなかった

彼女にとって、外野は必要ない

ただ自分の小説を書くための情報のみを欲していた

自分と彼女の出会いもそうだった

海香と触れ合ううちに、私は彼女の内面を知った

彼女は何も他人を否定しているわけではない

本当は欲していたのだ

友人を

心のうちを曝け出せる仲間を

私も同じだった

異郷でたった一人

両親を恨んだこともある

私と海香との出会いは必然だった

そして私は彼女の「家族」になった

 

「私には海香みたいに小説の才能もないけど、いつでも胸は貸してやれるから・・・・」

 

それは本心

だけど・・・・

 

~ 描写にリアリティーを出すためって、レズプレイを強要するのは止めて欲しいな・・・・・ ~

 

自らの胸に顔を埋めてくんかくんか!している海香を見つめながら、カオルはそう心の中で呟いた

 

 

 

 




暑さの次はフェーン現象・・・・・

ここはタイか!

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