鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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これにて第一章終了となります
読んでくれた皆様に感謝
第二章もある程度書き上げてありますので、さほどお待たせせずに投下できそうです。


ロッソ・ファンタズマ

 

 

「ウソだろ・・・・」

 

魔法少女の願いから奏でられる魔法はその魔法少女固有のものだ

だがどうだ?

目の前の少女はそれをいともたやすく使ったのだ

 

― ロッソファンタズマ ―

 

幻惑を操る佐倉杏子が近接戦闘でアドバンテージを得るために編み出した技だ

五つの分身はもともとは幻影の存在であったが、結界内では実体を持った存在になる

故にその攻撃も殺傷力を持つ

 

「うぁぁぁぁぁぁっぁあぁっぁぁぁぁぁぁ!」

 

鉄仮面の少女が絶叫しながら、ガントレットを握りしめて杏子に殴りかかる

杏子はステップでそれを躱すが、すぐさま「別の」真に捕捉される

ガントレットが杏子のロングコートを掠る

ボウっとした青白い炎がじわりと広がっていく

 

「この変態モノマネ野郎!」

 

紅い光が光ったかと思うと、杏子の手は使い慣れた槍を握っていた

 

「ぶっ潰してやるよ!」

 

 

ジャキッ!キュラララララ!

 

バシィィィィィィィィィ!

 

ガンッ!

 

ドスッ!

 

 

一人は頭を砕かれ

一人は腹に重い石突の一撃を喰らい

一人は鎖に絡み取られ、そのままもう一人にぶち当たる

杏子は槍を多節棍にコンバートして様々な方法で真「達」を打ちのめす

 

攻撃を受けた分身はガラスが砕ける音を響かせながら、光の粒子に変わっていく

しかし、その傍から新たな真が現れ、戦列に加わった

 

「ったく、キリがねぇぇぇぇ!」

 

この時彼女は集中力が削がれた

彼女は失念していた

これは「魔法少女」同士の戦いであり、油断は命取りになると・・・

その一瞬を突いて、真の分身が杏子の後ろを取った

 

バギィィィィィィィィ!

 

「ぐっ、あ……」

 

杏子の苦悶の声と肉を絶ち骨を砕く破砕音がほぼ同時に響いた。

「真」がいまだに青白い炎を吹き出すガントレットを掲げていた

仮面からは視線も表情も伺えない

そして五人の真達が杏子徐々に間合いを詰めてきた

止めを刺すために・・・

真の手が彼女に届くその瞬間

 

バシュ!バシュ!

 

突如として、黄色いリボンが幾つも地面から生え五人の真を拘束した

 

「!?ッ」

 

以前はサーベルを召喚し逃げることができたが、前もって準備していたマミの方が早かった

 

「少し痛いけど、我慢してね」

 

鈴を鳴らすような、巴マミの声を聴くと同時に鳩尾への一撃を受けて真の意識は闇に包まれた

 

 

 

格子柄の天井が見える

真は身を起こすが・・・

 

「痛ッ!」

 

「まだ痛みが残っているかもしれないわ」

 

隣を見ると彼を拘束した少女 巴マミが座っていた

既に変身を解いたのか、見慣れた見滝原中学校の制服に戻っている

 

「・・・・巴さん」

 

「そう警戒しなくてもいいわ」

 

廻りを見渡す

此処は真の家の客間だった

 

「鍵を失敬させてもらったわ。大変だったわよ?気を失った貴方を抱えて此処へ運ぶのは」

 

「すみません・・・・」

 

「謝らなくていいわ。あなたは決闘に勝った・・・・杏子の判定負けでね」

 

 

僕は確かに勝ったのだろう

でも・・・・全然うれしくない

あの自分が5つに分裂した感覚の後は全く覚えていない

覚えているのは、心音のように響く倒せという声のみ

真は急に、自分が恐ろしくなった

 

 

「彼女はどうなりましたか?」

 

「背骨の粉砕骨折、もう歩けないわ」

 

「そんな・・・・」

 

「彼女は魔法少女よ。今は元気に此処の食料を漁っているわ」

 

「・・・・よかった」

 

「怖いと思ったかしら自分の力を?私達は簡単に人を殺せる力を持っている。ちょっと、腕に力を入れるだけで首の骨を捩じ切ることだってできるわ」

 

「はい・・・・」

 

「それが普通よ。私が彼女と貴方を戦わせたのはそれをわかってもらうため」

 

巴マミが真を見つめる

そこにあるのは強い意志

 

「力に溺れ自滅する魔法少女は多い。私も何人か知っている。あなたは力をひけらかしたいだけ?それとも本当に人を助けたいの?」

 

「僕は・・・・」

 

怖い

知らないうちに、人を殺してしまったら

 

怖い

あの時のように、僕が僕でなくなってしまったら

 

でも・・・・

 

「僕は人のために戦いたい!たとえ自己満足だと罵られてもいい!」

 

「・・・・楽な道ではないわ。さやかさんのように死んでも遺体すら残らないこともある。あなたにその覚悟はあって?」

 

「覚悟は・・・あります!」

 

マミの瞳に優しい光が射した

 

「ついて来て」

 

 

巴マミに伴われて、真は大広間へゆっくりと歩みを進める

 

そこは光に包まれていた

 

生まれてきてから一回も使用されていなかった食卓には様々な料理が用意され、暖かな香りを立てていた

 

食卓に座っているのは・・・

 

 

「よう!変態。くたばってなかったか?」

 

「杏子さん・・・」

 

先ほどまで本気で殴りあっていた佐倉杏子がそこで呑気にチキンウィングに噛り付いていた

 

「その・・・ごめんなさい」

 

真の言葉を聞いて、杏子が冷たい瞳で彼を見つめる

 

「お前アタシを馬鹿にしてんのか?」

 

「い、いえ・・・」

 

「そういうのを馬鹿にしてるっていうんだ!お前はあたしに勝った。そこで踏ん反りかえってりゃいいんだよ」

 

そう言うと杏子は真を強引に隣に座らせる

 

「お前は晴れてマギカ・カルテットの一員になったんだから、アタシの舎弟な。ほら喰え!」

 

ぐいぐいとチキンウィングを押し付ける杏子

 

「やめなさい佐倉さん。彼もかなりのダメージを受けているんだから」

 

「あそこで優等生ぶっているのは暁美ほむら。脳内彼女持ちのサイコだから、お前とも話が合うと思うぜ」

 

「喧嘩なら買うわよ」

 

「いいね~」

 

剣呑な雰囲気が食卓に渦巻く

 

「佐倉さんと暁美さん~?今日は新人の歓迎会なのよ?またマスケット突っ込みが必要かしら?」

 

巴マミが二人の背後に立つ

 

「ただのじゃれ合いじゃないか。そんなに怒っているとまた小皺が・・・・はぺっ!」

 

辺りに何かを砕く破壊音が響く

 

 

「ホントに彼女大丈夫ですか?」

 

「大丈夫よ。塩をかけたナメクジと同じくほっとけば勝手に復活するわ」

 

正直、彼女達とやっていけるか心配になる真であった

 

「それでは・・・・あらためて」

 

 

「「「宇佐美真さん!マギカ・カルテットへようこそ!!!!!!!!!!」」」

 

「よろしくおねがいします!」

 

ほんの少しの不安と、憧れた「ヒーロー」と一緒の場所に立っていることへのうれしさから、真は笑顔を見せた

 

彼がこれから進む道は決して楽な道でない

 

彼はこれから人の悪意を見続けることになるだろう

 

彼はその戦いの中、大切なものを奪われることになるだろう

 

しかし

 

この時、この瞬間

 

彼は希望に満ちた「正義の魔法少女」となった

 

 

 

 

NGシーン

 

「どうしてこうなった・・・・」

 

真の目の前には泥酔する魔法少女達

 

「あれれ?あいまこと~宴会芸にろっそふぁんたずまなんてやりすぎだぜ」

 

呂律が回らず、真が複数に見える佐倉杏子

 

「まどか・・・・・!そんなところまで・・・・ああん」

 

壮絶なアへ顔で脳内彼女(まどかという名前らしい)と戯れる暁美ほむら

 

真の足が何かに触れる

 

「これは・・・!」

 

ルイロデレールクリスタルブリュットの空き瓶

ドンペリには知名度は劣るが高価なシャンパンだ

不意に背後に柔らかく暖かななにかが押し当てられる

 

「真さぁ~ん」

 

振り向きたい

だが、振り向いたら僕の大切な何かが・・・奪われる!

真は天国のような、その感触から逃げた

巧妙に隠されているが真の目の前には、父親が道楽で設置したパニックルーム ― 緊急退避所 ― の扉がある

あともう少しで・・・天国への扉に手が届く

だが!

 

ビュルン!

 

黄色いリボンが真の両手を後ろ手に拘束し、釣り上げられる

 

「宴の主役が何処へ行くのかしら?」

 

黄色い悪魔が真を見下ろす

 

「ひぃ!」

 

巴マミの目が据わっていた

 

「さぁ楽しみましょう?」

 

市場に売られる子牛のように引きずられる真

 

「ワルプルギスの魔宴」は終わらない・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第一章・完 俺たちの戦いはこれからだ!

・・・ちょっと言いたかっただけですすみません

次章では「おりこ☆マギカ」から美国織莉子、呉キリカ、千歳ゆまが登場予定
ついでに仁美と恭介も登場します

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