どこ行こう?
「何で無いの~~~~~!!!!!!」
あすなろ市住宅街
ややうらびれた通り
「かつての世界」の記憶では此処に目指す立花が経営する「レパ・マチュカ」があるはずだった
記憶に間違いはない
しかし、そこにはただの売家が一軒あるのみだった
― レパ・マチュカ ―
セルビア語で「かわいい猫」をあらわす店名の小さな洋食店
記憶では「詐欺で店を奪われた」立花宗一郎が経営していた
そして「かずみ」と因縁の深い店でもある
「以前の記憶が役に立たないことも覚悟していたけど・・・・」
明るい黄色の髪を短く切り、ショートツインテールに纏めた少女が呟く
彼女は不意に「かずみ」のことを思い出した
「レパ・マチュカ」の店内
満面の笑顔でハッシュドビーフを食べる「かずみ」
― ほら!ニコも食べなよ!!立花さんのハッシュドビーフは最高なんだから!! ―
「オリジナル」いや、寧ろ私を生み出した「母親」とも呼べる「神那ニコ」を見殺しにした私を本物の「ニコ」と信じて疑わなかった「かずみ」
かつての記憶が胸の奥で疼いた
~ 本当に欲しかったものは既に持っていたのに・・・・・~
「人類を駆逐してなりかわる」
そんな大それたことをしたかったわけじゃない
ただ一人
たった一人の仲間
いや「友達」が欲しかった
でも既に遅かった
私の傍らにはいつでも助けてくれる、愛してくれる「仲間」がいた
そのことに気付いた時には、既に皆は消えてしまっていた
そして・・・・・
私の手は血に穢れきっていた
「・・・・・よそう」
その瞬間だった
ぐぎゅるるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!
彼女から3メートル離れても聞こえるくらいの腹の音が響く
「そういえば、朝はコーヒーとドーナッツしか食っていないんだった・・・・」
急に疲労感が彼女を襲う
「既に死んでいる」魔法少女といっても「有機体」だ
最低限の食事は必要となる
魔力を注入して回復することも可能だが、しかしこのあすなろ市でどれくらいの魔獣が居るのか皆目わからない以上、無駄に魔力を消費するのは悪手だ
カルフォルニアで活動して入手したグリーフシードには、かなりの余裕があるが、しかしそれは「ニコ」だけではなく「カンナ」のものでもある
無駄に使うわけにはいかない
とはいえ・・・
「腹減ったぁぁぁぁ!!!」
周りを見渡すが、開店しているのかどうかわからない、タバコ屋?らしい店しかない
全く信じられないがコンビニすらないのだ
ニコが空腹を堪えながら、あたりを見渡す
不意に彼女の頭上から声が響く
「あなた・・・・お腹が空いてるの?」
少女が顔を上げると、輝くような金色のツインテールが目に付いた
「ゆうり・・・・・・・?」
無意識に彼女の名前を呼ぶ
「あれ?何処かで会いましたっけ?」
― しまった! ―
「ええっと・・・テレビで見て・・・・」
しどろもどろになりながらも少女は話す
「クッキングスタジアムを見てくれたんですか!!!!」
ユウリは少女に笑顔を見せた
「最終決戦は残念でしたね」
「ええ。体調不良で出れなくて・・・・」
― このユウリは恐らく「オリジナル」だ ―
自分も悲劇を回避したのだ
ユウリも悲劇を回避してもおかしくはない
自分で回避したのか、それとも私のように「誰か」が介入したのか
それはわからないが・・・・
「実は立花宗一郎って人がやっているレパ・マチュカって店を探していて・・・」
「レパ・マチュカ?知らないけど、立花って人の店なら知っているよ!!!案内してあげる!!」
そういうとユウリは少女の手を引く
「ありがとう」
「いいって!私の名前は飛鳥ユウリ!貴方の名前は?」
「・・・・私の名前は」
少女は戒めと後悔に彩られた、自らの名を口にした
「私は神那ニコ」
NGシーン
ビストロ・タチバナ
その一室、和紗ミチルはかつての親友からの手紙を読んでいた
~ あの日、ミチルの決意を知らずに軽率に発言してしまい申し訳なく思う ~
「浅海サキ」
ミチルが「かつての世界」を思い出す前に所属していた劇団「プレアデス聖団」の一員で、彼女の親友だ
ミチルが魔法少女であり、魔獣と戦い続ける運命にあると知ったサキは「かつての世界」のように魔法少女となることを望んだ
しかし、見滝原の魔法少女「宇佐美真」が魔法少女の秘密を教えた為、彼女が「かつての世界」のように契約することはなかった
~ 今でも私はミチルの隣で、一緒に戦いたいと思っている。だが、それは君の願いではない ~
~ なら・・・同封したモノを私と思って着用してもらえないだろうか? ~
~ 君のサキより ~
「?」
ミチルが同封された、もう一つの包みを開く
軽く振ってみるが、そう重いものではない
ミチルはおもむろにその包みを開いた
中には・・・・
「天は・・・・我を見捨てたもうたか・・・・・・」
ミチルの手の中にあるもの
高級なシルクと細密なレースに彩られたショーツ
かなり豪華な下着だ
・・・・・Tバックでクロッチの部分が開く構造になっている以外は
― 仲間の変態化 ―
それを止めることができなかった
彼女もまた、「運命」を克服できなかったのだ
たまに海外物の下着カタログを見ます
はっきり言って、下手なエロ本よりエロいです