闇に包まれた見滝原新興工業地帯
ライトアップされた工業地帯は幻想的で、まるで秘密基地のようにも感じる
しかし、強すぎる光は同時に闇をも引き付ける
オゴゴォォォォォォォォォ!!!!!!!
無数の白い巨人 ― 魔獣 ― だ
それに立ち向かうのは、三人のか弱き少女
「ったく!得体の知れないヤツに背中を守らせるって、マミは何考えてんだ!!!」
紅の少女は傍らの灰色の髪の少女に声を掛ける
「杏子さんもそう毒づかなくても・・・・ミチルさんも研修で頑張っているわけだし」
灰色の髪をショートボブに纏め、鉄の仮面を被った少女が杏子と呼ばれた少女を見る
シュゴゴォォォォォォォォォ!!!!
二人を魔獣の目に当る部位から放たれた光線が襲う
しかし、彼女達は身を躱し即座に攻撃体勢へと移った
「真!マミの奴から魔法を借りてるか?」
「ええ。いつでも使えます」
「じゃあてっとり早く、ティロ・フィナーレで・・・・」
「駄目ですよ。今回はミチルさんの研修なんですから」
「ったく、融通きかねぇな」
「そう言わないでくださいよ杏子さん」
不意に杏子の奥底で何かが疼いた
「じゃぁさっさと新人に見せ場を作ってやらねぇとな!!」
杏子の身体がブレ、複数に分かれた「彼女」が魔獣を翻弄する
「でやァァァァl!!!!!!」
彼女の手の中の槍は正確に魔獣の急所を狙い、その体力を奪う
シュゴォォォォォォォ!!!!!!
魔獣が「杏子」の一人に狙いを定めて光線を放つ、が
ガシュゥゥゥゥゥぅゥゥゥ!!!!!!
グアァァッァァ!
背後に回った真が銀のガントレットで魔獣を横凪に殴りつけた
「僕もいるよ?」
倒れ伏した魔獣を空中に生み出した足場の上で眺めながら、真が微笑む
「真さんも杏子さんもすごい・・・・」
黒衣の少女 ― 和紗ミチル ― は感嘆の声を漏らす
杏子の攻撃を真が読み、魔獣の攻撃ターゲットが杏子に絞られたのを見計らって死角からの一撃
この距離からはわからないが、彼女達はまちがいなく念話を使用しているだろう
しかしそれを割引いてみても彼女達の連携は驚異的だ
「おい!露出狂!!ボーとしてんな!!!」
杏子が叫ぶ
魔獣が呻き声を上げながら立ち上がろうとしていた
「はい!!」
少女の手にした杖が光唸る
― まだだ!もう少し・・・・ ―
「ドッピオ・レガーレ!!!!!」
真の両手から現れた虹色のリボンが魔獣を拘束する
― 今だ!!!!!! ―
ミチルが叫ぶ
「リーミティ・エステールニ!!!!!!!!!!!」
闇を祓う白光のような魔砲が黒い杖から放たれ、あたりに炸裂した
「みんながんばったわね!」
巴マミがミチルをはじめ、戦いに参加した皆を労う
「がんばったって言っても、コイツは最後に止めを刺しただけじゃんか」
「真さんも佐倉さんも前衛型よ。少数の魔獣なら貴方たち二人でも大丈夫だけど、複数となると全体を把握する後衛型が必要となるわ。この陣形はそういうことを意図して組んであるの」
― ここ見滝原に来たのは正解だったようだ ―
ミチルに足りないモノ
それは「戦略」
いくら無数の魔獣を葬る強力な魔法を持っていても、それを有効に活用できなければ結果的に意味がない
巴マミは真をはじめ、所属する魔法少女たちそれぞれの得意とする魔法を把握し、それを戦略的に活用するすべを得ていた
「ミチルさん。貴方の戦いを見せてもらったわ。広範囲に影響を与える強力な破壊光線、素晴らしい攻撃方法だわ。でも・・・」
巴マミがミチルを見る
「それはあくまで必殺技。貴方の戦い方は早期決着型ね。折角、前衛も可能な私と同じタイプなんだから、白兵戦をしてみてもいいと思うの」
ミチルはあいりとユウリと出会うまで、「それまで」の経験のみで戦っていた
故に、こうして他の魔法少女との戦いを見るのは初めてだった
「あなたの課題は決まったわ」
巴マミが一呼吸置く
「魔法少女同士の一騎打ちよ!」
NGシーン
あすなろ市の閑静な住宅地にある宇佐木邸
カタッカタタッ!
ウサギや猫のぬいぐるみが置かれた部屋
その主である宇佐木里見は熱心にパソコンのキーを打っていた
モニターには「猫っこ倶楽部」と表示されている
猫愛好家の集まるサイトだ
― 猫って躾けるのは難しいわね ―
「そうそう!猫って気難しくて平気で爪で引っ掻くし!!」
一人寂しく劇場の裏で死んだ愛猫「サレ」
彼女はその苦しみ、「ペットロス」を癒すために訪れたサイトだったが、彼女にとって生活の一部となっていた
― 猫って、厳しく躾けようとすると、途端に弱弱しい顔をするんだから!その流し目に私は何度メロメロになったか! ―
あの日、仲間達と見た「魔法少女」になれる少年「宇佐美真」
彼は「化け物」と呼んだ彼女に、怒りを見せることなる寂しげな笑顔を見せた
彼女は真のその笑顔に・・・・・
「あぁぁ~~~ん!あの子をペットに出来たらっ!あの灰色の髪の上に猫耳をつけたら!!!」
ペットロスを乗り越える方法には様々な方法やアプローチはあるが、最も端的な方法は「新たなペット」を得る事
彼女は新たな「ペット」に出会えたのだ
里見はドS
これは譲れない