鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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投下行きます


円環遊戯

闇に包まれた見滝原新興工業地帯

ライトアップされた工業地帯は幻想的で、まるで秘密基地のようにも感じる

しかし、強すぎる光は同時に闇をも引き付ける

 

オゴゴォォォォォォォォォ!!!!!!!

 

無数の白い巨人 ― 魔獣 ― だ

それに立ち向かうのは、三人のか弱き少女

 

「ったく!得体の知れないヤツに背中を守らせるって、マミは何考えてんだ!!!」

 

紅の少女は傍らの灰色の髪の少女に声を掛ける

 

「杏子さんもそう毒づかなくても・・・・ミチルさんも研修で頑張っているわけだし」

 

灰色の髪をショートボブに纏め、鉄の仮面を被った少女が杏子と呼ばれた少女を見る

 

シュゴゴォォォォォォォォォ!!!!

 

二人を魔獣の目に当る部位から放たれた光線が襲う

しかし、彼女達は身を躱し即座に攻撃体勢へと移った

 

「真!マミの奴から魔法を借りてるか?」

 

「ええ。いつでも使えます」

 

「じゃあてっとり早く、ティロ・フィナーレで・・・・」

 

「駄目ですよ。今回はミチルさんの研修なんですから」

 

「ったく、融通きかねぇな」

 

「そう言わないでくださいよ杏子さん」

 

不意に杏子の奥底で何かが疼いた

 

「じゃぁさっさと新人に見せ場を作ってやらねぇとな!!」

 

杏子の身体がブレ、複数に分かれた「彼女」が魔獣を翻弄する

 

「でやァァァァl!!!!!!」

 

彼女の手の中の槍は正確に魔獣の急所を狙い、その体力を奪う

 

シュゴォォォォォォォ!!!!!!

 

魔獣が「杏子」の一人に狙いを定めて光線を放つ、が

 

ガシュゥゥゥゥゥぅゥゥゥ!!!!!!

 

グアァァッァァ!

 

背後に回った真が銀のガントレットで魔獣を横凪に殴りつけた

 

「僕もいるよ?」

 

倒れ伏した魔獣を空中に生み出した足場の上で眺めながら、真が微笑む

 

 

「真さんも杏子さんもすごい・・・・」

 

黒衣の少女 ― 和紗ミチル ― は感嘆の声を漏らす

杏子の攻撃を真が読み、魔獣の攻撃ターゲットが杏子に絞られたのを見計らって死角からの一撃

この距離からはわからないが、彼女達はまちがいなく念話を使用しているだろう

しかしそれを割引いてみても彼女達の連携は驚異的だ

 

「おい!露出狂!!ボーとしてんな!!!」

 

杏子が叫ぶ

魔獣が呻き声を上げながら立ち上がろうとしていた

 

「はい!!」

 

少女の手にした杖が光唸る

 

― まだだ!もう少し・・・・ ―

 

「ドッピオ・レガーレ!!!!!」

 

真の両手から現れた虹色のリボンが魔獣を拘束する

 

― 今だ!!!!!! ―

 

ミチルが叫ぶ

 

「リーミティ・エステールニ!!!!!!!!!!!」

 

闇を祓う白光のような魔砲が黒い杖から放たれ、あたりに炸裂した

 

 

「みんながんばったわね!」

 

巴マミがミチルをはじめ、戦いに参加した皆を労う

 

「がんばったって言っても、コイツは最後に止めを刺しただけじゃんか」

 

「真さんも佐倉さんも前衛型よ。少数の魔獣なら貴方たち二人でも大丈夫だけど、複数となると全体を把握する後衛型が必要となるわ。この陣形はそういうことを意図して組んであるの」

 

― ここ見滝原に来たのは正解だったようだ ―

 

ミチルに足りないモノ

それは「戦略」

いくら無数の魔獣を葬る強力な魔法を持っていても、それを有効に活用できなければ結果的に意味がない

巴マミは真をはじめ、所属する魔法少女たちそれぞれの得意とする魔法を把握し、それを戦略的に活用するすべを得ていた

 

「ミチルさん。貴方の戦いを見せてもらったわ。広範囲に影響を与える強力な破壊光線、素晴らしい攻撃方法だわ。でも・・・」

 

巴マミがミチルを見る

 

「それはあくまで必殺技。貴方の戦い方は早期決着型ね。折角、前衛も可能な私と同じタイプなんだから、白兵戦をしてみてもいいと思うの」

 

ミチルはあいりとユウリと出会うまで、「それまで」の経験のみで戦っていた

故に、こうして他の魔法少女との戦いを見るのは初めてだった

 

「あなたの課題は決まったわ」

 

巴マミが一呼吸置く

 

「魔法少女同士の一騎打ちよ!」

 

 

 

NGシーン

 

あすなろ市の閑静な住宅地にある宇佐木邸

 

カタッカタタッ!

 

ウサギや猫のぬいぐるみが置かれた部屋

その主である宇佐木里見は熱心にパソコンのキーを打っていた

モニターには「猫っこ倶楽部」と表示されている

猫愛好家の集まるサイトだ

 

― 猫って躾けるのは難しいわね ―

 

「そうそう!猫って気難しくて平気で爪で引っ掻くし!!」

 

一人寂しく劇場の裏で死んだ愛猫「サレ」

彼女はその苦しみ、「ペットロス」を癒すために訪れたサイトだったが、彼女にとって生活の一部となっていた

 

― 猫って、厳しく躾けようとすると、途端に弱弱しい顔をするんだから!その流し目に私は何度メロメロになったか! ―

 

あの日、仲間達と見た「魔法少女」になれる少年「宇佐美真」

彼は「化け物」と呼んだ彼女に、怒りを見せることなる寂しげな笑顔を見せた

彼女は真のその笑顔に・・・・・

 

「あぁぁ~~~ん!あの子をペットに出来たらっ!あの灰色の髪の上に猫耳をつけたら!!!」

 

ペットロスを乗り越える方法には様々な方法やアプローチはあるが、最も端的な方法は「新たなペット」を得る事

彼女は新たな「ペット」に出会えたのだ

 

 

 

 

 

 

 

 




里見はドS
これは譲れない

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