鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ニコとカンナ
二人が早い時期で和解していたら?
というのも、このSSの命題だったりします


鏡の中の二人

あすなろ市中央に立つ、日本で7番目に高い電波塔「あすなろタワー」

夜はライトアップされて、ここあすなろ市のシンボルマークともなっている

その近くに造成された高層マンションの一室

開かれていない数多くのダンボール箱の中、一人の少女が革製のソファーに持たれて光り輝くあすなろタワーを見つめていた

 

~ お前が悪いんだ!お前が私を拒絶するから・・・お前の好きな世界を壊さなくてはいけなくなったんだ ―

 

「かつての世界」で激昂しながら私は「かずみ」に叫ぶ

なぜわかってくれない?

なぜ私を受け入れてくれない?

なぜ認めようとしない?

私も「かずみ」も所詮は彼らの満足のために生み出された「ダッチワイフ」に過ぎないことを・・・

 

 

豪華なダイニングで料理の準備をしていた、薄い金髪を小さくツインテールにした少女がソファーの上の少女に声を掛けた

 

「ニコ。御飯の準備ができたよ。一緒に食べよう♪」

 

「ああ・・・ありがとう。カンナ」

 

双子、いやそれ以上にそっくりな二人は一緒に食卓に座った

 

 

「ニコは・・・・決して貴方を観察したかったんじゃない。カンナに全てを託したかったんだよ。大切な家族も友人も・・・・全て捨ててカンナに譲ったんだよ」

 

倒れ伏した私の目の前には「かずみ」

世界でたった一人の、自分と同じ「合成魔法少女」

自分は人間・・・いや、「本物」じゃない

それで全てに絶望した自分とは違い、彼女、「かずみ」はそれを受け入れ尚も前を進もうとしている

立ち止まり、ただただ泣いていた私とは違う

その真っ直ぐな瞳に見つめられて、私の中に生まれたのはそれまで考えたこともなかった「後悔」だった

もう少し、早く彼女と出会えたら私の運命は変わっていたのだろうか?

彼女のように自分の運命を受け入れていたら?

彼女のように命を差し出しても構わないと思える友人と出会えたのだろうか?

 

「キミのコトバはいつもココロにくるね・・・・・」

 

私は自らのダークグリーンのソウルジェムを抱え、あすなろタワーからその身を投げた

彼女達に涙を見せたくなかった

「出来損ない」は「出来損ない」らしく死ぬ・・・・・

それでいい

彼女達が「私を殺した」という罪を背負う必要はない

 

砕けるソウルジェム

 

それは空中へ飛散し落下する私を包み込み、そして爆発した

 

爆風に包まれながら、私の意識は暗転する

私は地獄へ行くのだろうか?

私はそれでも償いきれないほどの罪を犯したのだ

しかし、私のような「出来損ない」に行くべき地獄は用意されているんだろか?

気が付くと、私は闇の中にいた

暗い空間

寒くはなく、しかし何の音も聞こえない

たった一人の、究極に孤独な空間

 

ああ、此処が地獄なんだ

 

覚悟していた責苦も叱責も私には与えられなかった

私はこの暗い空間で永遠に自らの罪を後悔し続けなければならないのだろう

願わくば私が蹂躙してきた人々に救いを・・・・

 

― 助けたい?滅びの運命を歩む少女達を? ―

 

不意に何者かの声が聞こえた

 

「ああ!!!もしもう一度許されるのなら私は・・・・彼女達を救う!!!」

 

後悔はない

それで私の罪が消えるとは思っていないが

 

― たとえもう一度、合成人間として生まれることになっても? ―

 

「命果てるまで私は生きる!!彼女達を救うためならどんな運命でも受け入れる!!!」

 

その瞬間だった

見慣れた闇が晴れ、視界が広がる

 

「カンナ~起きなさい」

 

懐かしい「私のママ」の声だ

 

「いまいく~」

 

少し高く幼い声

それは私の声そっくりだった

だが、私は声なんて出してはいない

混乱する私を余所に不意に視界が変わる

異様に視線が低い

私の疑問は直ぐに解決した

姿見の中にはひどく幼い私の姿

 

~ 何で・・・私が「私」になっているの! ~

 

「かつての世界」で死んだ筈の私は今の世界の「私」に寄生していたのだ

 

 

「また料理の腕を上げたね、カンナ」

 

「いつも美味しい美味しいって、残さず食べてくれるニコの為に頑張ったからね」

 

「食べ物を粗末にするのは悪人だけさ・・・・」

 

「明日はどうする?」

 

「カンナは予定通りに中学校へ行って。私はかずみを探す・・・・」

 

「パパとママの為だからね」

 

「ああ、カンナのパパとママは私のパパとママだからね」

 

「うれしい!」

 

カンナは身を乗り出すと「ニコ」と呼ばれた少女にキスをした

 

「大好きだよニコ」

 

「大好きだよカンナ」

 

ソファーの上で抱き合う二人をライトアップされたあすなろタワーが見つめていた

 

― 私はこの「世界」を守る ―

 

 

 

NGシーン

 

カンナは食料品の買い出しで近くのスーパーを訪れていた

少女は迷うことなく、精肉コーナーへと向かう

彼女の「お目当て」の商品は直ぐに見つかったが・・・

 

「ファァァァァァック!!!!!」

 

アメリカンな罵声を上げるカンナ

その視線の先には徳用の「薄切りベーコン」があった

 

 

「で、遠くの食材屋でブロックベーコンを買ってきたのね・・・・」

 

「仕方ないじゃん!アレどう見てもベーコンじゃなくてハムだよ!!」

 

~ カンナも半分日本人だけど、根っこはアメリカンなのね・・・ ~

 

ニコの前でベーコンへの愛を語るカンナはまごうことなき、アメリカンだった

 

 




アメリカには信じられんことに、ベーコン味のガムがあるそうな・・・

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