鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

102 / 322
オムライスが食べたい・・・・・


出張

 

「見滝原~見滝原~。お降りの方は荷物を忘れずに~」

 

単調な合成音声のアナウンスで駅名が告げられる

黒髪の少女「和紗ミチル」はやや小ぶりな鞄一つを手荷物を持ってリニアモーターカーから降りる

ここ見滝原とあすなろ市を繋ぐリニアモーターカーは運行実験的な意味合いが大きかったが、これにより以前よりもあすなろ市と見滝原市は非常に近くなっていた

また、実用車両として世界でも珍しいリニアモーターカーであることから、新たな観光資源としても有名となっていた

 

真が一度「死んで」見せたあの夜

三人は和紗ミチルがお世話になっているという、洋食店「ビストロ・タチバナ」にいた

なぜ佐倉杏子と宇佐美真があすなろ市に居るのか

そしてなぜ「魔法少女」となったのか

三人は料理を食べながら、とめどもない話をしていた

 

― マギカ・カルテット ―

 

真と杏子が所属する魔法少女の集団だ

彼の話によると、「かつての世界」でミチルが結成した「プレイアデス聖団」と同様に高度に組織化された集団のようだった

以前の彼女はあすなろ市で活動していたが、見滝原市にそういった組織があったと聞いたことはなかった

死ぬべき運命にあった「ユウリ」は生存し、ミチルの後を追って浅海サキ達が魔法少女となることはない

既に未来は変わっている

 

~ もう過去に生きない ~

 

あの日命を賭して魔法少女の秘密を明かした真という「魔法少女」

真のおかげで最悪の運命を乗り越えることができた

今回のあすなろ市訪問はそのお礼を兼ねて、そしてマギカ・カルテットとの親交を結ぶためでもある

少女は軽やかな足取りでホームを抜け、光の中に消えて行った

 

 

宇佐美邸別館 「マギカ・カルテット」本部

二人の少女が向かい合っている

 

「巴さん、真さんのことをどうするつもり?」

 

黒髪の少女「暁美ほむら」が静かに言葉を紡ぐ

仲間の一人「宇佐美真」が正体を見られ、更にあすなろ市で知り合った別の魔法少女を連れて来るというのだ

「絶望」から救われた世界であっても、魔法少女同士の衝突は数限りなく起こっている

たった一人救うために、世界線を乗り換えてきたほむらにとって、真の行動はあまりにも軽率としかいえない

 

「・・・問題ね。魔法少女の秘密を一般人に明かすなんて、真さんの行動は余りにも軽率よ・・・・でもそれで救われた人もいる」

 

「それは劇団のみんなのこと?」

 

「ええ。キュウベェは契約の際にそのリスクを説明しない。だからこそ、深く考えずにその場で軽率に契約してしまう人も沢山いる。真さんは彼女達に、自分のようになって欲しくなくて魔法少女の秘密を教えたんでしょうね・・・・」

 

巴マミは静かに紅茶に唇をあてた

 

「・・・・変わったのね」

 

ほむらはそうつぶやくと、考え込むかのように静かに目を瞑った

彼女がたった一人の「友人」との約束を守る為に旅して来た世界において、どの巴マミもその心の中に深い孤独を抱えていた

たった一人、近しい友人もなく家族もなくただただ魔女を狩る

究極に孤独な人生だ

だからこそ願ったのだ

自分と同じく「正義」の為に戦う魔法少女の仲間を

だからこそ欲した

「絶望」へと続く奈落への「道連れ」を

 

「何が?」

 

「独り言よ」

 

巴マミはまだ温かい紅茶に口を付けた

 

「ほむらさんは不思議ね。いつも何処か・・・此処でない場所を見ているみたい」

 

マミから掛けられた言葉にほむらは巴マミを見る

 

「・・・・別の世界から来たと言ったら信じる?」

 

一瞬戸惑うが、巴マミが温和な表情を崩すことはなかった

 

「信じるも何も魔法少女は条理を覆す存在よ。人が想像できるものは全て叶えられる。だから・・・・私は信じるわ」

 

「・・・・冗談よ」

 

そう言うと、ほむらは笑った

彼女自身、あまり他人に対して笑顔を見せることはないのだろう

ほむらの浮かべた笑顔はややぎこちなかったが、マミはその笑顔がウソのない彼女自身の「本当の笑顔」であると感じていた

 

― そういう風にもっと笑った方がいいのに ―

 

マミは心の中でそう呟いた

 

 

 

NGシーン

 

「キリカ、今回のミッションを伝える」

 

重々しい口ぶりで「全知」の魔法少女 ― 美国織莉子 ― が言葉を紡ぐ

 

「攻略ポイントにつき次第、時計を確認五分後にパッケージを入手する。キリカ準備はいい?」

 

「ああ、キミの為なら!!!」

 

織莉子がキリカの唇に人差し指を当てる

 

「私達の為よ?」

 

キリカの顔が紅く染まる

 

 

うらぶれた駐車場隅の宝くじ販売所

そこに一人のおばちゃんが現れる

 

~ きっかり五分・・・よし! ~

 

「おばちゃん!スクラッチくじ一つ!」

 

「はいはい、ちょっと待っててね」

 

 

美国織莉子の根源は「善」である

それは「今の世界」でも「かつての世界」でも変わらない

しかし、正義を為すには「金」が要る

だからこその「ミッション」

織莉子が当選番号を予知し、「変容」の魔法少女である呉キリカが懸賞金を入手する

大金を得るには「宝くじ」が手っ取り早いが、その分リスクが高い

後腐れなく、懸賞金を得るにはスクラッチくじの方が無難だ

 

「よし、今日中にあと20件回るぞ!!!!」

 

魔法少女達の起こした事件を日々解決する「魔法少女探偵 織莉子&キリカ」

彼女達は地味に日々頑張っているのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作を読んでも、父親が自殺しても、織莉子の生活レベルってあんまり変わっていなかったような・・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。