白い犬   作:一条 秋

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76 別れの前に 後編

 バスに揺られることしばし。

 今朝出発したバス停に戻ってきた光秋と伊部姉妹は、それぞれ運賃を払ってバスを降りる。

「ふー、やっぱり外冷たい!」

「だな……で、この後どうしよう?」

 バス停に降り立つや吹き付けてくる冷風に震え上がる綾に同意しつつ、光秋は今後について考える。

「とりあえず、一旦僕の部屋戻るか。戻って来たんならカバン置きたいし」

「そうしよ!とにかく風がしのげる場所!」

「そんなに寒いか……」

 若干大袈裟と思える綾の反応に唖然とする一方、日がすっかり落ちて温かさがなくなった中で吹き付けてくる風に共感もしながら、光秋はその手を引いて寮の自室へ向かう。

―綾の……法子さんの……手、温ったかいな……―

 こんな時だからだろうか、一日中繋いでいたにも関わらず、夜風の中で握るその手はいつにも増して温かく感じ、元来冷え性な体質からすぐに冷たくなる光秋の手を温めてくれる。

 そんな心地よさを左手に感じながら近くの横断歩道を渡り、路地を速足で進んで自室前に着くと、光秋はドアを開けて伊部姉妹と共に逃げる様に中に入る。

 居間に入ると電灯を点け、カバンを置くやすぐにエアコンを入れる。

―今何時だ?……―

 思いつつ腕時計を確認すると、間もなく6時を指そうとしている。

「もうすぐ6時……夕飯にします?と言っても、台所は全部片付けちゃったから、どっか食べに行くか……」

「食べに行くのはいいんだけど、その前にひと休みさせて。まさかあんなに冷えるとはねぇ……」

「あぁ、すみません。あ、コタツ出します」

 コート越しにも震えているのがわかる法子に応じると、光秋はベッド下からコタツを引き出して電源を入れ、共にその中に脚を入れる。

「ふぅー…………あ、そうだ」

 コタツの温かさに安堵の息を漏らすと、光秋はカバンを引き寄せて、先程仕舞った本入りのビニール袋を取り出す。

「これ、2人の分。今の内の渡しておく」

「ありがと」

 言いながら伊部姉妹の本をコタツ上のテーブルに差し出し、綾が礼を言うやそれを自分のカバンに入れる。

「さて、何処に行こうか…………」

 それを見届けて独り呟くと、光秋は夕食を何処で摂るか思案する。

―いつも行く近くのレストラン?でもこれでしばらく会えないだろうし、もっと豪勢なとこ……といっても、この辺にそれっぽい店はないか?…………―「法子さん、この辺で、いつもよりちょっと豪華な食事ができるとこ知りませんか?」

「この辺で?…………うーん……先週行ったお好み焼き屋とか?」

「あの辺か……」

 しばし考えた後、悩みながらも答えてくれた法子に、光秋は先週の昼食風景を思い出しながら返す。

―……考えてみれば、こんなに早く帰ってくる必要もなかったんだよな。それこそ、駅の地下街で食べてきたってよかったんだし……空が暗くなるのを見て、何でだか帰りたくなったんだよなぁ……失敗したなぁ…………―

 今更ということは承知しながらも、ついそんな後悔を感じてしまう。

 と、綾が口を開く。

「あたしは、この近くで食べたいな。アキとご飯食べる機会もこれでしばらくないし」

「……だから、勝手に読みなさんな……」

「だから、勝手に伝わってくるんだって」

「そうなのかもしれないがさぁ……じゃあ、お前さんは何処行きたい?」

「あたしは…………」

 しばらく考えると、綾は下げていた顔を上げる。

「やっぱりいつも行くレストランかな」

「あそこでいいのか?」

「本当は、初めてアキと二人っきりで遠出した時に行ったあのお店に行きたいけど……」

「あそこか……」

 言われて光秋は、半年近く前にハヤシライスを食べた店を思い出す。戸松教授が務めていた施設前にある、乱闘騒ぎの際の診察の後に利用したあの店だ。

「でもここからだと少し遠いし、今寒いからさ。それだったら、あのレストランがいい。あそこも結構豪華なメニューあるじゃん」

「まぁ、言われてみれば……」

 応じつつ、光秋は記憶の中のメニュー表を探る。

―確かに、結構な値がする料理もいくつかあったよな……最後の晩餐、そういうの頼んで奮発すればいいか―「なら、あそこにするかな。法子さんは?」

「言われてみれば、私も前々から食べてみようと思って、値段になかなか手が出せないのが何個かあったなぁ……折角だし、それでパーっとやろうか」

「じゃあそれで」

 法子も同じ様な考えであることを聞くと、光秋はポケットから財布を出して懐具合を確認する。

―補充は……いいか―

昼間もかなり使ったものの、もともと多めに入れておいたおかげでまだ余裕がある。

「今度は私も出すよ。光秋くんとの……その、最後の食事なんだし」

「寂しい言い方しないでくださいよ……それに、今度も僕一人で持ちますよ。最後の最後だからこそ、格好つけさせてください……あ、そうだ」

 財布を戻しながら法子の申し出を断ると、光秋はカバンからおにぎりを入れていた袋を取り出し、中に入っている使い終わったラップを出して台所のゴミ箱に捨てに行く。

―やっぱ、まだ出ると寒いな―

 コタツから出たばかりだからこそ余計に寒く感じる室温に若干震えつつ居間に戻ると、空になった袋を法子が自分のカバンに仕舞うのを見る。

「あ、袋といえば……」

 その光景に足を止めると、光秋は台所の戸棚に目を向け、そこに仕舞ってある伊部家から借りた弁当箱を幻視する。先日法子と台所周りを片付けた際、後回しにしてそのまま忘れていたものだ。

「法子さんちの弁当箱も今の内に渡しておきます。すみませんけど、また岩手に帰る用があったら返しといてください」

 言いながら戸棚から弁当箱とそれを包んでいた布を取り出すと、光秋はそれらを法子に差し出す。

「わかった。この間も結局忘れてたもんね」

 応じると、法子はそれらを受け取ってカバンに入れる。

 と、

「ただし、一つ訂正……これは光秋くんがこっちにいない間私が預かっておくから、また一緒に岩手に帰った時に()()()返すこと。いい?」

「……敵わないなぁ、法子さんには……わかりました」

険しいわけではない、それでいて有無を言わせない、そんな独特の気迫で告げてくる法子に、光秋は苦笑いを浮かべながらも頼もしさを覚え、清々しい気持ちで答える。

「よろしい!……じゃあ、そろっと行こっか」

 言うや法子はコタツを出、光秋はすぐにその電源を切る。

「エアコンは……いいですよね?点けてて」

「そんな遠くじゃないし、いない間温めてもらえばいいでしょう」

「ですね」

 法子の返答に返すと明かりを消し、一行は玄関へ向かう。

 各々靴を履き、前を行く光秋がドアを開けると、

「寒っ!!」

「早く行きましょう!」

いきなり吹き付けてくる冷風に綾が悲鳴の様な声を上げ、戸締りを早々に確認するや光秋も震えながら手を繋ぎ、一行は追い立てられる様にレストランへ向かう。

 

 路地を抜け、横断歩道を渡り、レストランの入り口をくぐって暖房の温かさにほっとしたのも束の間、一行は店の奥から出てきた店員に促され、半分程埋まっている店内を進み、勧められたテーブルに向かい合って座る。

「本当、こっちにしてよかったね。綾が行きたいって言ってた店まで行ってたらどうなってたか……」

「確かに……そっちはまた今度の楽しみですね。せめて温かくなってからで……で、なに食べます?」

 外を歩いていた時のことを思い出して再び震え上がる法子に深く頷くと、光秋はテーブル脇のメニュー表を取って広げる。

「そうだなぁ……」

 言いながら法子はメニュー表を見やり、光秋も値が張る品々の中で食べたいものを選んでいく。

「……よし、決めた」

「私も」

 ややあって断じた光秋に法子も続くと、光秋は呼び出しボタンを押し、少ししてやってきた店員に注文を告げる。

「特上ステーキセット、ライスで。あとジンジャーエールと抹茶アイス」

「私は、トリュフのカルボナーラとグレープフルーツジュース、あと苺のショートケーキを」

「かしこまりました」

 光秋、法子の注文に短く応じると、店員は厨房へ向かう。

「……我ながら、思い切った奮発をしたものですね。これ一食分で、支部の食堂の日替わり定食が3つは買えますよ……」

 改めてメニュー表に書かれている値段を見やる光秋は、その額に遅まきながら軽い戦慄を覚える。

 しばらくして注文の品々が運ばれてくると、テーブルの上に分厚い牛肉が載った鉄板の食欲をそそる音が響き、薄切りの黒トリュフをまぶしたスパゲティの独特の香りが広がる。

「……じゃあ、いただきますか」

「だね……それじゃあ」

 実際に来た料理を見て、先日の洋食店で感じたのと同質の威圧感を覚えるものの、光秋はすぐにそれを隅に追いやり、法子も同意すると、2人は各々のグラスを手に取る。

「「カンパーイ!」」

言いながら互いのグラスを鳴らし、光秋はジンジャーエールを、法子はグレープフルーツジュースを一口飲む。

「いただきます!」

 グラスを置いて手を合わせるや、光秋は早速分厚いステーキにナイフを通す。

 切り分けたそれをナイフとフォークで挟んで皿に盛られた白飯の上に載せ、フォークで白飯と一緒に掬って口に運ぶ。

―……先週の洋食屋の肉もよかったが、こうして、普段の食事の延長として食べる高級肉というのもいいな!―

肉だけではやや濃過ぎる気がするソースも、白飯を加えて味わうことでいい塩梅に調整され、肉そのものと、ソースと肉汁が染み込んだ白飯の舌触りに、光秋はささやかな感動を覚える。

「どう?このお店で一番高いステーキは?」

「いいですよ。ご飯と一緒に食べると特に。法子さんはどうです?トリュフのカルボナーラっての」

「絶品!これはと思って、食べる前に写真撮っといたくらいだしね」

「……そういえば」

 言われて光秋は、自分がステーキに手を付けたのと同時に、法子が携帯電話でカルボナーラを撮っていたことを思い出す。

「また日高さんに送りますか?」

「帰ったらね……んーんっ!」

 光秋に応じながら、法子はフォークに巻いた麺を巻き込んだトリュフごと口に入れ、ご満悦な顔を浮かべる。

 と、

「アキも食べてみる?」

「そろそろ来る頃だと思ったよ……」

交代した綾が麺を巻き付けたフォークを差し出してくるのを見て、もうすっかり馴染んだ光景に光秋は一言呟く。

 と、麺の中にトリュフが巻き込まれていることに気付く。

「悪いが、それは遠慮しとく」

「え?……何でよ!いつもはあれこれ言っても食べてくれるのに」

「キノコ苦手なんだよ……」

 目くじらを立てる綾に、光秋は麺の中のトリュフを見ながら正直に答える。

「アキ、キノコ嫌いなの?」

「言わなかったっけな?」

「あたしは聞いてないよ……私も」

「そうだっけ?昔からどうもダメで……」

 綾と法子の返答に応じつつ、光秋はいい歳になっても抱えている好き嫌いに少し恥ずかしくなる。

「キノコでなんかあったの?」

「あったというか……毒キノコの話を聞いたり、図鑑やなんやで生えているところを観たりしてたら気持ち悪くなっちゃって……それで連鎖的にキノコ全般がダメになったみたいで……」

 綾の問いに、光秋は子供の頃のことを思い返しながら答える。

「……あれ?でも定食の味噌汁なんかに入ってるシメジやナメコは食べてたよね?」

「流石に全く受け付けない程じゃありませんよ。食べようと思えば食べられます。ただ、進んで食べないだけで……」

 普段の食事風景を思い出した法子の問いに答えつつ、光秋はフォークに巻き付けられた麺、その中のトリュフに改めて消極的な視線を向ける。

「うーん……嫌いじゃしょうがないか」

「申し訳ない……」

 残念そうに言いながら綾は差し出していたフォークを自分の口に運び、光秋は頭を下げる。

「それならさ」

 言うや綾はトリュフを避け、今度は麺とベーコンだけを巻き付けて差し出してくる。

「これなら食べられるでしょ」

「……ありがとう」

 綾の心遣いに感謝しつつ、光秋はフォークに口を近づける。

 その時、

「ストップ!」

「!?」

一瞬前とは打って変わって鋭い制止の声が響き、光秋はすぐに口を開けた体勢で固まる。

 そして、

「はい、あーん!」

「……あー……」―それは絶対言わないとダメなんだな……―

今度は朗らかに微笑む綾に内心そう思いつつ、光秋は差し出されたカルボナーラを咀嚼する。

「……うん。もともとカルボナーラは好きだが、トリュフ独特の香りが加わっててまた新鮮な味わい」

「じゃあ今度は」

「わかってるよ」

 感想を述べるやねだる目を向けてくる綾に応じると、光秋は一口サイズに切り分けたステーキを差し出す。

「ほれ、あーん」

「あーん!……ううん!」

 それをじっくり味わいながら、綾は満面の笑みを浮かべる。

「満足いただけたようでなによりだ」

 言いながら自分の頬も笑みに緩む感覚を自覚しつつ、光秋はまた一切れステーキを白飯と共に口に運ぶ。

 いつものやり取りと談笑を交わしながら、一同は奮発した夕食を堪能する。

 

 食事を終え、光秋が2人分の会計を済ませて店を出ると、法子が思い出した様に足を止める。

「そういえばさ、明日の朝ご飯なかったんじゃ?」

「あっ!」

 言われて光秋は、今朝法子と最後の菓子パンを食べてしまったことを思い出す。

「……そうだ。しまった……帰りに買うって言って忘れてましたね……ちょっとコンビニ行ってきます。寒いから先帰っててください」

 言いながら、光秋はズボンのポケットに左手を入れて鍵を出そうとする。

 が、法子はその手を右手で掴んで止める。

「私も行くよ」

「いや、でも――!」

 突如吹き付けてきた冷風に、光秋は思わず口を止める。

「……ほら、寒いでしょ?先戻っててください。もともと僕のミスだし、僕の朝飯だし」

「私だって明日の朝ご飯ないんだよ。一緒に買いに行けばいいじゃん……それに、私たちだけじゃつまんないし……」

 冷気に震えながら続ける光秋に、法子も震えながら返し、特に最後は寂し気に告げる。

「……わかりました。じゃあ、一緒に行きますか」

「うん」

 その様子を見て光秋は渋々応じ、薄っすら喜色を浮かべた法子の手を繋いで最寄りのコンビニへ向かう。

 

 コンビニで明日の朝食2人分と、綾の希望でチョコレート菓子を一袋購入すると、光秋たちは寮へ戻る。

 冷たい強風に追い立てられる様に部屋に入ると、光秋は居間の明かりを点け、買ってきた物をビニール袋ごと冷蔵庫に入れて、暖房で温まった室温にようやく人心地つく。

「ふー、温かい……あ、コタツ点けるね」

「どうも……それにしても綾、あんなに食べてよくまだ食べようって気になるよなぁ」

 コートを脱いでコタツの電源を入れる法子に応じつつ、光秋も脱いだコートを椅子の背もたれに掛けて冷蔵庫を見やり、先程仕舞ったチョコレート菓子を思い出す。

「たくさん食べても、時間が経つと食べたくなる時があるんだよー!」

「それはわかるがな。もっとも、僕は今日はそうじゃないかも……風呂入れてくる」

 少し頬を膨らませる綾に、すっかり張った腹を擦りながら返すと、光秋は浴室へ向かう。

―歯は……入りながら磨けばいいな。法子さんたちもいるし―

 最後に食べた抹茶アイスの残り香を口の中に感じながらそう断じると、光秋は栓をした浴槽に蛇口を全開にしてお湯を注ぐ。

 居間に戻ると、綾がコタツに足を入れて、先程買ってきた本を読んでいる。

「読書中悪いが、どっち先に入る?僕は後でもいいけど」

 光秋もコタツに入りながら問うと、綾は本から顔を上げる。

「えー?せっかくだし、みんなで入ろうよ」

「流石にそこまで緩めないよ。というか、あの風呂に大人2人は物理的に無理だ」

 割と真面目に言ってくる綾に、光秋は風呂場を指さしながら、1人でも脚が伸ばせない浴槽を思い浮かべて応じる。

「……というよりやっぱり、綾たち先に入ってくれ。僕が上がる時にいろいろ片付けるからさ」

「……わかった」

 不満そうに綾が了承を返すと、法子が思い出した様に交代する。

「そういえば光秋くん、さっき冷蔵庫に買った物入れてたけど、コンセント抜かなくて大丈夫?引っ越す時って、こういうのの電源前の日から抜いておかなきゃいけなって聞いたけど?」

「あっ!そうだ……」

 その指摘に、光秋は先日電話越しに聞いた引っ越し業者の説明を思い出し、慌てて冷蔵庫を開けて中にあるスイッチを切り、ベッドの下に潜り込むと奥右側にある冷蔵庫と壁の隙間に右手を入れ、そのプラグを抜く。

「そうだった。それで中身も早々にスッカラカンにしたんでした……けど、明日の朝飯と菓子大丈夫ですかね?」

 言いながらコタツに戻ってくると、再度冷蔵庫に視線を向ける。

「一晩くらい大丈夫でしょう。余熱っていうか、切ったばっかりならしばらくは涼しいだろうし。そもそも季節的にねぇ」

「ですね」

 法子の言わんとすることを察し、先程まで浴びていた冷風の記憶に一瞬鳥肌を立たせると、光秋は腕時計を見る。

「そろそろだな。止めてきます」

 言うや再び風呂場へ向かい、8割程満たされた湯船を止めると、手を入れて湯加減を確認し、居間へ戻る。

「わざと熱めに入れてあるんで、入り辛かったら冷ましてください」

「わかった」

「で、タオルとかは……」

「それなら一式持ってきてあるよ」

 光秋に応じつつ、法子はカバンから着替えとバスタオル、歯磨きセットを取り出す。

「ボディソープとかは貸してもらうけど」

「どうぞ。あ、僕リンス使わないんで、それはないですけど」

「そうなの?わかった。じゃ、お風呂いただきます」

「ごゆっくり」

 言うと法子は着替え諸々を持って居間を出、仕切りたるカーテンを閉めた光秋はコタツに入る。

 と、それまで3人で騒いでいたのが急に静かになったからだろうか、起き抜けに法子が来た時からどこか浮かれていた頭が少し冷め、伊部姉妹と一晩共に過ごすことへの不安が今更ながら湧いてくる。

―考えてみれば、この寮人を泊めてもいいのかな?そんな注意は受けなかった気がするが……どの道、準備万端で来て風呂にも入った人を追い返すわけにもいかんしな…………管理人さん、今夜だけですので、ごめんなさい!―

 伊部姉妹がいる浴室を見やり、次いで壁越しに管理人宅の方へ視線を向けると、独り深々と頭を下げる。

―まぁでも、特別何かあるわけでもないしな。そんなに気張ることもないか―

顔を上げながらそう思うと、いくらか気が楽になる。

 しかし、

―……本当に?法子さんが、綾が一つ屋根の下にいて、本当に何もなしに過ごせる?…………!当たり前だろっ!何かあろうもんなら、それこそ旦那さんに何をされるか…………!!―

心の深い所から響いてきた声に、光秋は狼狽しながらも精一杯の否定の意志を告げ、連鎖的に浮かんできた伊部父、その悪寒を引き起こさせる笑顔に震え上がる。

 そうしている間に浴槽のドアが開く音が響き、伊部姉妹が上がったことに気付く。

―上がったか……今カーテンの向こうにいる法子さんたち、裸――少なくともタオル1枚程度なんだよなぁ…………覗くなよ。わかってるよ……―

 束の間浮かんだ下心に対する警鐘に応じると、光秋は身に着けていた携帯電話諸々を机の上に出し、着替えとタオルを用意していつでも交代できる準備を整える。

 ややあってカーテンが開くと、ピンクのチェック柄のパジャマに着替えて首にタオルを掛けた法子が、畳んだ衣服を脇に抱えて入ってくる。髪は下ろしているため見掛けは綾にも見えるが、光秋が感じる雰囲気は法子のそれだ。

「お待たせ。次どうぞ」

「それじゃあ……湯加減どうでした?」

「ちょっと熱かったから冷ましたよ」

「わかりました」

 応じると、光秋はカーテンを閉めて脱いだ服を洗濯機の上に畳んで置き、浴室に入る。

 いつもは冷えた床と浴槽から立ち上がる湯気で独特の温度になっている浴室も、今日はお湯に濡れた床が温かい。

―このお湯、法子さんたちが入ったんだよなぁ…………!イカン!イカン!余計なこと考えずにとっとと入ろう―

 再び湧き上がる雑念を頭を振って追いやり、洗面器1杯分の湯を流して浴槽に浸かりながら水盤上の棚から歯ブラシを出し、予定通り入浴しながら歯磨きを行う。

―どうもさっきから邪念が…………僕も男ってことかなぁ……?―

 自分の弱さに対する呆れの様な、ある種の諦観の様な気持ちを持て余してながら磨き終えると、水盤で口を漱いで湯船に肩まで浸かり、歩き疲れた体を温める。

 充分に温まると浴槽から出て体を洗い、再度湯船に浸かって温まると、上がり際に栓を抜いて湯を抜き、空になると浴槽と周辺の壁を水洗いして、自身も水気を拭いて浴室を出る。

 洗濯機の上に用意したバスタオルで髪を拭き、パジャマに着替えるとカーテンを開ける。

 髪の水気をさらに拭き取りながら入った居間では、綾がコタツに入って袋を開けたチョコレート菓子を摘まみながら、読書の続きをしている。

「ちょっとドライヤー使うぞ」

「どうぞー」

 綾に断りを入れるや光秋は封をしていない段ボール箱からドライヤーを取り出し、台所のコンセントに繋いで髪を乾かす。

 乾き切るやドライヤーを元の段ボール箱に戻し、バスタオルも仕舞い、洗濯機の上に置いていた服を椅子の上に置くと、冷蔵庫から目薬を出し、机の上の携帯電話を取ってコタツに入る。

―開けても明るくならない冷蔵庫って、なんか妙だよなぁ……―

 いつもとは違うことに感慨を抱きつつ目薬の1つを注し、次の分を注すまでの間、光秋も買ってきた本を開いて読書に耽る。

 

 目薬を注しつつ読書を続け、全て注し終えてからさらに読み進めることしばらく。

 切りのいい所で本を閉じた光秋は、コタツの上に置いた携帯電話を取って画面を開く。

「9時半か……明日も早いし、そろっと寝るか」

「え?もうそんな時間?」

 本から顔を上げて訊いてくる綾に画面を向けて時計を示すと、光秋はコタツを出て伊部姉妹の分の布団を用意しようとする。

 その時、

「……あっ!……しまった……」

ハッとするや頭に手を置き、狼狽した顔を伊部姉妹に向ける。

「どうしたの?」

 心配そうに訊いてくる法子に、光秋は失念を恥じながら問う。

「法子さん……寝袋は持ってきてますか?」

「……寝袋?」

「よく考えたら、僕の部屋布団一式しかなくて……」

 訊き返してくる法子に応じつつ、光秋はベッドに敷かれたこの部屋唯一の布団一式を見やる。

「そういうことか……持ってきてないよ」

「やっぱり……それじゃあ……」

 予想通りの返答に、光秋はコタツに視線を落とす。

―僕はこれで寝るか……―

 気は進まないものの、こういう場合男は床で寝るものという意識が勝り、その旨を告げようと光秋は法子を見る。

「僕はコタツで――」

「それならさ、一緒に寝ようよ」

「……え?」

 遮る様に言われた法子の提案に、光秋は一瞬何を言われたのかわからなくなる。

「……一緒に?」

「そう。布団一つしかないなら、ベッドで一緒に寝ればいいじゃん」

 なんてことない様子で言いながら、法子はベッドを指さす。

 その光景にようやく理解が追いついた光秋は、今度は困惑を覚える。

「いや、いいじゃんって……いいんですか!?僕たちこれでも歳頃の男と女であって…………」

「それに、私の暫定彼氏でしょ?……あたしも、今日はアキと一緒に寝たい」

「綾、お前まで――いや、お前さんはそういう奴だったな……」

 交代するや懇願の眼差しを向けてくる綾に、光秋は右手を頭に添える。

 そして、

「…………わかった。そうしよう」

しばしの思案の後、不承不承法子の提案を受け入れる。

 しかし、その一方で、

―あぁ言いはしたものの、こんなあっさり折れて…………やっぱり僕自身、そういうのを望んでるんだな……―

一連の言動を振り返り、加えて心なしか胸が高鳴っていることを自覚して、光秋は嬉しいような、情けないような気分を味わう。

「やったー!アキと一緒に寝れるっ!!……そうこなくちゃ!」

 対照的に赤裸々な喜びを浮かべる綾と法子を見やると、光秋はコタツの上のチョコレート菓子を見やる。

「とりあえず、寝るなら歯ぁ磨いてな。僕はちょっとトイレ」

 そう告げると、光秋は読んでいた本をカバンに仕舞い、携帯電話と机の上のカプセルをベッドの上に置き、カーテンをめくって個室に籠る。

 用を済ませるとその足で浴室へ向かい、水盤で口を漱いで顔を洗う。

 居間に戻ると掛けてあるタオルで顔を拭き、コタツで歯を磨いている綾を見るやその横に腰を下ろして、終わるまで待つ。

 綾が浴室へ向かうと、光秋はコタツの電源を切ってベッドの下に押し入れ、ベッドに梯子を掛ける。

 エアコンも切る頃合いで綾が居間に戻ってくると、光秋は梯子を上ってベッドの奥に移動し、携帯電話とカプセルを枕の脇に置く。

 その間に上がってきた綾がベッドに腰を下ろすと、みしっという不安な音が1回だけ鳴る。

「……大丈夫だよね?今更だけど……」

「たぶんな。少なくともただ寝てる分には……」

 不安気に問う綾に、光秋は今一つ自信なく答えると、携帯電話を開いて時刻を確認する。

―9時50分か……―「まぁいい。おやすみ」

言うや外したメガネも枕の脇に置き、電灯の紐に手を伸ばして明かりを消すと、そのまま布団を被って右半身を下にして横になる。

「……おやすみ」

 それを追う様に綾も横になって布団に潜り込むと、途端に部屋の中が静かになる。

 しかし、

「……」

部屋の静けさとは対照的に、光秋の心中はやや昂っていた。

 元来1人用として作られたベッドは、多少広さに余裕があるとはいえ、2人も乗れば体が触れ合うくらいにまで詰めなければならなくなる。加えて枕も1つのものを共に使っているため、背中に感じる伊部姉妹の存在感にどうしても目が冴えてしまうのだ。

―いかん!いかん!明日早いんだしとっとと寝ないと……それに変な気起こそうもんなら、旦那さんがただじゃおかないぞっ!―

 心中に自制と、自分自身への脅しを言い聞かせ、光秋はなんとか寝ようとする。

 その時、

「!?」

両肩に手を添え、体を密着させてくる感触を背中に覚え、光秋は一気に目が覚める。

「綾!?……法子さんか?……何を……」

「だって、今日が最後なんだよ……」

「……」

 静かに、どこか悲しそうに告げる綾の声に、それまで狼狽えていた気持ちが一度冷静になる。

「明日に……朝になったら、しばらく会えなくなるんだよ!……だったらさ…………」

 僅かに湿気を含んだ声はそこで途切れるものの、光秋には背中に押し付けられた顔が何を言いたかったのかわかってしまう。

―最後だから、少しでも一緒に、近くにいたい。触れていたい……あるいは……―

 同時に、涙声の中に含まれていた“甘え”を、聞いたというより感じ取り、それに魅かれそうな自分を抑えようと一つ深呼吸をする。

 鼻から深く吸って、口から肺を空にするつもりで吐き出し、いくらか気分が凪いだ感覚を得ると、右手を左肩に向かってそっと伸ばし、そこにある綾の左手に触れる。

「僕だってさ、正直に言えば、お前さんたちの気持ちに応えたい……違うな。二人を求めたい」

「…………」

 左手を包み込む様に握りながらの赤裸々な告白――あるいは白状――に、綾も法子も沈黙を返す。

 それを把握しつつ、光秋はさらに続ける。

「こうしてるとさ、温かいんだよ。できれば、ずっと浸ってたい…………でもなっ」

語調を強めると共に、右手に力が込もる。

「でも、今はダメだ」

「どうして……?」

 問いつつ、法子が顔を寄せてくる。

「今は、まだどっちつかずだから……法子さんと綾、本当に求めてるのはどっちなのか、自分でも判断がつかないから……こんな宙ぶらりんな気持ちでやっても、後で絶対後悔すると思うからっ!……」

 最後は半ば叫ぶ様に告げると同時に、右手を握り締める。

 と、

「痛たたたたたっ!」

「!……すみません……」

左手を絞められて悲鳴を上げる法子に我に返るや、光秋は慌てて右手を離す。

「……大丈夫ですか?」

「手を潰されるかと思ったよ」

「すみません…………」

 背中から返ってきた若干険のある法子の返答に、光秋は気まずさと恐ろしさに身を竦ませる。

「…………」

「…………」

 しばらくの間沈黙が続き、その静かな威圧感に耐えかねた光秋は、恐る恐る背後を見やる。

「……とまぁ……そういう理由から、今回は“そういうこと”は避けたいんですが……」

戦々恐々と言いながら、暗い上にメガネを外していてよく見えない伊部姉妹の顔を窺う。

 と、

「!?」

肩から腕を回し、腰脇に左脚を絡め、横から見れば背中に抱き着く様な体勢をとった法子に、光秋は心臓を跳ね上げる。

「あの、法子さん……!?」

「…………光秋くんって、やっぱ不器用だねぇ。女の子がここまで誘ってるならいっそのことって……思わないのが光秋くんか」

 動揺する光秋に構う様子もなく、法子は諦めた様に、それでいてどこか誇らしそうに呟く。

「……バカ……」

「……謝らないよ。それが正しいって思ったことだから」

 小さく呟いた綾に応じる傍ら、光秋は回された手をそれぞれ包み、今度は力加減に注意しつつ握る。

「その代わり…………今夜はこのままでいて欲しい。お前さんが言う通り、明日になればしばらく会えないから。少しでも、一緒に……」

「うん」

 胸の内にあったことを言い切り、綾がそれに応じてくれるのを聞くと、ベッドに入って以降多少の差はあれど興奮していた光秋の気持ちが急速に醒めていく。

 それは徐々に眠気へと変化し、自分でも無意識に伊部姉妹の方へ体を寄せていく。

―温かい……それに…………―

 背中に感じる伊部姉妹の体温と、鼻をくすぐる石鹸混じりの体臭、いつもなら興奮を引き起こすそうした刺激が、今宵は体中を弛緩させ、精神をより一層眠りに誘っている様に感じる。

―あぁ、そうか…………二人がいてくれるから、安心してるんだ…………―

 自身の現状を頭の隅でそう理解したのを最後に、光秋の意識は一気に落ちていく。

「私、会いに行くよ。仕事の都合つけて、必ず……あたしも。その時は、東京案内してよ」

「あぁ……そりゃ……いい、な…………」

 左耳の間近で告げられた法子と綾のある種の決意表明に、朦朧としかけた頭で返しを紡ぐと、光秋はいよいよ眠りの中へ落ちていった。

 

 意識がゆっくりと浮上していくにつれて、鼻孔の中を安堵を抱かせる匂いが過ぎていくのに気付く。

 少し遅れてすぐ近くで鳴り続ける一定のリズムを持った微音を聞いた光秋は、まだ重い瞼をゆっくりと開けてみる。

―あぁ……綾…………法子さんか…………―

 いきなり視界、それももう少し動けば鼻の先が触れ合う程の至近距離に飛び込んできた伊部姉妹の寝顔に、しかし光秋は動じることなく、

―寝てる間に寝返りうっちゃったかな……―

などと、いつの間にか左半身を下にして寝ている我が身の状態を推測しながら、目の前の温もりを求めて両手を姉妹の腰に回す。

―……温かぁい…………―

未だ覚め切っていない頭で呟きながら、光秋は姉妹が発する体温を堪能する。

 しかしそれも束の間、枕元の携帯電話が午前6時を告げるアラームを響かせ、一行に起床を促す。

―……もう……少し…………いや、今日はもう起きないと―

 アラームを止めて再び眠りにつこうとするものの、自身と伊部姉妹――主に法子――の今日これからを思い出し、光秋は上体をゆっくりと起こす。

 それに気付いてか、先程のアラーム音の所為か、法子も目を擦って起きてくる。

「おはよう……」

「おはようございます……」

 互いに欠伸混じりに挨拶を交わし、今尚暗い冬の早朝の寒さに震えて否応なしに完全に目を覚ますと、法子、光秋の順にベッドを降りて活動を開始する。

 エアコンとコタツの電源を入れて椅子の上に置いてある服を持つと、光秋は廊下に移動してカーテンを閉め、そこで着替える。

―それにしても……さっきは我ながら大胆なことしたなぁ。昨日寝る前のあたふたも考えればなおのこと…………やっぱり、寂しかったのかな?―

着替えの傍ら、まどろんでいた時の自分の行動を感心とも夢現(ゆめうつつ)ともつかない思いで顧みながら、その奥にある自身の本心を自覚する。

 着替えを終え、少し待って法子も居間で制服のワイシャツとズボンに着替え、ゴムで髪を結ったのを確認すると、冷蔵庫から昨日買った菓子パンを出し、余っていたチョコレート菓子も含めた簡素な朝食を摂る。

 食べ終え、細かな身嗜みを整える頃には、時刻は午前7時半を回る。

「…………それじゃあ、行くね」

「はい…………気を付けて」

 腕時計を見ながら絞り出した様な小さな声で告げる法子に、光秋は言わずもがなとわかっていながら言わずにはおけない一言を添えて応じる。

 コタツを出て上着とコートを羽織り、左肩にカバンを提げると、法子は重いゆっくりとした足取りで玄関へ向かい、光秋もそれに続く。

「そういえば、靴は?」

「大丈夫。ロッカーに予備入れてるから、今日はそれ使う」

 光秋の今更ながらの心配に返しながら、法子は履いてきた普段の靴を履き、廊下側へ振り返る。

「昨日も言ったと思うけど……私、会いにいくよ。光秋くんが向こうにいる間も……あたしも、必ず」

 法子と綾、二人分の固い決意に、光秋は深い頷きで応じる。

「僕も、都合がついたらこっちに……と言いたいところだけど、向こうで何があるかまるで予想がつかないから、軽々しく約束はできないな…………その代わり、また“ここ”に帰ってくる。どんなことがあろうと――例えDDシリーズの大群と戦うことになろうと、入間主任が復帰されるまで務めを果たし切って、必ず」

「……うん」

 静かな、多少の強がりも混ざった、しかし確かな意志を告げる光秋に、二人分の短い、それでいて充分な返答が、深い首肯を伴って返される。

「……じゃあ、あたしたち行くね」

「あ、ちょっと待った」

 言うや光秋は、外に出ようとしていた綾――というよりも伊部姉妹――の許に身を寄せ、肩を掴むや額に唇を付ける。

「え……?」

「この間のお返し」

 突然のことに戸惑う姉妹に、唇を離すと光秋はイタズラが成功した様な達成感に笑みを浮かべながら告げる。

「さぁ、行ってらっしゃい!」

「!それはこっちの台詞!行ってらっしゃい!」

 放っておけば永遠に続きそうな沈黙が漂いそうになる中、光秋は意識して快活な調子で振り返らせた姉妹の背中を押し、それに対抗する様に姉妹もハツラツと返すと、光秋の押した力を追い風にする様に路地へと向かっていく。

 伊部姉妹が寮の敷地から出て姿が見えなくなると、光秋はノブを引いてドアを閉める。

「…………さて、最後の片付けしよう!」

 数瞬前までとは打って変わって静まり返った室内、その寂しさ漂う雰囲気に押されそうな気持ちを奮い立たせるために敢えて気合いを入れると、光秋はコタツ布団や浴室用具など、最後までどうしても手が付けられなかった物を片付けていく。

 それからいくらもせずに引っ越し業者のトラックがやって来ると、光秋はコートを羽織り、必要最低限の荷物を収めたカバンを持って部屋を出、作業服の上からでも屈強な体付きが判る男性3人がペキパキと段ボール箱の山や机などの重い家具を荷台に積み込んでいく様子を眺める。

―念力は使ってないみたいだな……みんなノーマルか?―

 そんな素朴な疑問を抱いている間に積み込み作業は終わり、一足先に東京へ向けて走り出したトラックを見送ると、光秋は再度部屋に上がる。

「……この部屋、こんなに広かったっけ……?」

 すっかり空になった六畳間を眺めながら呟くと、忘れ物がないか今一度確認する。

 その間に電気・ガス諸々のチェックに来た職員を何度か迎え、それら引き継ぎ作業が一通り終わると、あとは我が身だけになったことを実感し、カバンの中身、特に電車の切符を確認し、チャックを閉じたそれを右肩に斜め掛けする。

―行った先で何があるか……少なくとも大変な目には遭うんだろうが……それでも、法子さんと綾と約束したからな―「何があろうと、また“ここ”に帰ってくるさっ!」

 誰もいない部屋で、他ならぬ自分自身に宣言すると、光秋は部屋を出て東京への一歩を踏み出す。




 今回で「転属編」は終了です。
 次回からも引き続きよろしくお願い致します!

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