白い犬   作:一条 秋

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 今回からアノ白いメカが本格的に動き出します。といっても、動作確認程度であまり派手に動き回りませんが。
 では、どうぞ!


2 初陣

 どれくらい寝ただろうか。深い眠りから、徐々に光秋の意識が覚醒して来る。

―…………すごい夢だったなぁ……バスに乗ってたら異世界に飛ばされて、神様みたいのにロボット託されて、落ちたと思ったら兵隊に連れていかれて、牢屋に…………入れられて…………夢なのに内容が細かく思い出せる?……まさか……―

目を開けると、目の前には夢で見たキノコ型の機器がある。

「!」

急いで起きてメガネを掛け、周りを見回すと、夢の最後の場面である監獄にいる。

「……夢じゃなかった…………」

 光秋はベッドから足を下ろして靴を履き、そのまま立って大きく深呼吸をし、背伸びをすると、その足で水盤に向かい、顔を洗って口を漱ぎ、目を完全に覚まそうとする。

「……どれくらい寝てた?」

ハンカチがないので上着で顔を拭いてから時計を探そうとするが、

「……そうだ、盗られたのも夢じゃなかった」

理解すると、手探りで髪型を整え、腰に両手を当て、長考に入る。

―さて、これからどうするか…………―

 と、突然蛍光灯が数回点滅し、部屋が微振する。

―!?……地震か?―

と、今度はウーン、ウーンとけたたましいサイレンが鳴り響く。

「!?何だ?」

 この事態に、光秋は急いで扉に駆け寄り、

―誰かいてくれ―

と、祈る思いで扉をガン、ガンと力一杯叩きながら、

「何です!何があったんです!」

と、声の限りに叫ぶ。

 何回かそれを繰り返していると、

「!?」

不意に扉が開き、こけそうになりながらもなんとかバランスを戻して上を見ると、今朝の女性兵士が立っている。防具類こそ外しているが、今朝同様の緑服を着、右肩に自動小銃を提げている。

「何が――」

「説明は後!速くついて来て!」

女性兵士は遮る様にそれだけ言うと、光秋が連れて来られた時に乗ったエレベーターに駆け寄る。

「『ついて来い』って……」

「いいから!死にたくなかったら早く来なさい!」

「!……」

 「死にたくなかったら」という言葉に悪寒を覚えた光秋は、言われた通りエレベーターに駆け寄り、直後に開いた扉に女性兵士を追う様に入る。兵士が1階のボタンを押すとすぐに扉は閉まるが、今度もすぐには動き出さない。

 と、女性兵士が左手の手袋を脱ぎ、大男と同じ身分証の様なカードを取り出し、監獄の扉の時と同じことをボタン列の下の端末に行うと、やっとエレベーターが動き出す。

―あの大男もこれを?……そうか!囚人を入れる所だから、出入りが厳重なんだ!―

今更ながら、光秋はそんなことに納得する。

 そして、

「何があったんです?」

改めて、今一番の疑問を女性兵士に問う。

「襲撃!攻撃からしておそらくNP!超能力者の支援機関であるESO(エソ)を目の敵にしている連中!」

「…………?」

早口に説明されても、光秋には何のことか余計に解からなくなる。

「……どうやら、もっと根本的なことから説明する必要があるみたいね」

女性兵士が同情的な目を向けてそう言う。

 直後、目的階に着いたエレベーターの扉が開くと、蛍光灯が多数落ちた薄暗い中から響く銃撃音や爆音、怒声や悲鳴が光秋の耳を、何処からか漂って来る火薬や埃、何かが焦げる臭いが鼻を突く。

「急いで!」

「!」

急かしながら駆け出る女性兵士を追って光秋もエレベーターを出て、右に曲がって駆ける。

 どれくらい走ったか、突き当りをまた右折すると、裏口らしきドアが現れる。上半分がガラス張りのそれを、女性兵士が少し開け、外の様子を窺うと、今度は一杯に開け切り、外に駆け出す。光秋もそれに続く。

 ドアから正面に位置する半円屋根の大きく口を開けた建物に向かって走り、着いた光秋は、そこに何枚もの幌で完全に覆われ、多数のワイヤーで固定された巨大な何かを積んだ大型トレーラーを目にする。

「?……」

「ここにいれば、たぶん大丈夫。三佐たちも頑張ってくれてるだろうし……搬入が終わったと思ったらこれなんだから!」

女性兵士のその言葉に、光秋はハッとする。

「!……じゃあこれ……」

「そう。今朝あなたを拘束した場所に埋まってた、あのロボット」

「……」

女性兵士がそう言うと、光秋は幌の塊を凝視する。

「大変だったみたいよ。場所が場所だし、どういうわけかサイコキネシスやテレポートが効かないから、掘り出すのも一苦労だったみたいだし。本部所属のレベル(ナイン)まで来たっていうのに……」

「……その……さっきから言ってるその超能――!」

そこでこれまでで最も大きな爆音が起こり、光秋の後の言葉をかき消す。

 女性兵士と同時に急いで音のした方向に目をやると、

「戦車だ!戦車が出た!」

「奴らあんな物まで!」

「ぐずぐずせんと!こっちも重火器で応戦しろ!」

数人の職員たちの悲鳴や怒声から、光秋はそのような内容を聞き取る。

「戦車って!……」

女性兵士の顔にも、僅かながら恐怖の表情が浮かぶ。

―戦争?……テロ?……―

光秋はなんとか状況を理解しようとするが、ここからでは音や閃光くらいしか感知できない。

―じれったいなぁ!―

 そう思っている間にも、役所の違う裏口から数人、女性兵士とは違う服装―白衣や背広、中には私服を着た者たちが出て来る。光秋たちとは違う避難場所に行こうとしているのであろう彼らの何人かは、脚を引きずり、肩を担がれ、中には薄暗く遠目でも判るほどの血を流している者たちである。

―……どんな理由か知らないが、こんなことをしていい理屈にはならない!―

傷ついた人々の光景が、光秋にそんな思いを抱かせる。

 が、

―でも、僕にはどうすることも…………!―

そこで光秋は、昨夜の神モドキの言葉を思い出す。

―『これは、お前だけの“力”だ』……そうだ!今僕には“力”があるんだ!―

そう思うと、光秋は顔を幌の塊に向け、先程よりも強く凝視する。

―……どれ程のものか知らないが、ここで負けるんじゃ、持つ意味がない!―

そう断じ、すぐに荷台に上がって一番出っ張っている部分の幌を引き下ろすと、開けっ放しのコクピットと特徴的な頭部が現れる。

「……!何をする気!?」

女性兵士の制す様な声が飛ぶ。

「何って、コイツで出るんですよ!」

「無茶言わないで!まだ何も解かってないモノを使うなんて!」

―……一理ある―

女性兵士の言葉にそう思いながらも、火照り出した光秋の頭には大した効き目はない。

「……これは、僕の“力”なんです」

「え?」

「僕だけに与えられた、“()”なんです!」

 そう言うと、後は聞く耳持たんと言わんばかりにシートに取り付く。

 光秋が横向きになっているシートになんとか腰掛けると、横に退けてあるパネルが自動で正面に移動し、中央のパネルの上部から赤い光が照射される。同時に頭部のバンドからもピッという電子音が鳴り、中央パネルに目をやると、上から「脳波」「指紋」「網膜」と表示され、その左隣に「脳波」には○、「指紋」と「網膜」にはそれぞれ×が表示される。

「?……」

画面下部に目をやると、「メガネを外してください」と「手を操縦桿に置いてください」と表示されている。

「あ、あぁ!」

光秋が指示通りメガネを額に上げ、操縦桿に手を置くと、再び赤い光が照射され、精査が済んだ後にパネルを見ると、それぞれ×が○に変わっている。と、今度は座席が自動で降下し、ハッチも独りでに閉まる。

「信じられない!何をやってもうんともすんともいわなかったのに!」

女性兵士の驚愕の声を聞いたのも束の間、ハッチが閉まり切り、真っ暗になったかと思うと、上部から青い輪状の光が降りて来て光秋の体を精査し、パネルに「○ 静脈」の表示が加わる。

 すると画面に大きく「確認終了」の文字が浮かび、周囲のモニターの点灯と同時にパネルも機体の概要図が中心に描かれた状態表示に変わる。左右のパネルにも様々な表示が現れる。その一つに「シートベルトを締めてください」というのがあったので、急いで締める。締めると同時に、その表示は消える。

「さって、この後どうするか?」

大口をたたいて乗ったはいいが、操縦法など全く知らないことを今になって思い出す。

 光秋は周囲を見回しながら、

「マニュアルか何かないのか?」

と呟くと、その言葉に答える様に左側からカチャッという音がする。

「?……」

音のした辺りに目をやると、左肘掛正面のパネルの脚のレールの下が迫り出しているのを見つける。

「?……」

試しに引っ張り出してみると、それは白い手帳型の端末である。縦15センチ弱、横10センチ弱の大きさで、開いてみると左右二画面に多数の項目らしきものが表示されている。

「これか?」

光秋はそれを機体のマニュアルと判断し、「基本操縦」の項目を試しに押してみる。と、画面がそれに属する事項に切り替わる。

「よし!まずはコイツを立たせなきゃならないんだが……えぇい!合いそうな所がない!」

仕方なく前のページに戻って、今度は「特殊操作」の項目を開くと、その中に「脳波によるコントロール」という事項を見つけ、試しにそれを開いてみる。

『本機はマニュアルだけでなく、脳波(イメージ)で操作することも可能です。行いたい動作を強くイメージすることで、機体もそれに合わせた動作を行います』

「これだ!」

光秋は説明に従って、機体が起き上がる様子を想像する。と、途端に体中に針金が食い込む様な、痛み程ではないが違和感を覚える。

「!?……何だ?」

慌ててマニュアルの続きを読む。

『本操作を行う際は、効率的な操作のために機体が置かれている周囲の環境がパイロットに適刺激となって伝わる場合があります』

「そういうことか!」―固定してるワイヤー―

違和感の正体が解っても機体を立たせるにはこの方法しかないため、光秋は違和感を堪えながら続行する。

 徐々に上体が起き上がり、ついに腰から上が直立すると、上体を覆っていた数枚の幌が舞い落ち、負荷に耐えかねたワイヤーが切れて四方に弾け飛ぶ。

(きゃ!)

「!」

機体越しに女性兵士の悲鳴を聞いた光秋は、反射的に彼女がいる左下を見る。当たってこそいないようだが、鋭く切れたワイヤーの何本かが体のスレスレを掠めたようである。

―脚の方でもう一度あるだろうし、何より、こんな所に1人にしておけないよな……コイツの頑丈さなら、一緒に行っても大丈夫だろう―

そう思った光秋は、イメージ操作で自由になった機体の左手を女性兵士の方へ差し出す。

(?……)

戸惑う彼女に、光秋は左肘掛のボタンとレバーを操作して機外に出、座席上から、

「乗ってください!」

と、大きい声で言う。

「……でも」

「こんな所に1人にしておけません!早く!」

「……」

光秋がそう言うと、女性兵士は恐る恐る機体の掌に乗る。光秋は彼女が完全に乗ったのを確認すると、腕を上げて掌をハッチの上に置く。腕の動きが止まると、女性兵士は素早くコクピットへ移動する。

 と、その際光秋の背後で爆光が輝き、束の間暗中に彼女の薄めの褐色の肌と大きめの目をした整った顔立ち、後ろで1本に束ねた真っ直ぐな長い黒髪を浮き上がらせる。

―……綺麗な人だ……―

その束の間に、光秋は彼女にそんな思いを抱く。今まで詳しく顔を見なかったことと、なにより先程の機体に乗り込むまでのやり取りが彼女に対する警戒心を薄め、ある種の安心感を生んだのだろう。

 女性兵士がコクピットに移って座席の右側に収まると、光秋はすぐに座席を機内へ降下させる。

「……」

「?」

女性兵士が何か言った気がしたが、光秋にはよく聞き取れない。

「すみません、左側で喋ってください。右は聞こえないんです」

そう言われて、女性兵士は左側へ移動する。

「どうするの?」

「とりあえず、コイツを完全に立たせます!」

 そう言うと、光秋は再び機体が立ち上がる様子をイメージする。機体の脚が動き出し、徐々に起き上がる。ついに固定していたワイヤーが切れ、下体を覆っていた幌も落ちて両脚も自由になると、その勢いで上に向かって一気に立ち上がる。一点に重量の掛かった荷台を踏み潰しながらも天井を貫き、コクピット下部まで出て立ち上がり切ると、人が目を覚ます様に頭部のレンズに緑色の光が灯る。同時に機体の節々を覆うカバーの隙間から血の様な赤色をした燐光が漏れたかと思うと、すぐにかき消える。

「すみません倉庫。あと、トラック……」

「気にしなくていい。どの道、本舎の方がかなりボロボロだろうし、今更……」

「そう?じゃあ!」

 光秋は倉庫がさらに壊れるのも顧みず、今度は機体を前進させる。が、

「……うっ!……」

3歩程歩いた辺りで全身を強い疲労感が襲い、特に頭には筋肉痛の様な鈍い痛みが走る。

「何だ……これは?……」

急いでマニュアルに目を走らせる。

『本操作を長時間行う際、初期の間は身体、特に脳に過負担が掛かる場合があります。使用するに連れ軽減されていきますが、始めのうちは通常操縦の補助としての使用をお勧めします』

「……そういうことか」

 再び光秋は「基本操縦」の項を開き、「移動」の欄に目を通す。

「……『左右いずれか、もしくは両方の操縦桿を前に倒すことで前進』」

読み上げながら、右の操縦桿を軽く倒してみる。すると機体はゆっくりと前進を再開し、天井を壊しながらもついに機体全体が倉庫から出る。

「『操縦桿を倒した方に方向転換』」

右に倒すと、同時に機体も右に曲がり、進行方向を役所風の建物へ向ける。3歩程歩いて止まると、

「『左右いずれか、もしくは両方のペダルを踏むことで』……『浮上』!?」―飛ぶのか?コレ―

これには半信半疑ながらも、試しに右のペダルを軽く踏んでみる。と、機体背部の円形部分の溝が白く光り出し、機体の両足が地面を離れ、ゆっくりと上昇を始める。

「……すごい!」

女性兵士が驚きの声を漏らす間にも、機体は上昇を続け、ついに役所の屋上にまで達する。

 そこから光秋は、役所の正面、駐車場側に瞬く銃撃の閃光、所々に上がる火柱や黒煙を認めると、素早くマニュアルに目を走らせる。

「『浮遊時の移動法は歩行の時と同様』か……」

理解すると、

「ちょっと持っててください」

と、マニュアルを畳んで女性兵士の方に差し出す。

 光秋は両手で操縦桿をしっかり握り、両足をペダルの上に置く。同時に顔が引き締まり、目付きも鋭くなる。

―…………行くよ!―

心中に言うと両操縦桿を深く倒し、一気に機体を前進させる。イメージの補助も加わって正面のコンクリート地に直進し、地面に激突する寸前で体勢を立て直し、両足で地面を数メートル抉って着地する。その前後、着地場所にいた人影は慌てて左右に回避し、そもそも戦闘そのものが数秒間止む。

 光秋が下に目を向けると、戦火の明かりと、おそらくは映像に補正がかかっているのだろう、正門側に陣取る多数の人々と、門側に横一列に並んだ戦車3台がよく見える。

 その集団はいずれも黒いスーツに黒いネクタイを締め、目の周りが完全に隠れるほどのサングラスを掛けた無個性な格好をしている。いずれも銃を持っているようだが、こちらは拳銃や小銃と、服装に比べると多様である。

 光秋が今度は戦車に注目すると、機体がそれに反応してか、3台それぞれに赤い丸のマーカーを付け、光秋の視界左側にその戦車の詳細が書かれた写真付きの情報が表示される。それによって光秋は、相手が90(きゅうまる)式戦車という最新の部類に入る戦車であることを知る。表示では暗い迷彩色であるが、目の前のは灰色一色に塗られている。全体的に角張った車体が印象的である。

―こいつ等らか!―

 光秋の目の前の事態に対する怒りを引き映す様に、2つのレンズが強い光を放つ。

(何だ……コイツ!?)

(ESOの新兵器!?)

集団のそんな恐怖を含んだ声が聞こえたかと思うと、

(バカを言うな!こんなオモチャ、所詮コケオドシだ!)

別の者がそう反論すると、正面から小銃が放たれ、多数の銃弾がコクピット周辺を叩く。

「!」

息つく間もなく、直後に大勢による集中砲火が加えられる。

 光秋は反射的に機体の両腕を前に出し、受け身の姿勢を取る。腕が頭部のレンズも隠したために視界が塞がれ、弾が機体を叩くカンカンという音だけが響く。それに混ざって聞こえるバン、バンという爆音は、ロケット弾であろう。

「…………」

 しばらくして不意にそれらの音が止むと、

(……馬鹿な!)

と、驚愕の声が聞こえ、光秋は腕を退かしてみる。自動で開いたいくつかの表示に集団の何人かの顔の拡大映像が映ると、目元こそサングラスで判らないが、その表情はいずれも驚愕の色に染まっている。

「?……」

光秋は中央パネルに目をやると、

「……!」

あれだけの攻撃を食らったにもかかわらず、警告1つ出していない状態表示を見、自身も驚愕する。

 が、

(えぇい、戦車だ!戦車砲で攻撃しろ!)

集団の誰かがそう叫ぶと、3台ある内の中央車の砲塔が持ち上がり、次の瞬間、爆音と共に砲弾が発射される。

「!」

再び両腕を前に出した直後、着弾し、腕越しにも強い爆光がモニターを埋める。が、振動の方は予想に反して非常に微弱であり、気を張っていてやっと感じる程度である。

 腕を退かし、爆発の後に生じた黒煙が晴れると、再び集団たちの驚愕の顔が映し出される。

(……馬鹿な!…………)

「……」

光秋も再びパネルに目をやるが、今度も異常なしである。

「……すごい!……」

女性兵士も驚愕の声を漏らす傍ら、光秋は小さく、

「行ける!」

と呟き、反撃を開始する。

 「!」

右操縦桿を一杯に倒して素早く中央の戦車に近づくと、その砲塔を右手で力一杯殴りつけ、半分程叩き折ってしまう。

 その間に左右に移動して距離を取った2台から立て続けに砲撃が行われるが、光秋は再び両腕を構えてこれを受け流す。左右とも砲撃が止むと、光秋は機体を左の戦車に歩いて近づかせる。すると戦車から3人、こちらは薄布のラフな格好をした者たちが慌てて抜け出し、逃げる様に機体と戦車から離れる。

「……」

光秋は逃げた者には目もくれず、右手で砲塔を掴むと、そのまま機体の全長程の大きさの戦車を持ち上げてしまう。50トンもの戦車を、片手で軽々と持ってしまったのである。

「こんなモノォォォ!」

叫ぶと同時に状況への怒りをぶつける様に戦車を地面に叩きつけ、車体部分を粉々にしてしまう。

―あと1台!―

と思って最後の戦車の方を振り向くと、その砲塔のハッチが開き、中からこれもラフな格好をした者が出て来たかと思うと、その者は両手を大きく挙げる。

「?」

「降伏?」

女性兵士がそう言った直後、周囲の黒服たちも銃を捨て、手を高く挙げる。いずれもその顔には、恐怖と悔しさがない混ぜになった様な表情を浮かべている。

「終わった……のか?……」

そう思うと、光秋の怒りや興奮は徐々に冷め、元来の落ち着きを取り戻していく。




 本作初の戦闘シーンがありましたが、いかがだったでしょうか。タイトル通り初陣ということもあって動きが少なかったと思いますが。
 これから戦闘シーンも増えていくので、今後にご期待ください。
 では、また次回。

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