IS~白き隻眼~   作:鈴ー風

8 / 14
ようやく投稿、最新話!!
何か最近、人の小説が面白い。面白すぎて、読むのに夢中で執筆が滞るレベル。

ではでは、第三話をどうぞ!


第三話 すれ違う心(クロッシング・ハート)

 凰鈴音。

 嘗て、俺の力不足によって互いに傷を残したまま離れ離れになってしまった、大切な幼馴染。それが今、目の前にいる。

 頭が状況に追いついてこない。何で鈴がここにいるのかとか、思うとこはいろいろある。

 

 けど、今はそんなのはどうでもいい。

 

「鈴……!」

 

 ずっと会いたかった幼馴染が、大切な人が、鈴が目の前にいる。その事実の他には、何も要らなかった。

 

「鈴…俺…俺……っ!」

 

 俺は鈴の方へ歩き出す。俺、お前に伝えたいことが、言いたいことがいっぱいあるんだ。あの日のこと、お前がいなくなった後のこと。俺、あれから強くなったんだぜ?あの時の俺とは違うんだ。だから、だからーーーーー!!

 

「い、嫌……っ!」

 

 

 ーーーーーえ?

 

 

 再会の嬉しさで鈴に近づく俺の耳に聞こえてきたのは、鈴からの…俺とは逆に後ずさる鈴からの、明らかな「拒絶」だった。まさか、拒絶されるなんて露程も思っていなかった俺は、思考が一瞬停止する。

 

「鈴……」

「…っ!」

 

 

 俺から後ずさり、体を抱えるようにして震えていた鈴は、次の瞬間、俺とは逆方向へと駆け出した。

 

「鈴!?」

 

 突然の出来事に止まっていた思考が戻り、同時に弾かれるように鈴を追いかけていた。

 

「織斑君!?」

「一夏!?」

 

 後ろで箒達が何か言っている。周りの女子達も騒ぎ出したが、そんなのはどうでもいい。

 何故、何で鈴は俺から逃げるんだ?なあ、鈴。俺、お前に謝りたいんだよ。あの日のこと、ちゃんと…ちゃんと謝りたいんだ。

 だから、逃げんなよ…逃げないでくれよ……俺の話を聞いてくれ!

 

「鈴っ!!」

「……!」

 

 俺が名前を呼ぶと、鈴は更にスピードを上げる。くそっ…昔っから足が早かったけど、余計早くなってやがる。俺と鈴の差はどんどん開くばっかりだ。

 

「待てよ…鈴、ぐぁっ!?」

 

 何とか鈴に食らいつこうと、スピードを上げた矢先に、俺の視界が大きくぶれた。何てことはない、ただつまづいてこけただけだ。顔から倒れたせいで、思いっきり顔を床で擦った。

 

「痛ぇ……」

 

 鈍い痛みが顔に走る。顔を上げると……そこにはもう、鈴の姿は無くなっていた。

 

(…前にもあったな、こんなこと)

 

 確か、鈴がいじめられてんのがバレて、逃げ出した鈴を追いかけてた時だっけ。

 あの時といい、今といい……

 

「っくそ!」

 

 右手を床に叩きつける。どうして俺は、いつもいつも肝心な時に……っ!

 

「はぁはぁ……お、織斑君!」

「はぁ、はぁ……一夏!」

 

 後ろから箒と遥の声が聞こえる。どうやら、俺を追ってきたようだ。

 

「一体何があったのだ、いちーーーーーーーっ!?」

 

 振り返った俺を見た箒の言葉が止まる。遥も、俺の顔を見て驚きを露にしている。何だよ、俺の顔に何か……

 

「お、織斑君……その顔…」

 

 顔?ふと、俺は右目に触れる。擦りむいた時に出たのか、うっすらと血が滲む。が、それより、本来そこにあるべきものが…眼帯が無かった。

 つまり今、俺の傷だらけの右目(・・・・・・・)が露見している、ということだ。

 

「…そういや、遥にも見せたこと無かったな。眼帯の下」

 

 眼帯が外れ、露見した俺の右目。俺の無力が招いた傷は、おぞましいものだった。眼球に大きな損傷はないが、全体が赤く変色していて、目の周りの皮膚も焼けただれたような色に変わっている。そりゃ、いきなりそんなもん見せつけられたんだ。驚いて当然だよな。

 

「おい、こっちから大きな音が聞こえたが……っ!一夏、お前…」

「お、織斑君っ!?目が、出血が!だ、大丈夫ですか!?」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、近くを通りがかったらしいちふ…織斑先生と山田先生が来た。眼帯の外れた俺の顔を見て、織斑先生も山田先生も動揺している。ってか、山田先生、動揺し過ぎです。ハンカチで血を拭ってくれるのはありがたいんですが、痛い、手が傷に当たって痛い!

 

「…山田先生、落ち着いてください」

 

 千冬姉…織斑先生は静かに山田先生を諭し、眼帯を拾って俺に手渡した。

 

「ありがとうございます、織斑先生」

「…こんな時位は名前で構わん」

 

 少し不機嫌になる千冬姉。余計な心配かけちまったな。俺は手渡された眼帯を右目に当てる。…うん、少し落着いてきた。

 

「だ、大丈夫ですか?織斑君」

「ええ、山田先生。それより、すいません。訪ねるのが遅れてしまって」

 

 もう、大丈夫だ。いつまでも考えてたってしょうがない。それより、せっかく山田先生がいるんだから、要件を聞いとこう。

 

「あ、いいんですよ、そんな。先生も、職員室にいませんでしたし」

 

 両手をバタバタとふる山田先生。やっぱりしぐさが子供っぽいなぁ。

 

「…織斑君、先生に対して子供っぽいはないんじゃない?」

 

 ぼそっと、遥が俺にそんなことを言ってくる。だから…何で分かる。山田先生はそんな俺達を訝しげに眺めて…いや、あの顔は分かってない顔だ。頭上に「?」が見える。

 

「…織斑、お前の部屋は1025室だ。丁度、そこにいる篠ノ之と同じ部屋になる」

 

 山田先生に代わり、千冬姉が答える。へえ、そっか。箒と同じ部屋…って、ちょっと待て!

 

「ち、千冬姉!?箒と同じ部屋って…それに、俺は一週間位は家から通うことになるはずじゃ……」

「そ、その予定だったんですが、世界で唯一の特異点を機関の人間が放っておくとも思えないので、織斑君の安全の観点から無理矢理部屋の調整をつけたんです」

 

 今度は「?」から復活した山田先生が簡単に説明してくれた。いやでも、男女が一緒の部屋ってのは…それでいいのか、高校教師。それでいいのか、IS学園。

 

「でも、箒の気持ちだって……」

 

 そう。仮に俺は良いとしても、同室になる箒の気持ちもある。本来、こういう状況に真っ先に反発するのが俺の知っている箒という人間だ。今回だって……

 

「お前の方はどうだ?篠ノ之」

 

 ほら箒、きっぱりと断ってやれ。お前だって、男と同室なんて嫌だろ?俺も家から通えばーーーーー

 

「…男女七歳にして同衾(どうきん)せず。本来なら、こんな状況は認められません。…ですが、学園が決めたことならば致し方ありません」

 

 あれー、おかしいぞ?箒が反発しない。どうした箒!?俺の知る古風な幼馴染は何処へ!?

 

「…それに、今は一夏に聞きたいこともあります。同じ部屋だというのであれば、都合がいい」

 

 …あ……

 

「…だ、そうだ織斑。これでもまだ、お前は駄々をこねる気か?」

「…いや。分かったよ、千冬姉」

「織斑先生、だ。血の後始末や諸々はこちらでやっておく。お前らはさっさと部屋に行け。また女子達に見つかっても面倒だしな。…山田先生、血の後始末をお願いします」

「は、はいっ!」

 

 教師スイッチが入った千冬姉は、ぶっきらぼうに要点だけ伝えると、俺達が来た方へ歩いていった。多分、まだ教室辺りにいる女子達を解散させに行ったんだと思う。

 …本当に迷惑かけっぱなしだな、俺。今度、マッサージ位するか。

 

「ほら、織斑君。せっかく織斑先生が気を遣ってくれてるんだから、早く部屋に行きなよ。…箒とのこともあるんでしょ?」

 

 遥もそう言ってくる。…全く、敵わないな。

 

「…分かった、素直に受け取っとくよ。ありがとう、遥」

「いえいえ」

「山田先生も、ありがとうございます」

「いいんですよ、これも教師の仕事です」

 

 そう言って無邪気な笑顔を向けてくる山田先生。ああ…いい人だ。子供っぽいなんて思ってすいません。

 さて、と。

 

「行こう、箒。そこで全部話すよ。この目のこと、事件のこと、それに…あいつ、鈴のことも」

 

 そう言って、俺は鈴のとっくにいなくなった廊下を、一人見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 私は全力疾走の反動で息を切らしながら、自分の部屋へ駆け込んだ。

 一夏が、大好きな一夏がいた。

 

 一夏がIS学園に来ること自体は、ニュースで知っていた。もう二度と会えないと思っていた彼が元気なんだと知ったとき、嬉しくなった。それこそ、か画面を見て泣いてしまうほどに。

 …同時に、怖くなった。彼に会うことが。彼と話すことが。彼に関わること全てが。

 

 

 事件のあったあの後、私にとある報せが届いた。祖国である中国の政府から伝えられたのは、私の「IS適性」と「国家代表候補生」の誘いだった。

 ISが世界に認められるようになり、ISを所有することは、いわば国のステータスになった。だからどの国も、そのISを扱い、国の力の象徴として押し出す代表候補生の発掘、育成に力を入れている。私は、その一環で実施された検査で「適性A」という、ISに対して高い適性を示したらしい。そうして、私に白羽の矢がたったというわけだ。

 正直、ISにも代表候補生にも興味は無かった。だけど、私はその誘いを受けた。この状況を利用したんだ。

 代表候補生になる以上、国に戻り、ISについての専門教育を受けなければならない。…つまり、中国に帰ることになる。

 

(私は…一夏の傍には、いられない)

 

 私のせいで一夏は大怪我を負った。私が、一夏の世界を奪った。そんな私が一夏の傍にいたらいけない。…いや、いられない。

 だからあの時、私はこの状況を利用した。利用して、一夏から、弱い自分から逃げたんだ。

 

(ごめんね、一夏…)

 

 私は弱い。一夏の優しさに守られるだけの私は、きっとまた、その優しさに甘えて一夏の大切なものを奪ってしまう。

 一夏のことは、好き。大好き。でも、だから…大好きだからこそ、そんなのは嫌だ。一夏が傷つくのも、私が傷つくのも。だから、もう一夏には関わらない。必死に自分の気持ちを押し殺し、そう決めた。

 筈、だったのに…

 

『鈴……!』

 

 さっきの一夏の声が、耳に残って離れない。昔と変わらない懐かしい声と、心の底から再会を喜んでくれていた、あの暖かい笑顔。

 だからこそ、余計に怖い。その心地よさに、暖かさに、またすがろうとする自分がいることに。

 

 今、同室のティナはいない。二つあるベッドのうち、奥側にある私のベッドまで歩いていき、その上に身を放り出した。

 

「一夏は、強いね…」

 

 私のせいで右目の視力を失って、きっとそれでも前向きに頑張って来たんだと思う。一夏はそういう人だから。あまつさえ、その原因を作った私に、ああやって笑いかけてくれる。

 嬉しい。

 けど、苦しい。

 

「私だけ、何も変わってない……」

 

 一夏は前に進んでる。でも、私は…あの日の罪の意識に、ずっと囚われたまま。強くなりたい。けど、なれない。

 私は…一夏みたいに強くなれない。あの日の自分を、私はまだ許せない。

 次第に、顔を埋めた枕が湿っていく。胸が…痛い…

 

「苦しいよ…一夏……」

 

 私の声は、誰にも届かない。私、自身にさえ……




先日、後書きでアニメの予告みたいなのしてみたいな~と思い立ち、実行することにしました。基本は作中のキャラ達に任せます。

の「織斑君、いきなり出ていくからびっくりしたよ~」
鷹「うんうん。それにあの鈴って女の子、もしかして織斑君と何か訳あり?篠ノ之さんとも知り合いみたいだし…」
遥「…それは、いつか織斑君が自分から話すと思うから、それまで待ってあげて。箒とのこともあるし…織斑君…大丈夫かな」

次回、「箒の決意 彗星の想い」

箒「一夏…私は…お前のことが……」

 少女の想いは、彗星のように。















 うーん…難しい。

遥「慣れないことするから」
箒「全くだ」

 まさかの酷評ダブルパンチ!作者のライフはもう0だよ!

 まあ、それはおいといて…次回はタイトル通り、あの人がメインです。そうです、もっp「えいっ」ぐっはぁ!?な、何をするんだ遥君!?

遥「だって、ネタバレだし」


 前回は君がしてたじゃないか、ネタバレ。…まあいいや。

ではまた次回。おあいしましょ~

遥「またね~」
箒「ではな」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。