IS~白き隻眼~   作:鈴ー風

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長かった……長かったよ、ここまで。
パソコン使えないわ、文章に納得できないわで前回の投稿から結構時間が経ってる始末。でも書ききった。やった。

因みに、サブタイはあんま意味を考えてません。とりあえず、今回でIS学園における主要人物達が出揃うので、このサブタイ。

ではでは、第二話始まります。文章が長い上に何か違和感あるかもしれないけどそこはご愛嬌。
どうぞ!


第二話 再会/集結

 

 

「箒…箒じゃないか!」

「一夏、なのか…?」

 

 道に迷った俺の目の前に現れたのは、俺の嘗てのファースト幼馴染、篠ノ之箒(しののの ほうき)だった。

 

「久しぶりだなぁ!元気だったか?すぐ箒だって分かったぞ。髪型、昔と変わらないしな」

 

 俺は自分の髪を指さしながらそう言った。昔っからずっとポニーテールだったしな、箒。

 

「そ、そうか……」

 

 思わぬ再会を喜ぶ俺とは対照的に、箒は何だか浮かない表情だ。まるで、自分の知らない知り合い(・・・・・・・・・・・)と話しているような……

 だが、箒の視線から俺はその理由に気付いた。

 

「一夏…その…その、右目は……」

 

 当たりだ。箒が見ていたのは俺の右目を覆う眼帯。そりゃあ、昔別れた友達が眼帯なんてつけてたら誰だって気になるよな、普通。

 

「一夏…私がいない間に、お前に一体――――」

「箒」

 

 ――何があったんだ。恐らく、そう言おうとしていただろう箒の言葉を、俺は遮った。

 

「…箒、眼帯のことは後で必ず話す。だから…今は、何も聞かないでくれ」

 

 俺の気持ちを汲んでくれたのか、はたまた昔とは違う俺の雰囲気に戸惑ったのか―――――どちらにせよ、箒はそれ以上何も聞いてはこなかった。

 

「…分かった。今は何も聞かん。隠し事など下手なお前のことだ。いつか、話してくれるのだろう?」

 

 箒の表情は、全てを納得したわけではなさそうだったが、ひとまずは引き下がってくれたようだ。

 

「…ああ。すまない、箒」

「ん、んんっ!そ、それはそうと一夏、なぜこんな所にいるのだ?」

 

 しんみりとした空気を変えようと、箒がわざとらしく咳払いをした。

 

「ん、ニュース見てないのか?いろいろ事情があってだな…」

「いや、IS学園に来ることはニュースを見て知っていた。私が聞いているのは、なぜIS学園の専用通路(・・・・)にいるのか、という意味なのだが…」

 

 ん?―――――あ!

 

「そうだよ、どこだここ!?」

 

 そうだ、そうだった!ここは俺たち以外誰もいない無人の廊下。箒との再会ですっかり忘れてたけど、俺迷子中なんだったぁ!

 そんな調子で一人騒ぐ俺を見て、箒は呆れたようにため息をつく。仕方ないだろ、方向音痴なんだから!

 

『そら見たことか』

 

 …なぜか、千冬姉の声が聞こえた気がする。それも、すっごい得意げな顔の。

 

「…まあ、見ての通り絶賛迷子中なので、講堂まで案内してもらえると非常に助かるんだが」

「仕方ない。ついて来い、一夏」

 

 箒はそっけない態度をとりつつも、俺を先導するように先に行く。昔っから変わんねえよな、その不器用だけど優しいとこ。

 

「おい、待ってくれよ箒!」

 

 俺は一連のやり取りに懐かしさを感じながら、箒の後をついて行った。

 

(…あれ、そういや、箒は何でこの場所に来たんだろ?)

 

 まあ、聞くのは後でもいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、箒も同じクラスだったのか」

 

 入学式が終わり、俺はこれから通うことになるクラス((あらかじ)め千冬姉に聞かされた。みんなはまだクラス分けの掲示板を見てる頃だろう)、一組に来た。やはりというか、また迷ったが、道中で誰ともすれ違わなかったからてっきり一番乗りだと思ったんだが…意外や意外。箒という先客がいた。

 

「あ、ああ」

 

 箒はそれだけ言うと、俺から顔を背ける。

 

「まだみんなクラス分け見てたぜ?随分早いな」

「そ、それはお前もだろう。私は、姉さんの妹という理由でIS学園に入れられたからな。予め教えられていたんだ」

 

 何と、俺と同じ理由だったのか。…ん?

 

「ってことはさ、箒。専用通路、だっけ?あの場所に来たのも、もしかして…」

「…ああ。専用通路は、滅多に人が通らないから、講堂まではこの道を使えと言われたんだ。千冬さんに」

「千冬姉に会ったのか?」

「まあ、な。千冬さんも姉さんのことがあるからと、気を使ってくれていたのかもしれないな」

 

 箒が小学四年の終わりに転校するまでは家族同士の付き合いがあったから、千冬姉も箒のことは知っている。その姉、束さんのことも。

 結論を言うと、箒の転校は束さんのせいということになる。ISを発表した束さんは、それ以降、その技術を狙った奴らに狙われることがあった。まあ、束さん本人は規格外に強いから問題なかったんだが、時折、その家族――――つまり、箒達が標的になることもあった。まあ、小父(おじ)さんや束さんが撃退して事なきを得ていたが、さすがに危険だと判断した政府の出した『重要人物保護プログラム』とやらのせいで箒達は引っ越ししなけりゃならなくなった。俺も見送りに行ったから覚えている。

 

「束さんのこと、怒ってないんだな」

「ああ。まあ、全くというわけではないが、な」

 

 箒の表情は、妙に清々しそうだった。引越しの当日、当の束さんは残るからと、箒たちの見送りに来た。「皆といると迷惑になるから」と言って。つまり、あの時、束さんは遠回しに自分が囮になると言っていたわけだ。暫くは、それを聞いた箒と小父(おじ)さんにいろいろ言われていたが、束さんはずっと頭を下げたまま謝り続けていた。「ごめんね」と。ただそれだけを、ずっと。

 

「結果はどうであれ、姉さんは謝ってくれた。姉さんは、私の知る姉さんのままだった。それでもなお怒っては、可哀想ではないか」

 

 そう言って、窓の外を見る箒はどこかなつかしそうだった。

 

「…束さん、早く見つかるといいな」

「…ああ」

 

 囮の為に残っていたその束さんも、今は行方をくらませている。そういや丁度、あの事件の後ぐらいに―――――

 

「…まあ、さ」

 

 俺はあの事件を思い出して無意識に沈みかけた気持ちを切り替え、箒に笑顔を向けた。

 

「せっかく同じクラスになったんだ。これからよろしくな、箒」

「う、うむ。幼馴染のよしみだ。よろしく頼む」

「堅苦しいっての」

 

 うるさいと言って、拗ねたように箒はそっぽを向いてしまった。

 なんにしても、見知った顔が同じクラスにいるのはありがたい。ただでさえ心細いのに、ゼロから友達を作んなきゃならないのかと思うと――――

 

「…え?織斑、君…?」

 

 ガラッ、という音と共に開けられた後ろ扉から、ぞろぞろと女子達が入ってきた。殆どが俺の姿を見て色めき立つ中、どこかで聞いたような声がした。声がした方を向くと、緑髪が印象的な女子が俺を驚いた様子で見ていた。

 ってか、あれ?あの子、もしかして…

 

「もしかして、遥か?」

「やっぱり、織斑君!?うわぁ久しぶり!!」

「ああ、久しぶりだな!中学は別だったから、三年ぶりか」

「うんうん…でも、どうして織斑君がIS学園に?」

「あれ、ニュース見なかったのか?」

 

 突然の再会に喜ぶ俺達だが、遥の反応、どうやら俺がIS学園に入ることは知らなかったみたいだ。結構ニュースとかでやってたんだけどな。

 

「え?…あー最近テレビとか全然見てなかったからなぁ」

「そうなのか?」

 

 なら仕方ないか。

 

「お前…遥、なのか?」

 

 俺と遥の態度に驚いていた周りの女子達だが、違う意味で驚いているやつが一人。箒だ。

 

「…箒?箒じゃん!!うわぁ、こっちも久しぶり!」

「あ、ああ。小学校以来だから、六年ぶりになるのか」

 

 四年の時に転校していった箒にとって、一年の頃からの付き合いの遥は、俺と箒の数少ない共通の友達ということになる。相変わらず言葉は堅いままだが、箒も遥との再会を喜んでいるみたいだ。事実、口元が少し緩みかけてるしな。我慢してんのか、口回りひくひくしてっけど。

 

「まあ、同じクラスになったんだ。よろしくな、遥。改めて、箒も」

「うん!またよろしくね、織斑君」

「な、何度も言われるようなことではない」

 

 IS学園、初めてのクラスに知り合いが二人。

 何とかやっていけそうだな、俺。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …前言撤回。知り合い、二人じゃ無かった。

 

「私がこのクラスの担任、織斑千冬だ」

 

 俺は真ん中の列のド真ん前という珍獣扱い同然の席で、後ろから女子達の黄色い声援を聞きながら、壇上に立つ我が姉を見る。因みに、箒は窓側の席、遥は俺の斜め左後ろの席だ。いいなあ、箒の席。換わってくれよ、無理?無理か。

 

「ええい、静かにしろ!HR(ホームルーム)はこれで終わりだ。…山田先生、授業を」

「は、はい!」

 

 千冬姉が鬱陶しそうに声援を止ませると、副担任の山田先生がそのまま授業を開始した。IS学園は入学初日から授業がある。どうだ、参ったか。…参りそうなのは俺の方だよ。

 因みに山田先生、フルネームは山田真耶と言うらしい。上から読んでも下から読んでも『やまだまや』。うん、覚えやすい。

 

「では皆さん、一限目の『IS基礎理論』を始めます。教科書の四ページ目を開いてください」

 

 …さて、授業に集中しようか。俺は教科書とノートを開いて、山田先生の話に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…んあー、やっと終わったぁ…」

「随分疲れてるねぇ、織斑君」

 

 今日の授業が全て終わり、大きく背伸びをする俺の机に遥が来た。

 

「だってさ、何とかついていけてるっていってもほぼ素人がISの授業をフルに受けたんだぜ?そうじゃなくても、休み時間の度に遠巻きにじっと見られ続けて精神的にも参りそうだぜ」

「そんなもんかなぁ」

 

 不思議そうな顔をする遥をよそに、俺は首を軽く回してみる。ゴキゴキと響く音が少し心地いい。

 

「ふん、軟弱な証拠だ」

 

 そんな俺の束の間の休息を邪魔するように来た箒。そんな気は無いのだろうが、今も今とて不機嫌そうだ。

 

「そう言うなって箒。単に気疲れ―――」

「お、織斑君っ!」

 

 しただけだ、と言うより先に、誰かに声をかけられた。振り向くと、三人の女子が立っていた。自己紹介してたな。名前は確か…えー、と……

 

「何か用か?…鷹月さん、相川さん、布仏、さん」

「わあぁ、名前、覚えてくれたんだ」

 

 嬉しそうに顔を綻ばせる鷹月さん。その後ろでは、相川さんと布仏さんがハイタッチをしている(布仏さんは袖がダボダボで手が出てないが)。…喜んでるところ悪いが、本当はうろ覚えだったんだ。すまん。

 

「うろ覚えだったわね」

「うろ覚えだったな」

 

 ジト目でぼそっと言う遥。同じくジト目で同意する箒。…なぜ分かる。

 

「ん、ん!…たかっ!…鷹月さん、何の用?」

 

 声が裏返った。動揺しすぎだ、俺。

 

「あ、うん。用っていうか…三人で話したんだけど、その、IS学園を案内してあげようかなって思って。あ、織斑君が良ければ、だけど」

「案内?」

「そうそう。織斑君、いきなり入学が決まったからIS学園のことあんまり知らないでしょ?だから、ね」

「一緒のクラスなんだしぃ、私達も~織斑君と仲良くしたいしね~」

 

 相川さんと布仏さんも順に会話に加わった。しかし、学園の案内か…

 

「じゃあせっかくだし、頼んでもいいか?」

 

 正直、ありがたい申し出だ。箒達に頼むのも申し訳ないと思ってたし、IS学園の地図を見たけど全く分からなかったからな。これから三年間を過ごすんだから、不安要素は早めに消しておきたい。ついでに、クラスメートとは普通に話せるくらいには仲良くなりたいしな。

 

「ほ、本当!?」

「やったね!」

「うわぁい、やた~」

 

 手間をかけているはずなのに、すごい喜んでる。何か、逆に申し訳なくなってくる。…ここって食堂あったよな?今度飯でも奢らせてもらおう。

 

「じゃ、早く行こう!」

「ああ」

 

 興奮冷めやらぬといった様子の鷹月さん達について教室を出ると、箒と遥も後について来た。

 

「あれ、一緒に来るのか?」

「な、何だ。私が一緒では迷惑なのか!?」

「箒に同じく」

 

 食いぎみに反論してくる箒と遥。いや、逆に迷惑じゃないかと思ったんだが…まあ、本人達がいいならいいんだけど。

 

「いや、そんなことないよ。一緒に行こうぜ」

「う、うむ」

「あ、一応言っておくけど織斑君、女子更衣室とか覗いちゃダメだよ?」

「覗かねえよ!?」

 

 何の心配をしてんだ、何の。

 まあ、時間がもったいないし、鷹月さんじゃないが、早く行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 案内開始から、どのくらい経っただろうか。

 

「なあ、箒、遥」

「何だ」

「何?」

「俺はいつからモーゼになったんだ?」

 

 俺の後ろには、女子による行列が構成されていた。さっきから、行く先々で女子達は俺を視界に捉えると道を空けてくる。その光景、さながらモーゼの如く。そして、俺達が通り過ぎるとみーんな後をついてくる。だから、俺の後ろには女子、女子、女子。とにかく女子。はあ…珍しいのは分かるけどさ、正直気になって仕方ない。そのせいで、折角鷹月さん達が案内してくれているのにそっちに集中できない。

 

「はぁ……」

 

 これじゃあ、教室と何も変わらないじゃないか。

 

「……と、こんな感じだけど、大丈夫?織斑君」

 

 あ、集中できないどころか、いつの間にか終わってる、案内。一組の近くまでもどってきてるし。ヤバい、半分も覚えてないな……まあ、移動の教室と食堂、更衣室に職員室、後男子トイレ(実質俺専用)の場所位は覚えてるからいいか。

 

「ああ、大丈夫だ。ありがとう、鷹月さん、相川さん、布仏さん」

「あ、えへへ…」

「これくらいはお安い御用だよ」

「どういたしまして~」

 

 三者三様の返事を聞きながら、教室に入る。それを皮切りにして、後ろをついてきた女子達も解散…しなかった。廊下からまだ見てた。

 

「それじゃ、俺はそろそろ部屋に帰るよ。案内ありがとな」

 

 早く教室から抜け出そうと、俺は荷物をまとめ始める。

 といっても、俺は自分の部屋を知らない。というか、まだ知らされていない。授業が終わったら聞きに来るように山田先生に言われていたんだ。山田先生曰く、「女子達が押し掛けかねないから」だそうだ。確かに、教室でもこの調子なんだ。これが部屋でまでだなんて考えたくはない。

 

(山田先生は職員室かな?)

 

 授業が終わってから結構時間が経ってる。早く行かないと、山田先生に迷惑をかけるし、千冬姉にも怒られそうだ。俺はまとめ終わった荷物を手に、教室を後にして廊下に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「---------え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出たまでは良かったんだ。

 だが、俺はそこから、動くことが出来なくなった。

 何故なら。

 

「え……?」

 

 俺が廊下に出るのとほぼ同じタイミングで隣の教室……二組から現れた一人の少女に、目を奪われていたから。

 左右から伸びる、二つの髪を束ねた髪型、同じ年齢にしては小柄な体、そして何より……「友達」になったあの日から今日まで、ただの一瞬さえ忘れたことなど無かった、俺にとって大切な少女の姿に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鈴、なのか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれだけ時間が経とうが、見間違える筈がない。事件のあったあの日、お互いに傷を残したまま、すれ違ったまま離れ離れになってしまった、俺のもう一人の幼馴染。

 

 

 凰鈴音が、俺の目の前に、そこにいた。

 

 




遂に登場、我らが鈴ちゃん!
やっと出せたよ、鈴ちゃああぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!
はぁはぁ、はぁ……

遥「大丈夫?」

ああ、大丈夫だ。問題ない。
それより、今回ちょっとだけパロネタを入れてみました。けどまぁ、ISに関係ない作品だし、分かんないかなぁ?

遥「さぁ、ショータイm」わー!わー!何やってんの!?
遥「いや、ヒント的な?」
もぉー……ま、それでも分かりそうにないからいっか。

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