IS~白き隻眼~   作:鈴ー風

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更新、おくれたああぁぁぁ!!
最近文化祭とかバイトとか色々あって遅れました!すいません!!

後、ISOVA,ワールド・パージ編見ました。鈴ちゃんのセーラー服は一見、いや百見の価値がありました!!セカン党以外のみなさんも、ぜひぜひ見たほうがいいですよ?

それと、先に謝っておきます。自分で書いておきながら、3話で終わりませんでした(謝)

で、でもでも!試行錯誤の末、仕方なくなので許していただきたく……(尻すぼみ)

と、とりあえず追憶 Ⅲ 傷
どうぞ!


追憶 Ⅲ 傷

 

 

「おっす、一…夏?」

「い、一夏さん?大丈夫ですか?」

 

 翌日。鈴の家へ向かう途中、俺は顔を引き()らせた五反田兄妹に会った。理由は分かっている。俺だ。

 

「お前、その頭はどうした?」

「ああ、ちょっと千冬姉にな。気にしないでくれ」

 

 そりゃあ、いきなり包帯を頭にぐるぐる巻きで出てくりゃ驚くよな…普通。

 

「お、おお…それよか、悪かったな。昨日勝手に帰っちまって」

「家の用事だろ?仕方ないって」

 

 (むし)ろ、この二人がいなくてよかったと思う。弾はともかく、蘭には余計な心配をかけたくないし。

 

「…なあ一夏。お前今すっげえ失礼なこと考えてなかったか?」

「気のせいだ」

 

 危ない危ない。

 

「っと…悪い、ちょっと待っててくれよ」

 

 そうこうしてたら鈴の家に着いちまった。…まだ、あのことは二人に知られるわけにはいかないからな。

 

「ん?…おぉ、分かった」

 

 多少不審がってたが、とりあえず弾達を残して鈴の家へ入る。

 

「おはようございます」

「あら、おはよう一夏君。鈴を迎えに来てくれたの?」

「ええ、まあ」

 

 鈴の家は中華料理屋だ。なので店側ではなく、裏口から入ると、鈴のおばさんが出迎えてくれた。

 

「ごめんなさいね。せっかく迎えに来てくれたのに、あの子まだ起きてこないのよ」

「俺、起こしてきますよ」

 

 そう言って、俺は勝手知ったる鈴の部屋へと向かった。

 

 

「鈴、起きてるか?」

 

 声をかけてノックもしたが、反応は無し。

 

「…入るぞ」

 

 俺は一応断りを入れて、扉を開けた。

 

「一夏……」

 

 鈴は起きていた。着替えも既に済んだ状態で、ベッドの上で体操座りをしていた。

 

「あはは…おはよ」

 

 そう言って笑う鈴はどこか力無く見えて…赤く腫れた目が、鈴にとって昨日のことがいかにショックだったかを改めて痛感させられる。

 

「もう、大丈夫だから」

 

 ―――嘘だ。すぐに否定してやりたいけれど、鈴は意外と強情だ。多分、素直には認めない。だから、今の俺にできることは…

 

「そっか。ほら、早く行こうぜ。弾と蘭も待ってる」

 

 受け入れて、いつも通りに接すること。それが、俺が今するべきことだ。

 

「うん」

 

 早く、この仮初めの安心を本物に変えてやるからな、鈴。

 

 

 

「おっせえぞ一夏、鈴」

 

 鈴の食事を済ませて外に出ると、不機嫌な顔をした弾とそれを(なだ)めていたであろう蘭。そして―――――

 

「おはよ、二人共」

 

 三枝さんもいた。家から学校までとは逆方向なのに、わざわざ来てくれたのか。

 

「おはよ、遥」

「…昨日のこと、大丈夫なの?」

 

 三枝さんがこっそりと鈴に尋ねた。その問いに、鈴は小さく頷いた。

 

「さ、皆さん。そろそろ行かないと遅刻しちゃいますよ」

 

 蘭が時間を確認し、そう言った。それを合図に、皆学校に向かって歩き出した。

 

「織斑君…」

「ああ。守らなくちゃな……」

 

 鈴の後ろ姿を見ながら、俺は一人、改めて決意した。

 

 

 それから俺は、前以上に鈴と一緒に行動するようになった。いじめのことは、先生には言っていない。ものぐさだし、鈴がいじめられてることを(おおやけ)にしたくなかったからな。それに、ものぐさだし。でも、犯人が分かんない以上、悔しいけど手の出しようがない。だから、せめて鈴と一緒にいて、鈴の悪い考えを晴らしてやるくらいしかできなかった。あれから何回かはまた同じことがあったけど、俺がいるからか、次第に鈴の持ち物にちょっかい出されることもなくなり、いじめは静かに、犯人の分からないまま収束していった。けど、守るとか大層なこと言っても、こんなことしかできない自分が情けない。

 

「一夏」

「何だ、鈴」

「無理はしないでね」

 

 突然、鈴がそんなことを言い出した。

 

「無理なんかしてないって。約束したろ?守るって」

 

 俺の答えに、鈴は笑顔で答えてくれた。それは、俺が守ると誓った、あの笑顔そのもので……

 だから、この時は気付けなかった。鈴の言葉の真意に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ一夏、鈴。お前らってさ、もうカップルみたいだよな」

 

 いじめ発覚から二か月がたち、いじめの記憶も薄れ始めた頃、ある日の給食中に弾がいきなりそんなことを言い出した。対象になった俺たちは、飲んでいた牛乳を盛大に吹き出した。しかも同時に。わお。

 

「おわっ!?」

「だ、弾!?いきなり何言いだすのよ!」

「それより鈴、タオルタオル!あぁ織斑君も!」

 

 鈴がげほげほとせき込みながら、正面の弾を睨みつける。因みに、班は俺、鈴、弾、三枝さん。学年の違う蘭を除いたいつものメンバーだ。

 

「いや、だってよ?お前ら最近、今まで以上にべったりしてっから、そうなのかなーって」

 

 そう言う弾は、にやにやといやらしい笑みを浮かべている。

 こ、こいつは……

 

「ちち、違うわよっ!?ね、一夏!」

「お、おう。違うぞ!」

「…織斑君、声裏返ってるよ」

 

 何と。弁解に失敗した俺を鈴が睨んでいた。恥ずかしいんだろうなぁ、多分。

 

「あ、それ俺も思った。何、お前ら付き合ってねえの?」

「私も私も!ってことは今、織斑君フリー!?」

「私、狙っちゃおうかなー!」

 

 クラスメート達が弾に便乗して騒ぎ出した。こら、食事中だぞ。先生は…いねぇ!?あのものぐさ教師、どっか行きやがった!

 

「もー違うって!遥もなんか言ってよー!」

「え、違うの?」

「遥!?」

 

 三枝さんは意外にも悪戯好きだ。にやにや笑ってるあの顔はそのスイッチが入ったんだろうな。弾と二人で悪乗りした時は正直無敵だ。別名、歩く災害。

 …だが、俺は正直この雰囲気が嫌いじゃない。だって、あんなに落ち込んでた鈴が、こんな風にみんなでまた笑い合ってんだぜ?いや、今は困り顔だけど。このままいじめの記憶も消えてくれれば…鈴を見て、そう願わずにいられなかった。

 

 だから、俺はまた気付けなかった。鈴に向けられていた、悪意の根源に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぁぁ、疲れたぁ……」

「一夏、ジジ臭いよ」

「鈴に同意」

 

 体育終わり、俺、鈴、三枝さんの三人で教室に戻る最中だ。弾がいないのはサッカー中に足を捻挫して保健室にいるからだ。因みに、俺が運んだ。

 

「女子はいいだろ。バスケ、だっけ?今日も鈴の独壇場だっただろ」

「正解」

「ち、ちょっとやりすぎただけよ」

 

 鈴は運動神経が良い。だから、体育は鈴の独壇場になるのがセオリーだ。

 

「…?何だろ、あれ」

 

 三枝さんがいう「あれ」とは、俺たちのクラスの前にできた人だかりだ。何だ、何かあるのか?

 

「なあ、何かあったのか?」

「あ、一夏…」

 

 クラスメートの一人に声をかけ、クラスの中を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで、俺は自分の目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこに広がっていたのは、無残に切り刻まれたり、破られた―――――鈴の荷物だった。

 

「一夏?何が―――――」

「見るな、鈴!!」

「え―――――」

 

 鈴の声で我に返った俺は、咄嗟にクラスを隠そうとしたが、遅かった。クラスを覗き込んだ鈴は、その光景に全身の動きを止め、それからふらふらと後ろへ下がっていく。

 

「鈴…」

 

 何てザマだ…鈴を守ると約束したのに!

 自己嫌悪に陥っていた俺は、何とかそれを振り払い、鈴に手を伸ばした。すると、鈴は俺の手を払い、倒れる俺とは逆方向へと走り出した。

 

「織斑君、鈴を追って!早く!!」

「あ、ああ!!」

 

 突然の衝撃から回復した俺は、鈴の後を追いかけた。が、さっきも言った通り、鈴は運動神経が良い。足だって、俺より全然速い。

 

「…鈴!鈴!!」

 

 俺の声に、鈴は答えない。校庭に出てからは、鈴の背中がどんどん遠くなる。

 

「見失う、かよ……!」

 

 それでも懸命に走る。今あの背中を見失ったら、あいつを一人にしたら――――

 

「ぐあっ!?」

 

 突然体のバランスが崩れ、俺は地面に前のめりに倒れこんだ。つまりは…こけた。

 

「こんな、時に……」

 

 前方の鈴が、どんどん小さくなっていく。

 

「っく、そぉぉ……っ!」

 

 俺は、思いっきり地面を殴りつけた。右手からは、赤い血が流れていた。

 

 

 それから夏休みに入るまで、鈴は一度も学校に来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「暑い…」

 

 あれからまた一か月。夏休みも終盤の、八月の十九日。

 …あの日から、鈴には一度も会えていない。家に行っても、電話しても、おばさんが申し訳なさそうに謝るだけだった。寧ろ、いじめを隠してた俺を恨んでもおかしくないはずなのに……鈴の両親には、頭が上がらない。

 いじめのことがバレて、弾と蘭にも怒られた。「何で隠してたのか」って。

 

「俺、弱えな…」

 

 一人、呟く。あいつの笑顔を守るって誓ったのに…俺、何も守れてない。傷つけてばっかりだ。

 

「…ん?」

 

 少し前に千冬姉に持たされた携帯のバイブ音がして、二つ折りの携帯を開く。知らない番号からの電話だった。

 

「はい、織斑ですが…」

『あ、織斑君』

「その声、三枝さん?」

『さんはいらないけど、そだよ』

「何で俺の番号を?」

 

 夏休み中に買ったから、千冬姉と弾達以外には教えてないはずなんだけど。

 

『弾から聞いたの』

 

 なら納得だ。

 

『それより、鈴は…?』

「…相変わらずだ」

 

 三枝さんは夏休みの間、親戚の家へ家族で行っている。その間、ずっと鈴を気にしていてくれたのか…

 

「…ごめん。もっと早く伝えればよかった」

『弾から聞いてたからそれは大丈夫。織斑君に電話したのは、言いたいことがあったから』

「言いたいこと……?」

 

 そこで三枝さんは、一度言葉を切って、

 

 

『織斑君。鈴のこと、どう思ってる?』

 

 そう、聞いてきた。

 

「どうって……守ってやりたいと、思ってた」

『思ってた?』

「…守ってやるなんて偉そうなこと言っておいて、俺は何もできなかった。今だって、あいつが苦しんでる時に、傍にいてやることさえできない…」

『……』

 

 俺にはもう、あいつを守る資格なんて―――――

 

 

『……しっかりしろ!織斑一夏!!』

「さ、三枝さん……?」

 

 急に、三枝さんが叫んだ。

 

『君が何で鈴を守りたいと思ったのか!何で鈴を傷つけたくないと思ったのか!何で、鈴と友達になったのか!ちゃんと考えてみろ!!分かってるはずだよ、今の君なら…君自身の、本当の気持ち(・・・・・・)が!!』

 

 俺の、本当の気持ち……?

 

 俺は、あいつを―――鈴を守りたかった。

 何で?…あいつの笑顔が好きだから。その笑顔を守りたいから。

 

 ―――――それだけか?

 

 違う。そうじゃない。俺が、本当に守りたかったのは、本当に、好きなのは―――――

 

 

 

「はは…はははは……」

『織斑、君…?』

「ああ、そうか…」

『…分かった?自分の気持ち…』

「…ああ」

 

 ああ、やっと分かった。いや、ようやく向き合えた(・・・・・・・・・)。俺はずっと逃げていたんだ、この気持ちを認めることから。大切にしたい反面、これ以上、あいつに踏み込むことが、今の関係を壊すことが怖かったんだ。

 でも、もう逃げない。もう迷わない。

 だから……

 

「ありがとう、()

『…あ』

 

 そう言って通話を終え、すぐさま別の番号をコールする。

 

『はい、凰です』

「俺ですおばさん。一夏です」

 

 電話先は、鈴の家。いつものように、おばさんが出た。

 

『ああ、一夏君』

「鈴に伝えてほしいことがあるんです」

 

 

 手短に、用件だけをおばさんに伝える。

 まだ、俺にはやらなきゃいけないことがある。 




あはは…終わらなかった。
次はもっと早く投稿するので、お楽しみにぃ~~

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