怒涛のリレーもいよいよ後半戦に突入。残りの生徒達が必死で走っているのを静かに見守っている私達はとにかく興奮していた。
あかね「今のところはうちらのチームが優勢や」
くるみ「どうやら余裕ね」
のぞみ「…危うし」
こまち「危険ね……」
未だに一位の座を渡さない赤チーム。こんな明らかに戦力差のあり過ぎそうなチーム(ただ単になおちゃんがいるだけだが)を越せる程の成果をまだどのチームも出せていない。そんな中、少し変化が出てきた。
アナウンス「ただ今の順位ですが、赤チームと青チームの差がほとんどありません」
やよい「やったぁ!」
たった今入ったアナウンスに思わず喜ぶやよいちゃん。当然、黄色と緑も負けられない成果を出しているが。
みゆき「はっ!今どうなってるの?」
うらら「やっと起きましたね。まだまだ油断できない状況になっていますよ。私達のチームも遅れを取らせてはいないようですし」
ここでようやく目を覚ます私は現在の状況をうららちゃんに教えてもらった。すると、
れいか「うららさん、ちょっといいですか?」
うらら「はい?」
テントで休んでいたれいかちゃんがうららちゃんを呼んだ。そうか、まだうららちゃん走ってないからそのための作戦会議ってことね。
れいか「うららさんは確かアンカーになっていますね」
うらら「はい、どうにか他のアンカーの人に勝ちたいんです」
れいか「でも赤チームにはなおがいますし。大丈夫ですか?」
うらら「まだわからないですが、私はこの日のために練習したんです。なのでどうしても勝ちたいからここまでこれたんです…」
れいか「うららさん…」
みゆき「その気持ち、すごく伝わってるよ」
私はうららちゃんの気持ちを受け止めるようにそっと手を握り締めた。なんていうか、かなり責任感があるような感じで……。
みゆき「だって、うららちゃんはとても小柄で身体能力がよさそうだしなんとかいけると思う」
うらら「それを言われるとちょっと照れくさいです」
れいか「でもそれはうららさん自身が目指す目標でもありますよね?」
うらら「多少ヘマしてもいいんですが、この日を何かを残して終えたいんです。れいかさんが怪我をして出場できなくなってしまったのは結構残念ですが、その欠けてしまった穴を私が埋めたいと思います」
れいか「……」
みゆき「失ったものを埋めるっか…。それはとても大切なことなんだよ」
うららちゃんがフォローする気持ちを私とれいかちゃんはしかと受け止めようとする。よくわからなかったけど、うららちゃんって本当はここまでに真剣になれる娘なんだってことを―――いや、もっと卓越できるのではないかと。
みゆき「ありがとう(ギュ)」
うらら「ふぇ!?」
れいか「あら、みゆきさんってば」
うらら「突然どうしたんですか…?」
みゆき「また一つ、夢を持って突き進めることを知っちゃった。私にはあまり真似できないけど、それは真似ることのできないその人自身の目標ってことをね」
あまりの嬉しさに思わずうららちゃんを抱いてしまう。それに対してうららちゃんは少しずつ涙を流していた。
うらら「わ、私も……ここまで私の気持ちを理解してくれる人達がいました。けど、あれらとはまた違ったことを……理解してくれた人がいて、私…。私……!!」
れいか「いいんです。その気持ちは誰だって同じはずです」
粘り強く堪えるうららちゃんをれいかちゃんがハンカチを差し出す。そしてそのハンカチで零れる涙を拭き取るうららちゃん。
れいか「でも、油断は本当に禁物ですよ?なお以外のアンカーにはかれんさんやこまちさんだっていますよ。そこはわかりますよね?」
うらら「はい、いくら先輩であろうと手加減しませんからね」
みゆき「それならいいよね。やっぱりこれくらいの気持ちでいなくちゃね」
するとここで青チームのやよいちゃんが走り出す様子をれいかちゃんが捉えた。どれどれ……。
れいか「やよいさんが走ってますね」
うらら「やよいさん!ファイトです!」
みゆき「ってか相手チームを応援するのって……」
どうやら真剣で走ってるみたい。あのまま抜かせる勢いだね。
やよい「わぁああああああ!!あまりに全力疾走すぎて止まらないよぉおおおおお!!」
だがそうでもなかった。いや、抜かせてるけどやよいちゃんの周りに炎がまとわりすぎてると言った方が過言だろうか…。
あかね「ってかやよいが燃えとるやないか!?」
りん「あのまま次の人にバトンを渡したら普通に着火しそうね…」
のぞみ「まぁあの炎は暑苦しい意味っぽいね」
そして時が過ぎ……、
りん「大丈夫?」
やよい「う、うん……。な、なんとか……(ガク)」
あかね「も、燃え尽きとるやん……」
なお「あーあ…」
こうして、あまりの燃え尽きようで失神状態に陥った黄瀬やよいのこの光景は今日一日の最高のハプニングと化したのであった。