途方に暮れた入道雲が左へと流れてゆく。特に雨が降るとかいう予報なんてない。そんな青空を私はひたすら眺め続けていた。
ラブ「今日は暇だね…」
せつな「どうしたの?難しい顔をして」
私に気にかけるせつなが尋ねてくる。一応気分は悪いわけではないが、あまりいい考えが出てこない。
ラブ「なんていうか、あれだよ。何かがどんよりしてる感じがするっていうか」
せつな「そうね。最近のラブはいかにもそうやって抱え込んでいるわね」
そう、数日前に起きた出来事で少しモチベーションが下がってしまっている。私は特に問題ないけど、せつな達にとってはショックだったのかもしれない。
ラブ「ねぇせつな。もう一度行かない?」
せつな「どこに?」
ラブ「そんなの決まってるよ、ね?」
せつな「…うん、そうね」
でも過去のことは気にせず、私とせつなはめげない。もう一度、本当のことを聞きたいのだから。
~~商店街~~
祈里「今日はどの食材がいいかしら」
美希「ビタミンが豊富な物や食物繊維のある野菜がいいと思うけど、健康のことを考えるとそれがいいかもしれないわよ」
ラブ「美希たーん!ブッキー!」
美希「え!?ラブ…?」
祈里「そんなに大声出してどうしたの?」
ラブ「後でちょっと私の用事に付き合ってほしいの」
せつな「事情は私が説明するから、ね?」
美希「ふふっ。なんとなく予想はつくわ」
祈里「まぁね」
~~駅前のショッピングモール~~
真琴「マナがいる病院はここの近くでいいかしら?」
亜久里「さっき六花が慌てて駆け足で走って行きましたね」
ありす「実はあそこ、四葉財閥のグループの内の人達が設立した病院なんですよ」
真琴「うそ!?今初めて知ったわ…」
亜久里「ブラボーですわ…」
ありす「あら?誰かが来たようですね」
ラブ「ふぃ~…。ここに来るのに結構運賃かかるんだよねぇ~」
せつな「遠い町だし、仕方ないわ」
祈里「これじゃお小遣いでドーナツ買えないかもね」
美希「金銭感覚鈍ってなきゃいいけど」
亜久里「やっぱり来たんですか。なぜここまで」
せつな「どうしてもみんなで会いに行きたいとラブが思ってさ」
真琴「実は私達もよ」
祈里「となればこれで全員―――」
美希「ちょっと待って。六花がいないわよ」
ありす「六花ちゃんは一足先に向かったようですわ」
ラブ「じゃあ、このまま一気に向かおうよ」
こうして、みんなを集めて再びマナのところへ行くことにした。もう一回本当の気持ちを聞きたいし、何より自分が今どうするべきかを聞きたいから。
~~三十分後~~
マナ「六花…。どうしてあたしのために…」
六花「そんなの決まってるじゃない…。私達には、マナが必要なのよ」
一瞬伝わる六花の温もり。なんだか心が和らげる感じだ。
マナ「あたし、ここ数日間わかったことがあるの」
六花「一体どんなこと?」
マナ「本当に大切なことはみんなで一緒に笑顔になること。それと幸せを忘れないことだって」
六花「いかにもマナらしい答えだわ。同感するわ」
マナ「あのねっ…。その、どうしても六花に言いたいことがあって…」
再度深呼吸をして気持ちを整えると、
ありす「マナちゃんには六花ちゃんがいた方がお似合いですよね?」
真琴「幸せの王子様は辛いわね」
亜久里「本当にお節介者ったらありゃしませんわよ」
笑顔であたしを励ましてくれたありすとまこぴーと亜久里ちゃんの姿があった。
マナ「みんな…!」
ありす「私達だけじゃありませんよ」
マナ「え…?」
ラブ「えへへ、来ちゃった」
美希「随分と痩せこけたみたいね。折角のスタイルが台無しかもよ?」
祈里「美味しいフルーツ買ってきたから後で食べる?」
せつな「マナ、心配かけちゃったと思うけど気にしないで」
なんとラブ達も駆けつけたという。こんな嬉しいことなんてそう簡単にはなかった。
マナ「み、みんなぁ~!(しくしく)」
あまりの衝撃に思わず嬉し涙を流してしまう。ちょっとこれは恥ずかしい…!
エル「遅いと思ったらこんなところに」
亜久里「えぇ!?来てたのですか!?」
エル「亜久里ちゃん、そんなに驚かないでよ」
真琴「これでようやく全員揃ったみたいね」
あたしは周りを見渡すと、いつもよりみんなの笑顔が微笑ましく見えてきた。それどころかみんなはあたしを励ますことしか考えていなかった。それに、
マナ「あ…。ミユキさん…」
後ろでガッツポーズをミユキさんが更に励ましてくれた。まさか、えへへ……。
真琴「そういえばマナに言い忘れたことがあったわ~」
マナ「ぎょえぇ!?まだ怒ってる…?」
真琴「そうかもね。むしろマナにとって嬉しいニュースよ」
マナ「嬉しいニュース?」
亜久里「実はですね―――」
ありす「パフォーマーが開催される次期が延長されたとのことです」
六花「なんだとて!?」
亜久里「六花まで驚いてどうするのです。知らなかったんですか?」
マナ「何か理由でもあるの?」
首を傾げてみんなに尋ねてみる。うそ、こんな奇跡って…。
ありす「主催者さんが別のイベントに参加するみたいでして。それで延期になったんです」
マナ「随分と単純な理由ね…(あはは)」
せつな「だから身体を正常にするのにまだ時間があるってことよ」
祈里「それまでリハビリできるわ」
案外拍子抜けしたような内容だったけど、これで少し猶予ができたわけだ。思う存分身体を治すことが可能になる。
六花「ねぇマナ。私さ、マナに言いたいことがあるの」
マナ「何さ今更。謝ればそれでOK―――」
六花「…ん」
マナ「……むぐ」
一同「「「えぇ~~!?」」」
この瞬間、一同が一番驚いた場面だった。
あと2話で第二章終わりです。