六花「マナっ!」
ありす「どうやら無事でしたね」
真琴「こんなこと、今でも信じられないわ」
亜久里「本当に心配をかける白馬の王子様ですわ」
数分後、喜びのあまりに思わずむせび泣く六花達が入ってきた。どうやら本当に迷惑かけちゃったっぽいかも。
マナ「そんなに泣かないでよ、大したことないし」
六花「もう…、このままマナが目を覚まさなかったら私…!」
自分では全く実感ないけど、それ程だったのだろう。なんだか面映い気分だ。
マナ「あたし、何もわからないや。とりあえず眠っていたことしか」
真琴「身体は大丈夫?」
マナ「一応手足なんともないけど?」
亜久里「しかし医師によれば甚大な部分があると」
その一言に妙に引っかかってしまう。別に大したことではないけれど、それのどこが―――
マナ「うっ…!」
立ち上がろうとすると、胸が苦しくなってしまう。
ありす「成功したものの、まだ完全ではないってことですね」
亜久里「一度医師と対談しましょう。そこで理由が明らかになるでしょう」
真琴「確かに、それが堅実ね」
みんながあたしの両腕を肩に乗せてそのまま松葉杖を持たせる。今動いたらわかるけれど、やはり胸が苦しい感じがする。
そしてそのまま医師のところへ行って診査結果を聞くことに。その後、結果を聞き終えたあたし達はすぐにメディカルルームへと戻る。
マナ「…そんな、今の身体じゃダンスできない…?」
真琴「嘘かもしれないけど、それが事実よ…」
ありす「先程の話を聞いた通り、マナちゃんの身体の一部や右足が麻痺状態とのことですわ」
あまりの衝撃的な結果に挫折してしまうあたし。もしこの症状が長かったら…、
マナ「じゃあダンスはどうなるの…?」
六花「…」
マナ「ねぇ六花、どうして答えないの?」
ありす「…」
マナ「ありすもどうして?」
真琴「…」
マナ「まこぴー、一言ぐらい…」
亜久里「…」
マナ「亜久里ちゃん…」
誰もが絶句して黙り込む。むしろ悲惨すぎて何も言葉を入れる余地もないのだ。
マナ「じゃあせつな達は―――」
真琴「これは私達の問題なのよ…っ!」
亜久里「今の状況じゃ、せつな達も何も言い返せませんわ」
ありす「残念ですが、そういうことです」
首を振るように切実に答えるありすと亜久里ちゃん。その表情からは、何も浮かばない。
マナ「でもすぐに万全な状態にして、できるようにしたいの!」
真琴「そんな身体で何ができるのよ!」
マナ「だって、ここまでやってきたんだよ?努力を積み重ねて必死で練習したんだよ?」
真琴「残りの期間はもう一週間もないわ。このままだと私達のエントリーは辞退ってことになる」
亜久里「このダンスのセンターはマナでしょ?センターが不在のダンスは、必要ありません……」
まこぴーまでもが責めるように答えてきた。そこまで強く言わなくても…。
マナ「いや、あたしはやる。みんなに心配かけたのはあたしのせいなんだ。あたしが責任を取らないといけないから」
ありす「マナちゃん…」
マナ「それを否定するなら、あたしはダンスを辞める…。辞めるよ……」
真琴「……辞めるって」
亜久里「いくらなんでもそれは酷いですわ」
マナ「みんなは今のあたしの状態を聞いて判断した。ならばそれを許さないのなら喜んで辞めてあげる。目標のないことに全力で頑張る必要なんてない。いっそのこと最初からやらなきゃいいじゃない」
せつな「……」
マナ「これ以上あたしを引き留めても意味なんてないよ。もう出てって…」
ありす「マナちゃん、私達は―――」
マナ「いいから出てってよ!!」
六花「…っ!」
―――パシン…ッ!
一同「「「……」」」
ここで、今まで経験したことのない痛みが頬に伝わった。
マナ「……」
六花「何が目標のないことよ…。自分だけが投げやりになってよくそんなことを平気で言えるわね…」
伝わる六花の非情さ、そして六花の悲しみ。それこそ感情を露わにしているに違いはない。
六花「みんなのことを考えないマナなんて…最低よっ!!(ダッ)」
亜久里「六花!」
真琴「悪いけど、今のマナは到底ダンスの練習には入れさせないわ…。私達だけで―――いや、足りないチームは出れないなからやる意味なんてないわ。みんな、今は出ましょう」
せつな「…マナ」
ラブ「どうして…」
まこぴーがそう言い残すと、全員がこの場から立ち去ってしまった。
ありす(マナちゃん……)
シャルル「大丈夫シャル?」
マナ「ごめんシャルル。今は一人にさせて…。そしてアイちゃんとも一緒に遊んであげて」
あたしがそう答えた頃には、既に一人ぼっちになっていた。もう誰も頼れる人なんていない、孤独の中にいた。
マナ「……うっ。うぅ……」
数分後、あたしは数えきれないくらいの涙を流したのだった。
~~三日後~~
医療施設での生活も今日で三日目。一応両親には軽い怪我ということを医師の人が話したらしい。
マナ「…あたし、これからどうすれば。そしてお腹減った…」
空腹状態のあたしは一人孤独で外の景色をずっと眺める。ちなみにここ数日前までは食欲もなく、全ての食事を食べずに終えてた。なので絶食状態が続いている。
医者『相田マナ様、面会の時間です』
マナ「面会?こんな時に誰が…」
ここで告げられた突然の面会宣言。今となれば動く気力すらない。
マナ(どうせ碌な話でもなさそうだし…。行くか)
しばしばと松葉杖を手にして移動する。もう片方だけでもいいぐらいの回復はしている。
そして面会室へと移動し、来客人を待っていると意外な人物と遭遇した。
マナ「もしかして、エルちゃん?」
エル「はい、心配になったからつい来ちゃった」
彼女は亜久里ちゃんと同じ学校で同じクラスの娘だ。でもどうしてここに…。
エル「実は私だけじゃないの」
マナ「他に来てるの?」
ミユキ「久しぶりね、あれから元気してた?」
マナ「えぇ!?ミユキさん!?」
あたしはここで思いもよらない人物と再会したのであった。