ログ・ホライズン ~高笑いするおーるらうんだーな神祇官~   作:となりのせとろ

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第六話 アキバへの帰還 

 アサクサの町をグリフォンで飛び立ち一時間とかからない位地にヤマトサーバーにある5大都市の一つアキバの街はある。

 アキバの街にはモンスターの入れないように結界が大地人の供贄一族によって張られている。神代の時代から受け継がれる秘術を駆使し供贄一族はアキバの街を守護する結界と街の中での暴力や殺人をする者を処す絶対的な戦力である衛兵システムでアキバの街を外界のモンスターの侵入と内側の人間の悪意から守っている。

 他にも銀行の管理を行っているのも供贄一族であり、古来からの掟を重んじただその掟を守り続けることを至上としているのが彼の一族なのであった。

 

 

 アキバの街につき俺たちが最初に向かったの〈D.D.D.〉のギルドキャッスルだった。

 なぜかというと、お察しの通りアサクサの町で子供相手に恐喝してみせた脱走兵を届けるためだった。

 縄で縛っているもんだから変な目で見られるのも困るので三人には首から『私たちは訓練が怖くて逃げたした上に大地人の子供にたかっていたプー太郎で、今はお仕置き中です』というプラカードを下げてもらった。

 イベントで手にいれたパーティーグッズがあってよかった。これで俺たちは大丈夫だ。

 なんか三人はもうグリフォンを降りた辺りから目が死んでいたけど気のせいだろう

 

 まるで中世ヨーロッパの城のようにどでかい城の前に行き着き千菜と声を合わせて、

 

「「リーゼちゃん、あーそーぼー!」」

 

 大声で叫んでやった。

 何人かはぎょっとしたようにこちらを見てきたが大災害前からの顔見知りも幾人かいたのでこちらに気づいてよってきてくれた。

 相変わらず恐ろしいことを平然とするな、お前ら兄妹は、とゲラゲラと笑いながら言われた。

 

 五分としないうちに血相を変えた金髪ロールのコートのような法衣を着た女性がカツンカツンとヒールを鳴らしながら大股でこちらに歩いてきた

 後ろをミニスカートに黒ニーソの軍服じみた服装をした女性も無表情で歩いてきた。こっちの方は慌てた風もなくスタスタとどこ吹く風だ。

 

「こんにちわ。三佐さん、リーゼちゃん」

「ハロハロ。三佐さん、リーゼちゃん」

 

 俺と千菜が揃って挨拶をすると、

 

「お久しぶりです。奏君、千菜さん。

アサクサに行っていたと風の噂で聞いていましたが、お元気そうで何よりです」

 

「またまた~。風の噂でなんて冗談を、そっちのご主人様(ミロード)のことだからきっかり調べられてたんでしょ?」

 

「クラスティさんしつこいもんね」

 

 あの鬼畜メガネは俺をギルドに入れようと会うたびに勧誘してくる。男に口説かれる趣味はないでありんす。俺を口説きたかったら美女軍団でハニートラップでも仕掛けてみなんし。けっして振りじゃないよ?

 

「ばれますか。やっぱり」

 

 丁寧に挨拶を返してくれたのは黒ニーソのミニスカ軍服を着た鉄面皮のお姉さん。高山三佐さんである。

共通の知り合いのことでアハハと笑い会う。

 

「何を楽しく談笑しちゃってるんですか!高山さん!

というかあなた方ははなぜ高山さんはさん付けでなんで私だけちゃん付けなんですの!!」

 

「なんでって年下にさん付けは俺の好みじゃないよ。リーゼちゃん」

 

「というか私たちに最初に突っ込むところが違うんじゃない?リーゼちゃん」

 

「っ~~もうっ、だからちゃん付けは止めてくださいってば!」

 

「アハハッ、素が出てる、素が出てる」

 

 ケラケラと笑うと更に顔を真っ赤にして怒鳴ってくるリーゼちゃん。アハハ、かわいいかわいい

年下に興味はないけどね。

 

「リーゼさん、目的がずれてきてます。奏君、千菜さんあまり大袈裟にからかうのはやめてあげてください。」

 

 三佐さんから助け船がリーゼちゃんに出される。うん、三佐さんが言うならやめたげるか。あんまり苛めて拗ねられても困るし。

 

「ハッ、そうです!こんな玄関前で人の名前を小学生よろしく大声で叫ぶのは止めてくださいませ!!」

 

「そこじゃねえだろJK」

 

 ダメだこの娘、テンパりすぎちゃってら。しっかりしてくれよ現役JK。

 

「なっ!?なぜそれをっ!?」

 

 なぜそれを知っているか!?と顔にありありと張り付け

 

「バレてないと思ってたのかJK」

「今さらだと思うよJK」

「知ってる人は知ってますよJK」

 

 上から俺、千菜、三佐さんと三人で突っ込みをいれる。三佐さんが加わるのは珍しいな。というか三佐さんあなたさっきまで止めに入ってましたよね?変わり身早すぎやしませんか?

 

「面白そうだったので我慢できませんでした。不覚です」

 

「あっ、そうですか」

 

 表情一つ変えずにそう言い張る三佐さん。

 この人付き合いはそれなりに長くなるけどいまだによくわからん。表情の変化も少なければナニかの変化も少ないんだもの。完璧ポーカーフェイスだよ。

 

 

 ─閑話休題─

 

 

 そんなわけで散々リーゼちゃんをいじり倒したあと忘れられていた三人組を引き渡すこととなった。

 

「それじゃあリーゼちゃん、あとよろしく」

 

「あぁ…ハイ。もうちゃん付けでもJK呼びでもなんでもいいですわ…」

 

 リーゼちゃんは諦めてしまったようでどうでもよさげに生返事する。

 

 大丈夫だって、女子高生でもいいじゃないか、よく頑張ってるって、と脱走兵三人組に慰められていた。三人組ももとは悪いやつらでもないのかもしれない。

 リーゼちゃんいじめてた俺が言えた義理ではないかもだけど…。ふむ、ちょっとお詫びでもしておくか。

 

 

「リーゼちゃん、クラスティに今度面白いもん見せてやるって伝えといて多分機嫌がすこぶる良くなるから」

 

「!、そっそうですの。わかりました。マジでお伝えしておきますわ」

(「激ヤバですわね)」)

 

 一瞬顔が綻ぶ。すぐにいつもの顔に戻したけどバレバレだぜ~。髪の毛先なんか弄っちゃって~、ナニかがピコピコ黄色く跳ね回ってるよ。

 

「かわいいね」「同感です」

 

 後ろの方で女性二人は薄く微笑んでいる。そんなこんなできっちりと脱走組は《D.D.D.》に引き渡しましたとさ。

 これから根性叩き直されることになる三人へ面白半分に黙祷を捧げた。

 

 

           ◆

 

 

 《D.D.D.》で遊んだあと俺と千菜は他にいくあてもあるわけなくギルド会館の〈三日月同盟〉のギルドハウス目指して歩くのだった。

 あのときとは違い吐き気をもよおすほどのナニかの濁りは街に今はなくなったが別に見てて気持ちのいいものに変わったわけでもないのでそそくさと速足にギルド会館に俺たちは向かうのだった。

 

「ただいま~!」

 

 千菜がギルドホームに入ったところで大きく声をあげる。俺と違い千菜は〈三日月同盟〉の一員なので入場制限には引っ掛からない。ドアを開けて一緒に入れば俺も入ることは可能だ。

 するとバタバタと廊下を年少組が駆けてやって来て、お帰りなさーいと千菜を取り囲む。

 千菜も年少組を邪険に扱うこともなくにこやかに話しかけてくるのを一人一人目を会わせて相手している。大人気だ。

 

 べっ別に千菜は取り囲まれてて、俺だけ誰もよってきてくれなくても悔しくなんかないんだからねっ!くやしくなんか…ないん…だからねっ…グスン

 

「男の嫉妬は醜いっすよ」

 

「うるせぇんだよっ!!このクソ飛燕!そのモフモフ耳とモフモフ尻尾引きちぎってストラップにすんぞ!コラァ」

 

「まあまあ、奏さんの帰りは私たちちゃんと楽しみにしてましたから、ね?小竜」

 

「そうですよ!あのアホ狐のことは気にしないでいいんですよ」

 

「誰がアホ狐だぁ?このバカ狼(・ ・ ・)?やんのかこら?」

 

「おお!いいよやってやるよアホ狐(・ ・ ・)

 

 飛燕と小竜がにらみ合い恒例行事ととなりつつある喧嘩を始める。お互いイヌ科なんだから仲良くすればいいのに。

 

 茶色の枯れ葉のような毛色をしたアホ狐こと飛燕に心の傷を負わされたところを俺と同じ〈神祇官〉(カンナギ)の女の子明架香ちゃんとアホ飛燕と同い年のクソ真面目高校生の小竜が慰めてくれる。ええ子や。明架香ちゃんは天子。リーゼちゃんとはまた違うタイプの女子高生だ

リーゼちゃんが弄りがいのある可愛さに対して普通の素朴な可愛さだ。

 

 小竜は、うん、いい子だと思うよ。クソ真面目だけどね。

 

「相変わらず元気ええな。カナ坊は。なんかええことでもあったんか?」

 

「マリエちゃん、その台詞(セリフ)を言っていいのはアロハ服着たお人好しのちょーかっこいいおっさんだけだ。二度と口にするな」

 

「ひぇっ!カナ坊ひさびさやのにウチにきつすぎへん!?」

 

 次に奥から現れたのは〈三日月同盟〉のギルドマスターの巨乳のお姉さん。アキバのヒマワリことマリエールさん。しょんぼりと肩を落とす様子を見るとどうしても心が痛んでしまう。

 すまぬマリエちゃんこれだけは譲れない一線なんだ。

 

「マリエちゃん」

 

「はひっ」

 

「長い間ご迷惑おかけしました。もう大丈夫です。と言いたいところだけどまた迷惑をかけるかもしれないですけどそれでも構わなかったらこれからも兄妹共々仲良くしてくれたら嬉しいです」

 

 誠心誠意心を込めてマリエールさんに頭を下げる。

 こんな非常時でも変わらずに暖かく接してくれる人はそうはいない。きちんと感謝の言葉を伝えなきゃバチが当たってしまう。

 

「カナ坊はバカやんね。うん、とびっきりのバカ」

 

「へ?」

 

「んなもん言われんでも仲良うするに決まっとるやろ大切なギルメンにそのお兄さんやで?そうでなくてもカナ坊みたいな四六時中高笑いなんてしてる子なんて見てるこっちも愉快になるやん」

 

「いや、別に俺そんな四六時中高笑いしてるわけじゃないんだぜ…」

 

確かに二つ名は〈高笑い〉とまで呼ばれてるけどさ…

 

「あんまり当たり前のことばっかり言うてると、愉快に快活に高らかに高笑うで?」

 

 ニコニコといつもの満面の笑みを浮かべてウインクするマリエちゃん、あと少しで惚れちまうところだった。

 

「素直なところが奏さまの美徳ですわよ」

 

「あら?梅子いつの間に!?」

 

「梅子と呼ぶのはやめなさいぃ。あとあなたと一緒に来たんでしょうがっ」

 

 やべ、俺もヘンリエッタさん気づかなかったわ。黙っとこう。くわばら…くわばら…。

 マリエちゃんがヘンリエッタさんにお小言をもらう姿はさっきまでのかっこよさは微塵も感じさせないものだった。

〈三日月同盟〉は変わることなく今日も賑やかです。

 

           

 


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