尾美一は源外さんのところに預けられることになった。そして私は事後報告のため、自主的に喜喜に会いにきている。相変わらず眺めの良い大きな窓からは江戸が一望でき、青空が眩しい。こんなに眩しいのに暑さを感じないということはUVカットとか何かお肌にいい感じ処理がされているのだろう。高そうだなぁ。
いやー。こんなに嬉しくないお家デートはないね。付き添いの異三郎は何を考えているか分からないし、なんでか信女ちゃんはいないし。清涼剤が欲しい。切実に欲しい。
「やってくれたな」
「お褒めに預かり光栄です?」
開口一番そう告げられ。褒め言葉として受け取れば、忌々しそうに眉を潜められた。
「素直に回収したビーム兵器をこちらに渡せ」
「え、嫌ですけど?」
「個人が持ってて良いものではない」
どこからバレたんだろう? いや普通に毘夷夢星人だな。それに私がここに居るということは兵器からエネルギーを取り出してもいないという事になる。うん。QED証明終了。
「喜喜さんはさ、アレを手に入れてどうしようってのよ?」
「取り戻す――侍の国を」
結局は、攘夷志士と変わらない。それが幕府の手によるものなのか、そうじゃないのかの違いだ。
「同じ阿呆なら、踊らにゃ損ってか? でも本人に踊っている自覚がないなら質が悪い」
「私が操り人形に見えるか――存外阿呆でもないようだ」
「ありゃ、自覚がおありで」
煽りに腹を立てるでもなく、口の端をあげるに留める。
「貴様には護らねばならないものが多くあるように見える。だがそれを護りきれるとでも思うか?」
「お登勢さんのところにトラックが突っ込んできたり、吉原の女達が不当に逮捕されたり、銀さんが糖尿病に倒れたりするってか?」
「――最後のはなんだ」
「いや、冗談ですよ。まあ、なんですかね、私と戦争を始めるつもり? 私は、私の大切なものを護るためなら、全てを敵に回したってかまわない。それこそ――この国を売り飛ばしたって構わないんだ。貴方にその覚悟はあるか?」
じっと見つめる先の目はブレない。
「貴様こそこの国を売り飛ばすなんて覚悟があるようには見えないがな――まあ、いい。無駄な犠牲を互いに払う必要もない。今は準備期間だ。その時が来たならばこちらについて貰おう。貴様だって
「現将軍の重鎮だって? そんなの知っている。だから捕まらなかった。だから今も野放しになっている。研究こそ頓挫したけど、次の手を考えている」
「人さらいのようなものだ。代わりに頭を下げよう」
偉そうに言い放つ姿は全く頭が下がってないけど――今のところは手をだす気はないようだ。準備――準備――将軍を暗殺した後ということだろうか。そこまでの計画をこの段階で立てているのか? 疑念は尽きないが――。
「覚えておいて。私は、私の大切なものを護るよ。何をおいても」
清涼剤が欲しい。新八君オムライス作ってくれないかなぁ―本当に。
初めて手に取られた方も、長くお付き合い(本当にすみません)頂いていらっしゃる方もここまでお読み頂きありがとうございます。
長らく更新を停止してしまい済みませんでした。
次回更新は12月1日を予定しています。
よろしくお願いいたします。
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