二度目の宇宙旅行は新婚旅行と決めていたんだけどなぁーという愚痴も無視され、バーカ、ハーゲと小学生並みの悪口に移ったあたりで、プシュッと音を立てて開く扉に、SF江戸時代風冒険活劇コメディだったねと思いを馳せ、雰囲気的に口を閉じる。
「おお、これはこれは……」
そのセリフを吐いたのは某世界的有名SF映画に出てきそうな耳の尖ったしわくちゃの
「して、何も持っていないように見えるが……肝心の新兵器とやらはどこに?」
名乗りもそこそこに、そう問われた役人はズイとこちらを示す。
「……ふむ、装具品のたぐいか? よくわからんな。もっとよく見せて見ろ」
「装具品というか……生体兵器のたぐいですよ。私自身が新兵器となってます」
役人は説明する気がないのか突っ立ったままだし、話が進まないと口を開く。
「ふむ……」
それにヨー○顔の
「まぁ、こんな美少女が生物兵器とか信じられないのもしれないけど? まぁ、事実は小説より奇なりってね?」
首をかしげてみるが、どいつもこいつも冗談を解す感性をお持ちでないらしい。無機質な書類のやり取りを経て、稼働実験と相成った。
「ちょうどよい。あの隕石群を攻撃してみろ」
甲板の窓から見える大小の岩を指して
「試着は大事だよね。私もこの前、同じ暖色だから大丈夫だと思って買った上着がどうにも合わなくて難儀したわー」
「早くしろ」
軽口を返してくれることもないらしい。へいへいと頷き、それらしく手をかざす。
左から右へ次々と爆発していく隕石群におおーとどよめきが走る。
「お気に召されたでしょうか?」
慇懃に腰を折れば、にやりと笑みが返ってきた。
「ふん、我々の開発した兵器に比べれば……だが、使い方次第というところか……商談は成立だ」
「支払いは……」
初めて声を発した役人だったが、その声はそこで途切れる。
「冥土の土産だ、取っておけ」
頭を打たれ即死した役人へコインが投げられる。
打ったのはもちろん
「わしらと来るか? 来ないならばここで廃棄処分だ。待遇は悪くはないぞ。地球では味わえないような待遇を用意してやる」
「わーお。三食昼寝、おやつ付きっていうんだったら心惹かれなくもないんだけど……」
「ふん、そんなちゃちな待遇ではない。わしらと来るのだったら国……いや、星の一つでもくれてやる」
星の一つもねぇ……。
「それなら、白い大きな犬と可愛いチャイナと、メガネがいる星がいいな……ついでに糖尿病寸前のマダオもつけといて」
「どういう……?」
「反転攻勢開始ってことだよっ!」
しゃがみ込んだ頭上を銃弾が掠め飛んでいく。背後にいた兵士の足を払い、狙いをつけた別の兵士を殴り飛ばす。
「銃を撃つな! 味方に当たる! ショックガンを持って来い!!」
エマージェンシーのシグナルが鳴り響く中、配備された兵を沈め、追加投入された兵も排除する。残るはリーダーただ一人。
「緊急事態だ! ケノフィ! ケノフィ! 至急司令室までこい! ケノフィ!!」
――ザッ……ザッ……ザー
通信機に向けた声に応える者はいない。
まだ、通信妨害が効いているのか……。好都合。
「さて、こっからが本当の取引だよ。オビワン……ケノフィの設計図渡してくんない?」
「はっ、何を言うと思えば……そんなもの……ぐあっ……」
足に打ち込まれた弾に膝をつく。
「次はその長い耳。その次は指、肩、膝って一番撃たれたら痛いらしいけど、知ってた?」
「ま、待て」
「待たない」
「ぎゃあぁあ!! あ、分かった! 分かったから!」
ちぎれた耳から紫色の血を流し、操作盤にすがりつく。
悪あがきのように小細工をしようとするのを止めつつ、一枚のディスクにデータが転送された。
「これで……だが、そんなもの……奴は既に……」
「あとは……」
ついでのおまけを頂き、縄で縛り上げた頃、近藤さんと、九ちゃんが入ってきた。
「キリちゃん……?」
「どうして君が……」
この船を止め、尾美一を救うつもりだったのだろう。
「被疑者死亡のまま書類送検……といきたいところだけど、そっちの手柄も必要だよね、うん」
「なにを言って……?」
「近藤さん、この人の処分お願いしていい? 私は私でやらなくちゃいけないことがまだ残ってるから」
「何を言っている!! 君はどうしてここにいるんだ!」
九ちゃんの声に、ごめんと一言伝え、私はそこを後にした。