不可能男との約束   作:悪役

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これだけは断言が出来る


初めて出会った時


感動したのは間違いなくオレの方だ


配点(ホモくせぇ!!)


鏡の向こう側

葵・トーリは何かめっちゃ綺麗な、しかも御菓子の家で、同級生の母から何かすっげぇ接待を受けていた。

いや、まぁ、端的に言えば、ネイトの母ちゃんで、それで何でも六護式仏蘭西(エグザゴンフランセーズ)の副長で人狼女王とからしい。

 

 

 

六護式仏蘭西濃いなぁ!!

 

 

いやいや、でもやっぱり武蔵も負けてねえな……! 何せうちには超ヒロインホライゾンに、ヅカ&滑り政治家セージュンに犬の匂いがするてんぞーなど多種多様なすげぇ奴らがいるんだぜ……!! その上で芸人として日々精進する俺が……!! あ、駄目! ホライゾン!! 脳内で拳振り上げたららめぇぇぇぇぇ!! で、でちゃう! 味噌出ちゃうの! 脳から沸き上がるインスピレーションで味噌出ちゃうのぉぉぉぉぉぉん!! あ!? 何だ親友!? 空っぽの能が出てきても誰も困りゃしねえし、見ねえ? ばっかお前! 見た事も聞いた事もねえなら無いって言うのかよ!!? 夢もロマンも無くなっちまったなオメェ……!! 何て駄目な奴なんだ……!! 胸にしかロマンがねえと思ってんだろ!! 俺は尻も愛でるぜ! 

 

 

「……どうして背筋を伸ばして胸を張っていたと思ったら、急に怯えて土下座して、その後ビクンビクン震えながら自分の体を抱きしめていたと思ったら、急にシャドーボクシングし出して、最後に私の胸とお尻を見てるんですの?」

 

「分かってくれよネイトママン! 仲間自慢と嫁自慢をしたら、嫁からのドギツイツッコミに対して震えながら興奮していたら、馬鹿親友がつれねえから、ジャンルを紹介していたんだよ! あの極狭ジャンル一強、何時か崩してやるからっていう覚悟だよ覚悟!!」

 

 

はぁ……という滅茶苦茶反応に困るっていうリアクション返ってきたが芸人としてのキャラ的にこうしなくちゃいけねえから、ちょいとごめん、ママン。

……と、異族においても強者であり、その上で性格的にはマイペースにゴーイングマイロードを地で行く人狼女王がただの人間に反応が困っている、というレアな態度を晒しているのだが、トーリはその成果を全く理解していなかった。

だから、トーリは特に気にせず、何時も通りの全裸にアクセントとして首輪を着けられながら

 

 

「ネイトママン、俺に何か言いたい事とかあるの?」

 

「あら? 何でそう思いましたの?」

 

「いや、俺、馬鹿だけど、まぁ、色々とやらかしてるっていうのは理解してるし、皆がいりゃこぞって否定するんだろうけど、俺、色々と世界的ブラックリスト? みたいな感じ? なんだよな?」

 

 

首を傾げながら言うと、ネイトママンはあらあら、と微笑した。

その笑みに裏がねえのは馬鹿でも分かるから、何で笑うんだろ、と更に首を傾げたら頭を撫でられたから、つまり良かったって事かと思う。

 

 

「俺は何にも出来ねえし、事実そうなんだけど……こうしてネイトママンがわざわざ実家? に連れて来たって事は何か言いたい事とか聞きたい事があんのかなぁって。違ってたらごめん」

 

「Tes.事実から推察出来る事でしたわね。と言っても、別に特別な事を聞くわけでは無いのですよ?」

 

「ネイトの事?」

 

 

ママンからしたら娘の名を出したら、目を細めて再び頭を撫でられた。

落ち着け、と言われているようだが、普通に撫でられて嬉しい辺り、テンション上がるし

 

 

「おぉぉぉ……!! 人妻の乳が目の前で揺れてる……!!」

 

 

でけぇ。

無論、胸の事だ。

ここまでのボリュームは武蔵でも中々いねえ。

近いので姉ちゃんや浅間や直政だろうが、流石に女子と比べるのは失礼っていうのは分かるし、ネイトにもよく言われる。

しかし、ふふっ、と笑いながら胸の下で腕を組んでより見せてくれる辺りすげぇ! とマジ凝視するしかない。

 

 

「ママンすげぇな! これをネイトに分けてやれねえのかな!?」

 

「ふふっ、難しい問題を提示されましたが結論を言うと子供の頃にアドバイスしたら首を傾げられて……でも今ならきっと分かっている筈ですわ」

 

「ああ! アレか! 時折、女風呂で端っこに行ったと思ったら、自分の胸揉み始めるのママンの教えか!!」

 

「ネイト……ママンの教えを歪めて……」

 

 

何か違ったらしい。

でも、それはそれとして本命はネイトの事とかって感じだけど、他にも聞けるなら聞きたい事があるって感じなんだろうか?

何度もすまねえけど、つい首を傾げていると、やはりママンは愉快そうに笑い

 

 

 

「そうですね……完全に私事になりますが……貴方の自慢の親友の話とかお聞きしても?」

 

 

 

※※※

 

 

あらあら……

 

 

目の前にいる子供のような少年が、たった一言、耳に入れただけで様変わりした。

とは言っても姿形が変わった、とかではなく瞳に映る光が変わったのだ。

嬉しい事を言われた、と。

 

 

 

……そんなにお友達が自慢なのですね……

 

 

この子供のような少年に合わせるなら親友が。

さて、夫を自慢する事、つまり愛についてならば共感を持てるが、友となると中々に難しい。

勿論、友がいないというわけではない。

でも、輝元も太陽王も友というより仕事仲間、というか上司というか……面白そう且つ優秀という意識が強い。

アンヌも……友愛が無いわけではないが、少々、繋がりと接する機会が少ないのも確かだ。

無論、接する機会が無いとはいえ、友愛が薄いなどとは思わない……が、私は友人を語る際に、ここまで嬉しく、楽しそうに語る事が出来るだろうか?

 

 

「おいおいママン、親友の弱点とか聞きてえのか? ──一杯あるぜ!? 基本、巫女と巨乳とロングヘアに弱いんだよなぁ! あの親友! ジャンルを押さえていれば負けは無い……!! あ、でもママン、人妻属性あるからそこで一気にマイナス判定来るかもしんねえなぁ……くっそ親友……! あいつ我が儘かよ! ママンっていう一大ジャンルにも屈しねえつもりか! もう容赦出来ねえ! ママン! 次、ヤル時は盛大にぶっぱありだぜ!!」

 

「親友の性癖を盛大に公開しましたわねぇ……あ、いえ、既に大公開済みですけど。ですけど、いいんですの? 私が盛大にヤルって事は貴方の親友、爆裂四散しますけど?」

 

 

勿論、冗談である事は理解しているが、冗談の中にも真実は混ざるものだ。

そこら辺、政治家等なら敢えて狙って小出ししたり、誤魔化したりするのだろうけど、この子には恐らく無理だろう、と思う。

 

 

※※※

 

 

・副会長:『しっかし……一個人としてどうかとは思うのだが……葵の奴、誘

拐されている癖に愉快(・・)な目に合っているような気がしかしないんだが、これは信頼か? 信用か? ──あ、今、目逸らした奴ら、誠に遺憾だから笑えよ?』

 

・約全員:『恐怖政治か……!!』

 

 

※※※

 

 

さて、どんな返事が返ってくるか、と楽しみにしていると小さな王様はうーーん、と考えるように呻きながら

 

 

 

「うん──でも最後に勝つのはシュウだから」

 

 

 

申し訳なさそうに頭を掻きながら、しかし断言した。

 

 

 

……あら

 

 

少年の印象から外れる断言に、人狼女王は予想外、という言葉を思いながら笑みを深めた。

予想から外れる、というのは人狼女王からしたら楽しみが増えるかも、という期待に繋がる。

夫の出会いが正しくそれである以上、人狼女王は予想外という状況を楽しまないわけにはいかない。

さて、ではどうしてこの子が自分の友が絶対に最後には勝つ、と断言出来たのか。

無能故に戦力差を理解していない、というのもあるのかもしれない。

何より、この少年は先程の武蔵副長の戦いを全て見ていたのかどうか。

人間の脆弱さの象徴のような彼がどう答えるのかを楽しみにしながら、人狼女王は笑みを浮かべて、淡々と事実を述べた。

 

 

 

「こう見えて、私、種族としては頂点である事を自負していますのよ? 勿論、貴方のお友達の努力を否定するわけではありません。大変、よく頑張ってきたのだと思いますわ」

 

 

それこそ人を辞めるくらいには、という言葉は隠す。

人を辞める、と人を超えるは違う言葉であり、手段だ。

人の臨界に挑み超えようとしている代表例は武蔵の副長補佐や映像だけしか見ていないが、西国無双のお二人のような存在だ。

まだ全てを知っているわけではないが、武蔵勢のほとんどが恐らくこちらの形であると思われ……だから、一人、武蔵の中で浮き上がるように立っている武蔵副長が目立つわけだが。

一人、武蔵に染まるわけでもなく、かといって武蔵を否定するわけでも無く、ただ力になる少年はある意味で誰よりも孤独だ。

はみ出し者が集まる武蔵の中で、はみ出る、というのはそういう事であり……それを理解しているであろう昨日の少年はその事に笑いはしても傷ついたりはしないだろう。

 

 

 

少なくとも、誰かが居る前では絶対に。

 

 

 

だから、人狼女王は何も言わなかった。

関心がある事柄だけに意識を割いた。

 

 

「その上で断言しますわ。どれだけ鍛え上げ、神に愛されていたのだとしても、それでも人間を少し辞めただけ。異族であり、人狼女王である私には性能では超えれない壁がありますの──それでも貴方は私が彼に負けると思いますの?」

 

「うん、シュウが勝つ」

 

 

迷いのない返答が来、人狼女王は笑みを深めた。

 

 

──Tes.

 

 

内心の返事に同意するように首を縦に小さく振る。

それでいい。

仮にも人狼女王に打ち勝つ、と断言したのだ。

私の言葉で揺らぐような断言であったなら、余りにも言葉が軽すぎるし、こちらと彼を舐めている。

無礼者にまで寛容を示す程、人狼女王の慈悲は安くはない。

言葉にしない試練を突破した少年は、そんな事に気づきもしていないであろう、と思うと愉快で仕方が無い。

だから、次に疑問に思う事は

 

 

 

「何か、彼に対して絶対的に信頼する出来事でも?」

 

 

少し踏み込み過ぎか、とは思うが、気になる事である以上、遠回しにするよりかは良いだろう、と思う。

仮に答えられなくても仕方が無い事柄だし、その場合は、素直に諦めればいいだけだ、と思っていると武蔵の総長はその質問に困ったような顔をして

 

 

 

「シュウは、俺と同じ夢を共有したダチなんだよ」

 

 

と、告げた。

 

 

※※※

 

 

何て言やいーのかなぁーってトーリは本気で悩みながら、少しでも伝えやすいように言葉を考えながら喋った。

 

 

 

「えーーっとな、例えば、俺が鏡の前で右腕を上げるじゃん。すると、鏡の中の俺は左腕を上げるだろ? ママン。そんな感じなんだよ」

 

 

何をいきなり鏡での自分チェックの話をしてんだって思われてもしゃあねえけど、実際、これが一番分かりやすい例えなのだ。

俺が右を見れば、あの馬鹿は左を見る。

俺が上を見上げれば、あの馬鹿は下を見回す。

俺が後ろでビビっていると、あの馬鹿は笑いながら前に突っ込む。

やっている事は完全完璧に真逆だ。

 

 

 

ホライゾンと俺が境界線上に立つパートナーとしての正逆なら、シュウと俺はネシンバラ風に名付けるなら鏡界線上の真逆か……うっわネシンバラ芸風……!!

 

 

やる事も言う事も為せる事も全く正反対だ。

きっと、それはこれから先も変わらないだろう。

それでいて信じれるのは根本と結果が同じだと理解しているからだ。

無能だろうが、剣を持とうが求める結末は一つ。

 

 

 

少しでも、失わせるような出来事がが少ない世界があった方が気が楽だ、という夢があるから

 

 

故に信じる信じないの話じゃねぇんだよなぁ、これ。

だって、それ、(オレ)に向かって、裏切んのか!! って叫ぶようなもんだし。

裏切るも裏切らないも無いのである。

もしも、それが裏切るように見えたとしたら……他人を裏切ったのではなく、自分を裏切り、道を誤った時なんだろうなぁ。

そんな思考を、自分の言葉で伝えたら、何かママンは困ったような顔でこちらを見た。

 

 

 

※※※

 

 

 

「あーーやっぱり分かり辛いっていうか変?」

 

 

そんな風に頭を掻きながら問う少年に対して、Tes.とは言い辛いが、同時に言わずにはいられない、というのも事実だ。

これに比べれば、先程の自分の友情云々はお遊びに過ぎないみたいな感覚だ。

 

 

 

他人を自分自身だなんて……

 

 

願望や自己投影ではない。

何故なら、この少年は武蔵副長と自分は全く真逆で、違う存在だと認識している。

その上で、同じ夢を共有していた友であるからあいつなら大丈夫。

あいつが為す事やる事全て、失わせないという互いの夢の達成の為の疾走だと信じている。

そんな事を真顔で言っているのだ。

裏切る事が無い、というレベルなら分かる。

私とて輝元や太陽王、アンヌは私が私として貫き、力を貸して貸す関係を続ければ、裏切る事も無ければ裏切られる事は無い、という信頼関係を築いている、という思いはある。

 

 

 

しかし、この子達は違う。

 

 

裏切る裏切らない等一切考えていないだろう。

彼にとって、武蔵副長が裏切ると思わないのか、という問いは、手足……否、魂が裏切るのか? と問われるような事柄だ。

これが一方通行の考えならば、窘めなければいけないのだろうけど

 

 

 

「……」

 

 

無間地獄を小さな体に背負った少年を自分は知っている。

血だらけ傷だらけ、裏切られ続けたであろう少年が吠えた精一杯の強がりを自分は知っている。

 

 

 

"俺に勝っていいのは──"

 

 

どんな誓約や審判よりも高らかに叫ばれた強がり。

その事実に、人狼女王は思わず呆れの吐息を吐く。

成程、と頷くしかない。

難しい言葉で語り合ったが……要は彼と武蔵副長はとんでもなく似た者同士なのだ。

方法や才能、性格が違うだけで、後はそっくりな双子のようなものだ。

 

 

 

例えば、そう……この少年が堂々と失うのはあんまし良くねえな、と堂々と笑いながら告げるのであれば、武蔵副長は俺は守るのとか苦手、とか言っている癖に、やっている事はその真逆であるように

 

 

何となく言葉にするなら、素直で馬鹿な武蔵総長()と偏屈で融通が利かない馬鹿な武蔵副長()といったところか。

可愛げがあるのは武蔵総長の方だが、副長の方も方で、別の可愛らしさがありますわねぇ。

そこまで、考え、思わず小さく笑う。

 

 

……子供っ

 

 

通りでちょっと話が単純且つ素直な話になるわけだ。

大人と違って、二人の間には仕事だとか地位とか政治とか陰謀とか給金とか一切ない、単なる友情でここまで壮大な事を仕出かしているわけだ。

それを大人に通じるように、自分達の考えを政治だったり、武力だったりで現実に反映させ、夢を現実の形で刻む。

通りで強固な関係なわけだ、と人狼女王は納得し

 

 

でも……

 

 

その関係には一つ、危険な色が混ざっている。

二人の関係性を考えれば、それは特大の穴だ。

今直ぐに、という事ではないだろうが……あっちの少年の事を考えれば、そう遠くない未来に発生してもおかしくない事柄だ。

しかし、それを伝えるには私もまたこの少年達の敵である事を考えたら、塩を送る事になるのではないかと思い……どうしたものか、と思っていると

 

 

「なぁ、ママン。俺も個人的な、相談っていうか聞いて欲しい事あんだけど、いい?」

 

「え? あ、はい、Tes.構いませんわよ?」

 

 

意識の間隙に問いを挟まれた為、軽はずみに返事をしてしまい、しまったですの、と思うが、時を巻き戻す術は無い。

まぁ、この少年なら変な事を言う事はあっても、道理が通っていない事を頼んだりはしないだろう、と思って、改めて向き合うと──少し驚いた。

そこには先程の憧れのような、自慢する面貌は無く、ただ本当に俺は駄目な事をしてしまっただろうか、という迷いと不安が籠められており、理由は

 

 

 

「……俺、今、そういう風に親友の事語ったけどさぁ──それって間違ってたのかなぁ」

 

 

先程、あれ程自信満々に語っていた言葉は反転していた。

顔所か手指も抑えきれずに、小さく動かしているのを見ると、少年にとっては大きな不安で……後悔に繋がる道であるのかもしれない、と思っているのがありありに見えた。

 

 

 

「……どうしてそう思いますの?」

 

 

聞くと少年は小さく頷き、ぽつぽつとその疑問に抱くまでの内容を語り始めた。

 

 

 

「ここ最近、あの馬鹿、すっげぇ本調子から外れているような感じなんだよ。時々、えらく眠そうだし、終いには以前、唐突に屋根から落ちたって言うしさ。つい、この間だって、義経の馬鹿にトイレでスタンディングオベーション中に蹴り飛ばされたって言ってたけどさぁ……よくよく考えれば、あの馬鹿が、んな簡単に背後取られるのもおかしいし……」

 

 

……成程

 

 

それは確かに、今の質問に繋がってもおかしくない状況だ。

本来、他国の人間に漏らしてはいけない事柄ではあるが……少年は前もって一個人としての相談と告げていたし、私もそれを了承していた。

ならば、これは情報ではなく相談事ある、と念頭に置き、理解を深める為、先を促す意味で質問を告げた。

 

 

「貴方の目から見ても、疲労を隠せていない様子が見える、と?」

 

「Jud.いや、うん、そりゃ理由は分かるんだ……あいつは、俺との約束を守ってくれてるし……十年間、ずっと色々と面倒事が来たり、任せたりしちまっているし」

 

 

約束は内容が分からないから、アレだが、任せるはともかくとして面倒事が来たり、という点に関しては察する事が出来る。

熱田の代理神は長寿系の人間から酷く憎まれている。

何時かの時代の熱田の剣神が()()()()()()()()()()()()とは思うが、そのツケを未来にまで持ち込んでいるのは執念か……または不安と恐怖からか、と思うが。

人類の恐怖の象徴である人狼女王もかつては迫害され、狩りと称して命を狙われたが……それとほぼ同じような事をされるかつての暴風神は何をしたのかは

 

 

 

……今の彼を見れば、出来る事など多々あったでしょうしね

 

 

他を染め、世を染める神格解放が出来たかは定かではないが……それ以外はそう今の剣神と変わるものでもないとするならば、人間から恐怖され、憎まれ続ける事など()()()()()()()()()()だろう。

それが真実か、もしくは真実であってもしたくてした事かは定かではないが、そのツケが少年の代にまで回ってきた、という事だろう。

特に、本来、熱田神社があった三河ではなく人を受け入れる流浪の国である武蔵だ。

多少の守りはあるだろうが、神罰を恐れなければ、幾らでも事を為せる。

 

 

 

特に復讐という言葉は実に甘美で、度し難い

 

 

さて、8年前のあの時はそういう汚らしくも人間らしい感情に触れた後の彼だったのか、そうでは無いのか。

 

 

 

……いえ、そもそも武蔵に来た事を考えれば……

 

 

敢えてプライベートに振れる部分は詳しく調べようとは思っていないが、それでも副長として敵対国になるかもしれない相手は調べる義務がある。

その中にあった、幾つかの情報は結論を言えば、輝元は舌打ち一つした後、椅子を蹴り飛ばした。

 

 

 

……思考が逸れましたわね

 

 

ともあれ、少年は相方たる少年の疲労に気付いたのだ。

その上で、彼にとってご都合主義の具現である友がそこまで過労によって追い込まれている、という事は己が間違っているのではないか、と思った。

その事に安心を覚えてしまうのは母としての立場からだろうか。

先程、少年と少年の仲を聞いた際、感じた危惧を、少なくとも片方はしっかりと感じ取っている、というのについ安心を覚えてしまった。

その上で……さて、どう言葉を告げるべきか、と考える。

 

 

 

少年の危惧は理解出来た。

 

 

常に無茶と無理ばかりさせていた友人が保たないのではないのか、という不安。

ならば、その事を告げればいいのではないか、と普通に考えれば思うが

 

 

 

……無理ですわね

 

 

断言出来る。

絶対に従わない。

少しでも止まって息継ぎでもすれば、乾いた喉に水を与えるかのような安堵を得れるというのに、知らぬ要らぬ()()()()()()()()()()()()と言わんばかりの疾走。

最早、自分でも止めれない、否、止まる気が起きないであろう。

なら、大事な人が止めれば……とも思い、IZUMOで自分と向き合った巫女の姿を思い浮かべるが……それも恐らく駄目だ。

 

 

 

何故なら、彼にとっての疾走とはその大事な人を守りたいが故に起きるものだ

 

 

大事な人を守る為に疾走している以上、大事な人に幾ら言われても止められる筈がない。

止まったら大事な人が守れない、だから大事な人に何を言われようとも停止する事は無い。

無間地獄に停止の概念など要らない、とまた強がりを吠える。

改めて考えると面倒くさい子ですわねぇ。

そんじょそこらの人に止められても駄目。

大事な人に止められても駄目。解せぬ。

そして、敵に止められても駄目なのだ。

更には武だけを鍛え上げた少年故に、政治的、というより言葉でも止まる事は出来ないだろう。

あるとすれば、それは──

 

 

 

"俺に勝っていいのは──"

 

 

 

ふと、少年の言葉がリフレインされる。

まるで誓いのように、呪いのように──助けを乞う子供のように叫ばれる言葉を脳内に浮かべた時

 

 

 

……ああ

 

 

今の状況と組み合わせる事によって、ようやくあの言葉の真実に辿り着いた。

 

 

 

……本当に

 

 

不器用な子。

直接口に出せばいいだろうに、意地張って何も言わずにいるものだから周りに心配をかける。

そういう意味では自業自得だからこの子にそれを教える義務は無いのだが。

 

 

 

……Tes.

 

 

この子が先程、悪意なく人狼女王に対して頼む事に成功した事。

武蔵副長が人狼女王相手にしても尚、傷つけないように心掛けた事。

そして、8年前に随分と格好つけ、傲慢にも人狼女王の前に立ち塞がり、奇跡を起こした事。

その功績を見て見ぬ振りをする程、人狼女王の器は小さくない。

 

 

 

大人として、子供の背伸びに助言する事を、咎める事などないだろう

 

 

 

※※※

 

 

「まず前提条件として──彼はきっと言葉では止まる事は無いと思いますの」

 

 

ネイトママンに告げられた前提に、俺もだよなぁ、と思って頷く。

きっとあの親友は言葉では止まらない。

誰よりも剣であるべきだ、と心掛けて生きて来た親友は言葉だけで止まる様な性質を持ち合わせていない。

それは誰の言う事も聞かない、というわけではなく……言葉の勝負を持って俺達が危機に陥った際、言葉の制約の全てを知った事か、と裏切る為だ。

本当に最悪の時、全ての汚名を受けてでも刃を振るう為である事を理解している俺としては何も言えねえし、言う資格がねぇってつい弱気になっちまう。

だから、やっぱりネイトママンでもあの馬鹿をどうにかする方法は分かんねえかなぁって思ってたが

 

 

 

「ですが……かつて貴方は、一度彼を止めた事がありますわよね?」

 

 

言われた言葉に思い出すのは、やっぱりあの時の大喧嘩。

ああ、そういやそうだ、っていう思いもあるが

 

 

「あれ? 何でネイトママン知ってんの?」

 

「うちの娘は中々に達筆ですのよ? 口ではまだまだですけどね」

 

 

ああ、成程、ネイトが手紙で語ったのかな? と手を思わずぽんって打っちまう程に当たり前の解答だ。

まぁ、そりゃあんなド派手な喧嘩してたら話のネタになったりするよなぁ、って納得するしかねえ。

確かに、あれはあの馬鹿を止めれた唯一のエピソードなのかもしんねえけど

 

 

 

「あれは……あの馬鹿が勝手に引いてお流れになっちまった話だかんなぁ……届いたっていう話じゃないぜ? ママン」

 

「───分かってるじゃありませんの」

 

 

んん……? と首を傾げるとママンは微笑を一つして、手指を重ねる。

いや、マジ美人だなぁ、とその仕草に少し見惚れていると

 

 

 

「私はあの子の事をずっと知っているわけではないので断言は出来ませんが……でも、多分、ずっと言い続けてますわよ。()()()()()()()()()()()()鹿()()()()って」

 

 

 

そう

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()とは言ってませんわ」

 

 

「───」

 

 

たった少しだけ、言葉が、文字が違うだけ。

それだけで、言葉の意味は全く変わる。

俺に勝っていい、と勝てるでは全く意味が違う。

 

 

 

そんな簡単な事を──ずっと見逃していた。

 

 

それを理解したら、ママンが先程言った、"分かっている"発言もどういう事か読み取れる。

そう、俺はシュウに勝ったとは欠片も思ってもいない。

あれはあいつが勝手に引いて、お情けで譲ってもらっただけ。

勝っていない。

勝っていないのだ。

 

 

 

 

俺はあいつに勝っていないといけないのに……あいつに甘えて勝たないまま力を借りていたのだ

 

 

 

「……おいおい」

 

 

シュウ、オメェ……俺より馬鹿かよ。

 

 

オメェ、分かっていなかった、なんて言わせねえぞ。

分かってただろうが。

俺が中途半端な立場に甘えていたことも。

俺が──俺がお前に対してくっそ馬鹿な事を言って、お前を雁字搦めにして苦しめた事も。

 

 

 

お前の結果だけを俺が掠め取って、馬鹿していたのも全部分かってただろうが……!!

 

 

お前、俺よりは頭がいいだろ。

お前も馬鹿だけど、俺と違って馬鹿になる事を選んだだけであって、完全完璧な馬鹿じゃねえだろ。

それなのに、オメェ、俺よりも馬鹿な事してどーすんだ馬鹿じゃねえのか。

俺達は互いに互いが必要だから、共に夢を預け合った筈だ。

その前提条件を守れていねえ俺の言葉を素直に頷くなよ。

本来、お前と馬鹿をやる事は出来ても、馬鹿にする資格がねえ俺が、思わず馬鹿か、と言っちまうじゃねえか。

そんな風に思っていると、何時の間に隣に立っていたママンが俺の前に紅茶が入っているカップを置いてくれた。

おっと、と思っている間に、ママンは目にも止まらぬ速度で俺の前に座り

 

 

 

 

「──あの子からしたら、貴方の夢が、酷く素敵なものに思えたのでしょうね」

 

 

言葉が終わると共に紅茶を飲むママンを見ながら、出来る限りバレないように唇を噛む。

分かっている、これはフォローだ。

ママンの優しさに甘えているようなものだ。

 

 

 

……それでも、そうなのかもしれねえなって思うのは自意識過剰かなぁ

 

 

親友は俺にとっては形になる事も無かった夢が形になったようなもんだった。

別に自分が無能である事に苦しみとか痛みとかネシンバラ病のような思いなんてこれっぽーーーーーーーーーーーーーーーーっちも思っちゃあいないが……まぁ、そこら辺、男としての憧れみたいなものはやっぱりあった。

そりゃ、まぁ、ガキの頃にかっけぇなぁーー、でも俺と芸風違うから無理だなこりゃあって笑って諦める事すらしない、羨望だけで終わった憧れだった。

なのに、そんな言葉にすらならない願望が、まるで神肖(テレビ)から出て来たかのように現れたのがシュウだった。

 

 

 

きっと、あの時、誰よりも感激した事だけは誰にも知られていないだろう

 

 

姉ちゃんにだって喜んだ事はバレていたとしてもその度合いまではバレていないと思う。

同じような夢を望み、しかし全く同じ事が出来ない他人と出会えるなんてそうそうねぇって今の俺には分かる。

同じ目的を持つ人間なら武蔵がある。

同じような能力なら……まぁ、探せば居るんだと思う。

 

 

 

でも、同じ目的で、全く別の能力で、しかし互いに一人じゃMURI案件だっていうのは中々ねえだろって思う

 

 

だから、ただ友と言うのは違う気がして、親友と言い合っているのだ。

……まぁ、若干ホモ臭いのは自覚してるけど、ネタになるからしょうがねえな!

だから、俺の意思はシュウの意思で、シュウの意思は俺の意思って感じ。

互いが互いの"もしも自分が行えたら"を行っている、と確信している。

そこら辺、何か姉ちゃんやネイト、ホライゾンとも違うのだ。

 

 

 

こう、スカーってするっていうか、見てて楽しんでしまうっていうか……

 

 

それも含めて俺達の関係、というべきか。

ともあれ、ママンは俺の夢が素敵だったからあの馬鹿も命を賭けて付き合ってくれているって言いてえんだろうけど……なら、それは俺にも当て嵌まる。

あの馬鹿の最強っていう夢は聞いててわくわくしてくるし──その夢の裏側に誰よりも共感している。

夢もそうだが、それ以前の大前提──葵・トーリと熱田・シュウという存在の大前提に、失わせるような世界は見ていて息苦しい、というものがあるのだから。

 

 

 

「ぁーー……」

 

 

だから、俺は喪失を否定する世界を作る為に世界を征服し、その王となる。

そして、シュウはそれを肯定する為に、誰よりも速く、疾走し、駆け抜け──誰も追いつけない事を願ってしまった。

あるいは、それもまた自分の裏側のようなもんだからこもしれねえ。

何れは、死んじまうけど、それ以外では普通にビビるし、怖え俺の対極として、親友は死を恐れず、笑いながら自壊する。

そして自壊する度にぜってぇ、こんな風に思っている。

 

 

 

ああ──壊れるのが俺で良かったって

 

 

とりあえず、結論は一つであった。

 

 

 

俺は確かにすっげぇ悪いが……あいつもちょいとふつーーに悪い

 

 

 

 

※※※

 

 

はぁーーーーーー、ととんでもなく重たい溜息を聞きながら人狼女王は小さく笑いながら、しかし何も言わなかった。

少年の溜息の理由も分かる。

私が少年の立場でも同じ事をしただろう。

約束、とやらの内容は知らないが……少年の態度を見る限り、無茶振りをしてしまった、という感じなのだろう。

内容を聞いていないから断言は出来ないが、少なくともこの少年がやって後悔するかしないかの瀬戸際に立たされるくらいには少年にとって罪悪感を感じる内容だったのだ。

それだけならば、確かに武蔵総長の方が悪い、と言えるが

 

 

 

……間違いなく、それを承知の上で受けたっていうのに気づいたら、溜息も吐きたくなりますわよね?

 

 

自分は武蔵総長程、彼を深く知っているわけではないが、8年前とつい、数時間前の相対で彼が愚か者でないくらいは理解している。

そんな愚かではない彼が愚かな選択肢を取った理由は幾つもあるのだろうけど

 

 

 

 

命を預けてもいい友というのはいい事なのか悪い事なのか……

 

 

 

持っている友人である武蔵総長にとってはいい事も悪い事もある、という所だろうか。

男女の仲とはまた違う、という事なのだろう。

そういう意味では男と女の仲は複雑そうでシンプルだ。

大事である、という想いを持って、行動するのだから、道筋が複数あっても結果にあるのは笑って欲しい、一緒に幸せになりたい、という結末だけだ。

 

 

 

「10年間待たせてしまっているのだから、相当な事になりそうですわね?」

 

「……」

 

 

珍しくはぁ~~と溜息をする事で答えないようにする武蔵総長が中々に可愛い。

娘の事などについての前哨戦のような感覚だったのだが、ここまで掘り下げてしまうとは思ってもいなかった。

 

 

 

うちの娘も大変ですわねぇ……

 

 

ここまで極まったㇹ……友情を見せ続けられるというのは女にとっては中々にむっ、となる光景。

まぁ、それは男から見た女でも同じなのであろうけど、女の子の方がか弱いから別の話ですわね。

 

 

 

まぁ、それも含めて青春ですわね。

 

 

素直じゃないあの子だと無駄に自分でハードルを作って飛んだり跳ねたりしているのが簡単に想像付くが、甘やかすだけの母にも狼にもなる気が無いから頑張るといいですの。

まぁ、それこそ素直じゃない代表の武蔵副長を反面教師にするくらいは考えないと。

 

 

 

 

※※※

 

 

 

「──ぶぇっくしょん!!!」

 

 

熱田はいきなり来たくしゃみに鼻を啜りながら、誰か噂でもしてんじゃねえか、とそこら辺にある石を蹴る。

今は浅草を適当にぶらついている。

もう周りは完全に夜に包まれているが、出歩いているのは何が何でも治療してやる、と刀を抜いた留美と弓を構え始めた智から逃げる為である。

途中で智の胸を遠慮なく揉めたから逃げれた物を、留美が途中で

 

 

 

「シュウさん! 貴方のおっぱいはこっちです!!」

 

 

と自分の胸を下から抱えた時には空気が死んだものである。

留美には羞恥心とかそういう事を教えるべきだと思うが、普通、そういうのは親がするべきじゃねえかって切に思う。

別に留美の両親は死んだりはしておらず、ただ三河に住んでいたからあの騒乱後、確か関東に向かったらしい。

一応、武蔵に来ないか、とは言ってみたが、慣れている地上の方が、との事らしい。

 

 

 

「まぁ、それに大戦争快進撃中の武蔵に無理矢理来させんのもなぁ」

 

 

でも、それはそれとしてお願いだからあんたの娘に真っ当な教育を。

具体的には羞恥心と──男を見る目についてとか。

男を見る目を男が教えれるわけねえんだから、せめて母親が教えてやって欲しいモノである。

熱田・シュウとはろくでなしなんだから……正直、智を愛している事に偽りはなくても、時折、同じ場所に立っている事にどうしようもない申し訳なさを感じる。

完全完璧な錯覚だ。

自分が勝手に枠組み作って、勝手に変な意識を作って、勝手に遠ざけているだけの自分だけが勝手に納得する下らない自己否定なのは承知している。

だから、戯言だ、と思って出来るだけ無視している──が、思う事を止めれない辺り、ネシンバラとか点蔵を馬鹿に出来んかもしれん。

 

 

 

「全くもって阿呆過ぎる」

 

 

そう思って再び石を蹴ると、蹴った先の石が思いっ切り桜の花びらが積もっている場所に突撃するものだから、簡易ストレス発散道具も消え去った、とどうでもいい事を考え

 

 

 

「──いや、桜っておかしいだろ」

 

 

二度見すると間違いなく桜の花びらは存在している──所か何時の間にか近くにある桜は季節外れの狂い咲きである。

思わず、袖からメスを取り出そうとするが……よく考えれば浅草のこの場所は見覚えがある。

いや、武蔵なら表層区なら全て見覚えがあるのは当然だが……浅草、桜、となると超ーーーーーーーーーーーーーーーーー絶に嫌な記憶がモリモリと込み上がってくる。

あ、くそか、と思い、引き返そうとするが

 

 

 

「──ええ。間違いなく阿呆の極みでしょうね」

 

 

すっげぇ嫌な声が聞こえた時点で逃げ遅れた事を悟ってしまった。

半目で声が聞こえた方に視線を向けると……一際大きな桜の下で尼の格好をした美少女が立っていた。

野暮ったい服装であるにも関わらず、顔立ちそうだが服を押し上げるように主張してくるプロモーションはとてもじゃないが仏道の人間とは思えない。

今は頭巾を取っているが、昔は頭巾の下にあった夜空のような髪は流しており、それが余計に女の美しさを際立たせている。

成程、これを見れば大抵の男は陥落するか膝を着くかの二択に迫られるのかもしれない。

 

 

 

トーリ辺りは絶対にダメだな。うん、ぜってぇ駄目だ。あいつホライゾン一筋……いや、まぁミトツダイラは例外にしていいけど、他の女にもフラフラする野郎だからなぁ……

 

 

今頃、人狼女王辺りにもコーフンしてんじゃねえだろうか。

 

 

 

※※※

 

 

「ああ! ダメ! ダメだママン! そんなエロスボディを強調した裸エプロンとかネイトが泣いて出来ねえ事するなんて! くっそぉ!! 俺、人妻ジャンルにもよえぇって認識したよ! 人の可能性は無限……!!」

 

「あらあら。もう我慢出来なくなったのですの? さっき絞めた鹿のお肉による焼肉パーティーが始まるといいますのに──ふふ、勿体ないですのよ?」

 

 

※※※

 

 

……駄目だ、勝っている姿が思いつかねえ

 

 

あいつ、そんなんだからホライゾンに勝てねえんじゃねえか? と思うが、俺には関係ねえから知らん。

はぁ、っと小さく溜息を吐くと、尼の女はそんな俺の姿にくすくす笑い

 

 

 

「──相変わらずですね。夜に桜、美女と男が一緒にいるというのに貴方は昔から変わらずつれないんですから」

 

「死人に対して何をときめけって言うんだよ」

 

 

しかも自分が殺した相手にときめくなんてどんな倒錯した趣味だ。

生憎と俺の好みは巫女とロングヘアと片目義眼と料理上手&大酒豪だ。

他の女なんて知るか。

 

 

 

「あら? その割には生前でもそんな感じでしたけど?」

 

「言っただろ。あんたは()()()()()。だから、いい加減、こんな場所で地縛霊なんてやってねえでとっととあの世に逝け」

 

 

しっしっ、と本音でどっか逝けと告げていると逆に女は実に嬉しそうに笑う始末。

本来ならばその笑みは男女問わず人を蕩かせる魔性の笑みであるのだろうが、全く興奮しない。

別に不感症ってわけじゃねえが、好みでもねえ女を前に興奮するような猿のような節操の無さを持っていないだけである。

 

 

 

……何でこんな女に死んでも付き纏われなければいけねえんだ……

 

 

……まぁ、これは智の母も時々やっている事だから、こいつ咎めると智の母も咎めないといけなくなるから強くは言えないんだが。

色々やったんだから、こいつはもう少しそれこそ本場の地獄に漬けるべきじゃねえか? 

 

 

「いえ、それが……正直、向こうの地獄は面白味が足りなくて……もっと阿鼻叫喚な地獄があると思ってましたのに……」

 

「例えば?」

 

「ええ。例えば名前の通りの等活地獄などですが、まぁ、端折って語れば本来ならば文字通りの殺し合い地獄が展開されているかと思えば、ヤンキー達が盗んだバイクを使って走り抜けて"ヒッーーーハッハーー!!"と叫びながら殴り合う思春期有り勝ちな物になってまして。お陰で時たま鬼の看守も混ざって暴走して、結果、両成敗になりまくってまして」

 

「……現代に毒され過ぎてねえかそれ。それは世紀末という名の別の地獄だぞ……」

 

「何を罰したいのか謎ですわぁ……」

 

 

死んだ先までそんな頭が花畑のような場所に行くのか、と思うと微妙に同情しかねないが、まぁ自業自得であるなら同情する理由もねえ。

発端が哀しみによる被害者であっても、その後、ブレーキを失い、哀しみを振りまいて……どうにも出来なくなってしまったのはこの女のせいだ。

情けを掛ける理由は特になく、だから俺はこの女を躊躇わずに殺したのだが

 

 

 

 

「──やっぱり、同じ地獄に堕ちるのなら無間地獄(貴方)に抱かれるのが一番ですわ」

 

 

クスリ、と流し目でこちらを見てくるド変態に付き纏われる事になるとは思ってもいなかった。

あーやだやだ、と思って耳塞いで無視するかと考えていると

 

 

 

「──随分と不機嫌ですね。そんなにも自称親友の約束を破ってしまったのが苛立たしいのですか?」

 

 

「──」

 

 

聞き逃せない質問に仮想の夜の帳に空想の闇の帳が重なりかける。

思わず舌打ちをする。

うっかりつまらない挑発に乗って、この女の望み通り無間地獄が開きかけるなんて実に馬鹿らしい。

その舌打ちに、女は呆れた顔で

 

 

「苛立つ所ですか? 今の。貴方の自称親友が縛り上げた約束は私からしたら遠回しに死ね、と告げているようにしか思えませんが」

 

「……失わせない国を作るのがあの馬鹿の夢だ。なら、出来得る限り殺さないでくれっていうのはらしい話だと思うが?」

 

「なら、その夢は夢ではなく妄想、と名付けた方がいいですね。もしくは吐き気を催す偽善、とかどうでしょうか?」

 

 

ミシリ、と空間が軋む。

女の死によって止まっている時間に地獄が重しとなって崩れそうになっている。

その軋轢を一心に受けているであろう女は、しかし一切気にしないまま言葉を重ねた。

 

 

「誰も傷つけず、苦しめず、死なせずに作り上げれるものがあるならそれはかみさまの奇跡によって生み出された素晴らしい(つまらない)御伽噺です。そんなのはただの俺が考えた妄想すっげぇーー! とかご都合主義のオンパレード、奇跡は主人公サイドの特権、誰も死なない、誰も傷つかないっていうつまらない作者が自分を慰める為に作り上げた自慰作品です。現実舐めんなっていう事です」

 

 

漏れ始めた無間が薄れていく。

……思わず納得した事によって、怒りがあっさりと収まってしまった。

暴論ではあるが、全くもってその通りだ。

例え、それが小説だろうが神肖(テレビ)の中だろうが、物語(じんせい)を作っている以上、ある程度の現実は必要不可欠だ。

勿論、それは現実に生きている自分達には諸に返ってくる概念であり、熱田・シュウにはよく分かっているつまらない普通であった。

 

 

 

「……むしろ逆に貴方がそこまで守れたのが問題なんですけどね……守れなかった方が楽でしたでしょうに」

 

「──馬鹿言え。守れているわけがねえだろ。現にこうして悪霊に憑りつかれている」

 

「悪霊になるような存在しか手を出さなかったでしょう? 貴方の一族への恨みとか馬鹿言う連中は全員生かして返したくせに」

 

「悪党だからな。正義の味方を減らしまくっていたら、その内、退屈してしまいそうだ」

 

 

再びの呆れた吐息を聞きながら、俺は後ろに振り返った。

来た道へと戻る行為は、この夢から覚める事に繋がる。

……智や智の父ならそれは頑張った報酬になるのだろうけど、俺には過ぎた夢だ。

例え、相手がろくでもない女であったとしても死人と再会するのは余計な重みであり、望むべきではない解放だ。

 

 

 

熱田・シュウは後ろに振り返るのではなく、前に向かって疾走するべきだ。

 

 

そんな俺に死人(かこ)が囁く。

 

 

「──分かっているのでしょう? 貴方の親友が貴方に望んだ事はご都合主義になる事。現実で空想を築き上げるようなありもしない夢幻。本来ならば不可能事を……でも貴方は成し遂げれる力をつけた」

 

 

勿論、知っている。

そうでなければ誰にも負けないなんて言える筈がない。

……別に勝負事で負けなかったわけではない。

内容だけならば中等部の自分は傍目からは負けに負けまくっていただろう。

届かない事なんて両手の指以上だ。

だから、自分に出来る不敗は心だけだ。

誰にも負けねえ、違う、俺に勝っていいのはあの馬鹿だけだ、と歯を食いしばり、膝を着かない。

無様だと嗤うがいい。

愚かだと罵るがいい。

狂気の沙汰だと震えればいい。

この身は永劫疾走し続ける無間地獄。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……そうでしょうね。でも、その奇蹟の代償は今も貴方を蝕んでいる。空想ではない現実の貴方が奇蹟を為し続けるには等価交換が必要だもの。どれだけ痛い主人公(ヒーロー)になれても……ヒトである貴方には必ず結末(エンディング)が待っている」

 

 

それも今更な話だ。

何れ世界征服と世界平和が成し得たのなら……そんな世界に無間地獄は不要だ。

どういう結末になるかは知らないが、怪物(ゴミ)怪物(ゴミ)らしく最後まで痛烈に笑う方がいいのである。

最後だけ泣くなんて、そんなネシンバラの本に出てくるような人間らしい結末何て笑い飛ばす方が、ほら、後腐れない。

 

 

 

 

「──愛している人の為に生き方を変えよう、と思わないの?」

 

 

 

最後の質問に、思わず空を見上げる。

夜桜に映えるような星空は仮想だろうが、本物だろうが変わらない。

時が止まったかのような空を見上げながら、熱田は笑う。

 

 

 

「──そうだな。世界征服だけなら智に言われたら変わる余地はあったかもしんねえけど……でも末世があるからな」

 

 

世界全てが滅ぶと言われている末世。

実質は希薄化との事らしいが、そんなのはどうでもいい。

大事な人が全ていなくなるかもしれない、という事態を前に、自分だけの事を考えている余裕なんてない。

確実に、絶対に何とかなる、という道をつける為ならば、俺は何度でも剣となる。

自分だってどこにでもいる人間だ。

何か違う可能性だったり、イベントによって方向性だったり、手段が変わる事はあるだろう。

だけど、目的だけは変わらない。

 

 

 

───何があろうとも……智だけは絶対に守り抜く

 

 

浅間・智が傷付く可能性なんて万が一にも許せない。

出来る事ならば、寿命による死以外で智を死なせたくなんてない。

そして何より、彼女が幸せに生きれる為の世界であって欲しい。

それを作る為に疾走しているのだ。

それを邪魔するのならば世界だろうが末世だろうが──武蔵であっても敵だ。

ああ、そういう意味ならばやっぱり、智が相手でも生き方を変える事は不可能かもしれない。

疾走を止めるという事は、智を守る事を放棄する事になるというならば

 

 

 

「──ああ、そりゃ止まれねえなぁ」

 

 

自分でも思うさ。

馬鹿な生き方をしているって。

誰からも狂っていると見做され、誰からも死んでしまえと願われるような生き方なんて馬鹿だろってそりゃ思う。

まぁ、でも……貧乏籤が一人で済むなら、それこそ正しい等価交換かなぁって思ったりもする。

自分が受けた苦しみを、もう誰にも受け継がせずに済むのならば、それは価値無しの俺に確かな価値が生まれた時ではないか、と思いたい。

 

 

 

 

自分勝手な自己肯定だが……それくらいのささやかな肯定くらいは願ってもいいだろう。

 

 

 

だから、熱田は過去にはもう振り返らず、そのまま歩き去る。

数秒後には消え去る夜桜の景色に別れを告げ、己が居るべき場所である現実に向かう。

──振り返らない己に対して、最後に心底から呆れた、しかし不機嫌そうな声が届けられた。

 

 

 

「──本当、憎らしい程、愛しているのですね」

 

 

はっ、と思わず笑いそうになった。

まさか、性悪女が最後の最後に、そんな実にらしいようでらしくない呪いの言葉を吐き出すとは。

だから、思わず、振り返らないまま、ちんけな呪いを斬り払う言葉を告げた。

 

 

 

「──ったりめぇだろ。この世の全てを引き換えにしても足らないくらいには愛してるわ」

 

 

 

 

※※※

 

 

「──いや、これ直接本人に言えよ俺!!」

 

 

浅間は何やら目の前で幼馴染が不規則発言をしている光景を見てしまった。

浅草の自然区画にあるもう散ってしまった桜並木がある場所で、幼馴染の彼が突っ立って唐突に叫ぶ、というのは何だか凄くネシンバラ君臭いですね……。

 

 

・浅間 :『ネシンバラ君ならこういう時、どうします?』

 

・未熟者:『ふっ、僕ならこう、片手を顔に当てて、震えながら語尾に"……!"を付けて地の底を震え上げるような叫びを放つね……!》

 

・眼鏡 :『ふーん。じゃあ、今度、君の作品で適したシチュエーションと台詞があったら僕の方で実演してあげるね。動画も送る』

 

・未熟者:『やめろぅーーーー!!!』

 

・眼鏡 :『やめろ?』

 

・未熟者:『止めてくださいお願いします!!』

 

・眼鏡 :『男らしく責任取ってくれるならいいよ』

 

・煙草女:『あったら今頃、こんな見苦しくなってないさね』

 

・貧従士:『だ、第六特務! そんなダイレクトな! 書記はもうどうしても変わりようが無いのですから、もう少し穏便に! 穏便になっても見苦しい事には変わりありませんけど!!』

 

・未熟者:『アデーレ君は僕の名誉を守る為に出てきてくれたんじゃなかったのかい!?』

 

 

共食いが過熱したようで何よりである。

後、名誉については知らん。

ともあれ、今はシュウ君の脳と体が心配だ。

 

 

「……シュウ君、何やっているんですか?」

 

 

とりあえず声を掛けると急にシュウ君の全ての動きが止まる。

何だか物凄い作られた笑みでこちらを振り返り

 

 

「──ちなみに何時からそこに?」

 

「いや、さっきの直接本人に言えよ、俺、の部分からですが」

 

「……そうか。ほっと半分以上、残念9割以上」

 

「何ですかその意味不明な割合」

 

 

気にすんな気にすんな、と手の平を振るシュウ君は確かに何時も通りだ。

別に何かが変わったようには見えないが……

 

 

 

「……シュウ君、何かありました?」

 

「何にも? 何時も通りの夜と散った桜があるくらいだろここは」

 

 

 

また下手糞な……

 

 

私が、シュウ君に風景の良し悪しだったりを聞くわけが無いし、本人だって今更武蔵の風景に見惚れるような細かい性格じゃないだろうに。

ここまで嘘が下手糞な癖に、隠し事だけは多いというのはどういう事だ。

その事に少しイラっと来て、川の流れのように弓を取り出すと、シュウ君は分かりやすく警戒する。

 

 

「おい智! そのまるで朝、太陽が昇ったから目が覚めるみたいな自然なシークエンスはなんだ!」

 

「分かっているじゃないですか。今、シュウ君が下手糞な芝居をして苛立ったから自然なシークエンスで弓を用意したんです」

 

「そんな鬼嫁みたいなシークエンスを常駐させんじゃねぇーーーー!!!」

 

 

いや、無茶な。

シュウ君だってトーリ君の芸が面白く無かったら川の流れのように拳か剣を振っている癖に。

ともあれ、どうせ追及しても天岩戸よりも頑丈なシュウ君がポロリと漏らすとは思えないので溜息を吐くしかない。

もしかして、ここで何時も理解という名の諦めを得て満足しているからダメなんですかねぇーーと思うが、とりあえずシュウ君の手を握る。

 

 

 

「ほら。とっとと家に戻って療養して下さい──リュイヌさん達の方も今の所怪しい様子は見れないから大丈夫ってナイトやナルゼ、自動人形の皆さんも太鼓判を押しましたから」

 

 

怪我を押して動き回っている理由が、もう大丈夫だから、ではない事くらいは流石に理解している。

現在、武蔵には他国の人間が多く乗っているのだ。

リュイヌさんやゲーリテさん、それ以外となると一応、同盟を築いている里見・義頼さんや義康さん、真田十勇士等、現状、武蔵は色々と抱えているモノが多いのは事実だ。

その中、武蔵の武力の象徴であるシュウ君が怪我で倒れているわけにはいかなかった、と思ったのだ。

ただでさえ、トーリ君は連れ去られ、それを救出する為に点蔵君やミト、二代が抜けているのだから、猶更に気を引き締めなければいけない、と考え、自分は健在である事を外にも内にも知らしめたかったのだ。

 

 

 

本当……そういう事だけには気を回せるんですから……

 

 

気を回せても、気配りが出来ていないのが致命的である気もするが、流石に今、思いっ切りツッコめば、治療が無駄になるから出来ない。

後でしよう、と思い、少年の手を引く。

すると、困ったかのような笑みを浮かべながら、ついてくる。

 

 

 

……ぁ

 

 

引っ張って気付く。

少年の肉体は鍛え上げられていて、見かけよりもやっぱり重い、と思っていたのだが……反抗していないのを含めても、予想以上に軽い事に気付く。

無論、トーリ君とかネシンバラ君に比べたらやっぱり重いのだが、その重さをはっきりと理解した瞬間、改めて少年の背丈が自分とそこまで変わらない事に気付いてしまった。

自分は女子の中では長身だが、男性に比べても大き過ぎる、というわけではない。

男子の平均身長よりも少し低いか、ちょっと大きいかくらいだろうと思ったが……そう考えると幼馴染の少年の体は酷く小さく感じてしまった。

 

 

 

「……」

 

 

握りしめた手の平はとても硬い。

……点蔵君やあるいはムネさんの手を見たわけではないが、やっぱりそういった剣を握る特訓をした人よりも硬いのではないか、と思う手だ。

鍛え上げた証拠だと思うが……それに反し、少年の手の平はとても小さかった。

女性である自分よりも少し小さな手。

とてもじゃないが剣を握っているとは思えない。

その小ささに、言いようのない感情を覚えながら、しかし前へと歩き出そうとしていると後ろから言葉をかけられた。

 

 

 

「なぁ、智。唐突過ぎて変だって俺でも思うんだけどさ──特別とかそういう意味じゃなくて、何かこうふと思う、幸せって智は何で感じてる?」

 

 

言葉通り唐突な疑問に振り返って顔を見るべきか少し悩んだが……やっぱり振り返らずにそうですね、と間を作る。

そんな質問を問うた意味は分からないが、問われた内容自体は別に答えるのが難しくも無く、嘘を吐く理由も無かった。

 

 

 

「──ずっと皆とっていうのは皆、やりたい事がありますから無理は言いませんが……ですけど、その中で出来る限り皆と一緒に普段通りでいれば十分です」

 

 

特別が欲しくない、とは言わない。

普段の、ずっと続くような平穏の生活も勿論好きだが、今みたいに懸命に走り回る生活も決して嫌いではない。

ちょっと不謹慎であるから流石に大きくは言えないが、確かな事をしているという実感と、トーリ君とホライゾンの下なら正しくは無くても間違ってはいない道を進んでいると信じれるからだ。

きっと、それは皆も同じ気持ちだから、ここに立っているとも信じれて、恥ずかしい様な嬉しい様な気分だ。

勿論、それは後ろにいるシュウ君も同じ気持ちだろうと思っていると、やっぱり、そっか、と答える声と

 

 

 

 

「俺にはそれを与えてやれねえけど──作れる馬鹿の手伝いくらいは出来るか」

 

 

 

「──」

 

放たれた言葉を咀嚼する。

咀嚼し終わった後に得るのは当然、呆れの感情だ。

どうしてどうでもいい事には鋭かったり何だったりするのに、当たり前の事に関しては自分を省いて考えるのか。

もう、と思い──そのまま勢いよく振り返り、そのまま両手で思いっ切り彼の頬を挟んだ。

ばっちーーん! という感じの甲高い音が響いたが、丁度いい罰である。

 

 

「ふぁにすんだ」

 

 

あ、ちょっと可愛い、と思うが、今は封印するべし。

いいですか、と前置きを置き、浅間にとっては当たり前な事を少年にしっかりと理解出来るように口を開いた。

 

 

 

 

「──シュウ君だって、もう居ないとおかしいくらいの"当たり前"の存在なんですから。シュウ君も十分に与える事が出来てます」

 

 

あぁーーー、とわざとらしく空を見上げて、数秒、彼は大きく溜息を吐き

 

 

 

 

「そーいうのは苦手だ」

 

 

そう言いながら、優しく挟んでいた私の両手を外し、先に帰ろうとする。

あからさまな逃走に溜息を吐くべきか、苦笑するべきか悩むところである。

他人から嫌われる事は疎まない癖に、他人からの好意を受け取るのはほんっとうに苦手なのだ。

そこら辺、得意そうで本当に素直に嬉しがるトーリ君とは正反対である。

別に他人の生き方を真似しろ、とかそんな事は思わないのだが、参考程度には見習うべきではないかと思う。

それは逆に然りでもあるのだが。

だからこそ、互いに互いの欠点を補っているのだと思うけど……とりあえず、言いたい事は一つである。

 

 

 

 

「……ダメ男」

 

「ぐぅっ……」

 

 

 

分かっているなら直せばいいのに。

 

 

 

 

 




おかしい……本当はトーリとママンの描写だけで終わる予定だったのに指が暴走して更に倍の文字を書いていた……。


あー、えーととりあえず端的にあとがきを。
今回はトーリと熱田の比較みたいな感じの一話に仕上げてみました。
現に同じような相談でも、色々と正反対の結論なのです。
トーリは昔の約束に対して失敗したのでは? という感覚に対して、熱田はその約束は正しかった、と肯定的。
ママンのアドバイスを受け入れるトーリに対して、死んだ尼の言葉も、実は密かに浅間の言葉ですら受け入れていない熱田。
等々という所で、二人の意見の相違、というか同じ約束に対してだけでも相対的、という感じなのです二人は。




似てるようで似ていない、違うようで同じ、というのが二人のコンセプトなのです。



ちなみにシュウの一番馬鹿な所は、ネガティブな理由で死にたがっているとかではなく、ポジティブに突っ走っていたら、周りのネガティブ達に色々と歪められ、結果、ポジティブにネガティブな事をしてしまう、という馬鹿かお前は! という所である。




後、あの尼は本当は生きていた、とか霊体とかではなく普通に死人。
原理は浅間の母と同じだと思いますけど……原作でもそこら辺、何故……? と思う所ではあったので、まぁ、あの尼にも適正はあったのでしょう。
本来は、この尼を見る度に誘惑対抗チェックをしないといけないレベルの魅惑ボディと美少女フェイスなのですが、熱田だけは一切合切効いていない所がこの尼がくねくねして嫌がらせのようなストーカーをしてくる根本的な理由になっているという。
まぁ、実際、熱田は効いていないのではなく見ていない、というのが正しいのですけどね。



どれだけ魅力的な女であっても、智じゃねぇし、と魅了に興味を持たないという



性格は本来、こんな風にアドバイスのような皮肉を吐かず、むしろ聖女のように他者と接し続けていた人なんですけどね──まぁ、某魔性菩薩がモデルなので当然、その聖女性には裏がありますが。
ただ、あの魔性菩薩のように破滅的な自己愛からくるものではなく、破滅的な怒りから来るものなのですが……そこは何時か語れる時があったらなぁ……って思います。




長々となりましたが、感想・評価など出来ればお願いします!!




PS
前回はどうしてあそこまで読んで貰えたのだろうか……!!

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