不可能男との約束   作:悪役

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何でもかんでも抱えて

何でもかんでも黙って

何でもかんでも馬鹿を見る

配点(コミュ障(字余り))


不器用な馬鹿

「義経さんをどうにかして腹立たせるかですか………」

 

焼肉屋で何時ものメンバーで集いながら、浅間は掲げられた話題を反復した。

この話題が出没した理由は簡単だ。

武蔵の、否、松平である私達がやらなければいけない歴史再現、"三方ヶ原の戦い"を私達にとって有利な形に持っていく為に正純が交渉したのだ。

 

 

三方ヶ原の戦い

 

 

それは松平である私達にとっては完全な敗戦の歴史再現だ。

それも相手は清武田という強国相手だ。

なるべくならばその被害を小さく収めたいという正純の交渉に、何かよく似た双子のお爺さん相手に色々としていたのだが、途中で酔っぱらっていた義経さんが色々言ってつまりこうなったのだ。

 

「智! 智! 何か最後ら辺は焼きそばに夢中になってましたわよ!?」

 

「ああ、ほら、食材を台無しにしたら駄目じゃないですか」

 

まぁ、そういう事だ。

そしてそれをどうにかする条件として義経さんは自分のような感情的な不感症相手をどんな感情でもいいから呼び起こす事は可能かという事になったのだが。

 

「面倒なんで喜美。やってきたらどうです? 一発で義経さんもストレス上限解放されるんじゃありませんか?」

 

「ふふふ、何、あんた。私を神格化して自分の主神を疎かにしていいの? 私のエロイボディに欲情してエロ巫女として目覚めちゃったのかしら? 罪作りなボディには罪たっぷりの信者が生まれるのね!? ほぅーーら浅間ー。その罪の象徴揉み揉みされても怒っちゃ駄目よ! 神の試練よ!!」

 

握り拳を握って一発かまそうとしたら迷わず逃げだしたので、流石……と思いながら、それならばと今度は周りを見回して

 

「────皆が遠慮なく向こう行けば解決じゃないですか?」

 

「あ、浅間さん! 今、物凄い他人事みたいな気分で話していますけど浅間さんもこっち! こっちのメンバーですから!」

 

「じゃ、じゃあ………み、皆、でい、嫌がらせ?」

 

鈴さんの一言にざわりと空間が揺れる。

その空気に瞬時に立ち上がったホライゾンが皆を目と手で抑えながら、鈴の元まで向かって

 

「流石です鈴様………武蔵が行うべき最適にして最善の方法を自動人形以上に分かっておりますね…………これにはホライゾン感銘を覚えました。そう、武蔵の最善な方法は嫌がらせ。トーリ様が汚い全裸で敵を混乱に陥れている間に正純様が冷たいギャグを放って相手の動きを止め、その隙に熱田様が全員を切り刻むという隙のない総長連合の連携こそが持ち味! 時にはその中に浅間様やミトツダイラ様やネシン…………点…………いやまぁそこらは置いといて、つまり多様な結果を生むのです!」

 

「ホライゾン! 誤射! 誤射機能については何時OFFモードにしてくれますの!?」

 

「い、いや! 今、明確に誤射ではなく狙ってかました台詞があるで御座るよ!?」

 

「ああ! 全くだよ! クロスユナイト君と意見が合う日が来るとは! でもその赤いマフラーについてはよくわかっているね………! と何時も思っていたんだよ! 君の燃える正義の具現なんだろう!!?」

 

点蔵君が無言でショックを受けているのは初めて見ました。

ナイトが点蔵、元気出せ、でもメーやんが隣で「そうですね。点蔵様のマフラーは実によくお似合いですものね」と言っているからしゃあないと手で伝えているのだが、どうして手から読み取れてしまうのだろうか………武蔵病ですかねぇ…………。

 

「あれ?」

 

だからこそ本来あるべきであったツッコミが無い事に最初に気付いた。

 

「シュウ君とトーリ君は?」

 

こちらの告げた名前につられて全員が二人がいた場所を見るとそこにはトーリ君と思わしき制服と明らかに人体を引きずった後が裏口にまで続いていた。

全員の沈黙と同時に何故か視線が自分に集まったので、仕方なくうん…………と頷き

 

 

「…………酷い事が起きますね」

 

 

 

 

 

 

 

正純はどうする? と自問した。

長寿族としては間違いなく最高齢である義経を相手に怒らせたり、笑わせたりするような事を行うにはどうすればいい?

 

・副会長:『やはりここは私が何か面白い事を言うべきか?』

 

・●画 :『止めて正純! 交渉が完全撤廃されるわ!』

 

・あさま:『そうですよ正純! そんな危険な事をしたらそこで三方ヶ原の戦いが起きかねませんよ!』

 

・蜻蛉切:『そうなったらそこで一纏めに割断というのはどうで御座ろうか? おお、拙者、提案しておいてなんで御座るが、そうなるとすっきりで御座るなぁ』

 

・立花嫁:『…………武蔵は何時もこんなレベルが低い会話で乗り切っていたんですか…………』

 

何か武蔵初心者に物凄い心配をさせてしまった。

だが、まぁそれはそれとしてならばどうする?

 

・副会長:『会計二人。嫌がらせで義経に何かしてみたらどうだ?』

 

・守銭奴:『いいだろう? だが、それをやるのにいくら出す? 70か? 80か? 無論、もっとでも当然構わん! 何せ金の数は増えれば増える程私の世界は輝くからな…………!!』

 

・〇べ屋:『やーーーだぁシロ君! そんな素敵な所ただで他に見せたら勿体ないよーー』

 

金の亡者はとりあえず使えない事は理解した。

どうしたものかなぁ、と思っていると視界に何やら二つの人影が追加された。

 

 

馬鹿と馬鹿であった。

 

 

 

 

待て……! と正純は思わず口をへの字に曲げて表現するが、義経はこちらの変顔を気にするだけで背後に現れた馬鹿二人の気配には気付いていないらしい。

馬鹿二人は何やら周りにどーもどーもとか告げながら、じゃんけんしている。

あいこでそいやこうやくたばえやとか呟きながら熱田はともかく葵にしては珍しく高速じゃんけんを行っている感じなのだが、どうしてお前らそんなあいこが続くんだ。

だが、それも50回目辺りで熱田が負ける結果に終わってトーリがやーいやーいお前、俺に負けてやがる! この馬鹿野郎ーー!! と叫んで喧嘩を買った熱田の拳に合わせてクロスカウンターを行い、二人して地に着く。

その光景に関東の雄達も無言で変なモノを見る目になり、その後にこちらに目を向けるから思わず目を逸らす。

 

「何じゃ。急に目を逸らして。急に儂に恐怖を覚えたか。中々愛い奴だのぅ、正純」

 

「ああ、いや、うん、確かに恐怖と言えば恐怖だな。一番の恐怖は止める為には同種にならないと止めれないという辺りがな…………」

 

「ほう。儂のようになりたいとは剛胆な事を考える奴じゃな!」

 

かかっ、と楽しそうに笑う義経は愉快だからか周りに全く頓着していない。

ああ、これが長命故の慢心という奴なのだろうか。

だから全裸馬鹿が座り込んでいる義経を相手に無言で背後に近寄っているのにも気付かず、結果

 

 

 

「ちょんまげ~~」

 

 

 

という悲惨な事態に繋がった。

数秒、間違いなくこの場所は時間が停止した。

しかし停止した時間を物ともしない馬鹿は不敵にふっと笑って親指を立て

 

 

「─────助けに来たぜ、セージュン」

 

「貴様ぁーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

ナルゼは第三者の立ち位置の心に入れ替えて惨劇を描いていた。

諸に頭にちょんまげされたロリ婆は総長の首を掴んで真っ赤な顔で

 

「き、貴様! な、何て事を! 何て事をーー!」

 

「おやおやぁ? ちょっとさっきどんな挑発やギャグ言われても動じないとか言っていたロリがいた気がするんでちゅが気のせいでちゅたかねえええええええええええええええ!?」

 

「くっ………!」

 

これは何時も通りの流れね、と思いながら描いていると次は副長がやれやれ顔で

 

「あのな、トーリ。お前と違ってそこのロリ婆は一応ちゃんと仕事して順調に年齢重ねて脳が腐りつつあるロリ婆なんだぜ? もう少し敬意っていうのを示さねえとそりゃ苛立つだろ? なぁ、義経」

 

「う、うむ? そ、そうじゃ。中々良く分かっているではないか」

 

「おーーそうだそうだ。王様っていうのはやっぱ高い所にいると威厳が出るものだよなぁ。よし、俺が高い所に連れて行くからそっから雑魚共を見下ろせよ」

 

言いながら熱田は義経の前に、総長は後ろに回って椅子を持ってきてそこに何故か立って諸に股間を突き出す態勢になっているのだが、義経が疑問に思うよりも早く動く事によって義経の思考を止めつつ

 

「よーしよし。そう、そこだ。その場所で頭の角度はそこに置いて、よし、ナイス角度だぜ。そっから正しく天をぶっ飛ばす目で下を見下してー────高い高いちょんまげ~~」

 

「貴様ぁーーーーーーー!!」

 

「あれあっれぇ? っかしいなぁー? 俺は世界を包まんばかりに包容力を持っている義経と会話しているのに何やらあっという間に沸点が上がったロリ婆がいるんですがもしかして偽物じゃねえかーーーーぁ?」

 

「くっ………!」

 

「おいおいおい、待てよ親友。ちょっと義経が見下げるには少し高さが足りていなかったんじゃないか? オメーこそちょっと世界の覇王とか自ら名乗る痛々しい奴に対して高さが足りてねえだろ。なぁ、義経?」

 

「う、む? そ、そうじゃ。全く気が利かない小僧じゃな」

 

うんうん、と今度は総長が椅子を動かしている間に副長は少し離れていた所に何時の間にか置いていた鉞を掴んでぶんぶんと振って家の間取りを確認して、うんと頷くとそのまま総長の方に向かって

 

「よし! 親友! もう一回義────」

 

つ、と次の言葉を言う瞬間に鉞を峰で上段からもぐら叩きをするように総長に思いっきり叩きつけた。

結果、当然躱す能力がない総長はそのまま諸にインパクトを受けて、地面にその姿勢のままめりこみ、頭頂部まで埋まる結果になった。

ちなみに下はコンクリートである。

何をやっているんだこの馬鹿共はの視線を受けても平然としている二人は構わずボケを続ける。

 

「おお、ボケ術式便利だなぁ。一般人にこれやったら間違いなく両足骨折とか頭蓋骨陥没くらい起きるだろうにボケで済みやがった! まぁ、それでもトーリにやってこのダメージなら今度頑丈なウルキアガにやってもいっか」

 

・ウキー:『貴様ーー!!』

 

邪魔な表示枠を即座に手刀で破壊して、とりあえず埋まった総長を片手で引きずり出す。

 

「どうだトーリ? 地中の中は? 一つ新たな世界を覗けた感じじゃねえか? 今度覗きに使うか」

 

「くっ…………! さっきまで超怒ってたけど覗きに使えるならしゃあねえか!!」

 

うんうん、と二人して頷き、最後に二人揃って親指を立てて

 

「んじゃ、そういう事で」

 

あ、これは来るわね、とナルゼは即座に耳と目を塞ぎ、直前に正純が俯いて耳を閉じるのを見ると自分の直感が正しい事を悟り、耳を閉じているから聞こえないが、それでも予想したであろう声が響いただろう。

多分、こんな感じ。

 

 

 

「そう言う事で、じゃねえよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の説得は全てトーリに任せて熱田は椅子で一人とりあえず酒を飲んでおいた。

馬鹿の付き合いは馬鹿らしいなぁ、と苦笑しながら酒を飲んで

 

「…………ん?」

 

外に一人気配を感じた。

足音も、周りも気付いてはいない…………否、反応は遅れたがそれでもトーリと正純を除いた全員が即座に外の気配を悟り、それぞれの対応を行っているのを見つつ、外の気配が中の動きに一切頓着せずに店の中に入って来る。

 

 

「随分とまぁ、面白そうな話をしてんじゃねえか。俺も混ぜてくれよぅ」

 

 

好々爺という感じの表情を貼り付けているが、この強者達に囲まれながらそんな顔を浮かべられるのならばかなりの修羅場を潜ってきていると楽に教えてくれる初老の痩せたおっさんがそんな事を言って入って来た。

しかも見事にP.A.Odaの制服を着ているが、逆に開けっ広げ過ぎて敵意を持ちづらい。持ってなくても斬るけど。

すると真田の鬼型が顔見知りなのか物凄い嫌な顔を浮かべながら

 

「松永・弾正・久秀………!」

 

「おぅ、政康じゃねえかよぅ。鬼型は見た目変わらねぇから若作り楽だよなぁ」

 

「今は清海です。貴方とのろくでもない思い出を刺激するのは止めて頂きたいものです」

 

「つれねぇなぁ。あんだけ一緒に謀反万歳犯罪万歳していた若い時代を否定するなんてよぅ? 一緒に女風呂覗きに行って番している婆さんにお前がしばき倒された事言いふらすぞぅ」

 

「さ、最悪! もう言いふらしている……! それにあの時自分だけ張り倒されたのは貴方が囮にしたからでしょーが!!」

 

黒歴史っていうのはどこにでもあるものだなぁ。

そのまま正純の方に向かうかと思えば、一旦どんな面がいるかという風に周りを見回し、最後に俺の方を見ると

 

…………は?

 

何かおっ? とまるで運よくタイムセールスに来れたラッキーみたいな顔をこっちに向けて来た。

生憎だが全く顔見知りでもない。

何やらトーリは知り合いだったみたいだが、俺は完全に記憶にない。

となると武蔵の副長だからか、もしくは

 

 

……まぁた熱田の悪名かね

 

 

前者ならまだいいけど後者なら面倒だぜとマジで思う。

何故ならそうなった場合、心底面倒だからだ。

憎悪というものは理屈に収まる感情ではなく、道理で通る者でもなく、ただ己の心の決着でのみ終わる勘定だ。

でもまぁ、俺を見て普通に笑うなら前者か、とは思うが

 

「ま、いっか」

 

そうなった時に考えればいっかと未来の自分に責任を押し付けた。

何かあったならばその時に何かすればいいんだし。

 

 

 

 

 

 

 

正純は松永が入った後に乱された会議に一区切りをつけて、溜息を吐いた後、松永が葵に何やら珍しいものはないのかよぅ、と煽ってどっか行かせた後にそのまま一人酒を飲んでいた熱田に近付くのを見た。

 

・●画 :『まさか副長! 爺とフラグを立てるつもり!? 時たま金を払いたくなるくらいにネタになってくれるわね……!』

 

・剣神 :『じゃあ払えよ』

 

・●画 :『いやよ。だってマルゴットとの生活に必要なんだから。その代り後で浅間の絵をくれてやるわ』

 

・剣神 :『高画質にしてくれよ。後、絵は4つくれよ。巫女服、制服、私服、全裸で』

 

・あさま:『か、勝手に人を交渉材料にしないでください! しかも衣装差分……!』

 

最後一つ衣装無かったけどいいのか?

まぁ、別にいいかと思って、正純はとりあえず松永の行動を一旦見守り、横のナルゼが絵を描きながら密かに何かいざという時の構えをしているんだろうなぁと思う。

 

「いよぅ、熱田の代理神よぅ。今代は随分と若けぇのがなったもんよなぁ」

 

「あ? 別に自慢する事じゃねえよ。成りたいなら変わってやろうか?」

 

背後から松永・弾正・久秀が喋りかけているというのに本人は本当に何時も通りだからもうこれは驚く必要はないなと正純は理解した。

妖精女王の時に一度驚いたのだからわざわざ二度同じことを繰り返していたら間違いなく周りの外道が酷い目に合わしてくるからな……!

 

「おいおい、神様ってそんな簡単に変えられるのかよぅ。威厳無くね?」

 

「マザコン拗らせたような神様に威厳があると思ってんのかよ。武力除けば基本ちょーーーーー面倒くせぇ奴だよ」

 

神罰堕ちないのかこの馬鹿。

でも、実際、スサノオって確かにまぁ、そういう話はあったからなぁ………事実には神様も黙るしかないのだろうか・

というか

 

…………何だその会って話したことがあるような言い方。

 

松永も思ったのか、同じ事を問うてみると本人はどーでも良さげな態度と口調で

 

「夢で何度か出て来た」

 

とあっさり言い

 

「体寄越してとかいうド変態だから出て来たら毎晩殺し合っている」

 

と恐ろしいのか馬鹿なのか分からない言葉を呟く。

 

「おいおい神様と殺し合いかよぅ? どんな夢バトルなんだよ」

 

「ああ、夢だからか神様だからかは知らねえがこの前は巨大隕石クラスの大きさと速度で堕ちてくる鎌鼬の塊とかいう素敵なの落とされた。頭吹き飛びかけたけどその前に野郎を真っ二つにしてやったから俺の無敗記録は更新だぜ」

 

ふっ、と笑う辺り冗談なのかと思ったが、この馬鹿、この手の冗談を作る頭ないよなと思ってナルゼを見るとナルゼはナルゼで頭に人差し指を指してくるくると回している。

気持ちは分かるが少しは味方してやろうという気持ちはないのか? ないんだな? だよなぁ。

 

「ま、最近はあんまり出て来なくて精々しているが─────で、何の用だよ爺。世間話をしてぇならトーリかそこの正純にしとけよ、ああ、トーリもトーリだが正純の扱いは気を付けろよ。周りを巻き込むお寒いギャグを平気で放つからな。正気じゃねえ」

 

「失礼をぬかすな馬鹿。正気じゃないお前からそんなショッキングな言葉を言われると凹むぞ─────どうした皆? そんな息を止めて。普通に笑ってくれて構わないぞ?」

 

「無理を言うな…………!!」

 

表示枠含めて約全員でツッコまれるとおっかしいなぁと首を傾げてしまうが、次に挽回すればいいのだ。

そう、まだネタは幾らでもあるし、作ればいいのだからな………!!

 

「まぁ、そこのお寒い副会長も楽しいけどよぅ、俺は今、昔から気になっていた疑問を解消できる相手とよーやく出会えたんだから付き合えよぅ」

 

「面倒くせぇ…………やるなら回りくどい事言わずにしろよ」

 

くぁ、と欠伸までして心底面倒を表現する馬鹿にへいへいと笑う辺り、これは松永公が大人なのか、熱田がガキ臭いだけなのか。やっぱり後者だよなぁ、と思って二人の会話に耳を傾けていると正しく直球の言葉が放たれた。

 

 

 

 

「じゃあお前さん─────数年前に女殺さなかったか(・・・・・・・・)? 具体的にいやぁ、3年まえくらいによぅ」

 

 

 

思わず周りが松永に視線を向けるのを熱田は感じ、その後に自分に集中するのを面倒くせぇと思いながら、酒を飲み

 

「知るか。こちとらその頃は色々と外から流れて来た奴らと相対とかもしたからな。殺すつもりで仕掛けたわけじゃあねえが、結果そうなった事はあったかもしれねぇよ」

 

「おーー、オメェさん長寿系にかなり恨まれているもんなぁ。うちからも時たまそっちに向かうジジババ連中が行ってたなぁ─────そいつらは大抵負けて帰って来たがな」

 

そんなテメェが殺して帰った奴なんて見た覚えねぇけどなぁみたいな事を言われても知るか。

俺だって知らねえよ。

 

「大体、それだけで勝手に犯人扱いされて堪るか。というかテメェのような爺に言われるのだけは癪に障るわ」

 

「ああ、別にこれでお前が犯人であっても何もしねぇよ。むしろ逆にお前が犯人なら少しは悪評が減るんじゃねえかぁ?」

 

「はぁ? 凶悪犯だったのかよ」

 

「おうよ」

 

それに思わず正純を見ると、正純ももしかして、という感じで

 

「……………それは確か、尼の格好をした女性が集団を洗脳して聖連に立てついた事件か?」

 

「そう、それだよ。聖譜にゃあ乗っていない事件だから名付けるわけにもいかないし、無視するには女は聖連だけを目的にしたわけじゃあ無かったのか、無差別にやったもんだからどこも大変だったよぅ。武蔵はそこら辺、宙に浮いていたから被害はあんま無かっただろうがよぅ」

 

あーー、そういやぁ、そんなのあったなぁ、と熱田も思い出した。

確か、何か尼の格好をした女が老若男女、種族、宗教、国会一切問わずに集団テロを起こそうとしていた事件だったとか。

だった、というのはテロが起きる前に止められたからだ。

だが、それは一つの国家ではなくそれこそ聖連所属国家からP.A.ODAまでが一致団結して壊滅させたらしい。

まぁ、そうは言っても結局の所、その女は何をしようとしていたのかはさっぱりだったらしい。

目的も知ろうとする前に叩き潰したとの事らしい。

そういう意味では女がどんな方法を持ってそれだけの人をまとめ上げたのかも不明だが………

 

良い噂は一個も無かったなぁ…………

 

特に女である(・・・・)事を強調された噂であった。

まぁ、余りこんな場で語る事でもあるまい。

 

「で? 何をどう思考捻ったらそんなとち狂った推理になるんだよ。ボケたなら俺を巻き込むなよ」

 

「おう、それがな。討伐の時、実は最も大事な首謀者の女を取り逃がしちまったらしくてよぅ」

 

そいつは大変だな、と熱田はどうでもよく同意した。

目的の人物を取り逃がしたのだ、様々な国が集まって討滅したのならば責任の押し付け合いなどもしていたかもしれないなとは思うがどうでもいい話である。

だが、そこで俺が絡められる話には確かに見当がついた。

 

「それで逃げ出した先が武蔵だったってか?」

 

正解と答える代わりに口を歪める爺に溜息を吐く。

何で最近、俺が接する男や女は一癖以上の面倒なのばっかりなんだ。

 

「成程、確かにまだ推理にはなっているがそれだけで俺に言うのもおかしな話だろうが。武蔵の人口、結構いんだぞ。その女がどれだけ強いかは知らねえが実力者ってぇなら当時の総長連合や引退しているジジババ連中含めたらかなりいるだろうが。無論、最強なのは俺だが」

 

「いいねぇ、最強─────尼の女が死んでいたのは山というより地上のちっけぇ村の近くだった。死因は心臓を一瞬で一刺し。あんだけすらりと貫かれていたら痛みとかは無かったんじゃねえかねぇ、経験ねぇけど」

 

「武蔵じゃないんだったら余計俺じゃねえ気がするが?」

 

「場所は武蔵の航路の下だった。降ろす手段なんて幾らでもある─────で、ここで推理に辿り着いた結論がここで出るんだが、よくあるだろぅ? 被害者の手荷物確認。それで奴さんの情報封(フォルダ)を開けたらよぅ───────どう見ても明らかに当時のお前らしい写真が盗撮角度でばっちりとよぅ」

 

成程、ぶった斬りたくなってきた。

 

 

 

 

 

 

 

浅間は表示枠から伝えられてくる情報に混乱していた。

 

・副会長:『…………皆。この事は知っていたのか? 当時、情報は追っていたが流石に武蔵に逃げたかまでは追えなかったからなぁ』

 

・銀狼 :『智? そこら辺、どうなんですの? 入国管理をしていましたわよね?』

 

・あさま:『確かにその頃にはもうしていましたが…………どの時期かは知らないから断言は出来ませんが、それらしい人物が入った事なんて記憶には………』

 

と、ふと思いだした事があった。

春終わり…………そうだ、桜が散る時期だったのを覚えているからその頃だ。

何か父が慌てて、朝っぱらに出かけた事があったような記憶がある。

思わず何だったのか、聞いてみたのだが父は

 

「少し昔の知り合いに問題があったみたいでね。ちょっと行ってくるよ」

 

と、どう見ても怪しいが、余り自分を関わらせたくないという意志を感じれたので問い詰めてもいいものかと思って、結局どうしようも出来なかった事があった。

だが、この情報を聞いてみると

 

…………確かに父さん、嘘はついていないですね………

 

シュウ君は(・・・・・)確かに昔からの知り合いだ(・・・・・・・・・)

それに問題があったと言うのならば確かに今回の件はそうだろう─────シュウ君が人を殺したというのならば。

 

「─────」

 

どうして? とは思わない。

もしもここでシュウ君がああ、俺が殺したとか言っても私はシュウ君を恐怖で見る事も無ければ、批難もしない。

だって、シュウ君がそんな事を好きでやるわけがないのだから。

相手の女性は聞く限り悪人………かどうかは知らないが、そうであったとしても絶対に、シュウ君が悪人だからで殺そうとするわけが無いのだ。

断言出来る。絶対だ。

だって本当なら誰かに向けて剣を振る(・・・・・・・・・・)うのが大嫌い(・・・・・・)な彼が殺そう、と思うわけないのだ。

そして何より

 

 

彼はトーリ君の剣なのだ

 

だからトーリ君が嫌だと思う事を彼が嬉々としてやるわけがない─────だってそれは彼も嫌いな事なのだか(・・・・・・・・・・)()

 

 

 

そう結論付けるとふと視線を感じて、そっちに振り返るとメアリと誾がこっちを見ていた。

何やら驚きやら納得やらがごちゃ混ぜになった表情をしているので何でしょうか、と聞くと誾がメアリにどうぞと振り、メアリがいちど一礼すると

 

「熱田様をご信頼なさっているのですね、浅間様は」

 

「え? あーいや、普段の外道テンションの時は一切信じていませんが…………いきなりどうしてです?」

 

まさか心に思っている事を口からつい漏らすなんてベタな事を? いやそんな馬鹿な。

それとも精霊としてのメアリの感覚がこちらの感情を読み取ったのだろうか?

いやいや、誾さんも同じような事を感じ取っているみたいだからそれとは違うような。

だから、理由を聞いてみるとメアリはとっても綺麗な微笑で

 

「jud.─────熱田様の事を信じ切っているという強い意志が顔に出ていました。素敵ですね」

 

まさか点蔵君が何時もどんなダメージを受けているのかを知る事になるとはと頭を抱えてとりあえず赤面した顔を手で隠していると表示枠から音声入力で彼の声が響いた。

 

 

『成程成程────知らねえから勘違いだばぁか』

 

 

 

 

 

 

おいおい、このガキ………

 

松永は思わず脳内で苦笑した。

少年の反応が余りにも素直な反応だったからだ。

無論、それは馬鹿扱いしてきた事ではない。

素直だったのは言葉通り────それで本当に噓を吐いているつもり(・・・・・・・・・・)なのかという事だ(・・・・・・・・)

ド下手糞にも程がある。

口調の問題とか台詞の問題とかではない。

顔面に諸に聞くな問うな喋らすなと言わんばかりの表情を貼り付けている(・・・・・・・・・・)からだ(・・・)

ここまで下手だと逆に笑えてくる。

 

「ほぅ、知らねえとぅ?」

 

「Jud.全く、これっぽっちも知らねえなぁ。尼とか言われても俺、巫女派だから興味ねえ」

 

「おいおい、自給自足じゃねえかよぅ、パワハラじゃねえか?」

 

「馬鹿め。うちの巫女にそんなのは通用しねぇ。むしろ押してくるんだ…………男には勝てない勝負を延々と押してくる恐怖が分かるか? ああん!!?」

 

「とりあえず尻に敷かれているのはよぉく分かった」

 

ガキはこれだから面白れぇなぁとカラカラ笑いながら

 

 

 

「そうかぁ、知らねぇかぁ─────地元で家族殺しで有名(・・・・・・・)だからてっきりオメェさんがヤッたかと思ってたのによぅ。ああ、その地元も吹っ飛んでんだけどなぁ」

 

 

 

 

正純は一瞬、松永が何を言ったのか理解できなかった。

しかし、時間が止まらないようにその言葉を受けた人間の反応も止まらない。

 

「───────ぷっ、く、ははは」

 

熱田は本当に心底愉快そうに腹を抱えて笑っている。

その笑みは全く嘘の形もしていなければ本当に腹が痛いとお腹を押さえている。

その反応に思わず松永の方も

 

「くかか」

 

と笑いだすので思わずどっちも大丈夫かと先に思うが

 

「───────え」

 

何時の間にかするりと扉から巫女服を着た少女が入って来ていた。

扉の開閉音も足音すらしない完全な足運びと気配の隠蔽。

それをわざとではなく自然と成しているからこその体術だと言わんばかりに少女は自然に店の中に入って来た。

周りの戦闘系が思わず武器や姿勢を変えるのに一瞬躊躇う程の完成度に、一人一切動揺しなかった義経がほぅと呟く。

 

「自然との合一。見事なもんじゃのぅ。剣狂いの巫女に相応しいのぅ」

 

一人勝手に上から目線している所が流石だが、少女───神納・留美はその感想に微笑を浮かべて一礼をしながら、しかしそのまま歩く。

目指す場所は彼女の主神の熱田────かと思った瞬間、手はそのまま刀に伸び、視線は完全に

 

「神納・留美!?」

 

松永の首に殺意が灯ったと思った瞬間に声を出したつもりだがか、と言った所でもう既に抜こうとして

 

「やめぃ、留美。一々騒ぐな」

 

甲高い男が響いて、思わず瞬きを一回すると松永の首が斬られると思われていた光景は振り返らずに鉞を後ろに突いて抜刀しようとしていた刀を刃の先で柄尻を押さえている熱田の姿であった。

一切振り返らずに大剣の先で抜刀しようとする刀の柄尻を押さえるのにどれだけの能力が必要なのかは知らないが、少なくとも並みの人間では無理なのは解る。

 

「……………ですけど、この人は貴方を好奇心で貶めました。それは私達に対する侮辱です」

 

「別に侮辱でも何でもないだろ。地元で言われていたのは事実だし、部分的には否定出来────」

 

「─────部分的にも完全に否定出来る事です!!」

 

留美の悲鳴にも似た叫びに流石に自分も含めて少女に注視せざるを得ない。

熱田ですら少し面食らって振り返るのだから仕方がない。

相も変わらず松永は笑ってはいるが、この人、悪びれないっていうの似合うなぁ。

だが、熱田は困ったもんだという感じで

 

「お前が怒ってどうするんだ留美。感謝はするけど疲れるだろ?」

 

「シュウさんが怒らないから私が怒る事になるんですっ」

 

「そうは言っても怒るとそこの爺、喜ぶだろ。その癖ちゃっかり獲物構えているから面倒くせぇし」

 

おおぅ、と楽しそうな顔で手元から切れ味が鋭そうな短刀をいけしゃあしゃあと取り出すのだから凄まじい。

ここには武蔵の役職者はおろか関東の雄達が集まっているというのにいざという時を躊躇う気が無いという事だ。

 

…………否、ここで仮に松永を消したとしたら逆に歴史再現の違反として咎められるからの強気か?

 

彼は信長に二度目の謀反を起こした時に自爆するのだ。

私達は倒す事は出来るが、潰す事は出来ない。

まぁ、そもそも葵が潰す事を容認しないし、私もそんなつもりはしないからそこらも逆手に取られているのかもしれないが、どっちにしろ食えない話だ。

だが、それは今、置いといていい。問題は

 

 

…………熱田が家族殺し………?

 

 

あの熱田が、自身の家族を殺したというのか?

里見義康が顔色を変えて熱田を見ているが、今は正直そこを気にしていられない。

 

・副会長:『おい、お前ら………』

 

・●画 :『武蔵は来るもの拒まず、去る者追わず。そして来た人間の過去には触らずが習慣というか暗黙の了解よ───あんただってそうだったでしょう?』

 

確かにその通りだ。

自分の時だけ恩恵を受けて他人は許さないというのは道義から外れる。

だからそこは文句は無い。

無いのだが………

 

・副会長:『浅間は?』

 

・銀狼 :『すみません正純………ちょっと今は………』

 

そうか、と正純は口の中で呟くだけに留めておく。

あれ程信頼していても信じる事はともかくショックを受けない事は別なのだろう。

浅間の事だから数分もしたら落ち着くとは思う。熱田の事だしな。

なら

 

・副会長:『立花夫妻。そっちはどうだ?』

 

・立花嫁:『正直に申すのならば断片的な情報であり、詳細までは────私が聞いたのは一夜を開けたら熱田の者は少年と刃を一つ残して他は誰もいなくなったという事でしたが』

 

・煙草女:『は? それだけ聞くと公主かは知らないが神隠し系に聞こえるさね?』

 

・立花嫁:『それはどうだか知りませんが…………ただ熱田神社はその事実を否定しましたが本人はノーコメントを貫いたらしいです。当時の年齢を考えれば貫くしか無かったのかもしれませんが』

 

・貧従士:『武蔵に来たのは小等部入学直前でしたからその前とすると6歳以下ですし………』

 

それならそうなるだろうよ………

 

その頃の年齢に何がどうなったかは知らないが最低でも両親が"いなくなった"というのならば感情に振り回される以外の方法をしろとか言われても無理でしかないだろう。

それを周りは強いたというのか。

流石に無理を言い過ぎだろうと思っているとああ、今でも私、まだまだ感情的だなぁと思えるのは余裕があるからか。

しかし

 

・●画 :『というか。同じ三河出身のあんたが何で何も知らないのよ』

 

 

 

 

 

 

熱田は正純がナルゼの目線と周りの表示枠を見て、狼狽える様に立ち上がり

 

 

「な、なんだお前ら! 見るな! そんな目で見るんじゃない………!」

 

 

と言うものだから成程、何時も通り狂っただけかと思う事にした。

 

 

 

 

 

 

・副会長:『い、いや待て! そうだ! 二代! お前はどうだ! お前の方もそこら辺疎かったよな!?』

 

・蜻蛉切:『まぁ、流石に拙者もそうで御座るなぁ────拙者もその頃には父上や鹿角様と一緒に初歩的な鍛錬をし始めていたから余裕なんて無いで御座るからなぁ』

 

責められない事情が……!

 

正純は同郷の友人の仕方がない事情を責め立てたような気分になって思わずふぬぅ系の顔を作る。

 

・金マル:『あちゃぁ』

 

・〇べ屋:『ほらぁ』

 

・賢姉様:『やっぱりぃ』

 

・副会長:『せ、せめて最後の語尾は合わせろよ! 何かすっごい違和感を感じるだろ!?』

 

・銀狼 :『ツッコむ所そこでいいんですの?』

 

やかましい。

とりあえず空気を入れ替えられたという事にしておく。

えーと確か議題は……そうだ、熱田の事だが

 

………有りか無しならば有りな話ではあるが………

 

例えばさっきの話だ。

もしも尼の話のように彼の家族がどうしようもない人間であったのならば可能性はあると思うくらいには熱田の動きを予想できる。

とは言ってもこれは流石に情報無しの勝手な判断だと思っていると熱田がまたもや面倒くせぇという溜息を吐いて

 

「爺は一々昔の話をぶり返すのが趣味かよ。留美がそういうの怒るからとっとと帰れ」

 

「オメェさんは怒らねえのかよぅ?」

 

「最強になるのに何の足しにもならねぇ」

 

頬杖突きながら言う姿にこれはマジで言っているなと思うが、神納・留美はシュウさん! とちょっと怒っているんだが、あいつ本当に尻に敷かれているよな、と思う。

 

「まぁ、陰口とかより愉快だったから笑えたがな────でもよく考えたら舐められるのは癪だよな?」

 

小首を傾げながらの呟きに今度は神納・留美がえ? というのに同意するように私も

 

「え?」

 

と言った瞬間、松永が宙を浮いた。

 

 

 

 

 

 

義康は何とか一連の動きを見切った。

まず最初に動いたのは武蔵副長だった。

彼は特に奇抜な行動をとらなかった。

やった事は簡単だ。

単純に足で松永が座っている椅子を蹴り上げようとしたのだ。

おかしいのはその速度と力だ。

地面についていた右足が一秒後にはもう松永の椅子の底を捉えて上に持ち上げようとしている。

初老過ぎとはいえ人が座っている椅子を軽く持ち上げているのだ。

人の膂力は軽く超えているな、と結論付けた。

そして見事なのは松永の方でもある。

身体能力など全盛期を当の昔に過ぎているだろうにその動きのキレは見事としか言えなかった。

松永はその攻撃に対して一切逆らわなかったのだ。

上に持ち上げ、押し上げられる動きに合わせるようにテーブルに右手を付きながら、そのまま軽く浮くかのようにジャンプしたのだ。

私には軽い動きに見れたが、それだけで老体はテーブルについた右手だけで倒立の姿勢になった。

飛ぶ時に右側に寄るようにしたからか、右側に即座に足が落ちていく。

しかも牽制用に左手には先程握っていた短刀を握りながらだ。

武蔵副長は追撃はする気は最初から無かったみたいだが、もしもそのまま追撃をしようとしていたら楽にはいかなかったのだろうとは思った。

 

 

そして松永が着地した時には椅子が天井を破壊しながら自壊する音だった。

 

 

ゴキッ、とわざとらしく肩を鳴らす松永に対して熱田の方は今のでいいやと言わんばかりに酒を飲んでいる。

松永は愉快そうな笑み、熱田ははい終わり終わりという感じ。

対照的だが、仮にもP.A.ODAの重鎮に手を出し、出された側の表情か? と義康は思うが松永は気にしていないようで

 

「なんだよぅ? 剣を使ってくれないのかよぅ?」

 

「喜ぶ奴に使っても嫌がらせにならないだろうが─────喜ぶ間もいらねぇって言うならいいけどな」

 

そう軽く言いながら松永は武蔵副長に遂に背を向けた。

思わず思わぬ修羅場の連続に緊張していた自分は一息を吐いてしまい

 

「大丈夫か義康?」

 

と義頼に察せられてしまったのが弱みを握られた様な感じがして思わず

 

「何でもない!」

 

と叫んで顔を逸らしたのがまた自分に苛立つ流れである事を後から自覚するから最悪だと思う。

これでは典型的な己が悪い事をしたのを叫んで否定して視線を合わせないようにしているような形ではないか。

 

「くそっ」

 

原因は解っている。

余り聞きたくない単語を聞いてしまったからだ。

 

 

家族殺し

 

 

余りにも良く知っている単語だ。

私の場合は家臣殺しだが、それでも自分の家族を奪われたという意味ならば一緒の扱いにしていいだろう。

しかも私の姉を奪った男が正しく今、私の気遣いをした男なのだから。

 

 

里見義頼

 

 

それは二人目の名前であり、今の義頼からしたら二つ目の名前。

私の姉から奪った名前。

本当に最悪なのは決してこの男がただ私欲から殺したわけでは無いというのが分かってしまう事だ。

だから、彼が黙っている理由が未熟な自分を守る為なのだというのが分かって余計に私自身と義頼を許せなくなるのだ。

だが、そうなると

 

 

…………武蔵副長もそうなのか?

 

 

家族殺しなどという汚名を受けても何一つ文句も反論もしないというのは義頼と一緒なのか?

誰か未熟な誰かを守る為に沈黙を続けているのだろうか?

最初の事件もそうだ。

実際に知らない可能性もあるが、結局の所、明言を避けている。

無論、これらはこちら側の勝手な妄想だ。

出会ってまだ数分、会話すらしていない相手の心情を知る事が出来る方がおかしいというものだ。

だが、もしもそうだとしたら

 

 

…………くそ。

 

 

まるで周りの全てが自分よりも遥か先を行っているような感覚を得て義康は最後まで一言吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ終わる、次終わる、後もうちょっとと書いていたら15000突破………自分の指めぇ!!

最新刊も買って超ハッピー! でも中身がやっぱりかぁ!の内容に色々とぶちまけそうでしたよ!!

ともあれ今回はほぼ熱田のお話でしたね。まぁ、ちょっと3巻はかなり熱田が色々と関わって来る内容なので申し訳ぬ。

次回が義経との次の会話で次がフランスとのバトルかなァ。

あ、所で─────うちの馬鹿共が非常にアレな事をいうのでアンケートのようなものを。



ぶっちゃけ──────この留美くっ付けろよと思っている人、挙手をお願いしたい。
あ、アンケートは感想では駄目なのかな?なら活動報告に作ってあるのでそちらの内容を見て御答えをお願い致します。



では感想・評価などよろしくお願い致します。



PS活動報告のもよろしくお願いします。

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