不可能男との約束   作:悪役

34 / 48

これまでと一緒

これからも同じ

配点(最初のミス)


最大の失敗

 

点蔵は四面楚歌の状況にあっていた。

右にも敵、左にも敵。正面にも敵。背後にも敵。上空にも敵。

何故なら

 

まさか自分の行動が即バレするとは……!

 

点蔵は自分に傷が残されているという事を知った瞬間に実家の荷物を纏め上げ、退学届を密かに置いて傷有りと一緒に過ごした丘でミルトンと一緒に行こう、と覚悟をしていたのだ。

最早、文字通り、身一つ。

己の行動で武蔵に非は生まれないようにしたのならば、良かろうと思って覚悟した瞬間に現れたのが全裸であった。

自分でも何を言っているのかさっぱりなのだが事実なのでどうしようもない。

 

「おいおい点蔵……オメェ……その犬臭さのままどっかに行こうとしていたのかよ!? 忍者だからって清潔さを失っていいわけじゃないだろうがYo! 俺を見習えよ! この全裸芸が見苦しくねえように浅間に頼んで脇とか股間とか気を使ってんだぜ! ───特に股間」

 

「ち、違いますよ!? 私が何とかしているわけじゃないんですよ!? ただ担当巫女としてそこら辺、不潔にされたらこっちまで風評被害が来るから仕方がなくやっているだけなんですよ!?」

 

「というか最後に真面目な顔で意味深な事を二度言うのは無しで御座るよトーリ殿! そして自分も確かにそこはきちんとしてるで御座るよ!」

 

えっ、という声と共に女性陣がスクラムを作るのを見る。

 

「きちんとして犬の臭いがするって事は元から……?」

 

「ほら、きっとアレよアレ……人生の負け犬の臭いよ……ああ臭う。臭うわ。あ、やっぱりいらないわ。マルゴット、吸い込んだら駄目よ? え? もう吸い込んだ? 何て事をするのよ点蔵! マルゴットの肺に入っていい空気は私のだけよ!?」

 

「ガっちゃんガっちゃん。正直、ナイちゃんでもそれは反応困る」

 

白魔女の呪いはともかく無視しておく。

とりあえず、このままでは自分は外道共の餌になってしまう。

ならば

 

「シュウ殿……!」

 

ここは生贄を増やす。

自分がこうなる事を予見しながらも、見過ごした彼は本人が思ってなくても勝手に共犯に仕立て上げて、この場の責の半分くらい受けて止めてくれれば幸いである。

一人増えればこんなにも楽になるとは素晴らしいと思って、梅組の人混みから探し出した本人は

 

……寝てる!

 

それも明らかに下手な寝たふり。

忍者じゃない自分以外の者も、自分の視線で気付いて副長の方を見て、半目でその光景を見ている。

しかし、馬鹿は諦めない。

う~~ん、とあからさまな寝相で

 

「くっ……点蔵……お前って奴は最後まで犬臭……」

 

ガクリ、と渾身の下手な寝たふり演技が決まる。

というか、演技とはいえそんな台詞をわざわざチョイスするのはセンスを疑うで御座るよ?

 

「おい、熱田───物臭なだけに犬臭、と最後を省略するのはどうかと思うぞ」

 

しかし、その後の正純殿の恐ろしい一撃で全員が息を止めた。

代表してトーリ殿が待て、と全員に合図をかけ

 

「駄目だぜセージュン! それじゃあ受け取れねえよ! てんぞーをネタにした程度で笑い取れるんなら俺達世界狙えるぜ!?」

 

「くっそぉーーーー! 今のタイミングは"来た"と思ったのに……!」

 

「というかさっきから自分をネタにしまくるのはどうかと思うで御座るよーーー?」

 

「じゃあてんぞー君から面白い重大発表がありまーーす」

 

己……! と拳を震わせるが、既に全員の視線がこちらに向いている。

ある意味、トーリ殿らしい逃げ場の封じ方だが、何人かが録音、録画の術式を出しているのは流れで御座るか? 習性で御座るか?

だが、ここまでお膳立てされたのならば仕方がない。

それに何だかこうされると最終的にはどうあってもこんな感じにされていたみたいな気分がして苦笑するしかなくなりそうだから早めに終わらしたいと思い

 

「自分……今からコクリに行くで御座るよ!」

 

と、自分なりの重大発表を盛大に発表した。

一気にすっきりしたという感覚を自分の中で消化していたのだが、周りの反応は

 

「────それで?」

 

「え……いや、本当にコクリに行くだけで……」

 

そんなオチがあるような言われ方をされても困るしかないのだが、と思う。

大体

 

「と、トーリ殿は自分の想いに同意しなければいかんで御座ろうに! 三河での自分を否定するつもりで御座るか!?」

 

「あっれえええええええええええ? てんぞー君、俺の真似って認めるんでちゅかあああああああああああああああ!? 俺の芸風すげぇって認めるんでしゅねえええええええええええええ!!」

 

「でも、確かに自分も思いますけど、これってもうほとんど総長の三河ネタですよねぇ。ジャンル違うだけでエンディングがほぼ一緒ですね」

 

「うーーん、でもその割には規模がトーリ君よりも下だから、同じネタっていうよりランクダウンした結果になってるよねぇ……お金になるかなぁ?」

 

くっ……! と唸る。

確かに一理はあるのだが、この外道共に言われると超むかつく。

しかし、救世は意外な所からやってくるもの。

トーリ殿の背後には銀髪の少女、つまりホライゾン殿が立っている。

彼女はちっちっちっ、と舌を打ち、腕を振りかぶり

 

「オラオラオラオラオラオラオラァっ!!」

 

「ホ、ホライゾン! 無駄に力強く叫びながらオラオララッシュを股間に叩き込むなんて男らし過ぎますのよ!?」

 

ツッコむ所そこかよ……と全員の呟きに便乗する。

ラッシュ攻撃を股間に全て叩き込まれた馬鹿は身動き一つ取れていない。

芸風に走れないトーリ殿というレアさにホライゾンが名実共に梅組外道ランカー最上位に入ってきたのを実感する。

正しく、これが恐怖か……! 状態である。

だが姫の暴走は止まらない。

 

「ともあれ一体何なんですか……そこの忍者」

 

「て、点蔵で御座る! 点蔵・クロスユナイトという同じ学年で同じクラスの同級生で御座るよ!?」

 

「それを決めるのは果たして貴方でしょうか?」

 

何か哲学的な事を言われた。

更には

 

「大体何ですか。突然、コクリに行くなどとイカレ……狂って退学届を出すとは。今がどういう時期か分かっているのでしょうか? アルマダ海戦で武蔵は傭兵事業をして正純様が望んだ戦争に涙を流しながらヒャッハーしたり、浅間様はズドン衝動を暴発したり、ミトツダイラ様は溜まりに溜まった破壊衝動を必死に抑えて喘いだりしなければいけないのですよ? その中で一人コクリに行くとは……頭がトーリ様になられたのですか? 迷惑な……」

 

「ど、どこからツッコめばいいので御座るか……!?」

 

「というか、おい……今、私、物凄い曲解を押し付けられたぞ……!」

 

「こっちもですよ!? 誰ですか! ホライゾンにいらん事叩き込んだのは!?」

 

「全くもって同感ですのよ!? ホライゾン、流れ弾がフリーダム過ぎますわよ!? 味方に対する誤射設定の解除を要求しますわ……!」

 

間違いではないのでが御座らんか?

政治的な結果による現在で御座るし。浅間殿とミトツダイラ殿は何時も通り過ぎて何が問題なのか分からんで御座るよ?

しかし、姫の言葉は続いた。

 

「それに───奪われる事を望んでいない御方を無理矢理奪いに行くのは何故ですか?」

 

「───」

 

これは、と思う。

この問いは間違いなくこの少女の本心だ。

歴史再現に自ら殉じようとしている人を無駄に救おうとするのは何故か? という感情への興味。

思わず、自分がそれに答えていいのか、と思い、トーリ殿の方を見ると何時の間にか復活して笑っている。

まるで頼むぜ、と笑い掛けられているように思うのは誇大妄想かと思い、今度はシュウ殿を見ると寝たふりしながら耳だけわざとらしく向け、しかも手話で「詰まらなかったらぶった斬る」と伝えてきたので無視した。

でも、そうならば彼女が求める答えに自分は実に簡単に返せる。

 

「Jud.何故なら……彼女が失われば自分が哀しいで御座る。何時か、必ず失われるのだとしても、喪失を望めば必ず自分が誇れない傷を得てしまうで御座る」

 

三百人斬りをし、体に傷を得た少女を思い出した。

彼女がその傷をどう思っていたか。

傷有りとしての言葉ならともかくメアリとしての言葉を自分は聞いていない。

だが、しかし思い出す事はある。

風呂の、そう……あの耽美で素晴らしく柔らかい自分の信仰の象徴が背中に乗ったと錯覚するようなあのボイン……! ああ、いやボインなどと言ってはいかない。そう、あれはそう何と申すべきか。あの雄大さ、そう、あれこそが

 

「世界……!」

 

大量のメスが自分に降りかかった。

速攻で横に跳んで避けたが、服に普通に切り傷があるのを見ると本気だ。

今も寝ているふりをしている副長は本気だ……躊躇いなく味方も刺し殺す気でおる……例外は浅間殿のみである。

ともあれ、とりあえず今度はシリアスに思い出す。

至る所にあった彼女の傷だが……しかしそれら全てが彼女の前面にあったのを思い出す。

それはつまり彼女は300人、全ての人の対して過たずに正対したという事である。

確かにその傷は彼女を傷つけただろう。

だが、しかしその傷を得た事に誇りを持ったかはともかく後悔で傷を恥じた事は無いだろう。

誰よりも重んじたからこそ今、処刑台に向かうのを待とうとしている御方だ。

それを間違いだ、と言える言葉を己は言っていいのかは分からない。

だが、それを正しいと言える様な前だけ向いているような人間ではないという事くらい分かっている。

そんな自分の言葉に

 

「では───ホライゾンが失われた時でも……誰かが傷ついたのでしょうか?」

 

その言葉に答える言葉を持っているのは自分だけではない。

 

「───Jud.」

 

誰もが答える事が答えである、という風に全員が唱和した。

Jud.、貴方の喪失は必ず誰かに哀しみを呼ぶと誰もが審判した。

その答えに瞳を少し開き、呆然としながらも受け止め

 

「では……メアリ様がこのまま失われれば……ホライゾンも哀しむのでしょうか?」

 

分かりきった答えだ。

 

「Jud.何れ必ず。自分達がホライゾン殿を失くしたのを知った時に哀しんだように。ホライゾン殿もメアリ殿の人となりを知れば、惜しい人を亡くした、もっと話をすれば良かった、したかったと思うで御座るよ」

 

自分の言葉に、ホライゾン殿は受け止め、そしてほんの数秒だけ眠るように瞳を閉じ、そして何時も通りの無表情を浮かばせ

 

「では───もしもメアリ様が失われるのを止めれば、哀しむのを止める事が出来るのでしょうか?」

 

同じように

 

「もしもホライゾンが全ての喪失を止めれば、ホライゾンは哀しみの感情を止める事が出来るのでしょうか」

 

余りの答えに唖然となったり、苦笑したりする面々の感情表現を見る。

全くもって同感だ。

世界征服する方針である武蔵で世界平和を、哀しみの無い世界を追及すると言っているのだ。

途轍もなく途方もない願いを、ただ己が哀しみたくないという願望から吐くとは。

正しく、強欲(フィラルジア)だ。

 

強欲による世界平和に、少女の為の世界征服。

 

何ともまぁ、似た者同士の二人だ、と全員が思い、そしてトーリはホライゾンの意思を確認し、何時もの調子で笑いながら振り返る。

そこには全てを聞き届けた剣神がおり、だから彼は神頼みをした。

 

「じゃ、そういう事だ。頼むぜ、親友───何時も通りぶった斬り一丁頼むわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

剣神は何も答えなかった。

ただ、彼は手を動かした。

そして生まれるのは表示枠の数々。

それも様々な人の姿が浮かび上がったものであり、その中にはつい先日知り合った留美達の姿があった。

そこまでヒントを出されば分かる。

今、彼は熱田神社に所属している人に連絡を取っているのだと。

現れた表示枠に対して、しかし熱田本人はずっと寝ている体勢のまま、特に真剣な感じではない声で

 

「今から俺は馬鹿共の馬鹿らしい夢に付き合って一足先に疾走する事になるから、興味ない奴、嫌な奴、その他諸々は好きに熱田神社辞めてもいいぜー。あーー、留美、そこら辺集計頼んだ。あ、金の問題があったか……おい、シロジロ」

 

「金の話か!!?」

 

「ああ。後で○べ屋襲撃しようかと思って───おいおい、どうした守銭奴共。そんな決死の覚悟を持ったような眼をして。そんな眼で見られたら3割くらいで済まそうかと思ってた気分が6割くらい奪いたくなる気分に変わってしまうだろうが」

 

ナチュラルの恐喝に二人の商人がぬぅ……! と唸る。

天災とは避けられないもの。

一度やらかして剣神の襲撃を受けた事がある商人二人は理解しているのだろう。

この男はやる。言ったらやる。自分らが以前騙し(トーク)で賽銭箱の中身をちょろ……商談成立させた時みたいにやる、と。

○べ屋半壊が前回の危機だったが、今度は全壊するまでやりかねん、と。

故に商人二人は理屈が通じない馬鹿よりも理屈が通じそうな留美との商談をする事で危機を回避するようスケジュールに組み込んだ。

ともあれ

 

『シュウさん、集計が取れました』

 

「お、早いな。で、どれだけ残った? 4割か? それとも2割辺り?」

 

『はい───全員残ると言ってくれました』

 

「……さよか。物好きな馬鹿共め、と言っといてくれ」

 

『その物好きな人達に手を伸ばしたシュウさんの今までの結果ですよ』

 

ふんっ、と鼻息を鳴らして表示枠を解除し、ようやく立ち上がる。

ナルゼがネームを書く中、シュウは何時も通りのさっぱりした表情で

 

「で? 世界征服と世界平和続行か。10年前から走り続けた目標とはいえ実際、改めて宣言すると実に馬鹿らしく感じるなぁ、トーリ」

 

「難しい?」

 

トーリが首を傾げるのを見て、ホライゾンも首を傾げるのが実に可笑しく俺は笑う。

 

「まさか。要は無茶無理無謀の難題をクリアする奇跡を連続させればいいだけだろ? ───楽勝だぜ」

 

周りが馬鹿を見る目でこちらを見るがやんのか? あ!? ととりあえずメンチを切りながら、しかし根拠はあるのだ。

何故なら

 

「何せ俺は世界最強になる男だぜ? 最強の人間がたかがその程度の奇跡、起こせないわけねーだろうが。世界征服に世界平和? いいじゃねえか、遣り甲斐しかねえよ。それを強欲による罪深さだなんだとペラ回す奴には終わった後に言やぁいい───テメェら、俺達の罪深さに救われてやんのってな。現実見て勝ち組になっている奴らに一泡吹かせる為なら俺は誰よりも速く何よりも(・・・・・・・・・・)速く疾走してやるぜ(・・・・・・・・・)

 

成程と馬鹿とホライゾンが頷くと全員でスクラムを組み始めやがる。

 

「見て下さいトーリ様。ホライゾン達のシリアスな理由を人を切る理由にしてテンションを上げています」

 

「ああ……やっべぇ、やっべぇよ親友……親友の俺ですらちょっとびびるくらいに真っ直ぐな犯罪予告だぜ……!」

 

「拙僧思うに、あれ、本気で格好いい事を言っているつもりで且つ格好良ければ斬って良しとか思っているだろう」

 

「全くですよ! ただでさえ幼女では無いというのにしかも男! この世で最も最悪な存在ではないかと小生思うのですが! これ程、幼女に危険な存在を放置するとは……!」

 

武蔵は自殺志願者が多いのが欠点だよな、とふっ、と殺意を込めた微笑を浮かべる。

とりあえず、ホライゾンには何かするのは考えるとして男3人は魔神族が経営する鬼畜道至高店~光の到来~店にぶち込もう。中身はホモ魔神族の群れだが死にはしないだろう。死んだら知らん。

まぁ、それはともかくとして

 

「やるんだろ? 英国との戦争。俺的にはあの妖精女王をしばき倒せるチャンスがある英国側に行きてーけど、副長だしなぁ……なぁ、二代。ちょっとだけ、ちょっとだけ俺と副長代わらね? ほんのちょっと、ほんのちょっとだけだから? な? な?」

 

「正純! 二代が洗脳される前に早く!」

 

おお、と二代がほんのちょっと副長で御座るか!? 下剋上に興味は御座らんが響きは好きで御座る! と叫んでもうちょいで陥落しそうだったのに舌打ちする。

正純は自分の携帯社務を取り出して連絡を取ろうとする。相手はあの妖精女王だろう。やっぱり一発ぶった斬ってやりてぇが、まぁしゃあない。

確かにあんな風に格好つけて言ってみたが、やる事は何時も通りだ(・・・・・・)

10年間やってきた疾走を続ければいい。

ただ、それだけだ。

 

 

 

 

 

正純は何故か壮絶な違和感に悩まされながら、携帯社務を扱って連絡を取ろうとしていた。

自分自身でも何故そんな違和感を持っているのかがさっぱり理解出来ない。

場所とか状態に違和感があるわけではない。

当然、馬鹿とホライゾンの凄い発言について気にしているわけではない。驚きはするものもある意味でこれは当然の流れだったのかもしれないと逆に納得しているからだ。

 

では何が納得いかない。

では何がおかしいのだ。

 

それはやはり今も梅組の中心メンバーとじゃれている存在。

熱田であった。

熱田がおかしいわけではない。いや、頭は間違いなくおかしいが今はそういうのではない。

別に熱田も何かが変わったわけではないし、先程までの発言も全て今までの熱田の性格と夢に沿った発言であった。

 

何も変わっていない。

何も狂っていない。

何もおかしくない。

 

 

だからこそそれが最大(・・・・・・・・・・)の失敗である(・・・・・・)と頭の中が意味のなく叫んでいる。

 

 

 

つい、首を傾げる。

余りにも意味が分からない本能だ。もしくは理性なのかもしれないが。

どこに失敗があるのかが分からない。

失敗になる原因が不明だし、何が失敗するのかもさっぱりだ。

いや、そもそも違和感を持つ事こそが疑わしく感じる。

何か適当な思い込みを勝手に違和感と思っているのかもしれない。

まぁ、それにしてはやけに具体的で意味不明な感覚だが……しかし今は時間が一秒でも惜しい状態だ。

今はホライゾンの要求に答え、武蔵の進む道を歩み続ける事が最も大事な事だ。

その考えに達したと同時に繋がった社務を耳に当て、感じた違和感はそのまま忘却の彼方に放り込まれた。

梅組に一番参加したのが遅く、巫女とはまた別に言葉を司る彼女が感じた違和はこうして後に何の影響も及ぼさないまま消えていった。

 

 

 

 

 

統合艦橋部に一人人間として座っているアデーレは周りを自動人形の皆さんで埋め尽くされている中、緊張でちょっと深呼吸していた。

何故なら何故か特務でも生徒会でもないただの従士である自分がアルマダ海戦における作戦司令部"足りない本部"の指揮を受け持つ事になったからだ。

本当ならばこういった事は書記であるネシンバラがやるのだが本人は今、倫敦でメアリ奪還メンバーになって、更には大罪武装を奪い、マクベスの舞台を終わらせようとしているからだ。

いや、本当ならば役職的に副長がやってもいいのかもしれないが野生の獣に出来る事は襲う一択である。

自分が世話している犬達の様に待てと言っても聞かん肉食動物だからつまり自分がやるしかない。

そこら辺補佐も方向性は違えど種類が一緒なのはどうかと思う。

まぁ、だから自分はこの席にいる事になったのだが

 

それでもここまで大きな歴史再現の指揮官になるなんてのは自分の人生プランには入っていませんよ……!

 

人間、下を見るときりがないとはよく聞くが上を見るとインパクトしかないイベントが有り余っているものだ、とアデーレは悟る。

周りのインパクト外道だけではまだ足りないのですか、インパクト、と項垂れるが人生そんなものである。

 

「アデーレ様……何やら項垂れていますが御心配無く───胸が無くても人間は生きていけると今までの統計から言わせてもらいます───以上」

 

「あれれ? 自分、自動人形の皆さんに一体どうしてそんな屈辱的なアドバイスを受ける立ち位置になっているんですかね?」

 

この場にいる全ての自動人形と目を合わせる事が出来なくなり、屈辱イベントを体験する。

だが、この程度で負けていたら金が無い事を恐怖と戦う事は出来ぬ、とアデーレは即座に復帰する。

 

・剣神 :『おーーい、"足りない本部"ー。智の方もナイトの方も二代の方も準備OKっていう事らしいぜー……智が準備OK……やっべぇ超卑猥だな! 何てけしからん乳を持ちながら準備OKだなんて神が許しても俺が許せねえな! 待ってろ智……! 今からその準備を俺の手で───』

 

『・───剣神様が消失しました』

 

流れ作業のように命が無為に消えていくのを眺めながら、まぁ何時もの事、と無視してアデーレはとりあえずこれからの戦場の流れを改めて自己確認と同時に士気の確認の為に

 

・貧従士:『えーと、とりあえずアルマダ海戦の流れについておさらいしますね。あ、総長と副長は理解出来ないのは悟っているんで総長は邪魔をしないように、副長は流れを壊さないように且つ味方を斬らず、そして無駄に戦わないようにしてくださいね』

 

・俺  :『おいおいアデーレ! お前、時たま言うよなぁ! あ、でも邪魔をしなければOKっていう許可を得れたぜ!? よーし、じゃあイトケンとネンジと一緒に切羽詰まっている戦場で応援しまくろうか!』

 

・粘着王:『成程! 皆の士気の為の応援か……! 重要な役割だな……!』

 

・いんぴ:『うんうん! 皆の為になるなら頑張るよぅ!』

 

・約全員:『それを邪魔だと言うんだよ!!』

 

外道達に餌を与えてしまった、とアデーレは慌てて、今回反応が遅れた外道副長にこれ以上騒がせないようにと祈りつつ

 

・貧従士:『ふ、副長からは外道もしくは変態発言を除いた言葉を口から出す事が生物的に可能ですかね?』

 

・剣神 :『ふ、ふんぬっ……こ、こっちが熱田家の子孫がどうなるかの瀬戸際の時にテメェいい空気吸うなよ貧乳……後で削りに行くとしてそうだな……テメェが余程のうっかりをしない限りは聞いといてやる?』

 

前半と最後の疑問形はとりあえず無視するが怖い事を言う。

普通に聞けば皮肉に聞こえるかもしれないが、この男が言うこの台詞の意味を付き合いから自分は知っている。

この男はやばくなったら自分が何とかしてやると言ってきているのだ。

プレッシャーですよぅ、とアデーレは思う。

そんな事を知ってしまったら自分は意地でも折れる事が出来ない。

 

そして折れたら間違いなく酷い”何か”も起こりますからね……!

 

恐ろしいほど単純な有り得る未来に到達しないように決意しつつ、空気を元に戻すようにアデーレは自分から話題を戻す。

 

・貧従士:『ええとですね……アルマダ海戦の流れですが、基本的に"超祝福艦隊(グランデ・フェリシジマ・アルマダ)"の侵攻を英国艦隊……まぁ自分達ですね。自分達は迎撃するものの"超祝福艦隊"は撤退はするものの英国の周回軌道に入るというものです』

 

・金マル:『まぁ、厄介というか面倒な状況を進行していくって事だねー……』

 

皆の感想を纏めてくれた第三特務のメッセージに苦笑をしつつ、アルマダ海戦の戦闘概要を再掲示しとく。

反応はそれぞれ、自分の記憶と相違ないのかを確認する者もいれば何かボケようとしていたり、カレーに入ろうとしたり、幼女にテンションを上げている変態ばどがいるので、面倒ですねぇ、と思いつつ番屋に通報しとく。

今回の歴史再現に関しては英国側である武蔵は連戦ではあっても勝利に記述ばかりである。

だが、勝利であればいい、と言えないのが現実の厳しさだ。

 

・貧従士:『自分達の目標は勿論、歴史再現の成就ですが、それによって武蔵がボロボロにされたら本末転倒であるという事です』

 

・俺  :『あの……皆さん……ここらで一つ……ボケ、いりませんか……?』

 

別に誰も理解をする事は期待していないのに馬鹿を継続する馬鹿にしょうがないですねぇ、とアデーレは微笑みつつ無視した。

だが芸人はめげなかった。

 

・俺  :『おいおい、見ろよホライゾン。皆、無言で俺の存在と芸を期待しているぜ? すげぇだろ俺の人望!! どうだホライゾン……! 俺に惚れ直したか!? え? 何? どうして握り拳に溜息? ホライゾン冷え症? じゃあ俺のゴッドモザイクの内部の益荒男で温めてやるから手を突っ込んでみろよ! お前になら……いいぜ?』

 

『・───俺様の家族計画がピンチになりました』

 

・剣神 :『おいおい、マジかよ。神様、意外と反応いいな。』

 

・○べ屋:『その代理をやっているシュウ君が言う事かな?』

 

・労働者:『別に解っても意味がないから言わなくていい』

 

・あさま:『というか文字通りなら葵家、喜美が何とかしないとキチガイ二人が末代になるんですけど……うっわ想像難易度激高ですよそれ! ナルゼでもちょっとネタにするのに躊躇いそうな未来絵図……!』

 

・金マル:『アサマチ、もしかしてガっちゃん挑発して喜美ちゃんへの今までの鬱憤晴らそうとしてない?』

 

成功の確率を考えれば、かなりの無謀な挑戦だが、ちょっとリアルに真剣に考えるとそれこそ想像難易度激高の未来絵図だったから諦めた。

とりあえず話の流れをもう少し軽く追補し、それぞれの理解を得た所で

 

・剣神 :『ま、要は何事も要努力が必須だって事だな───だが、まぁ強いて挙げるなら前回、向こうの奴らとやり合ってちょい旗色悪かった奴』

 

副長からの突然の言葉につい、思い浮かんだ名前が連座名に浮かび上がった。

 

・煙草女:『何さね。上役として珍しく説教かい?』

 

 

 

 

 

 

地摺朱雀を半壊以上にされ、結果として道征白虎を自分の手では止めれなかった直政は機関部で騒音を耳に響かせつつ、馬鹿の皮肉を受け止めていた。

全くもって同感だ。

馬鹿の癖にやけに言葉を選んでいるが、あれは旗色悪い所ではなく敗北だっただろうに、と直政は前回の敗北を素直に受け止めている。

武神の差やら未知の能力といったのを言い訳に使う気はなかった。

武神の差などは技術職の自分からしたら恥同然の言い訳だし、四聖の術式OSの山川道澤の一つの道が凶悪だったからといって負けていい理由にはなるまい。

特務となったからには如何なる不利が相手も勝つ事は基本条件だ。

無論、自分の"勝ち"に拘って全体の"勝ち"を忘れるのも駄目だが。

 

・剣神 :『準備は出来てんだろうな直政』

 

・煙草女:『やられた分をやり返す準備かい?』

 

・剣神 :『ばーろ』

 

あん? と思わず繋がってない返答に眉を顰めて続きを待つと

 

・剣神 :『やられたらやり返すなんて遅ぇんだよ。戦争だぜ? やり返すなんてやられてからちまちま動くなんて行儀のいい事やる必要はねえんだよ───一方的にぶっとばす準備をしてるんだろうなって聞いたんだよ』

 

顰めた眉を一瞬、ちょいと広げてしまうが、その後にはっ、と直政は笑う。

 

「全く馬鹿の要求は一々高くてしゃあない」

 

一番いやらしいのは無茶を要求する男が倍くらいの難易度の高い無茶を常に通しているからだ。

 

人生、一敗のみ

 

他に敗北など不要。

俺の唯一無二の敗北を誰にも捧げるつもりなぞ一切無し、などと長い付き合いをしていてもどうかしている、と思える生き方だ。

お前らちょいとばかしホモレベルがおかし過ぎだろ。

ナルゼの同人ですら比べるとまともに見えてしまう辺り、酷いものだ。

馬鹿につける薬はないとよく言うが、成程、正しい。

こんな馬鹿が治るような薬があるのならば、歴史再現なんぞしていない。

つまり、まだまだ人類は未熟であるという事なのだろう。

一人でも溜息を吐くしかないのに、それが二人も揃っているんなら尚更だ。

そんなレベルの馬鹿の癖に

 

それで発破でもかけているつもりかい、下手糞が……

 

機関部にある自分の武神、地摺朱雀がある方に視線を向ける。

先の戦いで半壊にまで陥りかけた自身の武神だ

つまりはそういう事だろう。

 

「失わせるなって言いたいのかい」

 

例え意識が無くても。

武神と一体化し、人によってはもう生きてなどいないと判断されるかもしれない家族を、それでも失わせるな、という事なのだろうか。

深読みし過ぎか、それとも自分の中で勝手に作った馬鹿のキャラ像から生まれてしまった思いか。

後者だと恥辱で死にそうだが、とりあえず置いとく。

だから、直政は敢えて表面上のその言葉に対し、返す事にした。

 

・煙草女:『Jud.やるだけやってみるさね』

 

元より一方的にやれるなら望むところ。

無論、そんな事が現実に起きたならヌルゲーもいい所だが、だからと言って望んでいる方向を諦めるのは物臭というものだ。

そういったのは全裸の方の馬鹿に預けて、自分らはやればいい。

だからまぁ、特別重要な話のようにしない為に直政は軽い気持ちで逆に問い直す。

 

・煙草女:『そういうお前さんの方はどうするんだい? 今回は基本、艦隊船だから出番無しじゃないか?』

 

・剣神 :『おいおい、何だその役に立たない無能みたいな扱いは……安心しろって。暇な場合は押されている場所に向かって応援斬撃するからよぉ』

 

・約全員:『それはただの暴君だ……!』

 

洒落になってないさね、と直政は煙草を吹かして遠くを見る。

敵に押されている中、背後から超笑顔で大剣振り回して応援している同級生の姿を絵で想像するととんだ地獄絵図である。

何せ振り回している大剣からビュンビュン衝撃のような剣圧が飛んでくるのだから堪ったものではない。

敵は身内にあり、思っているとまぁまぁ、と宥めていた熱田から続きが飛んでくる。

 

・剣神 :『ま、確かに艦隊船だから基本は飛んでくる砲弾やら何やらをぶった斬っておくかねぇって所だろうよ』

 

まぁ、それも向こうのやる気次第だろうけどよ、と言わんばかりの言葉に恐らく全員が同意しただろう。

歴史再現のルールとして、この海戦は天上に至った歴史を基本は繰り返さなければいけない。

聖譜に則ったが故に歴史再現だから負けても仕方がないなどという風潮が生まれたりもするのだが、歴史再現と言っても必要なのは基本だけだ。

応用的にどうするかは確かにこの場合は相手次第。

 

日の沈まぬ大国

 

三征西班牙(トレス・エスパニア)

 

どうなるかは直政からしたら今一読め切れない。

三征西班牙の個人として接した相手も立花・誾とベラスケスと江良・房栄くらいしかいないからだろう。

それも会議の場と戦闘の一瞬だけだ。

それにもっとも重要な国の代表としての総長兼生徒会長は見ることすらしていない。

 

フェリペ・セグンド。

 

年鑑を見る限り、長寿族ではなく人間なのでもうかなりの高齢だが、とりあえずうちの無能のような存在ではないとは思うのだが……憶測で決めるのもどうかは分からない。

 

・剣神 :『ま、どうなるかは分からんが、それでも未来の(キボウ)が足りねえアデーレの策が勝つなら良し』

 

・貧従士:『ま、まだ未来は確定していませんよ!? あ、や、止めてください自動人形の皆さん! そ、その物量すら感じる配慮の目線……!』

 

アデーレが何やら盛り上がっているようだが無視をする副長に全員が合わせる。

 

・剣神 :『でも、まぁ、それでやばくなるようなら───』

 

うん、と一息空ける間を自分らは得、そして

 

・剣神 :『荒らすか』

 

 

 

 

 

 

うっわぁーーーーー…………

 

ナイトは羽先から背筋にまで到達した震えを相手にしていた。

まるで黒板を爪で掻いた時に生じる嫌な音を聞くような反応だが、これは少し違う。

有体に言えば、自然災害を前にした生物の一種の防衛反応だ。

ここはやばい。死んでしまうぞ、という危機感のような予感がここにはいてはいけないと促すように震えとなって退避を推奨させる。

これはそういった類の震えだ。

それも自分達に向けて放った物ではなく、それもまだ本性を欠片も見せていない段階でこれだ。

自分達も当然、昔と比べて実力を挙げてきているというのは事実として実感しているが、これはもう頭がイッちゃってる。

 

「後でガっちゃんにネタ提供しないとねーー」

 

そして表示枠越しにアデーレから状況開始の合図の言葉が放たれるのを見聞きし、ナイトは常の笑顔のまま歴史が始まる実感を脳に感じる。

何かバラやんみたいな病気みたいな感想を抱いてしまったけどこれ、ガっちゃんに言ったらどうなるだろう? あ、バラやんやっちゃう? 魔女(テクノヘクセン)の砲撃でも呪いでも、バラやんが常々言ってた畳の上でご臨終っていうの出来ちゃうから最低限の義理は果たせるよねーー。

そうなるとアデーレ辺りが大出世しちゃうかもしれないねー? 総長と副長は頭なんて無いし、セージュンは政治一筋だしねー。

そういう風に何時もの自分の思考を回しながら、戦争が始まる空を見て

 

……あれ?

 

ナイトは空を翔ける魔女として必須の視力を使って湧いた疑問をそのまま口に出した。

 

「……超祝福艦隊が東西に分割していく……?」

 

 

 

 

 

同じ光景を熱田も見た。

超祝福艦隊の大半が西に、三征西班牙に帰ろうとする動きが多い。

英国に行こうとする艦隊は西に向かおうとする艦隊に比べれば余りにも微量。

武蔵の大きさも相まって余りにも脆く感じてしまう。

もう西側の艦隊は戦闘領域を外れようとしている。

挟撃じゃないのか……? と周りの人間が漏らすがそうではないのだろう。

さて、どうなるのかと八俣ノ鉞で肩を叩くように置いていると

 

『え、ええと……聞こえているかな?』

 

表示枠が唐突に浮かび上がる。

そこに映っているのは失礼を承知で言わせてもらえばくたびれたおじさん、という感じだろう。

響いた声も余り強気ではなく、今まで相対してきた爺連中と違って年齢によって培った覇気、という感じは余り感じれない。

こんな場でなければ近所の優しいおじさん、と言っても通じそうな感じを受けた。

だが

 

「……」

 

ふぅ、と一度息を吐き、そして急いで表示枠で武蔵全域に警告を告げる言葉を乗せる。

無論、これからの戦闘に関してもそうだが、今映っている男───フェリペ・セグンドに対して油断するな、あれは脅威だという感じに。

何故なら熱田は映像越しでも感じるものがあったからだ。

それは()であった。

体温とかそういうのではない。

人の意思や感情から発する"熱"だ。

勿論、それはどんな人でも差はあれど発するものだが、文字通り熱量が常人が発するのよりも桁が違う、と感じられる。

襲名者や総長連合、生徒会などそういったメンバーにはよくある事だから珍しくはないと言えば珍しくはないかもしれない。

だが、この"熱"は他と少し違う。

他の面々だと"熱"は内に秘められながらも、隠しきれない熱さを感じれるという感じだが、これは今にも自分達を燃やさんばかりに届いてくる。

そんな風になる時がどういう時か自分は知っている。

 

"やる"のだ

 

何をするかは知らない。

だが、この男は自分がしようとする何かに恐ろしい程の熱量を込め、しかし未だ自分の中に生まれ続けている"熱"をこちらにぶつけようとしている。

こちらが常々馬鹿が馬鹿なりの"熱"でこちらを支持するように。

 

「覇道比べかよ。面白れぇ」

 

例え、これが傭兵事業であったとしてもこれは確かに正純がうちの馬鹿の為につけた道だ。

ならば敵対する相手はそれがどんな形であっても覇である事は違いない。

ああ、面白れぇ、こうでなくてはいけない。

何故ならこれは夢の為の行進だ。

夢を叶える為の苦労だ。

内容が戦争であってもそれを忌避するのは道理に合っていないし、する気もない。

無論、別に人死にが出るのを望んでいるわけではない。

そこは馬鹿とホライゾン二人の総意だ。それを違える気も無いし、俺だって失わせるつもりは毛頭ない。

例え馬鹿が俺に対して特に言われなくても、無言のオーダーを受けている事は承知している。

 

失わせんなよ、と。

負けんなよ、だ。

 

「ああ、勿論。勿論だとも。そうじゃなくてはな。Jud.、全て委細承知だし当たり前だよ馬鹿野郎」

 

人からしたら馬鹿げた事を、無茶無理無謀な要求を、というのを俺は余す事無くすべてを理解した上で飲み下した。

吐いた唾を地べた事舐める様な無様さを許容するつもりが元から無いのだから当然だ。

俺は約束した。

お前がその道を変えず、違えない限り俺はお前の剣になろう、と。

似たような事をしたのは俺だけではないだろう。

ネイトなんて分かりやすいし、喜美なんて隠す気がない。智ですらやれやれ、と小言は言っても止める気がない。

他の外道共もまた同類だ。

だが、そうであっても最初は俺だ。間違いなく俺だ。俺が最初のあの馬鹿の刃だ。

だから、トーリ。

どうせこの戦場でも馬鹿を装って……装ってはないな。あれは素面だ。素面の全裸だ。ホライゾンの股間ラッシュで懲りたかと思ったら全く懲りねえから今度は痛めつけるつもりではなく、砕くつもりで殴らせなくては。それとも俺自らがやるか。気色悪いから遠慮したいが。

まぁ、でも馬鹿しながらも馬鹿なりにどうせ何か色々考え込んでいるんだろ?

お前、ポーカーフェイスが下手のようで上手いし。

だが、確かに世界征服だ。

考え込むのはしゃあねえし、止めんのもどうかと思うから何も言わねえよ。

 

───だが、他の奴らはともかく俺に関しては何も心配いらんから気にすんな。

 

何せ俺は誰にも負けねえ。

負けていいのはお前だ(・・・・・・・・・・)()だ。

そして敵はお前じゃねえ。

なら、俺が負ける要素なんて一つも無い。

つまり、最強だ。

だからお前が気にする要素なんて無いし───それに俺はお前の夢を手伝っているつもりなんてねえ。

 

 

 

これは俺の夢だ(・・・・・・・)、そしてこれは俺の願いだ(・・・・・・・・)

 

 

 

だから何も気にする事はない。

お前の道は俺の道だ(・・・・・・・・・)

 

「だから俺が先に疾走してやるさ」

 

お前も、お前に連なる皆がこの道が安全に通れるように。

俺が誰よりも速く疾走してやるさ。

だから、その始まりとなるこの戦争を前に俺は笑おう。

夢の始まりだ。寿ぐのは当然だろう、と俺は宣言通りに笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ふぅ……もう長々とは言いません。


───待たせたな(CVスネイク)




あ! 現地人として言いますけど京都にあんなルールありませんからね! 本当に無いですからね! ちなみにこれは京ルールの言葉じゃないからね!

間の正純の疑問は本当に惜しい……もしも正純が昔からの知り合いで熱田の疲労を知っていたら気付いていたかもしれないけど……でも前からの知り合いでも一種の協力体制みたいな感じで熱田なら大丈夫かって思ってしまうかなぁ……

次はどれを書こう(真剣)

では長い間お待たせして申し訳ありません。皆さんが楽しんでいただければ幸いです。
長い間離れていたからギャグとかつまらなくなってなかったらいいんですが……うっわこっわーー。

感想・評価などよろしくお願いします。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。