授業中に居眠りしたら、違う世界で知らない姫を取り戻すことになりました。 作:偽帝
「キスって・・・」
誠はそれしか言えなかった。
口をゆっくりと閉じると、視線をエレメンタリオに移す。
四人ともオロオロした感じで、頬を赤らめていた。
「じゃあ・・・」
いすずはカードを握っていた誠の手を軽く振る。
すると、エレメンタリオが再びカードに戻される。
「え、何で戻して?」
「お互いに面識がないと困るでしょ?まあ、今はそれより・・・・」
いすずはマスケット銃を誠の額に当てた。
何か慣れてきた誠はため息をつく。
「宿を探しましょう」
「疲れた・・・」
ベッドに体を投げて、誠は力を抜く。
三時間くらいかけてようやく、ここに泊まることが出来た。
ベッドの感触を楽しみながら、誠はいすずを見た。
隣のベッドではパジャマ姿のいすずが無言で靴下を脱いでいた。
「・・・どうしたの?」
誠の視線に気づいたいすずはそれだけ言うと、着ていた服を畳んでベッドの中に入った。
「電気、消しといてね」
「はい・・・」
着替え終わっていた誠は近くのランプの光を消した。
「なんで俺が・・・お前達の姫様を・・・」
「選ばれたものは仕方ないから、黙って付き合いなさい」
「ああ。今さら断れないしな」
「加賀君」
「今度は何だ?」
「後悔してる?自分が選ばれたことに」
「いや・・・」
誠は手を目の上まで持ってきて、隠した。
「色んなことが起こりすぎて、疲れた」
「そう・・・」
いすずはそう言うと、瞼を閉じた。
「おやすみ、加賀君」
(もう考えるのは止めよう、キリが無い・・・)
いすずの言葉の後、誠も眠りについた。
「ん・・・」
窓から差し込む朝日の光で、誠は目を開けた。
「早く起きなさい、加賀君」
いすずの声を聞いて体を起こそうとしたが、頬に冷たいものの感覚があった。
起きるのを止めてそれが何かを見ると、案の定マスケット銃だった。
「起きるからさ、銃を離してくれないk・・・」
バァン!!!!
「・・・・・」
目を見開いたまま、誠はフリーズする。
周りではベッドの羽毛が空中を舞っている。
(ついに撃ちやがった・・・)
口を小さく開いて息を吐くと、誠は起き上がって堂々と立っているいすずに言った。
「何で撃つんだよ、俺寝てただけだろ!?」
「ごめんなさい、最近撃ってなかったから・・・」
(どんな理由だよ・・・。人を殺しはしないと思うが今後またこういうことがありそうだな・・・)
「それじゃ、一度出るわよ」
いすずに言われるがままに、一度部屋を出る。
「私は必要な物を買ってくるから、その間にキスの件を片付けちゃいなさい」
「買ってくるって、お前お金あるのか?」
誠が指摘するといすずはどこから取り出したのか小さな袋を誠に見せた。
「あの空間に来る前にお金は換金してるから大丈夫よ。それに、いざとなったらこれで・・・」
そう言っていすずは再びマスケット銃を構えた。
「武力解決は止めといたほうが・・・」
「わかってる。最終手段だから」
いすずは一回誠を見た後、トルッカの商店街の方へ歩いて行った。
「どうするか・・・」
昨日と同じ公園の噴水の前のベンチに座る。
日差しに反射して、噴水の水が七色に見える。
誠はもらった四枚のカードを取り出した。
(一番仲良く出来そうなのは・・・)
四枚のカードの一つ、青のカードを選んで持った。