フリーターと写本の仲間たちのリリックな日々   作:スピーク

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一昨年のクリスマスは酷いものだった。同じく独り身のダチら四人で居酒屋を3件、バーを1件ハシゴしたのは今でも明確に覚えている。

 

男だけで構成されたその飲みは、確かに楽しくもあったのだが、やっぱり同時に虚しさが去来した。でも、やっぱり男同士でバカをやれる事は楽しいもんで、お互い『来年は彼女作んぞ!』と励ましあったもんだ。

……そこまでは良かった。そこで、俺たちは道を誤ったんだ。あれはどこの馬鹿が言ったんだっけなあ───『最後にキャバクラ行かね?』と。

 

ああ、何も言ってくれるな。分かってる。俺だって今思えばどうかと思うさ。けどよ、そん時は酒も入ってて思考能力なんてもんがぶっ飛んでたんだ。

行ったさ。

キャバクラ行ったさ。

ええ、楽しかったですよ。女の子と楽しく喋りましたよ。クリスマスに、お店でお金だして、楽しく喋りましたがそれが何か?可愛い子は彼氏と過ごしてるらしく店にいなかったがそれが何か?…………2時間後、『俺ら、何やってんだろう』と店の前で極大の虚しさが去来したけどそれが何か?

 

そして時は進み、次に話すは去年のクリスマスだ。

今度もまた男同士でその日に集まったよ。ただ、それは別に飲もうという事じゃあなかった。そんな後ろ向きじゃあなかった。

『ナンパしようぜ』。

これだ。

せめてワンナイトカーニバルを楽しもうという思いの下に、クリスマス当日に俺たちはナンパを決行したんだ。確かにこの日はカップルの日だが、俺たちと同じようにあぶれている女の子もきっといると信じて街に出たんだ。………その前に彼女作っときゃいいじゃん、だって?作れたら苦労しねーんだよ。

結果はどうだったかって?ふふふ、聞いて驚け!

 

夜8時頃からナンパをし始めた俺たちだったけれど、気付いたら朝日をファミレスの中から眺めていた。勿論、男だけで!…………『俺ら、何やってんだろう』、この言葉と共に電車に揺られながら帰ったよ。帰ってシャワー浴びて不貞寝したよ。

 

と、まあこれが俺の一昨年と去年のクリスマスの出来事だ。

 

なんとも。ああ、なんとも空しくてむさ苦しいクリスマスだろうか。今思い返してもホント哀れな気持ちになる。敗者の極みだ。

そして当時、俺たちはこう思ったんだ──「……来年は大人しくしてようぜ。彼女、いなくてもよ」と。

そう、それは諦めのそれに近い。俺も、ダチも諦めることは嫌いな部類だがこれだけはどうしようもない。自分一人でどうこう出来るなら頑張るさ。だがこれは相手ありきだ。生まれ持った顔と形成された性格を受け入れてくる女ありきなのだ。

 

そう考えると同時に、俺は悟った。来年もきっと俺は一人なんだろうなぁと。何だかんだ言ってダチとまた外に出てるんじゃないかなぁと。

 

……そう思っていたんだ。つい半年前までは。

 

「ちょっと、もうちょい近づいて!じゃあ目線はカメラね。ちゅうも~く!」

 

携帯(俺のはぶっ壊されたので夜天の)に自撮棒をつけて撮影する俺。

今、この光景は去年までの俺の立場を吹き飛ばしてくれていた。

 

「はい、チーズ」

 

パシャリと撮られた画面にはだらしない顔の俺。そして右隣には少し頬を染めて恥ずかしそうにしながらも言いつけ通り腕をしっかりと組んでくれているシグナム。左には呆れた表情は隠さずに、しかし大人しく佇んでいるシグナム。

 

鈴木シグナムと八神シグナムという大輪の華をもった俺。

 

(去年までのクリスマスの俺、見ているか?確かに彼女はまだ出来ていないが……しかし今、お前は勝者じゃないにしても敗者に居続けてはないぞ!)

 

ナイスバディの二人に挟まれて幸せ絶頂です。

 

人生、何が起きるか分からないとはこの事だ。撮った写真、ダチに送りつけてやろ。

 

「よし、じゃあちょっと格好を変えてもう1枚だ!それとシグナム、出来ればもうちょっと笑顔をプリーズ」

「ハァ、なぜ私がお前の言う事を聞かねばならん。そもそも今こんな事をしている状況では……」

「おい、オリジナル。貴様も私なら主の願いは何に置いても最優先事項だろう。きちんとしないか。ほら、笑顔だ」

「私の主は八神はやてだ!……ああ、何が悲しくてこのようなだらけた表情を浮かべる自分を見なければならんのか。というか、私はそんな顔も出来るのだな。まったくもって知りたくなかったが」

 

美由希ちゃんお手製栄養ドリンクを飲んだ時のような苦悶の表情を浮かべる八神シグナム。それに反比例するように桃子さん特性のケーキを食べた時のような嬉しそうな表情を浮かべるウチのシグナム。

 

「ちょっとシグナム、もういいでしょ!次は私たちとハヤちゃんで撮るんだから!さあ、行くわよオリジナル!」

「あー、えっと、やっぱり私も入らなきゃ駄目なの?」

「当たり前でしょ!あなたもシャマルなら、ハヤちゃんの願いに貢献するのは当然よ!」

「ただ単純にあなたが隼さんと引っ付きたいだけでしょ……はぁ、ホント、なんでこうなったのかしら」

 

ぷんすかと怒るウチのシャマルとため息連発な八神シャマル。

 

(どうしてこうなったか、か……)

 

シャマルの言葉に少し思い返す。

 

最初はただ最後の喧嘩……最終決戦に向けての段取りをする予定だった。

プレシアんちに軟禁していた八神家をウチに呼び、皆で一緒に対策や方針を決めようかという運びだったはずだ。それが蓋を開けてみれば何故か撮影会となった。

 

(うん、まあ不思議っちゃあ不思議だが、こうなる事は予想も出来たな)

 

ウチに隣で軟禁していた八神家の面々を呼ぶ。つまりシグナムやシャマルが来る。とすると当然ウチのシグナムやシャマルとも相対する。これで単純計算でシグナム×2+シャマル×2となるわけだ。そうすると=俺歓喜となり、さらに=作戦会議とか後回しにして今この光景を写真に収めようとなるのは必然。

 

……何故でも不思議でもないな。当然の帰結だな。

 

「ハヤちゃんハヤちゃん!この服、どうですか!この冬の新作なんですって!すっごく暖かいんですよ、ほら!」

 

俺の手が掴まれ、シャマルの麗しい肉体を覆っているジャケットの内ポケットに入れられる。ちょっと手を動かせばいろいろ当たりそうな場所だ。もちろん、俺はそんな非紳士な事はしないが顔のニヤケまでは抑えられない。

 

「おい、まさかあたしらまで交ざるとか言わないよな?」

「は、はァ?なんであたしが隼の奴に写真撮られなきゃなんねーんだよ!………ま、まぁ、でも?隼の奴がどうしてもってぇーなら考えてやってもいいけどな?嫌々だけど、まぁ妥協して?」

「あ、いや、ヴィーターズはいらん。その辺でのろいウサギとごっこ遊びでもしてろよ」

「テメェ!このボケ主がぁ!!」

「……結局あたしもあたしかよ。てかヴィーターズって……ハァ、なんかもう怒る気も起きねえ」

 

と、相も変わらず喧しいヴィーターズ。いや、八神ヴィータの方は以前より少しトゲがなくなってる感がある。あるいはウチのがトゲトゲし過ぎでそう見えるだけなのか。

 

……しかし、なんだな。

 

(なんかこいつら、いつもより当たりが激しいな)

 

シグナムもシャマルも普段ここまで積極的ではない。いや、積極的じゃないっつうか、接触的?

俺のお願いとは言えシグナムが腕を組んでくれたのもそうだし、シャマルもここまで無防備じゃあない。なのに今日に限ってこれだ。

 

(やっぱフェイトと同じ、寂しかったクチか?)

 

意外と言えば意外だが、しかしそれくらいしか理由が思い浮かばない。

今のこいつらからはテスタロッサ姉妹と同じ、甘えたいオーラが出てる気がする。あのヴィータですら、何度もこっちをちらちら見て機を窺ってる感じだし。

なんとも主思いなこって。

 

(そんな中でもブレないザフィーラは流石だな)

 

あいつは一度俺の脚をふわりと尻尾で撫でた後、オリジナルと自室へ向かっていった。何でも『こやつに人生の真髄というものを教えておきます』との事だった。それが何なのか何となしに察せた俺は、とりあえずはやてや他の騎士たちに謝っておいた。

 

そして残る最後の一人。ウチの母的存在の夜天はどうしているかというと……。

 

「っ……~っ……~っ!」

(うわぁ、なんかめっちゃ我慢してる」

 

いつもの優しくて余裕を持った雰囲気を湛えた夜天はなりを潜め、欲しい玩具を買えずにずっと眺めている子供のような彼女がそこにはいた。

というかまんまライトやアリシアだ。

 

(口実がないから切り出せないんだろうなぁ)

 

口実、つまり写真撮影。

シグナムやシャマルだってそれがなけりゃこうやって積極的にはなってないんだろう。げんにオリジナルたちがここに来るまでは大人しかった。それがここに来て俺が写真撮影を提案した事で『好機!』と捉え、欲望のままに我がままに攻勢に出た。

が、夜天にはそれがない。オリジナルがこの場にはいない。写真撮影に加わる理由がない。見ているしかない。

 

(まっ、それが普通の大人だよな)

 

ガキじゃないんだ。理由など関係なく欲望のまま突っ走ることなんて出来ない。まとめ役の夜天なら特に。

 

しかし、だ。

 

「おい、夜天。お前とも写真撮りたいからこっち来いよ~」

 

今の我慢している姿はまんまガキのそれ。だったら大人が引っ張ってやるさ。というか、そんな夜天の姿見せられたらどうにでもしてあげたくなるし、なんでもいいから普通に引っ付いて写真撮りたい!!

 

「え、あのですが……」

「来いつってんの」

「───はい、我が主!!」

 

とびきりの笑顔を浮かべながら近づいてくる夜天を見て、俺はある一つの決心をした。

 

オリジナルの夜天、絶対助けよう。そして両側から挟まれて写真撮ろう。

 

男、冥利に尽きるってなぁこの事だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

俺の我欲(写真撮影)でまたしても本題から逸れそうになったのだが、見かねたプレシアのねちねちとした口撃&アリシアたち子供組みの『こっちも構え』攻撃に鬱陶しさを感じた俺は、忸怩たる思いで写真撮影を止めて本題に戻ることにした。

 

「簡単にこれからの事の段取りを決めとこうと思うんだけど」

 

言いながら周りを見回す。

現在、テーブルをとっぱらって直接床に座布団敷いて座っているのは俺とプレシア、八神家、理とフランだけだ。他の奴らは自室だったり料理したり買い物行ったりと我関せずで、ガキどもは隣の家に遊びに行ってる。まぁ、ガキどもの意見なんて必要ないから別にいいけど。てか出来ればはやても他のガキたちと遊んでて欲しかったが、まあ今回は当人の問題でもあるわけだから今この場にいさせてる。

 

逆にウチの奴らはこういうの参加しそうなんだが、曰く『主に任せておけば大丈夫だろうし、あとは出たとこ勝負で臨機応変に』という事らしい。その余裕なのか適当なのか分からないスタイルはいったい誰に似たのやら。

 

「まずは明日のクリスマスパーティだが、俺んちは汚したくないんで隣でやろうと思───」

「その前にやる事あるでしょ」

「ん?ああ、はやて助ける。障害はぶっ飛ばす。以上」

「簡単過ぎるわよ。もっと具体性のある話をしなさいよ」

 

ため息を吐きながらもいちいちツッコミを入れてくるプレシア。

 

「……いいわ、もうハヤブサは黙ってて。さて、私から現状の再確認とそれへの対応策の確認を行っていくわ」

 

たぶん、自分が間に入らないと話が纏まらないとでも思ってるんだろうな。うん、ずばり正解だ。仕方ないからタバコでも吸ってよ。

 

「と言っても、私自身もフランからさっき聞かされたばかりだから完全に把握してるわけじゃないけれど」

 

そう頭に置いて、まとめに入る。

 

「まずははやてちゃんの状態。闇の書の闇……防衛プログラムが蒐集を急かす為はやてちゃんの身体に時限を設けている。今は下半身麻痺だけれど、いずれはその麻痺が心臓にまでたどり着く。その解決に当初は単純に闇の書を完成させればいいと思われていたけれど、そうすると今度ははやてちゃんの存在ごと闇の書に奪われ、無為なる破壊を振りまいてしまう事が分かった」

 

そう、それがフランからの情報で分かった真実。というか俺がフランに攫われなかったらそうなっていたと思うとゾっとする。

 

「勿論、そんな事は望んでいない。だから新たに出された解決策が闇の書を夜天の書へ復元する事。方法としては一度書を完成させ、管制プログラムと防衛プログラムを切り離して管制プログラムだけ制御下におく。その後、分離した防衛プログラムを完全に破壊」

 

そうだ。ただし、そこには一つ問題がある。

 

「けれど、その過程で二つ問題がある」

 

ん?あれ?ふたつ?

 

「いや、一つじゃね?防衛プログラムの完全破壊だけだろ?」

 

闇の書の闇だけを完全に無くす。これが唯一にして一番の難所。そして俺を悩ませているところ。

 

どうやってオリジナルの夜天を助け、かつ俺が何一つ犠牲にならずに闇を消すか。

どっちか片方を捨てるならまあ簡単だが、今の俺の中にはそんな選択肢はない。今までの葛藤が嘘のように決意が固まっている。自分の犠牲はもちろんの事、オリジナル夜天だって見捨てはしない。必ず助け、そしてウチのと一緒にサンドウィッチしてもらうんだ!……このまま気分が変わらなければ。

 

「ハァ、異論や意見は最後に言えと言ってるでしょ。まあ期待してなかったけれど」

「ならいいだろ。おら、問題二つってなんだよ?はよ言え」

「ホントにこの男は……。ハァ、一つはあなたの言うとおり完全破壊。というより、今出てる案の『管制人格もろとも闇の書を消す』という案そのもの」

 

案自体が問題?そんなわけねーだろ。いや、問題は問題よ?確かにオリジナルが消えるなんて大問題よ?けれど案の構想自体は問題ねーだろ。なにせ闇の書に詳しいフランの奴が出したもんなんだから。

 

「どこに問題があるのだ?闇の書の闇は書全域ではなく、それを司る管制ユニットにおもに侵食しておる。ならば闇を消せば管制ユニットもまた道ずれになるのは道理ぞ」

 

おお、なんだろう、フランの奴が変態的発言をせずに普通に喋ってるぞ。場違いだと分かっていても軽く感動だ。これも理の教育のおかげか?

 

「ところで主よ、幼女プレイと中学生プレイ、どちらが好みだ?」

「無理やり変態性を出してんじゃねーよ」

 

脈絡無さ過ぎるわ。それともなに、お前、成長する魔法でも身につけたわけ?

 

「理、その断章を黙らせておいて。それで話を戻すけど」

 

流石だな、プレシア、すでにフランの奴に耐性をつけてやがる。そして理も熟練の職人のように流れるように猿轡を噛ませて縛り上げるなよ。

 

「管制人格、つまりオリジナルの夜天を犠牲にするという事だけれど……」

 

ぐるっと俺たちを見回すプレシア。その顔は懐疑的なそれだ。

 

「何故、誰も納得していないのにその案を呑んでいるのかしらね?特にハヤブサ、あなたが黙ってそれを受け入れている事がまず可笑しいわ。あなたなら、是が非でもオリジナルの夜天を助けるはず」

 

そうだ。そのつもりだ。オリジナルの夜天は助ける。俺の犠牲を出さないような方法には未だ至っていないが、とりあえず助ける方向に決めた。

 

けれど、それをプレシアには言っていない。夜天を犠牲にせずに済む案を隠している。俺が犠牲になる案を隠している。

 

が、………こいつ、まさか。

 

「代案、あるんでしょ?それもあなたが少なからず損をするようなものが。そうでなければ夜天を犠牲にするあなたじゃない。そして代案が仮にあなたの命を犠牲にするものならば、確かに隠したいわね。そんな案、あなたの家族が許すわけないもの。まあ、あなたは何よりも、何者よりも自分の命を優先する人だから、きっとそこまで重いものじゃないんでしょうけれど」

「……」

 

ああ、クソ。まる分かりかよ。そりゃそうだよな。この俺の事をよく知ってる奴なら、その答えにたどり着くわな。

 

「ちっ、察しのいい女は嫌いだぜ」

「あら、だったらあなた、周りにいる女性はみんな嫌いって事になるわよ?」

 

どこか呆れたように微笑むプレシア。なんかムカつく。

んだよ、皆にも筒抜けかよ。いや、プレシアが察している時点でウチの奴らも簡単に察せるんだろうけどよ。

 

もうこりゃ隠してても意味ねーか。

 

「そうだよそうですその通りだよ。もう一つ、案がある。オリジナルの夜天は生きるが俺の犠牲のもとに成り立つ案がよ。確かに死にゃあしねーが、俺一人が一生ワリ食う案だ。けどだ。それ提案してみろ、どうなると思う?ちなみに理だったらどうするよ?」

「オリジナルの夜天を殺します。命の重みだとか等価交換だとか知った事ではありません。我々にとっては主がこの世で何よりも大切なのですから」

 

ほらな、即答だ。そういう事言われるだろうなと思ってたからこの案は言わなかったんだよ。

 

「いえ、そもそもそのような案が存在してしまう事こそ問題。問題の存在こそが問題。ならば、その案・問題に繋がる要素をここで全て消せば何事もありませんね」

 

ぶつぶつと何かしら呟いているが、生憎とかなり声量が小さく聞こえない。が、その顔でだいたいの事は分かる。

 

「おい、理」

 

手遅れになる前に注意しておく。

 

「どうしたのですか主?」

「俺が決める事だ。選択肢も選択権も俺んだ。だから大人しくしてろ」

「………察しのいい男は嫌いです。主以外ですが」

 

俺と理の言動がよく分かっていない八神家は疑問顔だが、プレシアは分かっているんだろう、疲れたようにため息を一つ。

 

良かったな、はやてたち。今、お前らなにげに命の危機だったんだぞ。

 

「で、ちなみにその案というのは?」

「ん?……あー、まー、気にすんな。どっちみちその案を取るつもりなんてねーし。もちろん、どうにかしてオリジナルの夜天は助けるけどな」

「そう……まぁあなたの好きにしたらいいわ」

 

まだ何か言いたそうなプレシアだったが、それ以上の追求はなかった。理も同様だ。

 

「それじゃあ、とりあえずこの問題は"置いて"おきましょう」

 

ホント、察しのいい女は嫌いだ。

 

「もう一つの問題。どちらかというとこっちの方が問題ね。まずこの前提をクリアしないと先に進まないのだから」

 

ん、前提?なんか同じような感じの言葉、この前誰かから言われたような……。

 

「闇の書の覚醒後、はやてちゃんによる管制プログラムの制御と闇の分離。それが果たして本当に出来るのかどうかよ」

 

その言葉を聴いて、ああ、と思い出した。そういえばグレアムの爺さんも同じような事言ってたわ。

 

「はやてちゃん、あなた、あまり魔法には関わってこなかったと聞いたのだけれど本当?」

「え、あ、はい、そうです。基本的な事も全然で……」

「そう」

 

プレシアに急に話を振られたからか、幾分緊張した声色と顔で答えるはやて。おそらくプレシアの言いたい事、問題点が分かっているのだろう。

 

自分が本当に制御出来るのか、分離出来るのか、疑われている。

 

しょうがない、ちっと助け舟出してやるか。

 

「おい、プレシア、あんまはやて苛めんなよ。ちょん切るぞ」

「どこをよ!?というか苛めてないわよ!は、はやてちゃんも違うわよ?別に私ははやてちゃんを苛めてるわけじゃ……」

 

おろおろとするプレシアを他所にはやては小さく微笑んだ後、強い眼差しをもって答えた。

 

「分かってます。それでもこれは私にしか出来んことやし、絶対にやらなあかん事なんです。書の中で寝てる管制人格の為にも、私なんかの為に力になってくれてる皆さんの為にも。せやから、信用できひんかもしれませんが、それでもどうか信用して下さい」

 

ああ、ホントむかつく。何ともガキらしくない言い様に強い気持ちの入った顔。……けど。むかつくけど、いい面構えだ。

 

「おい、はやて、プレシアになんて信用してもらわなくてもいいぜ?なにせ、すでにこの俺がお前を信用してんだからな。それだけでその問題なんて問題じゃねーんだよ」

「隼さん……」

 

だから最初から言ってんだろ?問題は一つだけだって。グレアムもプレシアも、その辺がまるで分かってねえ。

たとえ俺以外の奴がはやてを信用しなかろうと、俺が信用してGOサイン出せば問答無用で皆GOなんだよ。

 

「プレシアもだ。ガキがここまで言ってんだぜ?それを大人が信じてやらなくてどうするよ?信じてやって、それが出来たら褒めてやる。出来なかったら叱るか慰めるかして、最後は大人がケツ持つ。そういうもんだろ?」

 

賢い大人だったら『そういう問題じゃない』だとか物事の大小であーだこーだ言うだろうけ、生憎と俺は賢くない。シンプルに『信用する・しない』、そのどっちかだ。

 

「俺ははやてを信用してる。そして何より俺は俺自身を超信用してる。だったらプレシアも、他の奴らも黙って信用してろや」

「ホント、清々しいほど滅茶苦茶ね」

「まぁ、いつもの主ですね」

 

やれやれと言わんばかりのプレシアと理。しかしその顔に浮かんでいるのが批判的なものではないのは確かだ。

その証拠にプレシアははやてに向かって頭を下げ、理も気持ち柔らかい表情になった。

 

「ごめんなさいね、はやてちゃん。私の勘違い。確かに問題は一つだけだったわ」

「プレシアさん……ありがとうございます!」

「主が信用するというのなら私も信用しましょう。とりあえず殺さないでおいてさしあげます」

「理ちゃんもありが……って、殺す気満々やったん!?」

「ご安心を。あと半日は我慢しますので」

「もうちょっと我慢強く生きよ!?」

 

やいのやいのと騒ぎ出すはやてと、それを一見冷たくあしらう理。けど理のやつ、ありゃちっとばっか楽しんでやがんな。ふ~ん、アリシアやライトやフェイトと生活して多少柔らかくなったのは確かだが……。

 

(人徳かねぇ、はやての)

 

人懐っこく芯が強く場を和ませる。ヴォルケンズを始め、はやてには人を惹きつける、あるいは心を動かす何かがあるんだろうな。将来、すっげえ出世しそうなタイプだ。

 

「はいはい、はやてちゃんも理もその辺でストップ。まだ話は終わってないんだから。続きは後でね」

 

ぱんぱんと手を打ち、ガキ共を諌めるプレシア。ふん、こいつも改めて柔らかくなったもんだ。

 

「じゃあ取り合えず、流れに問題はないとしておくわ。次に確認しておきたいのは現在の闇の書の蒐集率。残りは後何ページあるのかしら?」

「ああ、残りは100ページもないくらいだ。我らと同程度の魔導師3~4人分といったところだろう」

 

そのシグナムの答えにプレシアが頷き、顎に手を当て少し思考する。

 

「そう……もし今から全員で蒐集に向かうとしても数日掛かるでしょうね」

 

だろうな。ここまで他世界の魔法生物相手に数ヶ月掛かってんだ。テスタロッサ家とウチが出てもそんくらいは掛かるはず。

 

そして勿論、俺はそれに異の声を上げる。

 

「それ、駄目。明日はクリスマスパーティやんだよ。それが終わったら年越しのパーティもあるし、年始のパーティもあんだよ。ちまちまやってらんねーの。今日中にカタぁつけるぞ」

「「「「…………」」」」

 

ヴォルケンズからかなり冷たい視線を寄越されたが、こちとら当然の言い分だろ。

な~にが悲しくて年末のこの楽しい時期にいつまでもリアルモンスターハンターしてなきゃなんねーんだよ。勘弁しろよ。

 

「ぷっ、あははは!隼さんらしいわぁ~」

「流石、自己中を極めた主です」

「何となくそう言うとは思ってたわ、この馬鹿は」

「それでこそ我の愛した主だ。そこに我との乱交パーティも予定に組込ゴハッッ!?!?」

 

はやて、理、プレシアは俺の言い分を分かってくれているようだ。けっして俺の影響を受けて染まってしまったとは考えたくない。それと理、今度から変態王の対処はお前に一任するわ。ナイスブロー。

 

「魔導師3~4人分なんだろ?だったらプレシア、お前くれてやれよ。大魔導師(笑)なんだから」

「そこはかとなく馬鹿にされた気がするけれど、まあいいわ。ただ守護騎士クラス3~4人分の魔力となると私一人じゃ心もとないわね。出来ればもう一人欲しいわ」

 

そこで静かに手を上げたのは理だった。

 

「フランが適任でしょう」

 

あ、お前のはあげねーんだ。

 

「というか、おそらくフラン一人で賄えますよ。オリジナルの私やライトを取り込んだおかげで、今のコレの魔力量は夜天に匹敵してますからね」

 

コレ、と言って踏ん付けているフランを見下ろす。

というかいつの間にオリジナルの断章取り込んでんだよ?それユーリに言った?あいつ、オリジナルの断章に会えるの楽しみにしてるっぽいんだけど?

 

「てか、夜天ってそんな魔力持ってんの?え、あいつって魔導師として実はかなり凄い感じ?」

「あなたね……それ本気で言ってるの?」

 

プレシアに呆れた目で見られた。それを受け継ぐように理から説明が入る。

 

「魔導師としての単純なスペックならば、別格であるユーリを除けばここの誰よりも上です。彼女に勝てる魔導師など極僅かでしょうね」

「……マジで?」

「マジで。もっとも本人は自分を最弱だと信じて疑ってませんが。あれ、もう嫌味を通り越してただのスットコドッコイですよ」

 

スットコドッコイかどうかは兎も角として。

へ~、夜天ってそんな強い魔導師だったんだな。知らんかったわ。だってあいつ魔法全然使わないし。使っても飛行魔法くらいで、後はもっぱら殴り蹴りだし。

 

そしてそんな夜天よりもやっぱり上なんだな、ユーリの奴。いっつもぽわぽわしてて、今も隣で無邪気に遊んでいるであろう姿からは想像もつかない。

 

「また話が逸れそうになってるから戻すけど、それじゃあフラン、あなたに魔力提供してもらうという形でいい?」

「むっー!むっー!」

「あらん限りの魔力を絞り取ってくれ、と言っていますね」

 

フランの顔面を脚で床に押さえつけて喋る事をさせないまま、しゃあしゃあと代わりに理がのたまう。

なんだろう、今日だけで俺の中で理の株が右肩上がりだ。あとで褒めてやろう。

 

「そう、それじゃあフランに任せましょう」

 

プレシアもフランにはちょいちょい冷たいな。気持ちは大変分かるが。

 

「待ってくれ」

 

と、スムーズに進んでいた話に割って入ったのはシグナムだった。

なによ?

 

「流石にそこまでされるのは心苦しい。だから……せめて私の魔力を使ってくれないだろうか?」

「シグナムだけじゃないわ。私もお願い」

「あたしのもだ」

「無論、俺もだ。俺たち4人ならおそらく丁度賄えるだろう」

 

決意を秘めた表情のヴォルケンズ。その反応に俺は少し訝しむ。

 

それもありっちゃあありなんだろうけど……しかし、何故今?もっと前から蒐集させておけばよかったんじゃ?なによりその覚悟を決めたような顔はなんだ?

 

そこまで思って、一つ、ぴんと来た。

 

「お前ら、蒐集されたらどうなるんだ?……もしかしてだけど、魔力だけじゃなく存在自体を完全に取り込まれちまうんじゃねーのか?もしくは記憶がまっさらになるとか?よく知んねーけど」

「「「「………」」」」

 

俺の予想の言葉に返ってきたのは、肯定の沈黙。

だろうな、そうだろうよ。だから限界まで自分の蒐集させなかったんだろうよ。詳しいデメリットがどんなんか知らねえが、プログラム的にあれか、『新しいフォルダ』と『新しいフォルダ(2)』みたいな?……いや、それもそれでよく分からんな。

 

ただ、それが駄目なのは分かる。何となくだろうと駄目なのは分かる。だから、それを真っ先に否定したのは──

 

「あかん!」

 

こいつらの主であるはやてだった。

 

「もちろん、私も心苦しい。最後の最後まで隼さんたちに迷惑かけて、おんぶにだっこなんやから。それでも、シグナムたちのそれはちゃうやろ!それは迷惑掛けてる上に更に迷惑を掛ける行為や!」

「主はやて、申し訳ありません。我等が非力なばかりに……」

「そ、そういう事言うてるんやない!」

「いえ、事実なのです。隼の騎士たちと戦い、その強さを実感しました。悔しいですがとても敵う相手ではありませんでした。加えてテスタロッサ家に断章にユーリと戦力は十分。むしろ、ここでフランを蒐集してしまっては戦力が落ちてしまいます。今、必要なのは数の強さではなく個の強さ。しかるに我らは足手まといです。しかし、そんな我らが少しでも役立てる場があるならば、主はやての一助となれる時があるならば、これに勝る喜びはありません」

「やからそうやないって……こ、の、分からず屋!!」

 

顔を真っ赤にして怒るはやてだが、それでもシグナムたちの覚悟は変わらないようだ。

自分たちが蒐集されて事がより良く運ぶのなら、それに越した事はない。今まで誰も成し得なかった闇の書の闇の完全駆逐……その可能性を1%でも上げる為ならば、その覚悟は当然なのだろう。

 

ホント、ハンパない良い覚悟だ。

 

だ~が、しか~し。

 

「皆、落ち着きなさい。でないとハヤブサが……って、もう遅かったわね」

 

俺ははやてとシグナムたちが口論しているうちに背後に回りこんでいた。拳は既に振りあがった状態だ。

 

「舌噛むなよ~………このクソ馬鹿野郎共がぁああ!!!」

「「「「「っづっ!?!?!?」」」」」

 

華麗なるドラムさばきの如く、リズミカルかつパワフルに八神一家の頭に握りこぶしを叩き込んだ。

 

「ってーな!なにすんだ!」

「なにすんだじゃねーよ、ドアホロリータ。てかドアホども」

 

タバコを口の端で咥え、腕を組んで仁王立ちで見下す。

 

「俺は、はやてを助けるっつってんだよ。助けて、笑ってすごさせるっつってんの。なのに命助けてもテメエらが消えちゃ笑えねーだろ。ったく、なんでどいつもこいつも土壇場になると自己犠牲愛溢れさすのかねえ。なあ、プレシア?」

「……耳が痛いわ」

 

だろうな。お前も過去、ジュエルシードの後始末の為に局に出頭しようと考えたからな。

 

自己犠牲?んなの『自殺』をマイルドに言い換えただけだろ。

 

「それとはやて、テメエもざけた事言ってんじゃねーよ。心苦しい?迷惑?ガキが大人ぶってんじゃねーぞ。おんぶにだっこ上等だよコラ。こちとらテスタロッサ姉妹のおかげでおんぶもだっこも肩車もプロ級なんだよ」

 

はやても、シグナムたちも賢くて嫌になる。正義感溢れてて嫌になる。

OK。

だったら俺が代わりに馬鹿になってやる。悪心を溢れさせてやる。

 

「もうお前らなんも考えんな。しゃべんな、クソうざってえ。黙って俺の言う通りにしとけ。でねーとウチと隣は一切力貸さねえぞ」

「お、おい、隼……!」

「はい、お口チャ~ック!おい、プレシア、段取りはテメエに任せる。最低条件ははやての笑顔の未来。あとヴォルケンズも力になりたいみてえだから何かいい役回り考えてやれ。他に何か気になるとこあんなら適当に決めとけや。あ、晩飯食ってから最終決戦入るから、それまでにな」

「ハァ~~~~……せっかく効率よくする為にこの場を設けたのに、全部台無しね。ホンッッットに自分勝手なんだから!」

 

プレシアの愚痴を無視し、俺ははやての脇の下に手を入れて担ぎ上げ肩車をする。

 

「わわっ!?ちょう、隼さん!?」

「どうだ、肩車マイスターの肩は?うし、それじゃあ退屈な話し合いも終わったからフェイトたちと遊ぶかぁ」

 

フェイトたちは隣だよな、なんかゲームでもしてんのかな?取り合えず晩飯出来るまであっち行ってよ。

 

「主」

「ん?」

 

不意に理から呼びかけられ脚を止める。と頭上で「んがっ!?」とうめき声が聞こえた。タイミング悪く扉をくぐろうとしてたとこだったから、はやてが縁にぶち当たったのだろう。「どこが肩車マイスターや!?」と喧しいがスルー。

 

「管理局への対処はどのように致しましょう?」

「あー、それがあったか」

 

事が事なんで協力を仰げば了承の返事があるだろうが……でもなぁ。

今回の件って俺と八神家の喧嘩であって、部外者にちゃちゃ入れられるのもなぁ。よしんば首突っ込んでいいと言える奴といったら当人たちの知り合い───つまりウチとテスタロッサ家。

そこに割って入られてもなぁ。しかもお役所様だから我が物顔で命令してくるだろうし。はやてを助けるのは俺の意思であって、命令されてやってたまるかよ。

 

ふむ……。

 

「そうだな、引っ込んでてもらおう。土壇場で出張ってこられても迷惑だし、あらかじめこっち来ないよう言っといてくれや」

「来るなと言っても我が物顔でしゃしゃり出て来るのが管理局というものですよ。……ただ、そうですね、"私なりのやり方"でお願いすれば理解してもらえるかもしれませんね」

 

なんだろう、すごく不安だがこのさいしょうがない。

 

「……なるべく穏便にな」

「お任せを」

 

わぁお、いい笑顔。

 

「あの、なんだ、プレシア、すまない。無力で弱い私たちのせいであなたに、いや皆に迷惑や負担を……」

「気にしないでいいわよ。というか別にあなたたちは悪くないわ。気持ちも分かる。それにハヤブサのアレはいつもの事だから。むしろ出たトコ勝負で突っ走らないで丸投げしてもらえただけマシ」

「……本当にあいつの在り方はどんな状況でも変わらないのだな」

 

お褒めに預かり光栄だ。さて、では改めて隣行こ。

 

(そうだ、なのはたちも呼ぶか。あいつら管理局寄りだけど、はやてのダチでもあるからな)

 

局として助けるなら仕事だが、ダチとして助けるなら友情だ。そしてなのはたちなら仕事より友情を優先するだろう。

 

「……隼さん」

 

家を出て隣の家のドアに手を掛けようとした時、不意にはやてが声をあげた。

 

「ホンマにごめんなさい」

 

顔は見えない。しかし声の調子で分かる。今コイツがどんな顔をしているのか。

 

「始まりは私なのに、過程も結果も全部全部面倒見させてしまう事になって……隼さんや会ったばかりの人たちに面倒押し付けて……迷惑かけて……甘えてばっかでホンマにごめんなさい」

 

その言葉には後悔の色が滲み出ている。

たぶん、出るときシグナムとプレシアの会話が聞こえたんだろう。それでまた割り切っていた自分の中にある感情が零れ出てんだろうよ。

 

これだから聡いガキは嫌いだ。ガキらしくないガキは嫌いだ。

 

「クソボケがぁ。いっぱしなクチ聞いてんじゃねーよ。言っただろうが。テメエらはもう何も考えんな、黙れってよ」

「で、でも……」

 

でももストもあるか。

 

「ガキは面倒起こしゃあいいし、迷惑掛けてりゃいいし、甘えてりゃいい」

 

なんもかんも全部はやてに押し付けるのは酷だ。ガキはガキらしく。

 

「もちろん、いつだってケツ持つわけじゃねーぜ?毎回ンな事してやったら、『結局頼ればいい』とか思う駄目人間になっちまう。ケツを拭われてんのに涼しい顔でいるようなクソ野郎になっちまう」

 

そして、そんなクソな奴を作り出すのはたいていクソな大人だ。その行為が、あるいは好意が、過ちを学んだり、責任を持つ機会をガキから奪っちまってるのに気づけない大人。

 

「だけど今回の件はテメエでケツ拭くにも、捻り出す糞がデカ過ぎてこびり付き過ぎちまうだろうからな。流石に荷が重いだろ。だから今回だけは特別」

 

ただし、と付け加える。

 

「自分で出来る事、出来そうな事まで人にやらせんなよ?というか奪わせるな。───『自力で克服する力を養う』という事を奪わせるな」

 

俺はガキは好きだし、甘いというのも自覚がある。……けど、クソな奴を作り出すクソな大人にはなりたくない。

俺ははやてをクソな奴にしたくはない。

 

けれど今回は例外。

 

「弁えろ、分かれ、諦めろ。今回はテメエらだけじゃ無理だ。出来る事でも出来そうな事でもねえ。無理。力を養う前に潰れちまう。だから、そうなる前に頼りゃあいい。出来る奴に、出来そうな奴に。俺らに。その方が自滅するよかよっぼどマシだ」

「………」

「で、ここまで言われてまだお前はお利口なガキでい……おっと?」

 

不意に視界が塞がれ、後頭部が暖かく包み込まれる感触がきた。

 

「隼さん、ホンマにごめ……ありがとう。それと改めて、私たちの明日を、未来をよろしくお願いします」

「おう、任せろい」

 

テスタロッサ家の扉を開く。この先にある光景が、これから先はやても加わるであろう事を思って。今だけじゃなく、明日からもずっと。

 

「はやぶさが来た~!あ、肩車してるー!いいなぁはやて!次、私の番!」

 

取り合えず、難しい事は無視して今は遊ぶか。

 

 




話数ではリメイク前を追い越してますが、物語的にもこの辺りで追いつきました。

完結までの残り話数的にはたぶん6~7話です。ただプロット?というものがなく行き当たりばったりで思いついた事を書いているので、もっと増えるかもしれませんが(汗

次回は最終決戦……の前のぐだぐだ回。

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