フリーターと写本の仲間たちのリリックな日々   作:スピーク

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06

 

「おや?これはなんとも珍しい。お客ですか、いらっしゃい」

 

数年前とまったく変わらない言葉と共に店の奥から姿を見せた男性は、案の定その容姿も数年前と変わりがなかった。

知的な眼鏡、白のシャツの上に黒のベストと黒のパンツというバーテンダー風な服装の男性。皺のまったくない潤いを持っている顔は20代後半に見え、やはりそれも数年前と変わりない。

本当に気持ち悪いほど変わっていない。数年前から……いや、初めて会った時からか。

 

「おやおや?……ふふ、またまた君ですか。どうもお久しぶりです」

 

数年前と同じようにやはり俺の事は覚えていたようだ。

男は笑顔で近寄ってくるとまたいつかの観察するような目つきになり、少しして眼鏡をクイっと押し上げてその笑みをより濃くした。

 

「どうやらあの子は起きたようですね」

「……あんた、ホントに一体何モンなんだよ?」

 

男は小さく声に出して笑うと奥へと引っ込み、やがて二つのティーカップを持って戻ってきた。

 

「どうぞ、そこの椅子に掛けて下さい」

 

そう言うと男は勧めた椅子の対面に位置する椅子に座り、それぞれの前に紅茶の入ったカップを置いた。俺はそれ無視して目で「答えろや」と促す。

そんな俺の態度に怒ることもなく、男は微笑みながら頭をさげた。

 

「まずはお礼を言っておきましょうか。あの子たちを受け入れてくれてありがとうございます」

「よく言うよ。ガキん頃の無垢で純情な俺にあんな得体の知れん古本を寄こしといて」

 

俺の言葉に可笑しそうな笑みを浮かべる男性。

以前から思ってたが、ホントなに考えてんのか分かりずれぇ奴だ。

 

「あんた、何モンだ?」

 

先ほど答えが返ってこなかった問いをもう一度ぶつける。しかし、また男性は口を意味深な笑みの形にするだけ。

どうやら、向こうからの自発的な言葉を待つより、こっちから突きつけ促したほうがいいようだ。待ってちゃ埒が明かん。

 

「魔導師、なんだろ?夜天の写本なんてモンを作れるくらいなんだから」

「そうですね、間違ってはいません」

「間違ってはって……あのよ、そういう言い方、俺嫌いなんだけど?はっきりしろや」

「ふふ。さて、どうでしょう?」

 

こ、こいつ、マジでやりずれー!飄々としてのらりくらりと言及をかわしやがる。

男性の言動に少しイラっとなる俺。気を落ち着かせるため紅茶に手を伸ばそうとした時、また図ったように男性が唐突に言葉を発した。

 

「アルハザード」

「?」

「それが答えです」

「は?」

 

いや、答えって……それここの店名じゃん。それとも、その店名はなんかから参考にしてんの?

どっちにしろわかんねーよ。

もう俺は本や男性についての追求はやめる。知ったところでどうなるってわけじゃねーし、今更写本も返すつもりはねぇからな。ありゃあ、もう俺のモンだ。

というわけで、今からはレッツ愚痴&文句タイム!

 

「よぉ、店長さん。あんたなら察してるかもしんねーけど、かなり大変だったんだぜ?つうか現在進行形で大変なんだよ。金が馬鹿みたいにかかるし、一人クソ生意気なガキはいるし」

「ふふ。ええ、お察ししますよ。でも、実はそれ以上に嬉しいでしょう?美人の女性3人や幼女と同棲出来て」

「まぁな……って、そうじゃねーよ!苦労してんだよ!」

 

いや、実際はあんたの言う通りなんだけどよ!でもここでその流れは違くねぇか?

 

「良かったじゃないですか。苦労は苦労でも原因が女性なら、男としては本望でしょう。それで不満の声をあげるなんて贅沢ですよ?」

「あんたのその考え方に不満の声をあげる!」

「とっても大きな子、大きな子、ほどよく大きな子、ぺったんこな子、よりどりみどりじゃないですか。さらに獣耳な男の子まで……どんな趣味でもばっち来い」

「あ、あんたなぁ……」

 

この人、こんなキャラだったか?数年前はもっとミステリアスな印象だったぞ?外見は変わってねーけど中身は全然違くね?

 

「魔法生命体とはいえ身体の作りは人間のそれ。しかも皆君を慕っているでしょう?一体何が不満……あ、もしかして不能ですか?」

「全開だよ!」

「では一体なにが……」

「だからっ……あークソ!」

 

ホントに調子狂うな。なにをどう言って、どこから突っ込めばいいか……。

頭を抱える俺を他所に男性は何かを考え込み、少ししてポンっと手を打った。その顔は人が何かを閃いた時のそれだ。それも禄でもない事を。

ああ………嫌な予感がMAXだ。

 

「不能ではなく全開…つまり絶倫!なるほど、不満だったのは数ですね!」

「オイ、ちょっと待てやコラ」

「女性の守護騎士4人では足りないと、なるほど。いいですね~、若いって。しかし、それが分かれば解決は簡単!女性の数が足りないなら増やせばいい!ちょっと待っててくださいね」

「まずテメエが待てっつってんだろうがぁぁ!」

 

俺の訴えも空しく、男性は俺を色魔か何かと勘違いして奥に引っ込んでいった。

つうか、増やすってなんだよ?数を増やす?おいおいおい、あんまいい予感がしねーぞコラ!まさか女性をつれて戻ってくるなんて事は……。

しかし、その予感は外れ。

程なく戻ってきた男性の手には薄っぺらの紙が1枚だけ。女性はいない。………少しだけがっかりしたのは秘密だ。

 

「ンだよ、それ」

「これはですね、君にあげた写本の1ページです。写本を作る時、安全装置代わりに予め数枚抜き取っておいたんです」

「安全装置?」

「はい。私の書いた写本が悪用されて害を及ぼすものになったら嫌ですからね。この抜き取ったページを燃やせば、写本本体も消滅するようにしておいたんです」

 

おいおい……過激っつうか、用意周到っつうか。てか、そんな心配すんならハナっから渡すなよ。それも今更だけどよぉ!

 

「それで?なんで今そんなモン出すんだよ」

「ところで君は『王様みたいな傍若無人なMっ子』『天然でアホのボクっ子』『丁寧で落ち着いた物腰だけど、ちょっと物騒なSっ子』、この3つの中で選ぶならどんな性格の子がいいですか?」

 

人の質問には答えず、逆にそんな事をいきなり質問された。

聞けよ俺の言葉。無視するたぁ何様だ。それにあんたの質問は意味も意図も分からん。つか、なんでそんなクセの在る性格しかチョイス出来ねーんだよ。

 

「おい、いきなり何を──」

「どれです?」

「………なんだっつうの。ンじゃ、3番目」

 

訳分からんが答えにゃ先に進みそうにないので、特に考えず適当にそう言った。

俺の言葉を聞くと男性は一つ頷き、持ってきた紙に懐から出した変な形のペンであのまったく解読不能な文字をサラサラと書き綴っていく。

 

「なに書いてんだ?つうか、それってどこの文字?」

「…………」

 

返事なし。集中しているようで、俺の声などまったく耳に入っていない様子。ホントなんなんだ?

手持ち無沙汰になった俺は紅茶を飲み、タバコを吸いながら待つこととにした。

 

それから約10分後、いい加減もう帰ろうかと思っていた時ようやく男性に反応が見られた。

 

「───うん、完成。どうです?」

 

そう言って紙を俺に見せてくる男性。しかしながら、その書いてある文字の読めない俺。どうだ、と聞かれても答えられるはずがない。よって適当に返す。

 

「ふーん。で、結局それはなんなんだよ?」

「さっきも言ったようにこれは夜天の写本の1ページ。白紙のまま抜き取ったとはいえ、その在り方は変わりません。そこに私がまた新たに魔導を書き込んだんですよ。だから、そうですね……謂わばこれは『夜天の写本の断章』といった所でしょうか」

「はあ、断章ね」

 

正直よく分からん。数を増やすとかなんとか言っていたけど、まさかそれはその断章を写本にくっつけてページ数を増やすって事か?増やしてどうなるんだ?クソロリがいい感じのねーちゃんに成長するとか、シグナムのバストが更にアップするってぇなら有り難いが。

 

「で、その断章をどうすんだよ?」

「もちろん、改めて写本に入れてきちんとした章にします。ああ、ちなみにこの章は『理』を司ってます」

 

ああ、やっぱページ数を増やすだけか。女性を増やすとかどうのこうの言ってたけど、それはどうやら俺の勘違いだったようだ。

つうかさ、もうそうしたら写本じゃなくね?その断章って完璧オリジナルだろ?それとも正本にもちゃんと理の断章ってのがあんの?………まっ、どうでもいいけどよぉ。

 

俺はその断章についての詳しい説明も聞かず、写本を呼び出しさっさと新しいページを入れた。そして一言挨拶すると踵を返して出口に向かう。

もういい加減帰りてぇんだ、本当にこの男性の相手は疲れるから。

 

「ンじゃ、もう行くわ。茶ァありがと。もうこの店見つけても入らねーからよ」

 

そう言って出て行く俺は、しかしドアを開けたところで男性に呼び止められた。

 

「お待ちください。もう二つ、渡す物が」

 

男がこちらに向けて差し出された手にはビー玉大の綺麗な珠が二つ乗っていた。

一つは青色、見方によれば紫色にも見える珠。もう片方は赤と黄色を混ぜたような色の珠。

俺は学習能力がないのか、また無警戒に、自然に、その二つを男の手から取った。

 

「んだよこれ?」

 

まさかこの男が何の変哲もない珠をくれるわけもない。写本の時がそうだったように。そして、そうだと分かっているのだから、男の返答も分かりきっているのだ。

 

「魔法の珠です」

 

だそうです。

 

「売っていい?」

「ダメですよー」

「受取の拒否権は?」

「ありますが……拒否します?」

 

向こうも俺の事をよく分かってらっしゃるようで、その顔はニヤニヤとした腹立たしいもんだ。

ああ、そうだよ、拒否しねーよ。何せ、俺ぁ貰えるもんはなんでも貰う主義。タダより高ぇーもんはねーんだよ。

 

俺は手の中で二つの珠を転がした後、無造作にポケットの中につっこんだ。

 

「ふふ、安心してください。その珠に何ら害はありません。むしろあなたの手助けをしてくれる方を手繰り寄せてくれる事でしょう」

「相っ変わらず意味分かんねー事を……」

 

さらに続けて言われた言葉もやっぱり訳が分かんねーモンだった。

 

「それと、近いうちに写本に魔力を与えてみてください。面白いことがおきますから。あ、でも与える魔力は君や騎士たち以外じゃないとダメですからね。それとその魔力の持ち主は女性の方がいいですよ?───では、またお会いしましょう」

 

俺はもう会いたくねーよ。つうか会わねー。

男性の存在を背中の向こうに感じながら、俺はなんでも屋『アルハザード』後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルハザードを出て温泉街を抜け、旅館に戻ってきた俺。

部屋に入るとテレビの音は聞こえるが人の気配はせず。浴衣の入っていた棚が開いているのを見ると、どうやら皆も温泉に向かったようだ。

高町さんとの約束の時間までまだ少々あり、さてそれまでどうやって時間を潰そうかと考えていると丁度なタイミングで騎士どもが返って来た。

 

「あ、ハヤちゃん、まだ温泉に行ってなかったんですか?とても気持ちよかったですよ」

「主の言う通り、温泉とはとても素晴らしいものでした。はい、もう本当に」

「ふふ、将は何度も露天と中の風呂を行ったり来たりしていたな」

「うちの小っせぇ風呂もいいけど、デカいのはやっぱいいな!泳げるし」

「風呂上りの牛乳が格別だった」

 

上からシャマル、シグナム、夜天、ヴィータ、ザフィーラの弁。

どうやら5人は温泉をいたく気に入った様子。顔を火照らせ満足げに笑っている。いつもは寡黙なザフィーラも小さく微笑んでいる。

俺もそんな皆の嬉しそうな様子を見て、温泉に来て良かったと改めて思った。

 

(浴衣姿万歳!!)

 

ああ、本当に来て良かったよ!

 

まずはシグナム。あの浴衣を押し上げているメガデス級メロン!浴衣という薄い生地な上、さらに胸部のみサイズが合っていないのでそこだけパッツンパッツンのピッタリフィット。お胸様の形が手に取るように分かる!───ああ、実に素晴らしい!!

 

次に夜天。いつもはリボンもなにも着けず、ただ降ろしているだけのストレートな髪形の彼女。それが今はどうだ!長い髪をアップにし、いつもはその髪で隠れている可愛い耳がちょこんと出ている。極めつけは儚げな色気を放っているう・な・じ!───ああ、むしゃぶりつきてぇ!!

 

3人目シャマル。健康的な白い肌が今はほんのり赤くなり、ホゥと吐息を吐く様はまさに艶の一言!さらに髪が数本僅かに顔に張り付いており、その色っぽさは倍率ドン、さらに倍!とどめはくびれからケツにかけての『キュッ、ぷるん』としたワガママ感!───ああ、めちゃくちゃにしてぇ!

 

4人目ザフィーラ。胸板!

 

5人目ヴィータ。特記事項なし。お前もう帰れよ。

 

「いい……いいよ、お前ら!最高だ!俺の最高の騎士たちだ!!」

 

もちろん、普段からも風呂上りのこいつらの姿は見ている。その時でさえ、いろいろと持て余す色香を放っているのだが、しかし今はさらに増し増し!浴衣という服飾の何と威力の高い事か!旅行という解放的雰囲気の中でのこいつらは、もう何というか……エロい!!

 

「お、おれ、主なってよかった……もう何か悔いはないよ……お前ら大好きだコノヤロウ!」

 

最近ではデメリットの事ばかり頭を過るし、実際早まったかな~と思う事もあったんだよ。けどさ、やっぱそんな訳なかった。なかったんだ!美人3人が浴衣姿で並ぶこの光景は何物にも代えがたい!………いや、お金には代えられるかな。150万くらい?

 

「よく分かりませんが、我が主にそういって頂けるのは嬉しい限りです」

 

ぺこりと頭を下げる夜天。その時、胸元から何かチラリと見えたような見えなかったような。しかし、それよりも今注視すべきなのはその湛えられた表情。銀色の髪も相まって、まるで淡く綺麗な雪解けの暖かさを感じる笑顔だった。本当に嬉しそうだ。

そしてそれは夜天だけでなく他の騎士たちもそのようで、シグナムは感動の表情でこちらを見て、シャマルは両手を頬に当て身体をくねらせ、ヴィータはそっぽを向いてるが口角がゆるゆるで、ザフィーラは尻尾をプロペラのように回転させて今にも飛んで行きそうなほど。

 

「あ、そうだハヤちゃん!さっきすぐそこで高町さんに会ったんですよ!」

 

俺が座ってニマニマと皆を観察していると、ぴょんぴょんと擬音がつきそうな感じでシャマルが隣に座ってきた。その際にふわりと漂うシャンプーの匂いと軽くはだける浴衣に危なく抱きつきそうになったが、何とか自制して平静を装う。

 

「おお、俺もさっき温泉入ったとき会ったぜ」

「旅先が同じだったなんて偶然ですよね~」

 

嬉しそうに笑うシャマルなんだが、こちとらドキドキだよ。てか、ホント、あんま近寄んないで?家じゃそう意識しちゃないけどさ、こういう場所だとさ、いろいろ付加価値みたいなのがついて辛抱堪らんのですよ。

上気した頬、しっとり濡れ髪、浴衣の下の肌のチラ見……もう、ねぇ?……ねー!!

 

「私も今日初めて高町夫妻とお会いしましたが、なかなか気持ちの良い方でした」

 

だが、しかし。

そんな俺の心境など露知らず、というかさらに追い打ちを掛けるように我が家一番のグレートフルーツをお持ちのシグナムまで隣に座りこんできた。

 

「しかし、高町さんは何か武道の心得がお有りなのでしょうか。あの綺麗な立ち姿、まるで体に一本太い芯が入っているかのような凛然さでした」

「あ、流石シグナム。当たりよ。何でも古流剣術をしてるみたいで、家に道場もあるって仰ってたわ」

「ほう、それは一度お手合せ願いたいものだ。雰囲気から察するに、恐らく相当な腕の剣士だろう」

「そうね。というより、高町さんの所は武道一家らしいわよ?息子さんと娘さんの一人が剣をやってて、もう何人かいる娘さんのうち二人は空手と拳法をやってるって聞いたわ。一番下の末っ子、なのはちゃんって言うんだけど、その子と奥さんだけが武道に携わってないんだって」

 

俺を挟んで繰り出される会話のキャッチボール。いつもならインターセプトするんだが、この状態じゃ口も体も自由に動けない。唯一、目だけが右に左に、シグナムの体にシャマルの体に。

てか、シャマル。お前、よそ様の家庭知りすぎじゃね?もうそんな仲良くなってんの?まあ俺も風呂で高町さんの家庭事情をちょっとだけ知ったけどさ。

たしか娘的存在とか何とか言ってたけど、なんだな、いろいろあんだな。うちも人間一人+魔導生命体五人の家族構成で血も繋がってねーけど、これはそう変わった事じゃねーのかもな。……いやいやいや、そんなわけねーだろ、俺んちも大概だろ。

 

「それでね、何でも娘さんの一人がすごい有名な歌手みたいで──」

「ふむふむ」

 

しばらく二人に挟まれながら話を聞くふりをして身体を舐め回していた俺だが、高町さんとの約束の時間がもうすぐそこまで迫っていた事に気づき、名残をしつつも二人の間から抜け出して支度をする。

 

「主、どこにいかれるのですか?」

「ん?ああ、高町さんとこ。飲みに誘われてんだよ」

「そうだったのですか、分かりました」

 

そう言った夜天は、今まで見ていたテレビの前から腰を上げ、どこかに出かけるのか支度をし始めた。……いや、てか、もしかして?

 

「えっと夜天?もしかしなくてもついて来る気?」

「はい、主に酌をするのは我が使命ですので」

 

いやいやいや、それ超初耳なんだけど?確かに普段、気づけばいつの間にか夜天が率先して俺にお酌をするようになったけどさ。

 

「今日はいいって。行くのは俺だけで、夜天は夜天で文字通りゆっくり羽伸ばして過ごしとけよ」

「「「「「え?」」」」」

 

返答が一つではなく、なぜかハモった物が返って来た。見れば夜天だけでなく、他の騎士全員も行く気まんまん。

お前ら、過保護っつうか過守護すぎんだろ。なんで当然のように同伴する気なんだよ。せっかくの旅行なんだからよ、もうちっと個々の時間をだな…………ああ、そうか、そうだった。

 

「たぶん2~3時間で戻るだろうからよ、その後はみんなでゆっくりしようぜ。旅行は長ぇんだ、思い出作る時間もたっぷりあらーな。な、シャマル?」

「ハヤちゃん……」

 

昨晩シャマルが言ってたじゃねーか。

『私達、ずっと本の中で眠ってたでしょ?そして、ついこの前起きたばかりで……だから、家族で遊ぶとかそういうの経験してみたくて……そんな中でハヤちゃんも楽しんでくれたらなーって……最近夜と朝しか一緒にいられないし……ハヤちゃんともっといっぱい思い出作りしたいし……』

てよ。

めんっどくせーけど……まあしゃーねーわな。シャマルのこの言葉がなけりゃ旅行なんて来なかったわけだし。ちったあ主っつうか家主らしい対応もしてやんなきゃな。

 

「んじゃちょっくら行ってくるわ。お前ら、大人しくいい子で待ってろよ?特にヴィータ」

「名指しすんな!……あんま飲みすぎんなよ」

 

てわけで、俺は一路高町さんの部屋へと向かうのだった。

 


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