フリーターと写本の仲間たちのリリックな日々   作:スピーク

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一体この夢を見始めて何ヶ月くらい経っただろうか。

そんな事を思いながら俺は今日もまた扉を開ける。仲にいるのは例のごとく、あの金髪の幼女。と、テントと釣竿。

 

なぜ?

 

 

 

 

────どうですか!

 

 

 

 

おう、挨拶もなしか。まあいいけど。で、なにがどう、と?

 

 

 

 

────先日隼がやったというキャンプと釣りというものを再現してみました!

 

 

 

 

確かに俺はこの夏、うちと隣人とで海の近くにあるキャンプ場に行った。それをこいつに話したのは前々回だったか、前回だったか。

ともあれ、どうやらこいつは富士山の時のようにまた再現したようだ。好きだな、再現。そしてやっぱりというか何と言うか、うん。間違ってる。

 

テントを釣ってどうする?その散らばった飯盒やら皿やらはなんだ?

 

 

 

 

────だってここじゃ生き物であるお魚さんは出せませんから。その代わりのテント(巨大魚)とお皿たち(小魚)です!

 

 

 

 

ああ、ごっこ遊びみたいなもんか。

てか、テントとかは出せて生き物出せないんだ。夢なのに。普通夢だったらご都合満載がデフォだろうに。

 

 

 

 

─────し、しょうがないじゃないですか。ここは夢じゃないんですから……

 

 

 

 

あん?夢じゃねーの?

 

 

 

 

─────はっ!?ゆ、夢ですよ!ここは一時の楽しい夢の中です!そうなんです!

 

 

 

 

あっそ。

まぁ、そんな夢もあるか。それにこの明晰夢(?)にご都合なんてないのはハナから知ってる。いつだったか『綺麗なネエちゃん出て来い!』と念じたのに何も起こらなかったんだからな!

 

 

 

 

─────そ、そんな事思ってたんです!?………綺麗なネエちゃん………ネエちゃん

 

 

 

 

唐突に考え込みだしたガキ。

どうした?もしかしてネエちゃん出してくれんの?まさかね~。

 

ほどなくガキは何か決意したのか、胸の前で両の拳をグッと握る。

 

 

 

 

────………明日の晩まで待ってください。隼をあっと言わせてあげます!

 

 

 

 

 

マジで!?

 

 

 

 

 

 

 

04

 

 

 

 

 

 

 

立った。

 

ああ、立っちまったんだよ。前回、俺にもとうとう立っちまったんだよ。

空想の世界ではよく見かける、しかし現実のこの世界じゃあそうお目には掛かれないモノを俺は立てちまったんだ。

別に俺は立てようと思って立てたわけじゃねぇ。それどころか、そもそも俺が立てたのかどうかも怪しいんだ。けど、間違いなくその立ったものは俺に向けられて立っている。だから、誰が立てたかなんてのは問題じゃないんだ。

立ったことが問題なんだ。

その立ったものが仮にはやてだったなら、俺はハイジも引くくらいの勢いで喜んでやるが、生憎と絶望しか感じない。クララが立った姿を一番初めに見たのが実はジジイだったという落ちくらい笑えない。空気読めよジジイ。ガッカリだよ。

 

死亡フラグ。

 

それが今回立ったモノの名前だ。

バベルの塔並みの巨根フラッグがデカデカと聳え立っているのが俺の目には見える。

一体俺はどこで間違ったんだろうな?いや、そもそも俺は悪いのか?じゃあ、一体誰が悪いんだ?そいつ、ぶっ殺してやる。

そんな考えが浮かび、とことん突き詰めて行けば、俺の思考はとうとう宇宙誕生まで遡ってしまった。が、流石に宇宙に喧嘩売っても勝ち負け以前の問題なので、やっぱり一番悪いのはすぐ傍で呑気にはやてお手製おにぎりを食べているこの変態王が悪い。

 

「もぐもぐ…………どうしたのだ、鈴木隼よ?そんなに見られると想像妊娠してしまうではないか。それともこの握り飯が欲しいのか?だったらそう言えば良かろう。少し待て、今隠し味で我の涎を1リットルほど入れてやる」

 

現在、場所は海鳴市街地上空。時刻は20時。

今晩、俺とフランとヴィータは魔力蒐集するためにここにいた。眼下には人工の光輝く街並みがあり、人々の喧騒が聞こえてくるここで、俺たちは『最近よく現れるでっかい魔力を持った奴』から魔力を頂く予定だ。

他の騎士も後から来るはずだが、取り合えず俺たちが先行。

 

「今日までの探索でエリアサーチしてないのはここら辺だけだから、たぶん今日は当たるぜ」

 

そう言うのは赤いゴスロリ騎士甲冑に身を包んだヴィータ。はやてデザインのそれは中々どうして、似合っている。ほんの少しだけ可愛いとも思えてくるから不思議だ。

またフランも黒を基調とした騎士甲冑に身を包んでおり、ダークさが何時にも増して濃く見える。似合っているか似合っていないかで言えば、やっぱり似合っているが。

 

(そういや俺んちの騎士共は、まだ騎士甲冑作ってなかったな)

 

あいつらも俺に何度か「考えて下さい」と言ってきてはいたが、この俺がデザインするなんてそんな面倒な事するわきゃないので、結局現在もあいつらは騎士甲冑無しだ。

かく言う俺だって、自分の騎士甲冑を作ったはいいがここ数ヶ月はまったく使ってなかった。だって平和だったし。時たま魔法世界に狩りに行く事はあったが、その時はいつも理やシグナムがハッスルするので、俺が騎士甲冑を出す必要がないし。

普段する喧嘩もマトイを着るほどのもんじゃないからな。……大怪我はしょっちゅうするけど。

 

「おい、なにボケ~としてんだよ。お前も探索に協力しろよ、この金髪DQN」

「おいコラ、このジェントル隼に何素っ頓狂なあだ名付けてんだよ。人を見た目で判断するなんてのは一番やっちゃいけねー事だって教わらなかったか?この頭も体も貧相残念娘。ついでに言っちゃうが、俺にエリアサーチなんて器用な魔法は使えん。出来るのは殴る、蹴る、脅す!」

 

ちなみに俺の今の格好も騎士甲冑だが、前作ったマトイとは違うデザインになっている。一見ただのジャージ姿だ。

ん?なんで変えたのかって?そりゃあ、お前…………………夜天たちが怖いからに決まってんじゃん!!ええ、そうですよ、怖いですよ、何か文句でも?

 

確かに前回「喧嘩だァ!」と息巻いてたよ。でも、ぶっちゃけた話、マジ怖ェんだって。だから、極力顔を合わせたくないんだ。よって、服装をガラッと変えてみた。

そりゃあ服装変えたくらいじゃあ変装とも言わないし、そもそも根本的解決には程遠いだろうけどよ、それでも時間稼ぎくらいの誤魔化しにはなるべ?

 

「お前、それでよく管理局員になれたな。このDQN局員」

「誰がDQNだ」

「金髪でジャージ姿はどう見てもDQNって奴だろ。テレビで見たぞ」

「そんな奴らと一緒にすんな。ジャージは単純に動きやすいんだよ」

 

それにホラ、こうやってフードを目深に被れば顔分かんねえだろ?ちゃんとピンで留めればはためかないし。俺の家族やお隣さんが出てきても、そうそうは分からねぇはずだ。

 

「おい鉄槌、そろそろその臭い口を閉じろ。それ以上の隼への発言は泥棒猫の所業と見做す」

「………意味分からねぇし。第一、フラン、お前そんな男のどこがいいんだよ。そいつとは昨日会ったばっかだろ?助けて貰ったからって、気を許しすぎじゃないか?管理局員だぜ、そいつ」

 

ヴィータ含め八神家には俺の事も、俺と風嵐の関係も本当の事は一切喋っていない。その為、フランの奴も皆の前では俺の事を「主」とは言わない。

俺は管理局員でフランは夜天の騎士。……………まあ、こいつに限り『鈴木隼に惚れて変態になった』という認識がプラスされたようだが。

 

「生理痛のイライラに匹敵しそうな愚問よな。我は鈴木隼が好きだから好きなのだ。時間も経験も理由も関係ない。この感情は我の心と子宮から沸々と湧き上がって来るもので、止め様がないほどのモノだ」

「…………おい、金髪。お前、フランになにしやがった」

 

そんな怖い顔でこっち見んなよ。俺は何もしてねぇっつうの。こいつはきっと生まれた時からこうだったんだよ。ただ、俺がいない間の生活では変態になる事がなかったんだろうよ。

 

「ちっ、まあいい。お前、もしあたしにも何かしたら殺すからな」

「何もしねーっての。俺がする事はただ一つ、はやての救命だ。はやては絶対ェ助けてやる」

「…………………ふんっ」

 

ぷいっとそっぽを向くヴィータ。その姿に苦笑すると同時にもう一人のヴィータを重ねてしまう。

ここでもし相手がコピーの方だったら『お前が人を助ける?また何か碌でもねぇ事考えてんだろ?人を助けるならまずお前が死んだ方がいいんじゃね?人類の未来的に』と憎まれ口が返って来る事だろう。そして喧嘩になるというコンボが常日頃。

対してオリジナルの方はというと、

 

「まあ、そこだけは感謝する。お前の言葉に嘘はないってのだけは、あたしでも分かるし。はやても嬉しそうに笑ってたからな」

 

なんて殊勝な物言いをする。

コピーの方もこの態度は見習ってほしいね。そうしたら俺ももうちっとは優しくしてやんのによ。いくらコピーはコピー、オリジナルはオリジナルっつっても、こりゃ違いすぎだ。

 

「だったら、お前も怖い顔してんじゃねーよ。はやてが笑ってたらお前も歯を見せてニカッと笑え。そうして大きくなってく家族の和ってな。ガキゃあ笑ってるのが一番だ」

「う、うん…………って、なに撫でてんだよ!」

 

コピーにもやったように撫でてみた結果、同じような言葉が返って来たがデバイスの一振りはやって来ず、どうしていいか分からないといった感じでされるがままだった。

 

なるほど、先ほどの殊勝な言葉といい、オリジナルヴィータはコピーよりかは少しだけガキらしいガキのようだ。

 

「なあ、ところで隼………なんでフランはさっきからあたしを睨んでんだ?」

 

ん?ああホントだ、超睨んでるな。今にも飛び掛りそうな姿勢で。

 

「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺────────たかが塵芥の分際で主に頭を撫でられるとは。我ですらまだ揉まれた事もないというに……………嫉妬、Shit」

 

変態はさておき。

 

その後ヴィータが封鎖領域兼エリアサーチを開始して1分も経たず、例の『時たま現れるでっかい魔力を持った奴』が網にかかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はやてに魔導師の先生を頼まれた。

その理由は『私の命は私が面倒見る!』『皆ばっかり働かせられへん。私も手伝う!』と言ってはいたが、あのはやての事だから本当の所は『皆には酷い事して欲しくない。せやから私が魔導師になって全て背負う!』と言った所だろう。

自分の身よりも相手の身を気遣う、気遣い過ぎるはやてだからな。ガキの分際でそこまで思っていても不思議じゃあない。

テメエのケツはテメエで拭うという心意気は買うが、ンなの大人になってからで十分。よって『今晩から一緒に魔力蒐集する』と強請ってきたはやてを俺は家に置いて来た。はやては中々首を縦に振らなかったが、俺の『魔導師にもなっていないし喧嘩もした事のないようなガキが来ても邪魔なだけなんだよ』の一言で引いてくれた。

まあ、その後で騎士共から睨みつけられ、はやてからは『じゃあ、ちゃんと魔法使えるようになったらええんやね!?』と逆にやる気マンマンになられたのは誤算だった。

 

それでも、今晩、この場にはやてが居ないのは幸いだったろう。もしこの場にはやてが居たら、この光景を見てどれだけ悲しむか。もしかしたら、自分の命などどうなってもいいと嘆き、今目の前で繰り広げられている事を必死で止めようとするんじゃねーか?

 

なにせ、10歳にも満たない一人の少女をヴィータとフランが二人掛りでリンチしてんだから。

 

「最近のガキにしては血気盛んだな~。うんうん、やっぱガキはこれくらい元気が良くなくちゃな」

 

片や俺はそんな三人のガキを他所にちょっと離れたビルの屋上でタバコをふかしている。

いや、だって俺がここで入ってくのは無粋だべ。若い奴らがパッション迸らせて頑張ってんだから、大人はそれを微笑ましく見守るべきだろ。

 

「つーか、入って行きたくても無理だし。なんだよアイツら、速ェんだよ。俺が夜天の補助もなしにそんなビュンビュンと高速で縦横無尽に飛べるかっての。フェイトに教えてもらった高速移動の魔法も俺の場合真っ直ぐにしか進めねーし。喧嘩すんなら地面に足つけてやれよ」

 

これだから最近の若い奴らは。喧嘩のいろはも知らんのか。まあ、魔導師戦だからこれが普通なんだろうけどな………けどなんつうか、風流じゃねーんだよ。

しっかし、やっぱ風嵐の奴もすげぇな。ただの変態王じゃあねーよ。ヴィータが近距離で攻め立て、フランの奴が中距離でヴィータに生まれた隙を完璧にカバーしてやがる。さらに時々長距離からヴィータごと相手を吹き飛ばそうとしてんし。

 

確かにこりゃあ喧嘩っつうよりは戦闘だな。

 

「ンで、そんな二人を相手に立ち回っているあいつもスゲェ。てか、あんなに強かったんだな」

 

件の『時折現れるでっかい魔力を持った奴』、そいつもまた二人に負けず劣らず巧い。防御を主体に誘導弾をたくみに操り、少しの隙を見出して砲撃魔法。

いつものふにゃふにゃしてにゃあにゃあ言ってる奴とは思えん。

 

「何度か魔法の練習には付き合ってやったが、なのはもやっぱガチの魔導師だったんだな~」

 

そう、高町なのは。

件のでっかい魔力を持った奴、そして今二人の相手をしている奴は何を隠そう高町なのはだったのだ。

まあ、少し考えれば予想出来ただろうな。場所が海鳴で、かつでっかい魔力持ちなんて奴はそうそういねぇだろうし。

 

「だからってなのはかよ。ハァ、ヤり難ぃな」

 

まあ、ヤるけども。

相手が可愛いなのはでも魔力蒐集するけども。

 

もちろん普段だったらそんな事許さず、フランとヴィータをぶん殴ってやる所よ?けど、今回の最優先事項ははやての救命、それに伴う魔力蒐集だ。そして俺は『相手が誰であろうと俺の邪魔するなら容赦しない』と決めた。

だから、なのはには悪ぃが容赦なく魔力蒐集させてもらう。多少痛い目みさせても俺は俺の目的を達成させる。

 

確かになのはの事は俺は大好きだ。知り合いのガキの中でもフェイト姉妹に次ぐ大好きレベルだ。歳の差関係なく、親友と呼べるダチになってもいい。

けど、それでも………

 

「俺の気持ち、行動、願いが何よりも最優先だかんな。だから、まあ今回は運がなかったと思ってヤられてくれや、なのは。…………すこぶる気分は悪ぃけど」

 

でも、しゃーねーべ。まあ、流石に命までは取らねーよ?それに後々はやてみたいな身体障害者にするつもりもねぇ。俺もそこまでの覚悟は持てねぇし。

それになにより、なのはにも将来俺の為に合コンをセッチィングさせなきゃなんねぇからよ!これ重要!

だから、そういう意味でもなのはにも正体がバレたらマズイ。俺のなのはへの好感度如何で将来の合コンがパーになったら目も当てらねぇ。

 

「そしてはやてにも元気になってもらい、あいつにも合コンをセッティングさせちゃる!………むふふ」

 

と、俺が気持ち悪い笑い顔を浮かべて妄想していたら、現実は可及的速やかに流転していた。

 

さきほどまでほぼ互角に繰り広げられていた戦闘はヴィータの渾身の一撃で均衡が崩れたようで、なのはがぶっ飛ばされてビルに突っ込んでいった。

それを見て俺は決着かなと思い、タバコを投げ捨て、肩で息をしている怒り心頭のヴィータと不遜な態度のフランの二人がいる場所へと飛んだ。

 

「おいおいヴィータ、派手にやりすぎだろ。魔力蒐集すんなら何もあそこまでやらなくてもよくね?バインドで捕縛しちまえば済む話だろ。あんまやり過ぎると俺もちょっと黙ってねーぞ?」

「るっせえ!………あいつ、はやてが作ってくれた帽子をふっ飛ばしやがって!」

 

見れば確かに頭に乗ってた帽子がなくなっていた。

てか、それだけでキレるとかどんだけ?もしかしたらコイツ、うちのヴィータより沸点が低いのかも知んねぇな。………いや、そりゃねーか。

 

「ったく、落ち着けって。蒐集は俺とフランがやっとくから、テメェは帽子拾ってちょっと頭冷やしてな」

「…………うん」

 

ヴィータが帽子を拾いに行くのを見送って、俺とフランはなのはが突っ込んでいったビルへと向かった。

勿論、なのはにも面が割れるのは遠慮しときたいので、改めてフードを深く被る。

 

(お、いたいた)

 

突っ込んだなのはが開けた穴からビルの中に入ると、砂塵の向こう側で壁に背を凭れさせて胡乱な目でこちらを見ているなのはを発見。

衝撃でバリアジャケットがはじけ飛び、意識も朦朧としているようだが、どうやら怪我はしていないようで一安心。そして、そんな状態でもデバイスをこちらに向けてまだ抵抗しようとする気概は賞賛に値する。ガキながらいい根性してるぜ。

 

「ふん、まだ絶望にあがくか塵芥。よかろう、ならば我が永劫の闇に沈めてやる」

 

物騒でちょっと中二な事を言いながら、フランが自分のデバイスをゆっくりと振り上げる。気絶でもさせて、それからゆっくりと蒐集するつもりだろう。

俺もそれを止めるつもりはない。フランの斜め後ろでただ憮然と立っている。

まあ、少しばかりなのはの事が可哀想に思うが、こればっかりは諦めてくれや。今度遊園地にでも連れてってやっからよ?

 

「死ね、卑しくも主と毎日TELするゴミ虫めが!」

 

………あれ?フランの奴、殺す気マンマン?ちょっと待て、それは駄目ですよ?!

と、俺が止める間もなく、フランはデバイスを勢いよくなのはの頭に打ち下ろす。

 

俺は次の瞬間、なのはの頭から真っ赤なお花が咲き誇るのを幻視し────────

 

「むっ!」

 

それは幻のまま終わった。

現実に俺の目に映っているのは、フランのデバイスが第3者のデバイスにより防がれた光景。そして、その際に発せられた鉄と鉄がぶつかり合う甲高い音。

 

「貴様は………」

 

フランが自分の攻撃を防いだ目の前の相手を睨みつけながらも、どこか驚いている。『なんでコイツがこんな所に?』といった感情が見て取れた。

対して俺も同じ感情を持って驚いた。それもフラン以上に驚いた。自然とフードをより深く被り直していた。

 

「そろそろ仲間が出てくるだろうと思うてはいたが、まさかそれが貴様だとはな」

 

フランは後ろに跳び引き、俺の横に並んで相手と間合いを取った。

相手はそんなフランを追撃する事無く、また油断も無く、静かにデバイスをこちらに突きつける。次いでカートリッジをロードする音が何度か響き、斧から黄色の魔力刃を発生させた一振りの片刃の剣へと変化した。

 

俺はそのデバイスをよく知っている。プレシアとリニスちゃんが最近完成させたデバイス・バルディッシュ改、そのライオットフォームの一つである『ライオットブレード』。

てか、つっこんでいい?……………その形態はまだ早いんじゃね?あと10年くらいは早いんじゃね?なんでそんなワープ進化してんだよ。プレシアとリニスちゃん、頑張り過ぎだろ。どんだけ魔改造してんだよ。

 

そして、そんなデバイスの使い手───

 

「仲間?違う────メル友だ!」

 

キメ顔で言うフェイトがそこにはいた。

 

「ごめん、なのは!遅くなっ………え、キミは確かジュエルシードの時の………え?え?なにこの状況?」

 

そりゃこっちのセリフだよ、ユーノ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが世に言うカオスというやつなんだろうか?

 

そんな事を思い浮かべながら、俺は目の前の光景を頭抱えたい気持ちで見つめる。

魔力蒐集するために狙っていた獲物は可愛いなのはだった。そのなのはから魔力蒐集しようと思ったら、それを阻んだのは管理局じゃなくて俺の可愛いお隣さん。そしてさらにそれに続くようにユーノがやって来た。

 

うん、訳分かんねーんだけど。

てか、なんでフェイトが出てくんの!?ユーノもいるし、もしかして俺が攫われたからって管理局に助けでも求めたのか?

 

「隼を探してたら、まさか犯罪現場に出くわすなんて思わなかった。民間人への魔法攻撃、軽犯罪じゃ済まないぞ」

「ふん、元犯罪者が抜かすではないか、フェイト・テスタロッサ」

「!?なんで私の名前を………いや、その声、まさか」

「ふふふ」

「そうか、お前が………!」

 

って、あれ?なんか俺が頭抱えてる間にどんどん剣呑な雰囲気になってない?

てか、そうか、やっぱフェイトの奴はただ俺を探してただけか。それで偶然この状況を目撃して、ダチであるなのはのピンチを前に飛び入って来たと。そしたらさらに偶然が重なり、俺を攫った犯人と遭遇かよ。

どんだけご都合?勘弁しろよ。

 

「………なのは、折角会えたけど、もうちょっとだけ待ってて。私、やる事が出来たから。それと、ユーノだったよね?なのはの事、お願い」

 

そう言うやいなや、フェイトはフランに疾風のごとく斬りかかって行った。それと同時に俺に向かって数個のフォトンランサーを放ってくる……………………え?俺も?

 

(そりゃそうだよねええええええ!)

 

俺は慌ててそれを華麗に回避し………訂正、それ全てに被弾しながらも、全力でビルの中から飛び出した。

 

まあ、あの状況下で俺の格好を見れば、そりゃあ鈴木隼とは思えねぇだろうな。だから、鈴木隼を攫ったフランの共犯者と見做されてもおかしくはない。そもそも、そうなるために俺はこんな格好してんだ。

はやてを救うために、合コンのために、そして俺の死期を延ばすために。

 

「あのクソ虫めが」

「おい、一体どうなってんだよ」

 

俺の後を追ってビルから出てきたフランと、帽子を被り直しながら何が何だか分からないといった顔のヴィータが横に並んだ。

 

「隼に攻撃したあの雌ガキ、許してはおけん。ボコボコにした後、服をひん剥いて隼のようなロリコン不良のいる溜まり場にでも放置してやりたい」

「よく分かんねーけど、でっかい魔力を持った魔導師がもう一人出てきたのは好都合だぜ。あいつも蒐集してやる」

 

フランの意見はともかく、ヴィータの意見には概ね賛成だ。

だが、問題はそう簡単にいくかどうかだ。まさか、フェイトが一人で俺を捜索してたとは思えねぇ。最低でも近くにもう一人か二人はいるだろう。誰かは分からないが、そいつらが出てきた場合、フェイトはおろかなのはの魔力蒐集も続行は出来なくなる。

 

「二兎追うものは一兎も得ず、だ。てわけで、俺とフランでフェイトを足止めしとくから、ヴィータはなのはの魔力の蒐集へ向かえ。そばにもう一人魔導師がいるだろうけど、そいつは戦闘向きじゃねーからお前なら問題ねえだろ」

 

フランを一人にしたらマジでフェイトを殺しそうだからな。ここはこの組み合わせがベストだろうよ。

あとはどれだけ早くヴィータが目的を達成させるかにかかる。フェイトはともかくユーノまで現れたって事は管理局も動いてると見てまず間違いない。

 

いろいろと面倒臭ぇ奴らが出てくる前に終わらせねぇとな。

 

「頼むぜ、ヴィータ」

「はっ!言われなくても分かってるよ!」

 

デバイスを掲げ、ヴィータがとんでもない速度でなのはのいるビルへと向かった。

丁度ビルから出てきたフェイトとすれ違う形となり、

 

「え、今のってヴィータ?」

 

困惑の表情で、しかしどこかいつものヴィータと違うとフェイトは感じたのだろう。慌てて後を追おうとしたが、生憎とそれはフランの放った魔力弾が足止めとなり、さらにその隙に俺もフェイトへと肉薄し、バルディッシュに拳を打ちつけた。

 

「くっ、なのは!………どけ!!」

 

う~む、やっぱどうもやり難ぃな。フェイトにこんな憎悪な顔向けられるなんてな。

そりゃ覚悟はしてたけどよ、どうにも複雑なんだよな~。これが理かヴィータあたりなら、俺に「どけ」とかナマ言った瞬間、無慈悲の一撃を顔面に叩き込んでやってるのに。

 

「はああああああ!!」

(うおっ!?)

 

当然の事ながら、こちらの心情など届くはずもなく。

怒気を多分に孕ませた表情でフェイトは力任せにバルデッシュを振り抜き、俺と間合いを取った。しかし、フランの援護射撃により追撃はやって来ない。また、はのはの方に向かおうとしても俺がそれに合わせてしょっぺぇ魔法弾を数個放つ事で阻む。

てか、奇跡的に阻めたといった方が正しいか?フェイトはまだこのフォームを使いこなせてないらしいからな。プレシアとリニスちゃんによれば、もしこれを使いこなせるようになったら、管理局のオーバーSクラスの魔導師相手でも互角に渡り合えるらしいし。

 

「くそっ!邪魔をするな!なのはがっ、それにお前たちは隼まで………隼まで………っっ!」

 

怒り、悲しみ、悔しさ……それらがない交ぜになった表情で、その瞳に涙を湛えてこっちを睨んでくるフェイト。

 

「隼を……隼を返せぇえ!」

 

純情なフェイトの事だ。プレシアたちと違い、純粋に俺が攫われて苦しい思いをしてると思っているんだろう。

そう考えると………痛い!心が痛い!今すぐ正体明かしてハグしてあげたい!でも無理!

 

「何が『返せ』だ。隼はもう我のものだ。……それにだ、何も憤っておるのは貴様だけではないぞ」

 

チャキッ、とデバイスの先をフェイトに向けるフラン。その顔にはフェイトに負けず劣らず怒りの色が浮かんでいる。

その理由は、果たして……。

 

「これまでの隼とのTEL、メールの送受信履歴NO.1の貴様だけは我手ずから殺してやる!」

 

ものっそいしょうもない理由で怒ってた。なんだよ、それは。

てか、その事実に俺もびっくりだよ。え、俺、フェイトとそんなにやり取りしてたっけ?確かにフェイト、俺が何か誘ったり頼んだりしても断らない、都合のいいパシ……優しくて、とってもいい子だけど。

 

「貴様は危険だ。このままいけば近い将来、必ず我が障害となるだろう。よって今、発情する泥棒猫となる前にここで排除する!」

「わけの分からないことを!!」

「疾く逝け!」

 

得意の距離を無視してデバイスを直接叩き込むフラン。それに合わせて俺も複雑ながら一緒に攻撃した。

 

(まだかよ、ヴィータ。なにチンタラしてんだ!)

 

なのはの傍にはユーノがいるとは言え、ヴィータの実力はよく知っている。そんじょそこらの奴相手に梃子摺るガキじゃねーはずだ。

 

(ちっ、しゃあねー。ちょっと心配だが、ここはフラン一人に任せて…………)

 

そう考え、フェイトからヴィータたちのいるビルの方へ視線を移したのと、視界の端に人影を捕らえたのは同時だった。そして、その人影がこっちに向かって物凄いスピードでやってくるのを俺は頭を抱えたい気持ちで見ていた。

 

人影、その数は2つ。

 

「この野郎おおおおおおお!」

「フェイトになにしてるんだーーーーー!」

 

俺の方には振りかぶられた拳、そしてフランの方にはフェイトと同じ形をしたデバイスの一振りが見舞われた。

フランは難なくソレをかわしてフェイトから距離を取り、俺は殴られてフェイトから距離を取らされた……………格好良く避けろって?いや、あのスピードで突っ込んできた奴の拳を避けるなんて、俺にそんな技術ねーし。

 

(イダダダダダダッ!?)

「またしても我の男に蛮行を働く愚か者が現れたか…………一度陵辱されてみるか?アルフ・テスタロッサ、ライトニング・テスタロッサ」

 

はい、とうとう現れた援軍。アルフとライトの二人。

ちっ、こうなる前に事済ませたかったってのに!ヴィータのやつ、何ぐずぐずしてやがんだよバカチンが!

 

「ふざけるんじゃないよ。あんたこそ、隼をさっさと返しな!」

「そうだぞ、主を返せ!それにフェイトにまで攻撃して!むぅ、ボクがやっつけてやろうか!」

 

お?こいつら、フェイトと違い一目でフランのやつを誘拐犯と断定したな。…………ああ、そういやメールの送信履歴に何件か写メもあったな。上半身裸で気絶している俺の胸板に抱きついている変態の写メが。

フランのやつ、俺の携帯で好き放題挑発しすぎだろ。

 

「形勢逆転だね。この場で隼の居所を喋るなら、ボコボコにした後生かして返してやるよ」

「それで、その後主もちょっとだけボコボコにするぞ!」

 

うわぁお、勇ましいねアルフは。てかライトや、そんな怖いこと言っちゃメだぜ?いや、マジで。

そんな怖~い二人を前に、俺はもうすでにガクブル状態。だが、方やフランは…………

 

「くくく、ふはははははは!中々愉快な事を言うではないか。そも、形勢などどこも逆転はしておらんぞ?」

 

そう言ってフランは下を指差した。それと同時に下から一人の女性が勢い良く現れたかと思うと、瞬く間にフェイトとライトを右手に持っていた剣で弾き飛ばす。さらに間もおかず、同じく下から一人の男が現れたかと思うと呆然としていたアルフを右足で蹴り飛ばした。

 

あちゃ~、来ちゃったのね。

 

「遅いぞ、烈火の将、守護獣」

「すまないな、ついて来たいという主を説得するのに手間取った」

「だが、まだ手遅れという訳ではあるまい」

 

シグナムとザフィーラが悠然と辺りを見回し、そこでふと俺に目を留めた。

 

「………なんだ、その格好は?」

「うるせぇ、こっちにも色々と事情があんだよ」

 

訝しんでいるシグナムとザフィーラに小声で返すと、俺も同じように辺りを見回した。そこには怪訝な顔でこちら……シグナムとザフィーラを見ているフェイトたちの姿があった。

 

「シ、シグナム、なんで………」

「シグナムのバカ!手が痛いじゃないか!それになんだよ、その変な格好!だっさー!」

「ちょっとザフィーラ、どういうつもりだい!」

 

まあ、無理もないだろうな。今目の前にいるのはどう見ても自分達の良く知るシグナムたちだし。まさかオリジナルの騎士だとは思うめぇ。

また、そんな言葉を向けられてこちらも困惑気味のオリジナル騎士たちだが、それでも目的達成の為に取る行動は一つだった。

 

「レヴァンティン、カートリッジロード」

「シ、シグナム!?」

「お前たちが何故私たちの名を知っているのか、気になる所ではあるが今はそんな事はどうでもいい。……………その魔力、貰い受ける!」

 

シグナムの紫電一閃がフェイトに襲い掛かり、それを皮切りにフランはライトに、ザフィーラはアルフに殴りかかった。

 

そして、俺はその光景を呆然と見つめるのであった……………って、どうすんよコレ?

 

(ちょいちょいちょいちょおおおおおい!?!?なんだよこの急展開!?マジでカオスってきたぞオイ!)

 

ど、どうする、どうすればいい!いや、落ち着け。ここは当初の予定通り、なのはの魔力蒐集だ。もうすでに手遅れ感がひしひしとするが、それでもだ!

 

俺は改めてビルの方に向かって─────────

 

「へぇ、あのフランとかいう断章娘が出てきて、ちょっとおかしいと思ってたけど……なるほど、大方オリジナルの夜天の書を依り代に顕現したわけね。という事は、あのシグナムやザフィーラはオリジナルの騎士か」

 

あ、あれ?なんだろう、俺の後ろから殺気を孕んだ声が聞こえる。おかしいな、形勢は逆転してなかったんじゃなかったっけ?

こちらは俺とヴィータとフランとシグナムとザフィーラ。対して向こうはフェイトとライトとアルフで、つまり5対3だったはずだ。

 

……………ああ、そっか。つまり向こうの援軍はライトとアルフだけじゃなかったって事ね~。

 

「それであなたは一体何者なのかしら?状況から見たらオリジナルの夜天の主といった所だけど…………まあ誰にしろ、私の可愛いフェイトに攻撃したのだから、つまり自殺願望者というわけなのよね?いいわ、その死、手伝ってあげる」

 

振り向けば、そこにはプレシア・テスタロッサという名の鬼がいた。

 

(ラスボス来たあああああああああ!?!?!?)

 

形 形勢逆転してたよ!覆せないほど逆転してたよ!よりによってもうラスボス登場かよ!

幸いにもまだ俺だと気付いてないようだが、どっちにしろラスボスお母さんは俺を殺す気マンマンだし!?変装が意味ないじゃん!

 

「鈴木隼という男にやる処刑の次に残酷なやり方で殺してあげるわ」

(やばいやばいやばいやばい!状況はエマージェンシーぶっちぎりで最悪だぞ!?)

 

ど、どうする?逃げるか?いや、どう考えても無理!ボス戦は逃げられねぇと昔から相場は決まってる!そもそもこの結界をどうやって破れと?俺にゃあ無理だし。だったら、助けを呼ぶか?でも、皆それぞれ既に始めちゃってるし………………いや、一人いんじゃん!

 

(ヴィータだ!ヴィータを呼び戻しゃあいいんだ!)

 

あいつはなのはの蒐集で、それを中断させりゃあ俺を助けに入れるだろう。

はやての命を救うためにはなのはの魔力蒐集も大事だが、何より一番大事なのは俺の命!

 

「さて、死ぬ覚悟は出来たかしら?私は優しくないわよ?でも、そうね………隼の居場所を喋ったなら、くびり殺さず綺麗にあっさりと殺してあげるけど?」

(どっちにしろ変わんねーじゃねぇか!!)

 

ここからの距離なら何とか死ぬ前にヴィータの所にたどり着けるはずだ。

俺は覚悟を決め、多少の被弾を無視してヴィータのいるビルへと向かおうとし………俺は絶望的光景を目の当たりにした。

 

(………え?)

 

──────たった今、俺が目指そうとしたビルのヴィータやなのはやユーノのいた階、その階から上全ての階が爆音と共に消し飛んだのだ。

 

(……………は、え?)

 

上層階が吹き飛んだ為、事実上屋上となったその階から数人の人影が出てきた。

 

一人はなのは。彼女は自分の痛みも忘れて、呆然とした様子だった。

一人はユーノ。彼はそんななのはに肩を貸して、こちらも呆然と佇んでいた。

一人はヴィータ。彼女はさきほどまでの元気な姿はなりを潜め、ぐてっと脱力して気絶しているようだった。

 

そして、最後にまだ一人そこにはいた。さっきまでは姿形も見なかったある一人の女性が。

 

「あらあら、彼女もまた派手にやったわねぇ」

 

その女性は気絶しているヴィータの頭を鷲掴みにして、悠然と佇んでいた。

銀色の綺麗な髪を夜風になびかせ、幽鬼のような気配をかもし出すその姿は恐怖と破壊の化身以外の何者でもない。遠目からでも軽く小便をチビれる自信がある。てか、既にちょっと股間が冷たい。

 

「彼女の持ってるアレはオリジナルのヴィータみたいね。………ハァ、いくらオリジナルと言っても姿形は家族のヴィータと同じなのに、よくあれだけ容赦なく痛めつけられるものね。相変わらず、彼女は怒ったらキャラ代わり過ぎよ」

(ああ、ヴィータ………)

 

ヴィータは完璧に気絶してるようだった。だが、その身を横たえてはいなかった。銀髪の悪魔が腕一本でヴィータの頭を無造作に掴み上げ、ずるずると引き摺っていたからだ。

悪魔はそのままビルの端まで歩いていくと、これまた無造作に、まるでゴミでも捨てるが如くヴィータをビルから投げ捨て────

 

「DIE YOBBO(死ね 弱者)」

 

そう呟き、同時に止めとばかりに落ちていくヴィータに魔力弾を数発叩き込んだ。

後ろでユーノとなのはが怯えて泣いているのが見える。

 

(あっ、これ終わったわ)

 

ラスボスに続き、出てきたのは俺の知る限り最愛の女性であり最悪の女性。

 

鈴木夜天(ブチギレver)。

 

裏の隠しボスのご登場だった。

 

(って、ちょい待って!?昨日の今日だぜ!?てか、さっきはやてン家の庭で大喧嘩宣言したばっかだぜ!?その流れでなんでいきなり最強で最悪の二人がご登場するわけ!?え、もう最終回!?)

 

超展開の急展開にも程があるだろ!マジでどうすんの!?カオスなんて言葉で片付けられねーぞ!?

 

(ど、どどどどどどうするぅぅ!?)

 

もうここはさっさと事情をバラして、頼み込んで一緒に魔力蒐集手伝わせるか?………いや、早まるな俺!そこには俺の明確なる死しか待ってない!だったら抵抗するか?てか、もうそれしか無くね?

 

(そうだよ、そもそも覚悟決めたじゃねーかよ。誰が出てこようとやり切るってよォ!)

 

喧嘩売ったら殺す。売られたら殺す。

 

それが俺だったはずだ。なのに、なにチキンな考えばっかしてんだよ。俺ァこの数ヶ月でそこまで丸くなっちまったてか?

情けねーぞ俺!

やってやる………やってやんよォ!どんな絶望的状況下に陥ろうとも、可愛くケツ振って逃げられっか!

 

さあ、どっからでも掛かって来────────

 

「なに面白い事を私抜きでやっているのですか?掃滅戦と言えば私でしょう」

「あら、理。あなたも来てたの?」

 

………………………。

 

「当然です。後から出て来たクセに本妻面するあのビッチ断章は許せません。さらに許せないのは主ですが」

「そうね、その通りよ」

 

………………………。

 

「けれど、今主やビッチの顔を見れば私は一思いに殺してしまうでしょう。それはいけない。とことん苦しめなければ。ですから、まずはそこのフード人間を血祭りにあげてストレス発散しようと思いまして。まあ、ゆくゆくは全員殺しますけどね」

「流石ね、理。その名の通り、とても理に適った意見よ」

「恐縮です。では、殺しましょうか。管理局が来ればいらぬ面倒に巻き込まれますからね。まあそうなったらなったで、管理局共々滅ぼせばいいだけですが。皆殺し、大好きです」

「ああ、局なら大丈夫よ。私が結界を張り直したから、入ってくることはおろか中の様子も見えないわ。それと、ヤるならせめて半殺しで抑えなさいよ。もう半分は私がヤるんだから」

 

………………………。

 

ねえ、俺、逃げていい?逃げていいよね?…………あれ?なんでだろう、前が霞んでよく見えないや。

こいつら、ホントは俺だっ分かってんじゃねーか?いや、そりゃねーか。俺と分かってたなら、問答無用でぶっ殺しにくるだろうし。

ん?……問答が有るか無いかの違いだけであって、行き着く未来は一緒か?

 

(最強に、最狂に、最凶が相手かぁ………)

 

あれ?詰んだ?

 

 




ここから本格的にAs本編の路線となります。

ところで可愛いや萌えってどうやって書くんだろう、と最近思い始めました。書ける人凄いです。私も一度でいいから砂糖ぶちまけたような甘甘な文章書いて見たいものです。無理ですけど。

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