フリーターと写本の仲間たちのリリックな日々   作:スピーク

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主人公後日談~その2~ 前編

 

さて何から語るべきか。

 

後の日の談話。

 

あまりに多くて、濃くて、苦々しい話になる事間違いない。

つうか、今更だがそもそもな話、後日談は本当にいるのだろうか?なにせ、結果は既に語り終えてんだ。

アリシアは蘇って、今ではテスタロッサ姉妹の長女として元気よく生を謳歌している。

フェイトはアリシアの妹として、母の笑顔と共に満面の笑みを浮かべている。

プレシアは二人の娘+断章娘の三女、加えてアルフともう一人の蘇った獣っ子の計6人の家族と共に地球で幸せを噛み締めている。

 

総じて俺も満たされた。自己を満足させることが出来た。

 

これでよくね?

 

重ね重ね言うが果たしているのだろうか、後日談は。

後日談とはこの場合つまり過去の話であり、そんなモンを語ったところで今更なにが変わるわけでもない。仮にこの場で後日談を語れば、それが無かった事になるなら、俺は喉が潰れるまで謳ってやる。けれど、当然そんな事は起こりえない訳で、なら俺的には語る理由もない訳だが。

 

けど、まあそれでもやっぱ語っとかなきゃなんねーんだろうな。

 

アリシアが蘇った時の事を。

獣娘が蘇った時の事を。

アホの娘が生まれた時の事を。

地球で暮らす事になった際の経緯を。

その他もろもろを。

 

確かに良い事もありはしたが、比率的には悪い方が絶望的に圧倒的で、だから忘れたい数ヶ月なんだ。

それでもケジメは着けなきゃなんねーんだよな。なぁなぁで終わりたいところではあるが、それではあまりに勝手すぎるよな。ご都合主義を味方に付け何とか今までやって来たが、流石にこれだけはテメエで語るしかない。

 

嫌だけど。

本当に嫌だけど。

 

けれど、今までみたく『まっ、そういう事だから。理解してくれ。分からなきゃテメェらで好きなように思い描いて補完してくれ』なんて、そんな調子で流していい所じゃない。ご都合主義の使いどころは心得ている。こんなモンに使っちゃなんねーのも分かってる。つうか、この場面でそれやったらご都合つうより手抜きだ。どっちもどっちかも知んねーけど、言い方ってもんがある。手抜きよりご都合の方がまだ理解を得るだろう。

つうわけで。

なにが『つうわけ』なのか定かではないほど支離滅裂になっちまったが、それこそ今更なので、だから敢えて『つうわけで』。

 

語ってやろう後日談を。ビシッとよ?

 

何から聞きたい?どこから聞きたい?なに、安心しな。どこから聞いても、何から聞いても、きっと誰もが満足してくれるだろうよ。よく言うだろ?『他人の不幸は蜜の味』ってよ。

 

さて、ンじゃ取り合えず時系列順にいきますか。その方が分かりやすいだろ?

 

……………ハァ、気が重ぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆と共にアルハザードを訪れた日の翌日。つまりベランダで煙草ふかしながら「ハッピーエンドじゃね?」とカッコイイ風なセリフをキメたのち、ロリーズと喧嘩した晩の次の日。

 

俺こと鈴木隼は朝から時の庭園にいた。もっと詳しく言うならアリシアの遺体が入ったカプセル(魔法世界の棺おけ?)の前にいた。

 

この場にいるのは俺だけではない。右隣りにはフェイトがおり、そのフェイトのさらに右隣にはプレシアがおり、左隣にはアルフがいる。右から順にプレシア、フェイト、俺、アルフ………と、まあそんな説明しておいてなんだが、そんな並び順なんてどうでもいいんだけどな、ぶっちゃけ。

確かにさっきここに来るまではこの並びにフェイトは緊張の面持ちでプレシアをチラ見してたし、プレシアもどこか気まずそうなテレた様な表情でフェイトをチラ見してはいたが、しかし、それはつい先ほどまでの話だ。

 

だとしたら今は?

 

今はそう、俺もプレシアもフェイトも困ったような悩んだような表情をただただしているだけ。唯一、左隣にいるアルフだけが能天気に俺のおNEWな携帯(資金提供者・プレシア)をいじくっている。

アルフはさておき。

じゃあ何で俺らがそんな顔をしているのかというと、その原因は他でもない、目の前にあるこの死体。

 

アリシア・テスタロッサ。

 

フェイトによく似たガキで、それもそのはず、このガキはフェイトのオリジナルでフェイトはアリシアのクローン体。過去プレシアが携わっていた研究のその事故で巻き添えを食らい、弱冠5歳という若さでこの世を去った。しかしプレシアはその現実を応とせず、アリシア復活を試みた。その過程というか当初は目的でフェイトが生まれたものの、「やっぱコイツ違~う」という理由で以後はフェイトを人形のゴミくず扱い。改めてアリシアの蘇生を試み、その希望をアルハザードという伝説の地に託した。────と、まあ以上が俺がこいつらの事情に巻き込まれる前の事情のその簡単な説明な。

 

プレシアの独善っぷりがよく分かるだろ?いっそ清々しいだろ?つうか俺的には大好きだ。

だからだろう。

本来はフェイトみたいな超可愛いガキを虐待してるとあっちゃあ、そりゃあもうぶっ殺してやるところだけど、その自分良しな考え方に共感をもった俺はコスモも真っ青な心の広さで慈悲をくれてやった。俺がやられた分はやり返したけど、それでもお相子で済ませてんだから俺も紳士になったもんだ………………まあ一番の理由が『プレシアが美人だったから』だけど、それが何か?

 

さておき、さあ話が逸れ始めたので速やかに戻そう。てか、いつまでも過去バナは嫌なんで、戻って早送りで進もう………ややこしいな。

えー、まあそんなある日俺がテスタロッサ家の事情に巻き込まれて、そっから紆余曲折あって最後にとうとうアリシア蘇生の目処が立って、つまりその決行日が今日この日だってことだ。

 

ふぅ、ようやく現実に戻ってきたよ。あ、いやまだか。まだ何故俺らがアリシアの死体の前で頭抱えてんのか言ってなかったな。

 

まあ、そんな難しいことじゃない。

 

アリシアを蘇生させるためにはアルハザードの技術がいる。件の場所は分かってるけど、勿論向こうから出張してくれるはずもなく、だから俺たちが行かなきゃならない。俺たちとはつまりこの場に居ない騎士たち(皆、バイトだったり遊びだったり)を除いた、俺とプレシアとフェイトとアルフ。

 

どうだよ、頭抱えたくなるだろ?………え、分からねぇって?もっとハッキリ言ってくれ?世話が焼けるな。じゃあ声に出して言うぞ?

 

「まっぱで幼女な死体が入ったどデカいカプセルをどうやってアルハザードまで運べっつうんだよ!職質とかそんなレベルぶっ飛んで即署に連行されるわ!!」

 

俺はカプセルをダンダンと叩きながら高らかと文句垂れた。

 

「ちょ、スズキ!アリシアに何て事するの!」

「カプセル叩いてるだけだ!それ以前にまだただの死体だ肉袋だ!つうか死体がこれ以上どうこうなるか!叩こうが何しようが死体は死体!ザ・肉!」

「人間として最低の発言をさらりとするんじゃないわよ!」

「はん!知った事か」

 

とか言いながらも、俺は途中からフェイトの両耳を手で塞いでいるのだった。『???』と小首を傾げる仕草がなんとも愛らしいフェイトだが、今はそれは割愛。

 

「まあ冗談はさておき、これはホントにどうすんだよ」

「『冗談でも、言っていい冗談と悪い冗談がある』という言葉をあなたは真摯に受け止め本気で考えなければいけないわよというのはさておき、本当にどうしようかしらね」

 

プレシアは何とも疲れたといった溜息を吐きカプセルを見ている。対して俺もフェイトの耳たぶをぷにぷにしたり頬を揉んだりと、心落ち着く悪戯をしながらカプセルを見る。

それはそうだろう、まさか最後にこんなしょうもない事で悩まなきゃならんとはよ。

 

「カプセルを運ぶのも無理。カプセルから出して死体だけ持っていくのも無理。アルハザードに転移するのも無理。あー無理無理無理~」

 

1つ目の案は重さ的に無理。いくら空飛んで多少は楽っつっても腕の負担が半端ないだろ。4人じゃ無理とまでは言わんけどダルすぎ。ボク、重労働無理で~す。虚弱体質で~す。

2つ目の案は死体の保存的に無理。あの水から出すとすぐアリシア・腐乱・テスタロッサになっちまうんだとさ。

3つ目の案は魔法的に無理。なんでもアルハザードはそこに在ってそこに無く、つまり座標が固定しないんだとさ。意味わからん。

 

『やれやれ』と俺はフェイトの綺麗な金髪の髪を弄くりながら溜息を吐く。

耳たぶはアルフに譲った。

 

「さて、どうしたもんかね」

「あの……」

 

おずおずといった風に、慎ましく声を発したのは髪がぐちゃぐちゃになりかけているフェイトだった。

 

「私もあんまり得意じゃないけど身体強化とかして頑張るから、早くアリシア連れてってあげよ?アリシアに教えてあげたいんだ。こんな冷たい水じゃなく、母さんと隼がいる温かい世界を。みんな優しいよって」

「「…………」」

 

天使か。

虐待されてたのによくまあここまで素直に育ったもんだと、フェイトを改めて感心。ガキの大人びた物言いは俺の好きなトコじゃねーけど、フェイトに関して言えば嫌いじゃない。勿論、好きでもねーけど。

 

「……違うわよ」

 

と、プレシアがそっぽを向いて言った。そっぽを向いて、フェイトに向けて言った。

 

「あなたとアルフも、この世界にはいるわ」

「……母さん」

「……プレシア」

 

どうやら感心しなきゃならんのはフェイトだけじゃないらしい。プレシアも中々どうして、素直じゃんか。フェイトもそんなプレシアに感動してる。アルフも以前はかなり毛嫌いしてたが今ではそれほどでもないらしい。何かしら自分の中で折り合いをつけたのだろう。

いや、昨晩は3人きりだったから、そこでナシ着けたんだろうな。彼女たちは皆成長し、また家族になっていってるってこった。超ドラマ。

 

俺はそんな家族の暖かいやりとりを目を細めて眺め、そして少し間を置いて言う。

 

「でもやっぱこれ運ぶのダルくね?」

「「「……………」」」

 

初めて俺はフェイトから冷たい眼差しを貰いました。

ヤんのかコラ。

 

「………いい、もういいわよ。私達3人で運ぶから、スズキはどっか行ってなさい」

「ひっでぇ、俺だけハブ?いじめかっこ悪い」

「~~~~っ、あなたは一体どうしたいのよ!」

 

どうしたいのかと問われれば、家に帰って寝たいのだが。

しかし、ここまで来たなら最後まで見届けにゃあまりにもどかしい。クソの切れが悪いのは尻心地が悪いのと一緒。

 

「慌てんなよ、そう簡単に見切りつけんな。妙案があんだよ。俺は運びたくないが、その代わりにもう一人いれば人数は帳尻合うだろ?しかも、そいつが身体強化も出来る魔導師なら尚」

 

ちなみに俺は夜天がいなけりゃ身体強化なんて器用なことは出来ん。

 

「シグナムやザフィーラでも呼ぶのかい?でも、あいつら今日はバイトってやつじゃ」

「違-よ、あいつらじゃない。けど、魔導師としての格ならフェイトと同等ってか全く一緒だろうよ」

「フェイトと?」

「この子と同格の魔導師なんてそうはいないわよ?」

 

どうやらまるで心当たりがないアルフとプレシア。てか、さりげにプレシアの奴娘自慢入ってねーか?お前、やっぱフェイトの事結構好きだろ。

そんなおとぼけ保護者たちを尻目にフェイトはハっとした顔になった。流石はフェイト、察しの良さも可愛いな(?)。

 

「あの白い魔導師の子?」

「全力全開で『違う』と否定しておく。このアンポンタン」

「あぅ」

 

親も親なら子も子だった。てか、いい加減なのはの名前くらい覚えろよ。

 

「ンだよ、お前ら分かんねーの?ほら、昨日あの店主に紙貰っただろ?アレだよ。あん時もちょっと説明したけど、あの紙に魔力ぶっ込めばあら不思議、騎士の出来上がりってな」

 

そう。昨日アルハザードの男に渡された夜天の断章。どうせ生まなきゃならんなら役に立つ時に生み出そう。

 

「ああ、そう言えば………え、あれ正気で言ってたの?てっきりオツムが飛んでるのかと」

 

いろいろ抱え込んでいたモンが無くなって少し丸くなってきているプレシアだが、俺に対する態度だけは超トンガリ君。正気ってお前、飛んでるってお前……なに、喧嘩売ってんの?

 

「マジだよ。うちに理っつう超毒舌イカれ糞ボケ頼むから死んで下さいなガキが居んじゃん?あいつもそうやってダイオキシンのように発生したんだからな」

「………スズキ、あなたが人の毒舌云々を言える筋じゃないわよ」

「ふん、そりゃお互い様だ」

「わ、私はそんなに口悪くないわよ。……………なによ、その人類が初めてミトコンドリアを発見した時のような驚き極まった顔は」

「すまん。なんていうか………すまん、言葉が見つからん」

「なんで哀れんだ目をして謝るのよ!」

 

と。

そんな漫才している場合ではない。漫才のつもりなんて微塵もないが、それでもそんな場合じゃない。

俺は顔を真っ赤にして吠えるプレシアを無視し、ポケットから紙を取り出す。

 

「それにしても不思議だねぇ」

 

アルフが眉間に皺を寄せながら、紙を見るため俺の手元を覗き込んできた。

その急接近に純情ハート所有者の俺はどぎまぎ…………なんてしねぇよ。アルフ、お前朝から餃子チックなモン食ったろ?息臭ぇぞ。それともまさか獣特有の素の臭さ?だったらちょっと引くな。ブレスケアを薦める。

 

「なにがよ?」

「だってさ、隼の言う通りならそんな紙から魔導師が生まれるんだろ?それも供給された魔力の持ち主とまったく同じやつが」

「だから?」

「だからって、これって凄い事だろ?」

「まあ、生命を生み出すってのは凄いだろうけど……やっぱ魔法世界の常識的に見てもそうなのか?」

 

俺はまだ若干高揚気分なプレシアへと話をふった。

プレシアは軽く深呼吸すると胸の下で腕を組み、まるで物分りの悪い生徒に教え聞かすような口調で喋り出した。

 

「凄いも何もないわよ。常識的なんてモンじゃないし、非常識でも過不足だわ。いえ、そもそもそんな事を考える事自体時間の無駄よ。その断章、ひいては夜天の写本なんていうロストロギア・コピーからして出鱈目なんですもの。アルハザードが絡んだ時点で理解も納得も無意味、ただ『そう在る』から『そう在る』のよ」

 

先生、意味が分かりませ~ん。

まあ、別にどうでもいいんだけどな。俺的にも、それでいいならそれでいいし。ぶっちゃけ、論議したところで何がどうなるわけでもないからな。

 

「純粋に魔導生命体を生み出すならともかく、ただの魔力だけでその人の身体情報まで写すなんて今の魔導や科学じゃどうやったって─────」

「あ、プレシア、もういい。うるさいからちょっと黙ってて」

「あなたから聞いてきておいてそれ!?」

 

顔を赤くし、ジト目で睨みつけてくるプレシア。

やっぱプレシアも少しは俺に対しても丸くなったかな。ちょい前なら問答無用で手とか足とか魔法とかが飛んで来てただろうに、今じゃ多少のツッコミとそんな顔だけときたモンだ。俺としてはちょっと張り合いに欠けるが、その年不相応の可愛らしい怒り顔と張りのある胸でオールOK!

 

「てわけで、話は聞いてた通りだフェイト。これにお前の魔力をぶっ込んでくれ」

「え。あの、私でいいの?」

「俺はお前がいいんだよ。フェイトのコピーならさぞ可愛い奴が生まれてくんだろうしな。あ、それともやっぱコピーされんのって嫌?まあ、自分がもう一人存在するようなモンだし、気持ち悪いか……………ん?でも、フェイトならそれ関係ねぇか?もともとフェイトもオリジナルがいるクローンだし。なら二人も三人も変わんねーだろ。それに生まれて来る奴はコピーっつってもまったく同じっつう訳じゃねーから大丈夫!可愛いフェイトはフェイトだけ!」

 

遠慮も配慮もあったもんじゃない俺のフォローとも言えぬデリカシーの欠片もない言葉に、しかしフェイトは少しだけ呆然とした後困ったように小さく笑みを浮かべ、それが程なく純粋に嬉しそうな笑みへと変わった。

 

「うし、その笑顔は了承の意と取るぞ。つう訳だからプレシア、よろしくな」

「は?何が?」

「生まれてくるフェイト・コピーの世話」

「はァ!?」

「だって、もう俺んちじゃ面倒見切れねーし。物理的に」

「だからって……」

「別にいいだろ、金だってしこたまあんだし。それに見た目フェイトに激似の奴が生まれるんだぞ?アリシアも蘇ってくれば三人の娘的な?三姉妹的な?そんな三人に囲まれて『ママ』とか『母さん』とか言われた日にゃあお前………どうよ?」

 

─────プレシア妄想中。

 

「しょ、しょうがないわね。まぁ、確かに後一人くらい子供が増えたからってなんて事はないわ」

 

落ちた。飲んだ後のお茶漬けくらいアッサリだった。

なんとまぁ、つい先日までのバイオレンスなプレシアからキャラ変更しすぎだろ。これ、ツンデレのデレ期なんてもんじゃねーぞ?

まっ、デレ期だろうがジュラ期だろうが俺の面倒が少なくすむなら何でもいいけど。

 

「あ、ついでに理とヴィータも預かってくんね?半永久的に。金払ってもいいぜ」

「いくら金を積まれようとも、それだけは絶対に嫌!あんな子たちと暮らすなんて考えただけでも過労死するわ。いえ、きっと3分後には殺し合いになってるわね」

 

だよな~。

てか、ほとんど付き合いのないプレシアにここまで言わせるロリーズはある意味で最強だな。

まあいいや。取りあえず話もこれでまとまった事だし、そうそうと済ませちまおう。

 

「ほれ、フェイト。いっちょお前の魔力をドバッとこれに入れてくれや」

「う、うん。分かった」

 

俺はフェイトの眼前に紙を持っていき、それに向かいフェイトが魔力を注ぎ込むため手を差し出そうとして、しかし途中でその手が止まった。

 

「あの、隼。どれくらい魔力あげればいいの?」

「ん?」

 

そう言えばそうだな。ええっとどれくらいなんだ?小さじ一杯程度?それとも大さじ一杯くらい?

理の時は確か……って、あん時は俺その場にいなかったっけ。でも、確かシグナム達が言うには魔力弾を吸収したっつってたっけ?魔力弾、つまり攻撃魔法って事だから、なら結構多目に魔力がいんのか?

いや、でもフェイトくらいの凄い魔導師なら少量の魔力でも足りる……………ん?てか、そもそもフェイトって魔導師として凄いやつなの?思えば俺、フェイトの魔導師としての強さなんて見たことねぇな。まあ、自称大魔導師(笑)のプレシアが娘自慢するくらいだから、それなりだとは思うけど。あ、でも確か局の魔導師に後れを取って怪我してたしなぁ………実際どうなんだ?

 

ここは念を入れとくべきか。

 

「よし、お前の全力魔法を撃って来い」

「え?」

 

何事も少ないより多い方がいいだろ。

俺はフェイトから距離を取り、そこで紙を前面に構えた。そんな俺をアルフとプレシアが驚きと呆れを表していた。

 

「は、隼、いくらあんたでも危ないよ!フェイトの全力って凄いんだよ?」

「………馬鹿がいるわ」

 

大丈夫だっての。この紙が魔法吸収してくれんだから俺の被害はどうせゼロだろうし、仮に吸収しきれず余波的なモンがあってもこの俺がガキの魔法で膝を付くわけがあるめぇよ。

 

「心配無用!フェイトのちょっせぇ魔法くらいで俺がどうにかなるかよ。プレシアの弾幕魔法にも耐えた男だぞ?マタドールのように華麗に捌いてやんよ」

「いやいやいや!?隼あんたフェイトの魔法舐めすぎだって!止したほうがいいよ!」

「そもそも私の時だって、結構ギリギリだったじゃない」

「つべこべうるせぇな。ほれフェイト、気にせずやれ。俺を信じな」

 

フェイトはどうしようかおろおろとしていたが、そこで「いいわフェイト、言う通りにやってやりなさい。馬鹿に何言っても無駄。部屋の被害とかも気にしないでいいわ」というプレシアの言葉で心を決め、セットアップしてデバイスを構えた。

 

「隼、ホントに全力でいくよ?」

「おいおい、フェイトまで何言ってんだよ?てか、お前程度の魔法でどうにかなる俺じゃねーの。ガキは無用な心配なんてしてねぇで、どんと来い!それを受け止めてやるのが大人だ!」

「う、うん!そうだよね、なんたって隼なんだから!私なんかの魔法が通用するわけないし………それじゃあいくね」

「応よ、ばっち来ーーい!!」

 

俺はポケットからタバコを取り出し、余裕綽々で一服つく。

 

やれやれだ、まったく。だいたいお前ら心配性なんだよな~。

 

「アルタス・クルタス・エイギアス」

 

俺が今までどれだけの修羅場をくぐって来てると思ってんだよ。数十人の族相手に3~4人で喧嘩ふっかけて勝ってきた男だぜ?それに比べたらガキの魔法なんてお前、児戯にも等しいだろ。

 

「疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ」

 

プレシアもフェイトもアルフもその辺が分かっちゃいねぇ。それにいくら全力魔法つったって理のルシフェリオンの何分の一か、もしくはせいぜいが俺のラグナロク(極弱)くらいだろ?

 

余裕だっての。

 

「バルエル・ザルエル・ブラウゼル」

 

俺は適当にさ迷わせていた視線をフェイトに戻した。

さてさて、いい加減大仰な詠唱は終わったかよ。こちとら待ちくたびれ………………────────

 

「フォトンランサー・ファランクスシフト」

 

────────ふぅ~。

最近ちょっと色んな事があったからなぁ、疲れてんのかな俺?なんか黄色く輝く光球が尋常じゃないほどフェイトの後ろに控えてんだけど。あ、プレシアとアルフがさらにその後ろにいるなぁ。

 

「って、ンじゃこりゃああああああーーーーーーーー!?!?!?ちょ、フェイトそれ何!?」

「リニスの教えてもらった私の最大魔法だよ。リニスは『命中すればまず防ぎきれないし、耐える事も難しい』って言ってたけど隼なら全然大丈夫だよね!」

 

イヤッハーーー!?

確かに信用しろとは言ったけど!受け止めてやるとは言ったけど!全力で来いとは言ったけど!

フェイトからの絶対的で盲目的な信頼が痛すぎる!!

 

「いくよ隼!」

「ちょい待て!タンマ!せめてマトイを───────」

「撃ち砕け、ファイアー!!!」

「ヤる気マンマン!?撃ち砕いちゃらめええぇぇぇぇぇぇ!!??」

 

時遅く。

フェイトの言葉とともに撃ちだされる怒涛の槍のような魔力弾。数なんて数える余裕もなく、せめてもの救いは何とか甲冑の展開が間に合ったくらいで、けれどそんなもんが果たしてどれくらいの救いになったのか。

 

あ、俺死んだ。

 

と、久々に思った。

 

「どぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?」

 

人とは窮地に陥れば藁をも掴むというが、まさしく俺は今その状態。盾にもならない紙を両手でしっかりと前面に構えて凌ぐ。それでも必然に抑えきれる訳も無く、体に当たるわ当たるわ。

 

なんだよこの物量は!前プレシアからもえらい数の魔法弾を貰ったけど、それに遜色ないってかそれ以上だ!この弾幕親子が!!

 

(足が!肩が!頭が!ぬわぁぁああ、痛ぇ!!!)

 

死ぬ死ぬ死ぬ死ぬデスる!!

体中が痛ぇ!さらに着弾音も凄まじいから鼓膜も破れるぅ!

 

(ドチクショウーーー!!!)

 

それでもフェイトにあんだけ調子ぶっこいた手前無様を晒すわけにはいかず、俺は踏ん張ってその猛攻を耐える。なによりこのマトイを着ている限り、あいつらの名前を背負っている限り、俺は情けない姿を絶対に見せられない。

 

(だからってキツイものはキツイんだけどなあああああああ!)

 

そんな拷問とも思しき我慢時間が一体どれだけ続いたか。多分ほんの十数秒だけれど軽く死ねる時間が漸く終わったようで、銃弾のように俺に突き刺さってきていた魔法弾の嵐がやんだ。

 

(お、終わったか……)

 

辺りは魔法の余波で瓦礫が飛び散り、砂埃で視界が遮られているのでフェイトの姿が見えない。そして俺も足腰ガクガク、声も出ねぇ。

 

(信頼され過ぎるのも問題だな)

 

俺は膝を突きそうになる足に力を入れ、堂々とした立ち姿でこの砂塵が晴れるのを待った。あたかも『はん!余裕!』という事を主張するかのように。

つうか途中の爆風で紙がどっか飛んでっちまったしよぉ。ちゃんと吸収出来てっか?ここまで頑張って無駄でしたじゃ最悪過ぎんぞ?

 

──────と、あたかも終わったかのように安堵していたのだが、しかし、世界はどこまでも俺に厳しいらしい。

 

「スパーク────」

 

あん?

 

「───エンドッッ!!!!」

 

完璧に完全に無防備な俺に、目の前の砂塵を切り開きながら一つの黄色い光が飛び込んできた。

 

予想外のラスト一撃だ。

 

(止めはキッチリってか?ははは、ガキのクセに徹底してやがんなぁ~)

 

客観的にそんな感想が浮かんだ。

いや、もうなんか色々無理。これ当たったら俺死ぬんじゃね?非殺傷設定とか無関係なレベルじゃね?甲冑ももうボロボロだしよ。

いやぁ、フェイトの事ちょっと舐めてたわ。まさかこんな強ぇとは。これはどうしたもんかねぇ。当たったらやべぇのは分かるけど、とてもじゃない避ける事はこんな体じゃ無理だし。シールドも夜天がいなけりゃ儘ならないし。

 

(はいはい、分かりましたよ。諦めて清くもらえばいいんだろ?こうなりゃどこまでも耐えてやんよぉ!!これで俺がMに目覚めたら責任取ってもらうからなフェイトーー!!)

 

と。

俺は歯を食いしばり、足を床の中に埋没させるかのごとく踏ん張って、今まさに来る衝撃へと覚悟を決めた────────その時。

 

「主はボクが守る!!」

 

そんな声が聞こえたかと思うと、次の瞬間には俺に向かって来ていた黄色い槍を横から伸びてきた青色の光が飲み込んだ。さらにその光はフェイトの槍を飲み込む事はおろか、辺りの砂塵を全て撒き散らして塞いでいた視界を晴れやかにした。

 

「な、なにが……」

 

いきなりの事で呆然とする俺だが、それは俺だけに非ず。見ればフェイトもプレシアもアルフも現状になにが起こったのか分かっていないようだ。だが、俺とは違い三人の視線は一箇所を向いていた。

 

なんだと思い、俺も三人に倣いそちらの方を向いてみれば、なんとそこには一人の少女。

先ほどまで俺たち4人しかいなかったはずのこの場所に、あたかも最初からいましたよ的に佇んでいる少女が一人。

 

─────フェイトに激似の少女が一人。

 

「てか、あの2Pカラーなフェイトはどう見ても断章のガキだな」

 

青い髪と紫色の瞳を有したフェイトと瓜二つの少女。違うところを挙げるなら、それは先に言ったように青い髪と紫色の瞳、そして右手に持っているデバイスが斧でも鎌でもなく大きな剣だという事。てか、あれ?確かフェイトのデバイスは剣にはならないんじゃ?

 

そんな少女はデバイスを器用にくるくると頭上で回した後、登場第2声を上げた。

 

「凄いぞ強いぞカッコイイ~!」

「登場早々まさかの自画自賛だァ!?って、ぐはっ、痛ぇ!自分の声が傷に響く!?」

「あ、主~~」

 

少女はデバイスを持っていないほうの手を俺に向かってブンブンと振る。『えへへ~』とでも言いたげなその無邪気で無考えな顔は、やっぱりフェイトであってフェイトじゃない。そして、その行動の意図も分からない。

だが、少女の意図の分からない行動はさらに続いた。

 

「そこのボクによく似た偽者!よくもボクの主を攻撃したな!」

「え?え?」

「成敗!」

 

少女はデバイスを剣から鎌に変形させフェイトに切りかかろうと飛び掛っていった。そのスピードには目を見張るものがあり、てか早すぎ。残像見える。そして、その気迫も『我が進行を妨げる者なし!』みたいな雰囲気も窺えた。

 

しかし、そんなモンはなんのその。ある一人の女性の行動により、その目的は叶わなかった。

 

「いきなり出てきたと思ったら武器を振り上げるなんて元気な子ね。でも、とても賢い行動とは言えなくてよ?」

「むっ!」

 

少女とフェイトの間に割って入ったプレシアが意図も容易く少女の攻撃を止めた。

 

「なんだお前は!」

 

少女はプレシアからばっと距離を取り、今度はフェイトからプレシアに武器を向ける。

てか、理に似てこいつも怖いもの知らずだなぁ。

 

「………言動はともかく、見た目は本当にそっくりね。まあ、それはいいわ。スズキ、これ以上大事になる前にさっさとこの子に説明なさい」

「お、お前は、俺のこの瀕死っぷりが、見えねーのか」

「「あ、隼!」」

 

というか、プレシアのみならずフェイトもアルフも俺の事を完全に忘れていたようで、今気づいて急いで駆け寄ってきた。

 

「は、隼!」

「大丈夫かい?」

「これが大丈夫に見えるならアルフ、お前は一度獣医に行った方がいい。フェイトも景気よくやってくれたな」

「ごめんね隼、私………」

「ったく、嘘嘘。こんくれぇなんてこたぁねーよ」

 

俺はアルフに肩を貸してもらいながら涙目のフェイトの頭をくしゃりと撫でてやる。そんな俺を見てプレシアがふんと鼻で笑った。残るフェイト・コピーはぷくぅ~と頬を膨らませながら今にもフェイトやアルフに飛び掛っていきそうだ。それをしないのは目前のプレシアを警戒しているからだろう。

 

取り敢えず、ここは俺が収拾つけなきゃならねーだろうな。

 

「おい、そこの断章のガキ!ちょっとこっち来い!」

「え、うん主!なになに~?」

 

無邪気に、能天気に断章のガキはデバイスを仕舞い、元気よく俺のもとへ駆けてくる。傍にアルフやフェイトもいるのに、なんとまあ無警戒だ。さっきまでの威勢はどうした?

ともあれ、俺はそんなガキの脳天に一発拳を打ち下ろした。

 

「痛っ!?なんだよ、主!痛いじゃないか!」

「うるせえよ、このバカチンが!登場早々、一触即発な空気作ってんじゃねーよ!」

「一緒に爆発?うん、主と一緒なら爆発も怖くない!」

「一触即発!難聴かおのれは!」

「ナンチョウ?蝶?ううん、蝶々じゃなくて雷刃の襲撃者だ!えっへん!あ、でも蝶々も綺麗だから捨てがたいな~」

 

俺の怒声に頭を抱えたくなるほど能天気な言葉が返ってくる。

 

あ~、なんだろう、すでにコイツのキャラ掴みかけてきちゃったよ。つまり、あれだろ。フェイトが可愛い天然ならコピーのコイツはアホな天然。

姿形だけじゃなく中身もきちんとコピーされろよ。まあ前例(ジェノサイド黒ロリ)よりかは大分マシだけど。むしろガキらしくていい。ちょいウザいけど。

 

まあとりあえず、フェイトたちへの敵意が薄らいだようなのでさっさと状況説明して敵意を完全になくしてもらおう。

 

「蝶でも雷刃でも何でもいいから聞け。確かに俺は攻撃されたが、別に襲われたわけじゃねー。お前を生み出す為の魔力を魔法って形で貰ったんだよ。だからコイツラは敵じゃなく味方。OK?」

「え?そうなの?」

 

断章のガキがフェイトとアルフ、プレシアに目を向け、3人が頷くのを見て気まずい顔になった。

 

「……ま、まあそんな時もあるよね!」

「あるよね、じゃね~だろう~がぁ!」

 

ガシっと俺はガキの頭を鷲掴み、睨みつける。するとガキは萎縮し、えーっとえーっとと狼狽え始めた。

 

「あ、あの、ボク、主が攻撃されてると思って、主苦しそうな顔してて、そんな顔されたらボクも凄い苦しくて、許せなくて、だから……グスッ、ううぅぅぅっ!」

「お、おい、そこで泣くなよ」

 

まさか泣き出すとは思わず、ポロポロと涙を零すガキに俺のなけなしの良心がチクリ。てか涙脆すぎ!理と違いすぎだろ!

分かり始めてはいたが、今、完璧に分かった。───コイツは本当にガキだ。ともすればフェイトよりも純粋な程のガキ。即断即決。一旦落ち着いて考えて、なんてことはせず、思ったことは即行動に移し、言葉にする。自分の中の感情すら、それがどんなものであれ外に出すのを躊躇わない。

 

(なんとまあ、マジで理とは大違いだな)

 

別に理の事が嫌いなわけじゃねーよ?なんだかんだ言って、あいつの事は気に入ってる。けどこのガキの場合、理に向けるその『なんだかんだ』がないんだよ。

本当に純粋なガキで……ああ、もう!

 

「ありがとうよ」

「ぐす、ずびっ……主?」

 

鼻水を啜りながら俺を見上げるガキ。その頭を鷲掴みしていた手を今度は軽く乗せ、そして優しく撫でる。

 

「確かに、まあパッと見攻撃されてたように見えるし、事実攻撃魔法だったわけだし、最後の奴は実際マジでヤベえと思ったからな。フェイトやプレシアにいちゃもん付けたのはよろしくないが、俺的には助かったぜ」

「主……主~!!」

「だから泣きやめっつうの」

 

結局、それから数分間、ガキが泣き終わるまで俺があやす事になった。

てか、プレシア、フェイト、アルフ!お前ら、その暖かい目を向けんのやめろや!『お前にも人並みの優しさがあったんだな』類の視線が腹立つ!

 

(てかよ、そりゃ俺だって人間だ。優しさの一つや二つ持ち合わせてますよ?機械じゃあるめーしよぉ)

 

なんて心の中で在り来りな『俺実は優しいんだよねアピール』をしてみるが、我ながらしっくりこないのは気のせいか。

ともあれ、さていつまでもこの断章のガキに引っ付かれて泣かれたままじゃ話が進まん。なによりこいつの涙やら鼻水やらが服についてばっちいので、いい加減引き剥がす。

 

「おら、いい加減泣きやめや。俺を護るっつうなら、俺の前で弱ぇとこ見せていいのか?そんなんじゃこれから先が思いやられるぜ?」

「ぐす……ボクは強い子、負けない子!」

 

未だ涙目だがガキは俺から離れて胸を張る。虚勢を張ってるように見えるその姿は、まあガキらしくて嫌いじゃない。

俺は最後に頭を一撫でしてやり、次にオラと軽く背中を押す。

 

「んじゃ、フェイトとプレシアに詫び入れとけ。悪いことしたらキチンと謝る。これ常識。それにこれからいろいろと世話ンなんだからよ」

「よく分からないけど分かったー!」

 

元気よく返事した後、まずはフェイトに向かってペコリ。

 

「偽者、ゴメン!」

「え?あ、うん、別に気にしてないよ。……………本当にそっくり」

 

ガキよ、偽者か本物かで言ったらお前の方が偽者だぞ?まっ、どっちもどっちだけど。

 

次にプレシアの傍に行ってペコリ。

 

「おばあちゃん、ゴメン!」

「お、おばあ!?」

 

ホント、いい根性してんなぁ。まあ、本人に他意はないんだろうけど。

しかしまあ、これでまた俺の周りは賑やかになっちまったな。さらにここからアリシアとリニスだっけ?この2人も加わったら、一体どんだけグダグダになる事やら。まあリニスって子には期待してるが……あ~あ、でも面倒臭ぇ。

 

「は、隼大丈夫?何か疲れた顔して……あ、やっぱり体痛むの!?ご、ごめんね!」

「主大丈夫か!?痛いのか!?死んじゃヤだぞ!?ボ、ボクそんな事になったら………う、うわぁぁーーん!」

 

………まっ、悪い気はしねぇからいっか。

そんな微笑ましい気持ちになってると、どこからかブツブツと声が聞こえてきた。

 

「おばあちゃん……確かに年も年だし、お姉さんなんては呼ばれない事は分かってるけど……でも、おばあちゃんって……せめて、そこはオバさんじゃないの?……え、私おばあちゃんなの?」

 

なんか事の他プレシアがダメージ受けてるし。でも、そんな気にする事でもねぇだろ。性格抜きにすれば超いい女だし、見た目もともすれば20代でも……まあギリ通用するし。

 

「女ってのはそういうとこが気になるんだねぇ。男の俺にゃ分からん」

「そういうとこ?」

 

ひとり言で呟いたつもりが、耳聡くアルフが拾った。

 

「ああ。年齢とか見た目とか」

「そうでもないだろ。私は全然気にしないよ?」

「それはお前が半分くらい獣だからだ」

「そっか。まあ、私の場合この体を形作る魔力を調整すれば子供の姿にもなれるから、だから尚更なのかもね」

「え、アルフそんな事も出来んの?へ~、ちびアルフかぁ」

「なんだい、見てみたいのかい?変身しようか?」

「いや、いい。俺はどっちかってぇとその姿のお前(の胸とお尻とヘソ)が好きだし」

「そ、そっか……へへ、照れるね」

 

と、何時までもこんな下らん会話してるから先に進まねーんだよ。

つうか体痛ぇえ!

 

 

 

~後編へ~

 




というわけで、マテリアルの二人目の本格参入です。
原作では基本無邪気でアホ、しかし賢い面もある。というキャラですが、当作品においてはアホです。賢い面ありません。戦闘ができるただの子供です。
理(シュテル)ほど原作乖離甚だしくはないかと思いますが、しかし『これじゃない感』もあるかと思います。
その点はオリジナルキャラと割り切って読んで頂けると幸いです。

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