氷雪の魔王と愉快な帝具使い達の話   作:椿リンカ

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社員1「つまりどういうことだってばよ」
社員2「クズはクズってことは・・・まぁ、そういうことなんじゃねーの?」
社員3「まぁ、どんなに変態になろうがなんだろうが、クズはクズのまま、だと」
社員4「更生の道のりは長く険しいアル」
ロッドバルト「今回は彼視点のお話ですよー!途中で幕間も挟みますがね」


クズはやはりクズだった

それがかつて体験した記憶だと気が付いたのは、成人してからのことだった。

それまではただの既視感や夢の類だと思っていた、いや、思い込むようにしていたのだ。

 

この世の中に魔王なんているわけがない、と

 

ただ、現実は非情である。

 

初めはいなかったはずの存在が、当たり前のように存在するように

殺されるまで自分の思う通りだったことが、障害がいつのまにか増えることに

・・・ただの出自不明の作家が、魔王になったように

 

何かの意図が感じられるかのように、同じ人生を何度も繰り返してきた

 

なぜ今になって思い出したのかは分からないが、一番最後の世界で魔王を倒したからなのかもしれない

 

思い出してまず真っ先に考えたことがある

 

 

 

皇帝陛下よりも魔王を手に入れたほうがいいのではないか?

 

 

 

相手はエスデス将軍やブドー大将軍も霞んでしまうほどの能力を持っている。

 

だが、その力に反して彼女のメンタルは弱い

 

いや、籠絡しやすいと言えばいいだろうか。

彼女のことを優しいと皇帝陛下はどこかの周回で言っていた。だが違う。

私からすれば【他人から嫌われたくないがゆえに、他人の長所を見出して対立を避けている】ように見える。あまり敵対心を持ちたくないのか、それとも敵対心を持たれることに恐怖しているのか・・・どちらにせよ、その気になれば籠絡することはたやすいはずだ。

 

彼女自身を手駒にできるのであれば僥倖である

 

・・・が、年を経て、シュラが生まれてきた。予定調和と言えばそうなるが、嬉しさは特になかった。シュラは繰り返してきた周回で何度も失敗を犯しているのだ。

 

やはりクズはクズでしかないのだろう。

母体を選びぬいて、今度は失敗しないようにしなければ・・・そう思っていた時に気が付いたのだ

 

彼女でなくともかまわない

 

いっそ、彼女の産んだ子供でもいいのではないか、と

 

露子を手駒にするよりも、露子に自身の子を産ませて手駒にしたほうが遥かに良い

 

すぐに占いを司る帝具の使用者に掛け合い、露子がこの世界にいるか調べさせたのだ。

それから少しずつ彼女の現状や住んでいる場所、年代も調べ上げ・・・そして、見つけた。

 

だが気が付かれてはまずい

 

臆病ではあるが、あれでも何万回何十万回と人を殺してきた魔王なのだ。

いざという時には牙を向けてくるのは明白である。

 

定期的に皇拳寺の者や私兵を遣わせて連絡させ、時折私も彼女の様子を観察した。

 

 

そして

 

 

恥ずかしながらいつのまにか私のほうが先に好意を抱いていた。

 

 

ぶっちゃけると一番最初に知り合った時から周囲にいないタイプの女性だったので興味を持ってはいたのだ

まぁ、わざわざ手を出すのも面倒なので傍観して楽しんでいましたが・・・

 

あれですね、幼女ではありますが見ていて可愛いですね。

ついつい「子供ができたらあんな感じなんでしょうね」って何度も思いましたよ、えぇ。

 

もちろん何も知らない相手からすれば私がペドフェリアかロリータコンプレックスに見えることでしょう

 

シュラにも初めて殴られ、シュテンからも腹にパンチされ、後妻ができるとブドー将軍に報告したら便所蟋蟀を見るような蔑んだ目線を向けられましたからね。

 

ですが私はめげません

 

予定としては早めに子供は欲しいので3年以内には手籠めにしたいところですしね

 

この世界では幸せな家庭を築くんですから!

 

 

***

 

 

そんなことを思いながら、大臣は帝都にある女性用下着屋の前のベンチに座って待っていた。

もちろん周囲から目立っているが、今の彼は気が付いていないようだ。

 

「大臣が外で待っていてくれるのは助かりますね」

「下着屋だから自重させたぞ」

 

12歳ながらも色気のある下着を物色するエスデス

露子は遠慮がちに地味な下着や安い下着を買い物かごに入れながら苦笑いをした。

 

「さすがエスデスさん・・・大臣の手綱握ってますね・・・」

「手綱もなにも、私は支配する側だからな。しかし露子・・・まさか大臣に求婚されるとはな。世に言うモテ期でもきたんじゃないか?」

「あはは、そんなことないです。きっと私が物珍しいから所有したいだけなんですよ」

「そうか?確かに能力が珍しいが、能力目当てならば私のように同盟を組むだろう?」

「それは・・・好意を抱かせて魔王の力を思い通りにしたいのかもしれません・・・私自身は何のとりえもない、ただのクズで役に立たない人間なんですから」

 

あながち間違いでもない(むしろ半分は正解している)考えにエスデスも少しの間沈黙する。

しかしエスデスは「それは違うぞ」と露子に返答する。

 

「お前は確かにメンタルも器量も甘いが、お前自身が思っているよりは長所はある」

「長所、なんてそんな・・・」

「大体お前は自虐も過ぎているし、なによりもそれを自覚していながら直さないだろう。その悪癖をまず直せ」

「は、はい・・・」

「だが、お前の甘さを優しさだと・・・ウェイブやランは言っていた。そういった部分を長所として捉える人間は多いそうだぞ」

「そうなんですかね・・・私の優しさなんて、自分を守りたいだけの偽善ですよ」

「自覚できているだけ貴様はマシだ」

 

さて、聡明な読者はすでに気が付いているかと思うが、彼らは見た目は10歳と13歳の少女

そしてここは帝都の普通の店・・・女性下着専門の店である。

 

彼女たちのおよそ子供らしくない会話に、店員も他のお客も一歩引いている光景が目に浮かぶことだろう

 

実際、その通りの現状になっている。

 

「(なにかしらこの子たち・・・)」

「(最近の若い子は意識が高いのね)」

 

こんな感じの感想を持たれていたのだが、彼女たちが知ることはないだろう。

 

 

***

 

 

女性の買い物はなぜ時間がかかるのでしょうか?

 

この疑問については私が女性に生まれ変わらないと分からないことなのかもしれない。

 

宮殿にやっと戻ってきた頃、私の私室前にシュラが待っていた。

 

「親父、やっと帰ってきたのか」

「ただいまです。何か用事ですかな?」

「・・・新しく家族になるやつの、顔を見に来た」

 

まだ納得してないのか、ふてくされたような顔をしながらシュラが呟いた。

 

「えぇ、それならあちらの部屋に今はいるかと」

「ありがと。じゃ、ちょっと行ってくる」

 

・・・シュラの様子が気になりますね。

シュラがループしていた時の記憶を持っているかはわかりませんが、気を付けることに越したことはないでしょう。

 

私室に戻り、秘密の抜け道を通って、壁を隔てた彼女の部屋に赴く。

部屋に付けられたマジックミラーから部屋の様子が分かる仕組みだ。

 

これから気が向いたらこれで部屋を観察する予定でしたが、さっそく役立ったので嬉しいですね。

 

 

<おい、露子>

<えっ、あ・・・えと・・・>

<・・・>

<・・・>

<・・・もう本は出さないのか、先生さんよ>

<!!>

 

 

・・・なるほど、シュラは覚えていたようですね。

しかしシュラ、少しずつ距離を詰めていくやり方はどうもいただけませんね。まるで貞操を奪おうとしているように見えます。

 

私の後妻なのを知ってるはずなのに・・・まったく、困った愚息ですね。

 

<あ、あの・・・>

<・・・>

 

そのまま距離を詰めたかと思うと、露子を殴りつけました。

綺麗に頬を殴られた露子はそのまま床に倒れこんで・・・シュラは後で叱りつけておかなければなりませんね。

 

<ッ・・・!>

<ふざけんなよ、あ”ぁ”?・・・八方美人もいい加減にしやがれ>

<あ・・・のっ・・・>

<自己犠牲だなんて自己満足に浸ってんじゃねぇよ、んなことして誰が喜ぶんだ>

<そのっ・・・あ、の・・・>

<てめぇの人生を、他人のために使ってんじゃねぇよ。てめぇの人生はてめぇのもんだろうが>

<ご、ごめっ・・・んなさい>

<謝ることじゃ・・・>

<ごめん・・・ひっく・・・>

<!?なっ・・・なんで泣くんだよ!?>

 

いや泣くでしょう、いろんな意味で

 

少し呆れながらも、いつもとは違った姿のシュラに何か感じた瞬間、天井からシュテンが降りてシュラを勢いよく踏みつけました。

ナイスですシュテン、あとでボーナスでもあげましょう。

 

<イエスロリ!ノーヴァイオレンス!>

<わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!俺は大臣の息子だぞ!?上司の息子にてめぇ何してんだ!>

<ロリを泣かす者に死あれ>

<おいてめぇ殺す気か!!!>

<あ、あの・・・殺しちゃ・・・>

<ロリに免じて半殺しで済ませてやろう・・・小僧、かかってこい>

<上等じゃねぇかこのロリコン野郎・・・キッチリ殴り殺してやんよ>

 

・・・まったく・・

さて、エスデス将軍かナジェンダ将軍でも呼んで収拾でもつけましょうか。




社員1「(ペロッ)これは・・・ラブコメの味・・・!?」
社員2「違うと思う」
社員3「それよりもなんですかこの現状は」
社員4「女の逆ハーレムよりも男主人公のハーレムのほうがいいアル」
ロッドバルト「まぁ、アカメの連載ネタもあるでしょうから、いつかやりますよ」
社員2「それはやらないフラグだな」
社員3「メタ的に言えば、作者はネタのストックだけどんどん溜まっていくタイプなんですよね」
社員4「気分屋乙」
ロッドバルト「いいではないですか。何も書かないよりは、何かを書いたほうが楽しめますよ」
社員1「それはそうッスけど」
ロッドバルト「そのうち我々の番外編も出るかもしれませんね」
社員4「朕がヒロインアルか!?」
1・2・3『それはない』

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