氷雪の魔王と愉快な帝具使い達の話   作:椿リンカ

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【後日談】それからどうなった【日々は続く】

 

【オネスト大臣と露子】※大臣視点

 

初めて知った頃は一般市民だと思っていました、魔王であった頃は敵だと思っていました。本当にいつの間にか好意を抱いていたのです。

 

拗らせているタイプの女性を相手にしたこともありません。自分の手でどうにかしたくなるんですよね。私色に染めたいというか。

 

めちゃくちゃにしたいんですよね。自分のものとして、自分だけのことしか考えられなくなるような・・・

 

独占欲というんですかね。私だけのものにしたい。

 

「・・・と、いうわけです。露子さん、いい加減結婚してくれませんか?」

「オネストさん、それ聞いて結婚したいと私が思うと?」

 

「ちょっとお試しで結婚するだけですよ?」

「お断りします」

 

露子さんは相変わらず冷たいです。ですが彼女は押していけばいつかは落ちます。そういう人間性ですし?

 

強い人間の強い意志に、つい絆されるタイプなんですよね。

そのくせ自分の意見も通そうとするあたりが実に頑固ですけど。

 

 

 

【シュラさんの話】※露子視点

 

「前々から思ってたんですが、シュラとは随分仲良しのようですね」

「は?」

 

オネストさんにそんなことを言われてつい変な声が出た。

仲良し・・・なのだろうか?確かに多少、会話はしてるし付き合いはあるが、仲良しなのかと問われると首を傾げる。

 

そもそも、仲良しだとシュラさんは思ってないだろう。

仲良しな相手を殴りつけたりはしない(確信)

 

「確かにここ10年でかなり気やすく話すようにはなったな」

 

エスデスさんは何故かその言葉に同意した。しなくていいです。やめて。

オネスト大臣に勘違いされたら面倒なのに

 

「でも、そういう仲じゃないですよ、ね?」

「あー、そうだな」

 

シュラさんがめんどくさそうにいいながら、オネストさんにこう続ける。

 

 

「というか俺、結婚する奴いるし」

 

 

その言葉に、私もエスデスさんもオネストさんも黙ってしまった。

あのアカメちゃんは肉を落としたぐらいだ。

タツミもこれには驚いたのか、目を見開いている。

 

「えっ、けっこ・・・え?」

「おう」

 

「誰とです?」

「普通に帝都に住んでる女」

 

「貴族とか、あぁ、もしかして実は他国の王族とか?」

「いや、平民。書店で働いてる」

 

「美人なんです?」

「普通」

 

オネスト大臣の質問に淡々と答える。

まって、え?いつのまに?え?まって、10年旅してたけど、まって。

 

わたし、それ、しらない

 

 

「っつーことだから、露子はねぇわ」

 

 

それはいいけどお前いつのまにだよ!!!!!!

 

ここにいた全員が、多分同じことを思ったと思う。

 

 

 

 

【皇帝陛下とオネスト大臣】※オネスト大臣視点

 

「陛下、結局貴方は露子が好きなんですか?」

「どうだろうなぁ、お前はどう思ってる?」

 

皇帝陛下・・・いや、今は皇帝の肩書すら捨てようとしているタダの馬鹿な子供に言われて非常に腹が立った。

まるでこちらをからかっているかのような態度・・・一体、誰に似たんですかね!?

 

「露子さんが好きなら渡しませんよ」

「・・・ふふっ、そうかそうか。まぁ、かまわない、頑張ったらいいと思うぞ?」

 

「はぁ~~~!?あなたに言われなくても、露子さんは私と結婚するんですよ!決定事項です。絶対に彼女を手に入れるんですから!」

 

私が宣言すると、彼は「そうか」とだけ笑っていた。苦笑交じりで。

 

本当にっ・・・そういう煽り方を誰に教わったんですかねぇ!!!

 

 

 

 

【ロッドバルトと露子の話】※露子視点

 

「いやー、面白い方向に話が進みましたよねぇ」

 

あれからロッドバルトさんは、ちょこちょこ私に会いに来るようになった。

もちろん、エスデス将軍たちに知られないようにこっそりと・・・ではあるが。

 

「話が進んだ、なんて。本当に人のことをキャラクター扱いしてますね」

「だって俯瞰視点で見てますからね。あくまで私は作家兼読者みたいなものですよ。あぁ、舞台装置でもいいですが」

 

「性格が悪いことに変わりないです」

「ふふふふ、よく言われます~!」

 

相変わらず、よく分からない悪魔だ。

・・・契約はしていたし、今も死んだあとだから、「私」で楽しんでるんだろう。

 

「・・・こうやって魂を使って楽しんでるんですね。悪趣味極まりないです」

「いえいえ、普段はわりとすぐに食べたりしますよ?」

 

舌なめずりしながら傍で囁かれて、思わず距離をとってしまった。

 

・・・・・・やっぱり、死ぬことには慣れない。

 

「そう怖がらないでくださいよ」

「・・・怖いものは怖いです」

 

「酷いですねぇ。でも、わりと今の生活だって楽しいでしょう」

「・・・」

 

・・・楽しいと言えばそうだけど、お試しでちょっとトリップしただけでこうなると思ってなかった。

 

・・・家族が心配してそうだなぁ

 

「楽しいですけど、元の世界も恋しいです。元々はお試しだけのはずでしたし」

「?そうなんです?」

 

「・・・あの時、タツミ君に憑依した、あのモニターの人と対話してなければ。帰ってましたよ、多分」

「へぇ~、そうだったんですか」

 

これもまぁ、めぐりあわせなのかもしれない。

 

・・・家族には、会いたいけどね


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