氷雪の魔王と愉快な帝具使い達の話   作:椿リンカ

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社員1「おっ、今回からもうちょっと話が進むのか」
社員3「そもそもあと1か月で話が済むんですかね」
社員2「お前らメタ的な会話やめろよ」
ロッドバルト「さて、サブタイトルから分かるように皇帝陛下が出ますよ」
社員4「最終回ぐらい朕も本編に・・・」
ロッドバルト「出ると思いますか?」
社員4「夢ぐらい見せろコラァァァ!!」
ロッドバルト「そうそう、今回は皇帝陛下についての独自解釈があります」
社員1「独自解釈・・・?」
ロッドバルト「ぶっちゃけ皇帝の名前が分からないための措置です」
社員3「すごく・・・メタですね・・・」


皇帝陛下の決意

 

「ふふふふ・・・寝起きのタツミもかわいらしいな」

 

早朝からエスデスの機嫌はほぼ100%で良かった。寝直した時からタツミをホールドオンした上に朝からタツミの寝顔を間近で見ることができた。そのうえ、寝ぼけたタツミの一挙一動があまりに可愛らしくて胸の高鳴りが収まらない始末である。

 

朝食も隣でタツミに食べさせることを達成したエスデスはまさに幸福を味わっていた。

なお、タツミが朝から眠そうにしていたため、エスデスを警戒しなかったからできたことであるとここに記しておこう。

 

「エスデス将軍がこんなにも年相応になるとは思わなかった・・・」

 

皇帝は身なりを整えながら、今のエスデスの態度に驚くと同時に引いているようだ。

最も、皇帝自身がループし続けていたのにも関わらず・・・エスデスの恋愛モードを見たことが無かったというのも要因の一つだろう。

 

「エスデスのやつ、本当にいつもあれならいいんだけどな」

「シュラさんの意見が少し分かる気がします・・・けど、一応私の弟がその対象ですし、なるべく控えてもらいたいですね」

「あぁ?いいだろ別に」

「12,13歳の少女が7歳の少年に手を出しているのは健全だと思うんですか?」

「あっ、そりゃ無理だわ」

 

シュラと露子はそんな会話をしながら身支度を整えたらしい。

朝食も食べ終わった彼らは一度外に出て、朝日を浴びる。少しばかり寒い気もするが、山奥の田舎の村だから仕方ないだろう。

 

「ねーちゃん!いっしょにあそぼう!」

「いいよ」

「シュラおにいちゃんもいっしょにあそぼう!」

「おう」

「えぇっと・・・こーていへーか、だっけか?いっしょにあそぶか?」

「そうだな。余も一緒に楽しむか」

「・・・エ、エスデスねーちゃんもあそぶ?」

「タツミ、なんでそこで露子の後ろに隠れながら聞くんだ。他の奴らには普通に聞いていただろう、なぜそんな怯えた小動物のようになっている」

 

もちろんあなたが怖いからです。

・・・なんてことを露子もシュラも、皇帝ですら思ったがぐっと堪えた。

 

「しかしせっかくのタツミの誘いだが・・・私はこれからお前の両親と村人に交渉せねばならないからな。一緒に遊べなくてすまない」

「よかったー」

「おいタツミ、なんで良かったんだ!私がいないんだぞ!」

「エスデスねーちゃん、こわいもん」

 

無垢な少年の一言にエスデスは数秒間停止した。まるで心臓の鼓動すら止まったかのような雰囲気である。

 

「ふ、ふふふ・・・かまわない。今は仮にそうでも私がタツミを自分色に染めるんだからな。どんなに拒絶されてもかまわないぞ、そんなもの繰り返し過ぎて慣れたからな」

 

ドSのメンタルはどうやら強いらしい

この場合は恋する乙女のメンタルだろうか?ただ少しダメージは負ったらしい。

これがギャグマンガなら確実に吐血していたであろう心のダメージだ。

 

「いや待て、慣れてるってどういうことだよ」

「大体タツミさんと敵対したりしましたからね・・・マインさんやチェルシーさんと付き合ってたこともありますし・・・」

「他に女がいれば諦めないか?」

「諦めないのがエスデス将軍です。略奪愛も良いみたいですし」

「まじかよ最低だな」

「シュラさんも大概だと思うんですが・・・」

「はぁ?俺はエスデスよりマシだろ?」

「・・・失礼を承知でいいますが、それって本気で言ってるんですか?」

「当たり前だろ」

「即答なんですね・・・」

 

シュラと露子の会話を傍目に、タツミは皇帝へと近寄った。

皇帝の服の袖を掴んで、何かを言いたそうにしている。皇帝はすぐにしゃがみこんで、タツミと同じ目線で「どうした?」と話しかける。

 

「なぁなぁ、こーていへーかってなまえなのか?」

「いや、違うぞ。皇帝というのは名前じゃないが・・・」

「じゃあ、なまえは?」

「・・・すまないな。皇帝であると、自分の名前を名乗ることが出来ないのだ」

 

この帝国の皇帝は、皇帝の座に就いた時から人としての名前を名乗ることを控えるようになる。と、いうのも皇帝は帝国の民の上に立つ者であり、民と同じような名前を公で晒すことを長年忌避していたからだ。

・・・一種の信仰、と言えばいいのだろうか

 

「・・・?」

「自分の名前をあまり言ってはいけないんだ」

「なんでだ?」

「・・・そういう決まりなんだ。すまない」

「へんなの。ともだちのなまえがわかんないと、よぶときこまるのに」

「・・・友達?」

「うん!ねーちゃんのともだちだから、おれともともだちだろ?」

 

屈託のないタツミの笑顔とその言葉に皇帝は呆気にとられた。

友達、という概念は書物を読んで知っていた。

けれども自分は・・・そう、次期皇帝として生まれ育てられ、皇帝として生きて死んだ。だからそういう、対等な存在は彼にはいなかった。

・・・そもそも、自分に手に入ると思ってなかった。

 

「・・・友達、なのか」

「ともだちだぜ。あ、じゃあな、じゃあな、おれのともだちもよんで、いっしょにあそぼうぜ!」

「・・・あぁ、そうだな」

 

きっと皇帝という存在を理解していないから、そういったことも言えたのだろう。

成長して理解してしまえば、対等でなくなるかもしれない。

 

・・・けれども、仮にそうなったとしても、今この瞬間、そういってもらえたのが何より嬉しかった。

 

 

 

 

「露子、シュラ、少し話がある。あとでエスデスにも伝えることだ」

 

タツミが友達を呼びに、エスデスがタツミの両親と村人相手にタツミを引き渡すように交渉しに行っている間に皇帝は露子とシュラに自分のことを話した。

 

ループをしていた記憶があること

自分の中に始皇帝がいること

 

そして・・・

 

「余はこの帝国を民たちに渡したいと思っている」

 

帝位を廃して、新しい国へとすることだ

 

「・・・陛下さんよ、それは本気で言ってんのか?」

「あぁ、何度も繰り返して、似たような間違いをしてきた余に国を治める資格はないだろう」

「ですが、その・・・いいんですか?今の世界なら、きっと良い皇帝になれます」

「もしかしたらそうかもしれない。けれど・・・この国の民たちが幸せに暮らせるならば、より良い政治の仕方もあるだろう」

 

ロッドバルトに言われ、自分とよく似た人物が始皇帝であると知らされ、彼はずっと考えていた。

自分自身がどう生きるのか、このままでいいのか、と・・・

 

「そりゃあ無責任ってもんじゃねぇのか?」

「・・・シュラは手厳しいな。確かに、無責任極まりないと思っている」

「・・・」

「だが、こうして未熟な余が国を治めることも無責任であったと思っている。今も始皇帝の存在が無ければ、またオネストや周りの者たちに依存してしまっていただろう」

 

どんなに繰り返してきたとしても、「今度こそは」と皇帝は信じてしまう。

それは善行でもあるし、悪癖と捉えられても仕方ないかもしれない。

人としてはそれは善人だろうが、人の上に立つ者としては・・・賛否が分かれてしまうことだ。

 

「じゃあ、その・・・本当に帝位を・・・」

「露子、そんな心配そうな顔をするな。少しずつ新しい国のための基盤を作ってから、余は帝位を廃するだけだ。まだまだ時間が掛かるし、きっと大臣たちにも反対されるだろう。それでも余は民たちが求める幸せに、今の国のままではいけないと思っている」

 

皇帝はそう答えながら、少し恥ずかしそうに露子とシュラへと話しかける。

 

「余が皇帝を退いたら、一緒に世界を旅してみないか?」

「は?」

「えっ・・・?」

「ずっと宮殿にいて、知らないことが多かった。だが、こうして露子についてきて、民たちの暮らしを間近に見たり、触れるのが楽しかった。もっと余は、この世界を見てみたいんだ」

「・・・」

「陛下・・・」

「約束、してくれるか?」

 

 

皇帝が露子に手を差し伸べようとしたその瞬間、頭上から何かが聞こえてきた。

 

「・・・ん?この声は」

「すごい既視感が」

「・・・?」

 

 

「露子さん!!!!見つけましたよ!!!!!」

 

 

 

そう、危険種に乗ったオネスト大臣と、疲れ切った顔をしたナジェンダとゴズキが現れた。

 

 




社員2「今回すごいボリュームあるよな」
社員1「1.5倍?」
ロッドバルト「さぁ、次回は修羅場ですよ!」
社員3「求めてません」
社員4「修羅場って・・・朕はそういうのは求めてないアル」
社員2「そんじゃあ、読者のみんなは次をお楽しみにってところか」

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