氷雪の魔王と愉快な帝具使い達の話   作:椿リンカ

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ロッドバルト「パンパカパーン!」
社員1「うわっ、な、なんだよ・・・」
ロッドバルト「なんとこの連載、1周年過ぎてました!」
社員2「えっ?・・・あぁ、そういえば」
社員3「時間の流れは速いですね」
社員4「でももう最終章アルよ・・・朕の出番がなくなる・・・」
ロッドバルト「今回は外伝です。時系列的には始皇帝が皇帝陛下に身バレした後から、皇帝陛下が露子の家出に便乗するまでの間ですね」


外伝:皇帝陛下と悪魔の話

皇帝は現在、精神世界にある椅子に緊張した面持ちで座っていた。目の前にいるのはいつも一緒にいた存在(始皇帝)ではなく・・・初めてみる、銀髪片翼の男である。

彼は皇帝の緊張した様子を楽しんでいるのか、小さく微笑んでアールグレイを一口飲んだ。

 

「初めまして、株式会社レイクオブスワン社長のロッドバルトと申します」

「・・・余は、この帝国の皇帝、だ・・・」

「そんなに緊張しないでください。始皇帝から事情は聞いていると伺いましたよ?私がすべての発端であることも、露子さんのことも全部ね。ループを繰り返したのも、そもそも露子さんがこちらの世界に来ることになったのも私の会社の仕事のせいだと」

「・・・」

 

ロッドバルトの言葉に皇帝は言葉につまった。

彼は物怖じすることもなく悪びれることもなくにこやかに皇帝に対して話しかけた。

 

「まだ理解に追いつかないが、その・・・お前は本当に、悪魔なんだな?」

「えぇ、こう見えてかなり有名な悪魔ですよ。もっとも、あなたのいる世界では無名ですがね」

「その角や羽も本物・・・なのか?」

「えぇ、もちろん。自前の角と黒翼です。まぁ、今では翼は片翼しかありませんが・・・」

 

触ってみますか、とロッドバルトは皇帝に笑いかけた。

しかし皇帝はぎこちなく遠慮する・・・それもそうだろう。悪魔といえば人間を陥れる存在として語られている。

このロッドバルトも物腰は穏やかではあるが、異世界の人間に契約を持ち掛けて異世界トリップや数え切れぬループを引き起こした原因でもある。

カリスマ性があるとはいえ、幼い皇帝からすれば恐ろしい存在に見えても仕方がない。

 

エスデス将軍やブドー将軍の威圧感とは違う、明らかに人間とは違う恐ろしさ、畏怖。そういったものを感じる

 

「・・・余には、わからぬ。何故お前はそのようなことをして、余の住む帝国を・・・この世界を混乱させたのだ」

「私ではないですよ。あくまで私は仕事として、異世界の人間に営業しているだけです。」

「だからなぜ、そんなことを・・・」

「需要と供給、ですね」

 

戸惑う皇帝にあっけらかんとロッドバルトは答えた。

その言葉の意味が分からない皇帝はじっとロッドバルトを見つめた。

 

「自分が愛した世界の歴史を変えたい、自分の愛した誰かの命を守りたい、そう思っている人間の需要があるからこそ、お金になると思って会社を設立しました。いわゆる、需要があるからこそ、供給を満たしたわけです。原理自体は人間社会と大差はありません」

 

「・・・必要とする人間がいたから、なのか?」

 

「えぇ。始皇帝から聞いているんでしょう?あなたの住む世界は、別の世界では娯楽作品として愛されていると」

 

その言葉に皇帝は答えない。答えられるはずもないが、ロッドバルトはその沈黙を肯定の意味だと受け取って話を続けることにした。

 

「貴方のことを救いたいと思う人間がいました、エスデス将軍に恋する人間がいました、ナイトレイドの力になりたいと思う人間がいました、イェーガーズと穏やかな日常を送りたいと願う人間がいました、この世界の悪人を断罪したいと決意した人間がいました、かわいらしい女性たちに好かれたいと欲望を持った人間がいました、誰にも負けない圧倒的な力を欲した人間がいました、憧れの人物と仲良くしたいと思う人間がいました、気に入らない相手を倒したいと思う人間がいました、自分の主張が正しいと論破したいから行きたいと望んだ人間がいました」

 

「・・・・・・」

 

「その誰もが根底にある気持ち・・・この醜くて美しい世界を好きになったからです。どうしようもなく愛したから、私の言葉に乗ってやってきたんです」

 

「・・・愛したから、か・・・わからないな。余には、全然」

 

ロッドバルトの言葉に苦笑いをしながら皇帝は小さく答えた。

しかしロッドバルトはすぐにその言葉に反応した

 

「わからないわけがありません。だって貴方も人間ではありませんか」

「・・・」

「皇帝という宿命、というか職業ですかね。そういったものの前に貴方だって一人の人間です。誰かを好きになったり嫌いになったり泣いたり笑ったり怒る、ただの人間ではありませんか」

 

ロッドバルトのその言葉は、皇帝にとっては衝撃だった。

だって彼はそんな言葉を・・・誰からも言われたことが無かったのだから。

 

「貴方も露子さんも、ついでにオネスト大臣とシュラさんも似たようなものですね。自分のことをかっこつけるところが、実に似てる」

 

面白そうに笑いながら、ロッドバルトは更に続けた。

 

「いっそ開き直ってみればどうでしょうか?」

「開き直る・・・?」

「えぇ、もういっそ自分の好きなように生きてみればいいじゃないですか。もうあなたは十分に役目を果たしてます。帝国も1000年続けば人間の歴史の中じゃあ大したもんなんですからね」

「・・・それでは余はどうすればいいんだ。余は、立派な皇帝として生きなければならない。それしか、選べないのに」

「そんなことありませんよ。人間その気になればなんでもやれますし、なんでもできます。・・・ただの人間の王子が・・・悪魔だって倒せるんですから」

 

ロッドバルトの苦笑交じりの言葉に皇帝は言葉を返せず、黙ってしまう。

立派な皇帝になるという選択肢・・・それ以外が自分にもあるということに戸惑っていた。

 

「まぁ、今は悩めばいいですよ。人間は迷い惑って答えを選ぶのが仕事です」

「・・・」

「さて、私はそろそろ帰りますね。始皇帝とこれからどうするべきか、相談するように」

 

皇帝にそう言い残して、彼は部屋の扉を開けて出て行ったしまった。

 

 

「・・・これから、か」

 

 

ぽつりと、皇帝が呟いた

 




社員4「社長!朕は思ったアル」
ロッドバルト「なんですか?皇帝陛下に対する態度ですか?」
社員4「社長って銀髪で黒い片翼って完全にFF7のセフィロスみたいでキャラ被りしてるアルネ!!!」
ロッドバルト「冬のボーナス全カットですね」
社員4「ウワアアアアアアアアアアア!!!!!!」

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