氷雪の魔王と愉快な帝具使い達の話   作:椿リンカ

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社員4「嫌アルなぁ・・・」
社員3「鬱展開は無いと信じたいですね」
社員2「いや、ま、ほらコメディっつってたし」
社員1「でもあいつ悪魔なんだけど、めっちゃ嘘八百並び立てそうなんだけど」
ロッドバルト「社長をあいつ扱いとは酷いですね。減給1か月です」
社員1「理不尽すぎるだろ!!!」
ロッドバルト「茶番はともかく、後篇でも見ましょうかね」


オネスト大臣と露子の昼下がり 後篇

露子はいきなりのオネスト大臣の言葉に面食らった。

そしてすぐさま、彼が記憶保持者であったのだと思い至り、背筋が凍った。恐れていた事態が起きたのだから仕方ないだろうが・・・

 

オネスト大臣は露子の様子に気が付いてすぐに弁明することにした。

ここでいきなり攻撃されたらたまったものではないからだ。

 

「怖がらないでください。別にあなたに恨みはありませんし、殺す気もありません」

「・・・わ、わかり、まし、た」

 

息が荒くなりそうなのを必死に整えて、露子はオネスト大臣を見上げる。

 

「私と取引をして頂きたくて、この度隠していたことを話そうかと・・・」

「か、くしてたって・・・その、記憶のこと、ですか?」

「えぇ。本来ならば言うつもりはありませんでした。しかしながら・・・思っていたよりも貴方のことを好いていると気が付いたのでね」

オネスト大臣の言葉に露子は一瞬、虚を突かれた。

「私はですね、今まで愛情なんて他人に向けたことがありませんでした。貴方が初めてなんですよ?」

「・・・あのっ、その、でも・・・今までそんな、こと」

「繰り返してきた中ではありませんでしたねぇ。今の自分が、今の貴方を好きになったんですよ」

 

オネスト大臣が飄々と露子に返答するが、露子の表情は戸惑いと恐怖だけしかなかった。

そりゃそうだろう。

“あの”オネスト大臣の言葉なのだから、素直に信用することは難しい。

 

「・・・貴方の能力は確かに認めています。是非とも利用したいですし、貴方と結婚してできた子供を手駒にしたいとも思ってます」

「!」

「ですが貴方のことを愛しているのも本当です。誰にも奪われたくありません。それがたとえ皇帝陛下だとしても、私は貴方を渡す気はありません。逆賊になってしまってもいいぐらいには」

 

オネストの言葉に露子は何も答えない。いや、答えることができない。

信用できるかどうかはともかく、こうしてオネストが自分へ向けている言葉を全否定することが躊躇われたのだ。

 

「・・・大臣、なんで、私に・・・記憶のこと・・・」

「好きだから。これだけです。本当ならば隠し通したいことだらけでしたよ。子供を利用したいだのなんだの、貴方のような甘い考えの持ち主は嫌いでしょう?」

「・・・甘く無くても、子供を利用するのは・・・」

「悪いこと、だと言うんでしょう?そうやって否定されるから秘密にしていたんです。まぁ、貴方の考えは悉く甘すぎて温すぎるんです」

「・・・・・・」

「それでも私は、自分の欲望を全部曝け出したうえで本当に貴方に選んでもらいたいから、こうして話したんですよ」

 

信用できる発言か否か、彼女は迷ってしまっていた。

これも全て自分を信用させるためなのかもしれない・・・けれど、信じてもいいんじゃないかと思う気持ちもあるのだ。好意を受け入れるかどうかは別としても、だが。

 

「・・・・・・分かり、ました。お話したことが、本当かどうかはともかく、記憶があることなどを教えてくださって、ありがとうございます。それで、取引っていうのは・・・」

「簡単なことです。私のことだけを愛してくださるならば、帝国を支配することも皇帝陛下を傀儡にすることも全て諦めます」

「えっ?」

 

何か後ろ暗いことを取引するのかと思っていた露子であったが、大臣の発言に驚愕してしまった。

驚愕というか、半ば混乱しているのだろう。

怯えていたことも忘れたかのように大臣の目を見て「何言ってるんですか!?」と慌てて問いかける。

 

「取引ですよ。私のことだけを愛してくださるならば、自分のやりたいことはこの際二の次にします。」

「あ、あ、あの、そういうことじゃなくて!」

「貴方みたいな人は他人につい甘くするでしょう?・・・今までは大目に見ていました。しかし、もしもあなたが私以外の誰かを愛するなんてことになったらと考えたら恐ろしく思いました。」

「違うそうじゃなくて!あの!え?本気で言ってるんですか!?」

「本気じゃなければこんなこと言いません。まったく・・・こんな取引なんてしたくありませんが、貴方が誰かに奪われることを考えたら・・・」

 

そう言いながら、オネストは露子を抱き上げてベッドへと押し倒した。

 

「私のものになってください、露子さん」

「えっ・・・あ・・・」

「早く言ってくれなければ、このまま既成事実を作ってしまいますよ」

 

取引とは名ばかりの、脅迫まがいの行為に露子は反論しようとしたがその前に「分かっていますよ」とオネストが冷たく言い放つ

 

「取引というよりも脅迫ですね。いえ、というよりも嫉妬ですよ。たとえ陛下だろうと、他の男と仲良くされて嫉妬してるんです。だから、絶対に、私のものになってほしいんですよ」

「やっ、やめて、ください。そんな、いきなり・・・言われても」

「無理です。今決めてください・・・私のものになると。言わないならいいですよ。このまま犯して既成事実を作れば誰も手出ししませんからね」

 

露子が着ている服を破き、更に脅しをかけてくる。

 

「ッ!?」

「さぁ、ほら、早く言ってください」

「そ、んな、の・・・」

「・・・強情ですね」

 

そのまま自分へと口付けようとする大臣に対して、露子の許容範囲を超えてしまった。

 

 

 

その数瞬後、大臣の悲鳴が部屋に響き、露子がドアを氷雪で壊して部屋から飛び出してくる。

部屋の前で警護していたエスデスは間一髪で交わし、露子へと視線を向ける。

「おい、露子」

「う・・・あ・・・」

露子の姿と表情を見て、エスデスも具体的に何があったのか察したのだろう。

「・・・露子、お前」

「・・・っう、ぁ・・・っひっく・・・」

溜息を吐いて、エスデスが露子に近づいて抱き寄せた。

 

「まったく、メンタルが弱いなお前は」

「っあ・・・」

「しかしまぁ、大臣も急いたものだ・・・少し灸をすえたいな」

「・・・ひっく・・・」

「露子、実家に戻るか?」

「・・・・・・え?・・・じっか?」

「そうだ。里帰りして大臣を困らせてやれ。多少の意趣返しを覚えるべきだぞ」

「・・・・・・」

「私が一緒にいてやる。こういう時ぐらいは他人を頼っても構わん・・・私は困ることが無いからな。」

 

そう答えてしっかりと露子を抱き寄せて、実家に戻るという選択肢をエスデスは提示した。

静かに泣いていた露子も小さく頷いて、その提案を了承する。

 

エスデスの優しさに触れていると露子は安心して身を預けていた。

 

 

「(露子は騙しやすくて助かる)」

 

・・・タツミに会いたいという目的が達成できると、エスデスが笑っていることにも気が付かずに

 

 




社員1「最後おおおおおおおおおお!!!」
社員2「タツミ逃げろおおおおおおお!!!」
社員3「弱みに付け込んでいく姿、嫌いじゃないですね」
社員4「それはともかく、大臣最低アルな」
社員1「っつかさー、なんでここって俺らの独壇場なんだっけ」
社員2「そりゃああれだろ、中の奴のくだらねぇ前書きや後書きよかマシだからだろ」
社員3「メタな会話ですよねぇ・・・まぁ、上手いこと言えない中の人のことを考えれば、我々が担当したほうが間が持ちますよね」
社員4「そうアル」
ロッドバルト「そもそも前書きや後書きが無いほうがいいと思いますがね」
社員1「やめろよおおおおお!!!俺達だって出番が欲しいんだよおおおおお!!!」


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