社員2「ってか、前回から報告が遅くなってねーか?」
社員3「仕方ありません。まぁ、いいじゃないですか」
社員4「別に急かされてるわけでもないアルし」
ロッドバルト「いえいえ、最終章の準備をしていたので」
社員1「・・・えっ」
ロッドバルト「まぁ、10歳時の露子さんの話、ですがね」
社員2「完結しないよなっ!?」
ロッドバルト「未定です。10歳の露子さんの話が終わって、何か思いつけばまだエピソードがあれば増えるかもしれません」
オネスト大臣と露子の昼下がり 前篇
暑い日差しが照りつけ、草木が生い茂る。そう、帝国にも夏がやってきたのだ。
今日も今日とて露子が引き取った子供たちはそれぞれの師の元で特訓に励む者、仕事に慣れ始める者もいた。なにより、ゴズキが面倒を見始めた子供たちは特に戦闘技術面の素質が高く、彼も指導に力を入れているようだ。
そんな暑い中、露子は宮殿の者達のために「氷雪」の力を使ってかき氷を作っていた。
削っているのはスサノオであり、生物帝具のため疲れ知らずで働いている。
手伝っているクロメとアカメは仲良くかき氷のシロップをかけているようだ。
「本当に変わったやつだな」
エスデスはそんなことを言いながらレモンシロップの掛かったかき氷を食べていた。
「いいじゃないか。お前も混ざってきたらどうだ?」
「ナジェンダ、冗談をいうな。私のこのデモンズエキスの力は敵を蹂躙するためのものだ。かき氷を作るために使うなんて馬鹿げている」
いちごシロップの掛かったかき氷を食べているナジェンダをエスデスはジト目で見るが、ナジェンダは意に反さずにかき氷をひたすら食べていた。
「・・・この世界でぐらい、戦うことを忘れたらどうだ」
「それは無理だな。戦うことこそが生きること・・・それが私の生き方だ。100万回繰り返してきた今でもそれは変わらない。生き方を曲げるほど私も甘くなっては無い」
「今の帝国は異民族ぐらいしか敵がいないぞ?今までのように革命軍もいないこの世界で、どうやって生きるというんだ」
「なに、敵を蹂躙するならば超級危険種もいるだろう?ふふふっ、世界にはまだそういう危険種もいるそうだからな。有休でもとってそのうち狩りにいくさ」
そんな会話を彼女たちがしているのを露子は遠くから眺めていた。
なんだかんだで仲良くしているようで良かった・・・と、安心する露子。今まで彼女たちはほとんど敵対ばかりしていたけれど、やはり平和な世の中なら良い友人になれるようだ。
そう思いながら、かき氷のおかわり分を作っていく
「露子」
ふと、声が聞こえた。
視線を移すと皇帝陛下がいた。いつもと違ってマントと帽子は被っていないようだ。公務の休憩時間なのだろうか、御付きの兵士もいないようだ。
「その、余も食べて良いのか・・・?」
公務の時と違い、やはりプライベートは年相応に見える仕草や言葉遣いをする。
・・・公務の時の皇帝陛下は、貫録がありすぎる気がする。露子はそんな違和感を持っていたが、それもシュテン達の状態異常と同じようなものだろうと思って黙っていた。
「大丈夫ですよ」
「そ、そうなのか・・・その、それで」
「?」
「・・・余と一緒に、食べてくれぬか?」
「いいですよ?」
少しだけ頬を赤らめて尋ねる皇帝陛下ににこりと微笑む露子。
すぐにスサノオにかき氷を作ってもらい、2人で仲良くかき氷を食べ始める。
「その、公務が忙しくて、たまに一緒に紅茶を飲むだけだが・・・こういうのも、いいな」
「喜んでもらえて良かったです。ここのところ暑くなりましたし・・・あの、陛下も・・・気軽に、その、他の子たちと遊んでもいいと思います」
「・・・余が、遊んでも良いのか?」
「いいと思いますよ。その、みんなで遊んだりしたほうが楽しいですし」
にこりと笑う露子に、皇帝陛下は遠慮がちに微笑み返した
「・・・相変わらず優しいな、露子は」
「え?」
「・・・あっ、いや、その・・・いつも露子は優しいという意味で、その」
「ありがとうございます・・・?」
“相変わらず”という言葉に違和感を覚える露子であったが、すぐに気のせいだと思い直した。
その様子を宮殿のある部屋の窓からオネスト大臣は眺めていた。
オネスト大臣の警護にあたっていたゴズキは黙ってそれを見ていた。殺気にも近い、いやこの場合は嫉妬だろうか?
「(大人げねぇなぁ・・・皇帝陛下っつってもガキ同士だろ・・・)」
「・・・」
「あのー、大臣。どうせなら俺たちもかき氷を食べに行きませんか?」
「・・・いえ、それよりも露子さんを私の部屋に呼んでください」
「そりゃあいいですけど・・・」
「後、私室の護衛は要りません。代わりにエスデス将軍を部屋の入口に。いいですね」
「・・・了解しました」
オネストはそのまま私室へと戻っていく。ゴズキは嫌な予感を感じながらも露子を呼びにいくことにした。
大臣は生まれてこのかた、嫉妬をしたことが無かった。
チャンプやシュテンのように露子をちやほやするペドフェリアやロリコンに対しては対抗心が生まれていたのであって、彼らに嫉妬したことは一切ない
シュラやゴズキについても同じことが言える。
要するに彼らに嫉妬するほど、彼らを恋敵として認識していないのだ。
・・・どうせ、自分のほうが地位は上で立場も上だという驕りがあるからだ。
だが、皇帝陛下と仲良くしている露子を見た瞬間、今まで経験したことの無い感情が湧いた。
腸が煮えくりかえる様な、そう、今すぐにでも立場を忘れて撃ち殺したくなるような気持ちをオネストは抱いていた。
だが、相手は皇帝陛下だ。そんなことはできない
・・・もしも、もしもの話だが、皇帝陛下が露子を気に入ったらどうなる?
露子の能力も、露子の母体としての価値も、そして露子自身も全部諦めることになる
そう思い至った時、ついに彼は決心した。
オネスト大臣に部屋に呼ばれ、部屋の前にエスデスを残して露子は私室へと入室する。
オネストは開口一番、露子に対してこう言った
「露子さん、いえ、氷雪の魔王。私と取引しましょう」
社員1「アイエエエエエ!!?」
社員2「あのこれ、シリアス?シリアスなの?」
社員3「嫌な予感しかしませんね」
ロッドバルト「忘れてはいけません、これの本質はコメディです。つまり・・・」
社員4「つまり?」
ロッドバルト「これはただの前座です」
社員1「信じていいのか!?」
ロッドバルト「信じる者は救われますよ」