氷雪の魔王と愉快な帝具使い達の話   作:椿リンカ

1 / 42
チート無双などを否定しているわけではありません。

こういう変な子もいたほうが面白そうだなと思って書きました。メアリー・スーになるかと思いきや、予想以上に思考がぶっ飛んでるモブだった。ここまでやるってお前・・・お前・・・と執筆した作者が引いてます。

別場所で投稿している「無力なモブがそばにいるだけ」というコンセプトのシリーズの番外編のため、こちらにも投稿させていただきました。

短編小説として書きましたが、気が向けば「ボーナスステージ」とやらを連載するかもしれません。その時は「先生」とかじゃなくてちゃんとした名前を考えたいです。


原点編
モブが最終的に悪役になって100万回繰り返してみんなを生存させる話


【ある女の独白】

 

オリジナルでも二次創作でも夢小説・・・それらの物語群で1つのジャンルとして確立しているもの・・・転生やトリップ、憑依といったもの。

 

ありがちな異世界転生や異世界トリップなんてものは、ほとんどが作者の自己満足だと思ってる。この私だってそうだ。自分が満足して書きたいから、色んな物語や、二次創作や夢小説ならIFの世界を妄想する。

 

ハーレムにしたり、ちやほやされたり、戦いで無双したり・・・

 

誰だって、主人公になりたい、誰かのために何かをしたい・・・そう思って生きている。

 

私だってできることなら、「アカメが斬る!」の世界の人たちを助けたい

全員ひっくるめて、だ

ナイトレイドも、イェーガーズも、羅刹四鬼も、ワイルドハントも、全部まとめて・・・・

 

・・・けど、チート無双したり俺TUEEEは、自分には合わない

 

いや、否定はしないのだ。自分もそういう作品も書いてるし、好きなものを書いているつもりだ

読者もついているし、なによりも私が満足して、楽しく書いている

 

ただ、私は・・・人間の可能性を信じている

 

ただの人間だって、何かできるはずなのだと

 

こんなどうしようもなくクズでノロマで、何の価値もない人間でも誰かを救えると

 

いや、「救う」って言葉自体がおこがましいだろう。

私は何様なんだ・・・

せめて何か、手助けできるなら・・・

 

 

 

私にはきっと・・・主人公なんて、似合わないのだから

 

 

 

 

【ある悪魔との邂逅】

 

パンパカパーン!

 

おめでとうございます!あなたは見事に当社のモニターに選ばれました。

私、株式会社「レイクオブスワン」の社長兼営業担当のロッドバルトと申します。

 

当社ではお客様を異世界へと転生・移動・憑依させることを生業としております。

もちろん、コースによって特典も可能です

現金払い・クレジット・現物取引やローンもできます。

 

ですが!今回、貴方は当社の特別モニターとして選ばれましたのでタダでトリップや転生ができますよ?

 

・・・そんなにうまい話があるはずない?

 

そうですねぇ・・・では、お話ししましょう

 

 

貴方の行く世界は「アカメが斬る!」という・・・こちらの世界では漫画作品になっている、異世界に行っていただきます。

 

実のところ我々は異世界への移動を取り扱っているのですが、安全を兼ねてモニター派遣をしてから当社で取り扱うか、どういったコースを用意するか決めているのです

 

ほら、並行世界ってあるじゃないですか?異世界の中にも並行世界が何百万とありましてね・・・その中の一つを試しに使うのです。それに利用客同士が被った場合の対処がしやすいですからね、並行世界万歳!

 

今回は貴方を含めた100人にぜひとも試していただきたいのです

 

モニターですから特殊な力等もタダで付けれます・・・えっ?それでかまわない、ですか・・・

 

奇特なお方ですね。

もちろん、向こうで死亡したら我々社員がお迎えにあがり、蘇生させてこちらの世界にお戻りできます。

モニターですからね、それぐらいは致しますよ

 

・・・まぁ、お気に召されたら、ぜひともご利用ください

 

それでは、転生・憑依・トリップ・・・どれになさいますか?

 

・・・ふむ、トリップ、ですか。

 

では、このドアを通れば向こうの世界にたどり着きます。

 

・・・では、ゆっくり楽しんでください

 

 

 

【幸せな日常】

 

 

不思議な男の思惑に乗り、私はこの「アカメが斬る!」の世界にトリップしてきた。

モニターが100人いるとは聞いていたが、実際にトリップすると聞いたことない帝具で活躍しているナイトレイドやイェーガーズ、帝国の軍人などがいるようだ

・・・どうやら、私以外は皆・・・原作改変のためになんとか頑張っているらしい

 

私はというと、特典が何もない状態で帝都にやってきた。

最初は清掃婦として雇ってもらい、アルバイトをしながらも、作品を書いて出版社に持ち込みをした

 

内容は桃太郎の現代版アレンジ・・・と、いったところか

東方の昔の物語を下敷きにしたと銘打って、帝都ではそこそこ売れている。

こちらでは東方は未開の地として認識されているし、やはり異国の物語は誰しも興味があるものだ

 

 

 

「あぁ!先生じゃないっすか!」

 

立ち寄った貸本屋でラバック君に声を掛けられた。

エプロン姿がとてもよく似合っているが、これで暗殺稼業をしているのだからすごいものだ

 

「久しぶりですね。元気でしたか?」

「元気だって。この間の新刊!俺も読みましたよ!面白かったです!」

「ありがとうございます・・・あぁ、資料用にこの本とこの本、借りますね」

 

ラバック君は出版社関係で偶々知り合ったのだが、話しやすくて助かっている。

こうして資料を探しやすいように貸本屋に仕入れてくれてもいるし、感謝しても足りないぐらいだ

 

いつかは彼とナジェンダさんをモデルにした恋愛小説でも書いてみようか・・・とは思っている。

 

「いいですよ!あ、レオーネ姉さんも先生に会いたいって言ってました」

「それは・・・また肩こりが酷くなったら行きますね。それじゃあ」

「じゃあ先生!また!」

 

 

 

 

貸し本屋でラバック君と分かれて、行きつけのカフェへと赴いた。

静かな雰囲気で、ここのベリータルトはとてもおいしいのでよく利用しているのだ。

 

「ん?あぁ、先生か」

 

どうやら先客・・・エスデス将軍と三獣士がいたらしい

今日は休日なのか、彼らも私服姿でこのカフェ自慢のベリータルトとハーブティーを頂いていた。エスデス将軍はなんだかんだで身内には甘いのだ。

 

いつもは見かける・・・他のモニターがいないところを見ると、どうやら仕事が入っているか、原作改変のために動いているらしい

 

「よぉ!先生さんも元気そうだな」

「先生!ねぇねぇ、次はどんな話なの?」

「ニャウ、次の楽しみが無くなるだろう」

「皆さんも休日を楽しんでいるようですね・・・新作も来月あたりには出版できますから、楽しみにしてください」

「そうか・・・芸術的なことはよくわからんが、お前の書いている物語は好きだぞ」

 

エスデス将軍や三獣士の方にこう言ってもらえるのは喜ばしい

 

「ありがとうございます」

 

ちょうどいいので、皆さんに混じって午後の一時を楽しんだ

何万人と殺してきたことは知っているけれど、それでも普段の彼らは好感が持てるところもあるのだ

 

 

 

カフェから出てきて、少し歩いていると声を掛けられた。

 

「先生!」

「あぁ、セリューちゃんか」

 

セリュー・ユビキタス。帝都警備隊所属の・・・将来、イェーガーズに入る子である。

同い年ぐらいだったが、その笑顔は10代女子を思わせる輝かしいものだ

 

「先生、今日は買い物ですか?」

「あぁ、今から宮殿に用事があってね・・・セリューちゃんはパトロール?」

「はい!あの、また先生の新作読みました!面白かったです!」

「ありがとう」

「やっぱり、正義は悪に勝つんですね!今回の話もとてもよかったですよ!」

「あはは・・・」

 

接してみてわかるが、彼女は純粋なんだと思う

あまりにも純粋すぎる水のようで・・・魚や生き物が棲めないぐらいに清いのだ。

そりゃあまぁ・・・多少は濁ることも覚えないと、歪むのだろうな

 

とはいえ、私ほど濁ってしまうのも考え物だと思うが

 

基本的にセリューちゃんは悪い子ではないのだ

むしろ普通に付き合う分には良い友人にもなれるだろう

 

「では、これからまたパトロールがありますので」

「あぁ、じゃあねセリューちゃん」

 

 

 

セリューちゃんと分かれて、私はすぐに宮殿へと向かった。

いつもの門番の方に挨拶して、研究室へと向かう

 

「スタイリッシュさん、こんにちは」

「あら、遅かったじゃないの・・・今からコーヒー入れるから、そこに座りなさい」

「はい」

 

Dr.スタイリッシュは私が書いている作品の一部・・・まぁ、ようするにBL作品の大ファンだったりする。

どうやら帝都ではあまり同性愛を扱った作品は無かったらしく、私が趣味で書いたものを編集長が勝手に盗み見てドハマリ、結果的に出版されて・・・一部の方々に大人気となったのだ。

 

スタイリッシュさんとは偶々サイン会で出会い、意気投合した。

というか、私のほうからネタのためにお話を・・・とのことで近づいたのだが

 

「次はどんなものを書くの?年下下剋上攻かしら?」

「実は今度は・・・スタイリッシュさんをモデルに書こうかな、と」

「あら、あたしがモデルに?」

「いつもネタ出しに協力してくださってますから」

「それぐらいいいのよ。もう・・・あんたがイケメンだったらよかったのに」

「私なんて、男になったところで凡人ですよ」

「凡人だなんて・・・そんなに自分を卑下しないの!あんたの悪い癖よ?」

 

そう言いながらもお茶請けを出してくれるあたり、気に入った人間には結構優しいのだと思う。

 

「けど、私のはあくまで、昔語りを下敷きにしたり、設定が物珍しいだけで・・・帝都にはほかに素晴らしい作家さんがたくさんいますよ。私のは何番煎じと言われてもおかしくありません」

「そうかしら?大ヒットとはいかないけど、そこそこは売れてるわけでしょ?」

「でもそれも流行みたいなものですから・・・」

「あんたねぇ・・・まったく。」

 

スタイリッシュさんの言いたいこともわかる。

私はあまりに自分に自信が無い。いや、自信が無い振りをして、それを逃げ道にしてるんだと思う。

なんて自己愛が強くて情けない、汚い人間なんだろう

 

「それじゃあ、そろそろお暇しますね」

「もう帰るの?」

「はい、それじゃあ・・・」

 

そうしてドアを開けようとすると、先にドアが開いた。

 

 

 

「おいスタイリッシュ話が・・・って、先生か」

 

大臣の息子であるシュラさんがいた。

どうやらスタイリッシュさんに用事があるらしい

 

「あら、シュラじゃないの。どうしたの?」

「お前の玩具について聞こうと思ったが・・・先生がいるなら別だな。来いよ」

「えっ、あ、あの」

「ついてこいって。大臣の息子の俺に逆らう気か?」

「あのでもっ、私、今日は買い物とごはんが・・・それにシュラさんに権力があるわけじゃないですよ?か、勝手に名前使ったら、大臣様も困りますよ」

「・・・本当にお前、さらっとそういうこと言えるな。相変わらずすげーなお前」

 

有無を言わせず、腕を引っ張られる。

やっぱり力が無いせいか抵抗できずにそのままついていく形になってしまう

 

シュラさんと知り合ったのは、最初の本が売れた頃のことだ

帝都で少しばかり有名(一過性の流行だとは思うが)になって、私が女だと知ったからか会いに来たのだ。

今思うと、東方未開の地に興味があったから、それを知っている(と思われる)私から話を聞こうと思ったのだろう

 

私はというと・・・まだ原作キャラに未遭遇だったせいで、いきなりの訪問で思考が停止しかけた

 

実際に会ってみると緊張しかないというか、何を喋っていいのか分からなくて大変だったんだ・・・

まぁ、その、つい・・・こう・・・

父親のために努力してるのはすごいとか、父親に愛情を持っているから情が無いわけじゃないと思いますとか、私がシュラさんについて思ってたことや考えてたことを延々と話してしまったというか・・・

 

そのせいか妙に懐かれてしまった

 

いや、玩具として珍しいからかもしれない。とかく興味を持たれたらしい

 

「でも、私、ごはん・・・作らないと・・・」

「飯なら食ってけよ」

「えっ!?そんな悪いですよ!いきなりお邪魔してご飯なんて・・・」

「別に。どうせ親父は皇帝陛下と一緒だし、一人で食ってるよか、先生がいたほうがいい」

「あの、私なんかより、もっと可愛い人とかと・・・シュラさんモテそうですし」

「そりゃまぁ、その気になればいくらでもいるけどよ」

「じゃあなんで・・・」

「東方の話も聞きたいしな、お前と話してるほうが面白い」

 

・・・気を抜いてる時は、表情が幼く見えるな

シュラさんが私よりも年上だなんて思えない・・・あと、ゲス顔しなきゃ基本イケメン。

 

最初の褒め殺しが効いてるのか、それとも私の言動が面白いのか・・・

 

今のところ暴力を振るわれたことが無い

 

というか、ここのところは逆に私の自虐をスタイリッシュさん共々諌めているぐらいだ。

 

「飯だけ食ってけよ」

「あの、いいんですか、その、テーブルマナーとか苦手だしその」

「気にすんなよ。好きに食えばいいだろ」

「でも・・・その、私なんて、一緒に食べてても・・・へ、変な噂がたったら、困りませんか?私みたいなやつとなんて」

「・・・ちったぁ自分に自信持てよ」

「でも、私なんてほんとクズですし、いても、迷惑なんじゃ」

「そんなこと言うやつがいたらさっさと処刑すりゃいいから、お前は気にするなよ」

「・・・」

 

 

 

そのあと、一緒にご飯を食べて、家まで送ってもらった。

こういう時に自分の顔が凡人で助かった。きっと美少女や美女なら襲ってたりしただろうしな・・・

まぁ、凡人だから手も出されずに済んでるんだろう

 

執筆作業に取り掛かりながらも、この日常がずっと続けばいいと願う。

けれどあと1年かそこらで・・・原作軸に入るだろう

そうなればきっと、原作キャラ達も・・・モニターの方々も本格的に動くはず・・・

 

現時点でかなりの数が水面下で活動しているはずだ

 

・・・私はその時になったら、何かできるのだろうか

 

話し合えば、分かってくれるのだろうか

 

 

 

 

【絶望】

 

話し合えば分かってくれる

 

全員を助ける道もあるんじゃないか

 

そう思っていた

 

モニターたちが協力すればできると、そう思っていたのだ

 

だが実際にはどうだ

 

モニター同士の争い、自陣営を救うため、自分の欲望のため、・・・混戦してしまった

 

目の前には、死体ばかりだ

 

ぎりぎりまで、みんな生きていた、生きていたのだ

 

それなのに、どうしてこうなったのだ

 

革命軍が来る直前に、帝都は死の街になってしまった

 

全員死んだ、死んでしまった

 

 

「・・・おい、生きてるのか?」

 

 

ふと、声が聞こえた

 

 

「えっ、あ、シュラ、さん・・・」

 

「死んだかと思ってたが、生きてたか。ひとまず逃げるぞ。宮殿の危険種共が逃げてるからな」

 

いつものように腕を掴んで歩き始める

 

「でもっ、あの、みんなが・・・」

 

「いいから行くぞ」

 

機嫌が悪い・・・というよりも何か怒っているような我慢しているような

あぁ、そういえば、宮殿もほとんど崩れてるし火の手も上がっている

・・・あの様子だと、宮殿にいた人々も・・・

 

つまりは、大臣も

 

「・・・あの」

「・・・」

 

・・・帝国の腐敗は確かにオネスト大臣にも原因はあった。悪人と言えば悪人だし、許されるものではないだろう

だが、腐敗全てがオネスト大臣のせいではない

国が長く続くということはそれだけ腐ってしまう者たちもいるのだ。

それに・・・どれだけ悪人だろうと、いらないならあっさりと捨てるような最低な親でも

・・・目の前の、彼にとっては大事な親だったのだから

 

私は何も言うべきではない

言ってはいけない

 

「大丈夫ですか」「仕方ないですよ」みたいな無責任な言葉を口に出せるほど、私はまだ厚顔無恥ではない

 

 

 

ふと、帝都の門の前に誰か立っていた

 

その姿は間違いない、タツミ君だ

 

初めて見ても分かるが、そうか、この子が帝都に来る前に全部・・・全部終わってしまったのか

 

「・・・なんだお前」

「あ、あの・・・」

 

「・・・」

 

タツミ君は・・・無表情で立っていた。

おかしい、原作の彼は喜怒哀楽がはっきりしている。こんなことになっていれば誰かを助けようとしたりするんじゃないだろうか

 

違和感を覚えた、次の瞬間

 

「ッ・・・!?」

 

私の腕を掴んでいたシュラさんの手が、離れた

 

どさり、と体が崩れ落ちて地面を真っ赤に濡らし始めた

 

目の前に返り血のついたタツミ君が・・・タツミ君の振りをした誰かが嬉しそうに笑った

 

「あーあ、折角タダでモニターになったのにな。まぁ、これでゲス野郎は始末できたからいいか」

 

「・・・同じ、モニター・・・?」

 

「ん?なんだよ、あんたこのクズ野郎の女かと思ったらモニターか。無理やり連れてこられたんだろ?可哀相にな」

 

「ち、ちがっ・・・」

 

まさか憑依型のモニターだったとは思わなかった。

いや、その前にできる限り治療しないといけない。怪我だらけではあるが、なんとか治療できれば・・・

 

「ん?なんで助けるんだよ。そいつクズじゃん」

 

「で、でも、殺さなくても」

 

「あー?ボルスさん一家殺したりしてんじゃん。ワイルドハント全員胸糞悪いクズばっかだし、生きてる価値もないだろ。殺したほうが世のためってやつだ」

 

「そんな、こと」

 

「死んだほうがいいんだよ、さっさとぶち殺したほうが世の中のためだしな。つっても、もうこの感じじゃ他の奴らがやっちまった後かー、しゃーないな、次の世界で金払って無双すっか」

 

「・・・」

 

「お前もそいつなんか捨てろって。クズ助けたところで意味ないじゃんか。そんな奴は死んだほうがいいんだってば。それとも何?惚れてんの?男の趣味悪いなー」

 

「・・・」

 

「まだ生きてるならさっさと俺が殺してやるから、どけよ」

 

「・・・」

 

 

誰しもそれぞれ理由はある

 

原作のキャラ達も、モニターにだって、何かを守りたいとか、何かを成し遂げたい、そういうものがあると思う

 

それは否定されるべきではない

 

誰だって幸せになりたいのだ

 

誰かを幸せにしたいと思っている人もいる

 

でも、どこかで折り合いをつけないと、何かを犠牲にしないといけない

 

全員を幸せにするには

 

そうか、それならば

 

 

 

 

【ある悪魔との契約】

 

・・・お疲れ様でございます。いかがでしたか?

 

えぇ、モニターの皆様は継続して再チャレンジするご予定だとか

 

貴方様は・・・最後まで、もう一人の方共々生き残ったあなたはどうする気ですか?

 

・・・えっ?

 

モニターたち全員同じ世界線に設定しろ?

 

ど、どうしたんですか?いきなり、大体それは他のモニターにも許可を・・・

 

・・・・・・どういうことですか?

貴方は何をなさるおつもりで?

 

・・・なんと!そうですか

 

ご自分が、モニターとあの世界に住む全員の・・・世界の敵となると?

 

・・・なるほど、共通の敵がいれば仲の悪い者たちも協力すると申しますからね

 

ですがそれは、貴方自身の幸福全てと引き換えになりませんか?

 

・・・それで貴方様は良いのですか?

 

貴方様とて人間でしょう。多少なりとも自己愛も自尊心も、生きたいと思うこともあるはずです

 

・・・そうですか。それらもすべて、大好きな彼らに、おまけにモニターのみなさんの幸福にまで繋げると・・・

 

ふふふ、ふふふっ・・・愚かですね、自己犠牲というレベルを超えていますよ

 

ですがよろしいでしょう。私は社長である以前に悪魔です。

 

だから、そういう人間を見るのが・・・そういう人間が苦しむのは楽しくて仕方ありません。

 

何度も何度も失敗するでしょう。

 

安心してください。

 

貴方を最高の悪役に仕立ててあげます。何度でもやり直せるとご好評のループ能力を核に、悪役に相応しい力を与えます

 

・・・私のポケットマネーですので、ご安心を

 

これほどまでの逸材とは思いませんでした。では準備いたします。

 

 

 

【100万回やり直した魔王(あるおんな)の顛末】

 

1000年続いた帝国には、一つの昔話がありました

 

魔王と始皇帝が戦い、魔王が封印されたというありきたりな昔話

 

ですが、おとぎ話に出てくる魔王は本当にいたのです。

 

魔王は長き眠りから覚め、帝国全土を雪と氷で覆いました

 

それに立ち向かったのが、帝具使い達と特殊な力を持った者たちでした

 

革命軍も帝国軍も民衆も関係なく、かれらは祖国を、大事な者を守るために戦ったのです

 

戦いは熾烈を極めましたが、誰ひとり欠けることなく・・・魔王を倒しました

 

最後のトドメを刺そうとしたインクルシオを纏う少年の前で、ぼろぼろになった魔王は笑っていました

 

帝具使い達の幾人かは、その魔王の素顔を、その微笑みを、どこかで見たような気がしたのです

 

そして少年は魔王に、最後の一撃を与えました

 

平和になった帝国で、彼らはそれぞれ新しい日常を過ごしました

 

 

 

【ある悪魔の独白】

 

・・・これで終わりですか

 

100万回も繰り返して、やっと手に入れたのですね

 

自分以外の幸福を

 

・・・何度も何度も気が狂いそうになりながら、最後に達成することができたのは賞賛されるべきものです

 

社員一同、我が社の記録に残るであろう貴方の全てに尊敬の念を抱きます

 

・・・どれだけ悪役として振る舞っても、貴方の信念は主人公の彼らと遜色ないものです

 

貴方の魂は私が保管させてあげますゆえ

 

しばしお待ちください

 

・・・こんな極上の魂、食べたいぐらいですが・・・

 

・・・ここまで頑張ったあなたへの、私から、いえ、社員一同からのボーナスステージです

 

次の世界では、幸せになってください




モブ子は自虐が酷いし、もう少し曲がることを覚えたほうがいいんじゃないかと思ってたり。
結局、人のいいところばかり見過ぎて否定できないあたり、人から否定されたくないからの逃げなのかなとか。
なんだかんだでめちゃくちゃわがままな自己中野郎だと思っている
ボーナスステージを書くことになったら、そのあたりを書いてみてもいいなと思わなくもない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。