T月U日
ハルオミとの約束の日になった。
ミッションに出るとハルオミはバスターとスナイパーを使い分けが上手く、基本遠距離戦の私の前に出て戦っていた。
が、隙あれば私にセクハラを仕掛けてくるので残念すぎる。
ちなみに相手はヴィーナス、女性の上半身に巨大な蜘蛛のような下半身を持つアラガミだ、
他のアラガミの特徴をゼリー状の器官から飛び出し、変幻自在の攻撃をしてくる。
また、上半身の女性部分はモデルのように美しく妖艶な雰囲気をまとっているためか、一部の男性から人気のあるアラガミでもある。
ハルオミはそんなヴィーナスの女性部分を凝視してなんか言ってたが、興味が無かったので適当に聞き流した。
まぁ、なんやかんや言いながらも流石は熟練のゴッドイーターだった。
的確にヴィーナスの弱点であるゼリー状の器官を狙い攻撃手段を奪い、私がダウンさせれば軟らかい女性部分にチャージクラッシュを素早く叩き込んでいた。
それから特に大きな問題は無く、任務は完了した。
今日1日ハルオミと過ごした感想としては、セクハラさえなければいい人である、だ。
いろいろと精神的に疲れたが、実力は申し分ないないので良い戦力強化になったと思う。
あとはうちの女性陣に迷惑掛けなきゃいいんだけど、無理だろうな。
T月V日
サカキから聞かされたが、どうやらフェンリル所属の移動拠点フライアが極東に向かってるそうだ。
最近数が増えている感応種への対抗手段として特殊部隊「ブラッド」が派遣されるとのことだ。
それと同時に無人神機兵の実験も行うそうでクラウディウス姉妹と無人神機兵のAIを作製してるクジョウ博士も来るのだとか。
正直、この前せいでクラウディウス姉妹、いやラケル・クラウディウスが来るのはものすごい反対だが、決まってしまったことなので仕方が無い。
ブラッドの方も気がかりだ。
なんせブラッドはラケル・クラウディウスの息の掛かった者、つまり彼女が運営するマグノリア=コンパス出身の人がほとんどなのだ。
厄介事の臭いしかしない。
また極東で一騒動が起きるんだろうなぁ。
T月W日
サテライト拠点の新たな建設地点の調査に行っていたアリサが帰ってきた。
任務の途中、アラガミの襲撃を受けたまたま近くにいたブラッドに救助されたそうだ。
そこで、見た目は違うがリーダーさんとかなり雰囲気の似た人がいたらしい。
あのアリサがリーダーさんと見間違うとはよほど似てたんだろうなぁ。
そう思うと、昨日ブラッドへの不信感はすっと消えた。
リーダーさんは人の心の氷を優しく溶かしいつの間にか仲良くなってしまう、まるで太陽のような人だった。
それと同じ雰囲気の人物がいるのならブラッドは安心できる。
やはり、目下の問題はラケル・クラウディウスだな。
あれからずっと彼女について調べているが、全く情報が出てこなくなった。
唯一マグノリア=コンパスの実態に知っていそうな人物はフェンリル本部直属の部隊員であるため、迂闊に話を聞くことが出来ない。
ブラッドの人たちに聞くのも1つの案だが、そのままラケル・クラウディウスに報告されたら元も子もない。
なんとかならないものか。
「うふふ、役者と舞台は整ったわ。あとは・・・」
フライアのとある研究室で彼女は一人微笑む。
儚く美しい笑みには狂気が張り付き、人ならざるなにかが見え隠れしている。
「彼女がどれほど滑稽に踊ってくれるのかしらね?」
その視線の先のディスプレイには1人の、いや、1体のアラガミが映し出されている。
アラガミでありながらも人であろうとする、はみ出し者で裏切り者。
彼女とはまるで正反対な存在、だからこそ憎らしく愛おしい。
「さぁ、舞台の幕を開けましょう、サラ」
続く