バチカルへ行く連絡船でも上等な船室を与えられてのんびりしている。しかしなぁ……俺はズボンから取り出した
しかしだ、原作ではコーラル城で敵として出てきた烈風のシンクから
俺は一度部屋の外に出ると、見張りをしているキムラスカ兵に、「船の中でも油断するな。神託の盾の襲撃があるかもしれないので厳重に警戒を」と伝えた。
これで俺に出来る事は終わりか。後は無事バチカルに到着するのを待つだけだ。
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ドカーン、と船が揺れた。やはり来たか! 俺は素早く立ち上がると剣に手を伸ばした。同じく部屋に居たガイ達も立ち上がり警戒している。すると扉が開いた。
「大変です! ケセドニア方面から多数の魔物と……正体不明の譜業反応が!」
兵士が報告の為に部屋に入ってきた。その兵士の後ろから、神託の盾兵が入り込んできた!
「いけません! 敵です!」
ジェイドが鋭く言いながら譜術の詠唱に入る。
「ガイ!」
俺は自分の護衛剣士であるガイに声をかける。事前に自分を守る為、前に出てくれる様に伝えてある。
「魔神剣!」
ガイが闘気を剣から飛ばして攻撃する。俺もジェイドの術が炸裂するまでの間敵を引きつけるため前に出る。振るった剣は敵神託の盾兵の剣で受け止められた。しかし……
「唸れ烈風! 大気の刃よ、切り刻め! ――タービュランス!!」
船室の中なので周囲に影響の少ない風の譜術にしたのだろう。ジェイドの放った風の中級譜術が敵を切り裂く。入り込んで来た敵は二人だけだったのですぐに片付いた。
「もー! どうして襲ってくるのー!」
アニスが不満げに叫ぶ。音譜盤がないから今回の襲撃は完全にイオン狙いだろうな。
「やっぱり、イオン様と親書をキムラスカに届けさないよーに……?」
そこも矛盾してる所なんだよな。大詠師派は
「ふう。何とかなったな。だけど敵はかなり入り込んで来ている様だな。ジェイド、どうする?」
とりあえず、俺はこの中で最も戦闘経験のあるジェイドに対応を尋ねる。
「イオン様を危険にさらす訳にはいきませんが、しかしこの船室に立てこもって船室だけを守り通せても意味はありません。多少の危険は伴いますが、敵兵を掃討すべく打って出るべきかと」
……だよな。この船室で守りを固めても、ここ以外を全部落とされたら意味ないしな。俺達はイオンの防備をアニスと十人のマルクト兵で固め、船室の外に出た。
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船室の外にもやはり敵は居た。だが船の守りを担当するキムラスカ兵が居たので、彼らと連携して敵を片付けていった。今は
「おおおぅっ!」
大ぶりな剣を構えた神託の盾兵が攻撃してくる。俺は自分の剣でそれを上手くさばくと、いつもの三連撃から技に連携させた。
「牙連崩襲顎!!」
双牙斬と崩襲脚の組み合わせ奥義だ。双牙斬で敵を空に斬り上げた後、崩襲脚で追撃する。技を食らった敵兵は地面に倒れ込んだ。……また、殺したのか。ゲームでは単なる一つの戦闘だとしても、現実では自分の命が危険にさらされ、同時に敵の命を奪うものでもある。一瞬たりとも気が抜けない。
「これで、大体の所目についた敵は倒し終わりましたね。制圧される前に船橋も確保できましたし」
槍を虚空にしまったジェイドが話しかけてくる。
「ああ、だがこの襲撃を指揮している敵のボスはまだ見当たらないな。甲板の方に行ってみるか?」
俺は自分の持つ原作知識で知っている方に誘導する。……既に自分がレプリカだと知られた事もあり、ジェイドに対する言葉使いが普通になっているな。まあいっか。
「甲板ですか。確かにそちらはまだ見ていませんでしたね。行ってみましょうか」
俺の知識が合っていれば、今回の襲撃を指揮しているのはあいつの筈だ。……まあ厄介ではあるが、こちらには十全の状態のジェイドがついているのだ、心配はあるまい。
ちなみに、今の戦闘メンバーにティアはいない。キムラスカに入国出来た時点でキムラスカ兵を借り受けて、拘束している。もちろんバチカルのファブレ公爵家を襲撃した罪でだ。ティアの事を嫌っている訳じゃないがケジメはつけなくてはいけないからな。
甲板にはグリフィンと同じ空飛ぶ魔物、ヒポグリフが空を旋回していた。こちらの攻撃が届かないので辟易したが、ジェイドや副官のマルコさん。それに俺も初級だが譜術を使って撃退した。やはり遠距離攻撃の手段を持っていて損は無かったな。
「ハーハッハッハッ! ハーハッハッハッ!」
勘に障る笑い声が頭上から響いてきた。見た目だけは豪華な椅子に座った男がゆっくりと空を降りてくる。ゲームで見て知ってはいたけどアレ一体どーなってんだろうな。空飛ぶ椅子て。滅茶苦茶だろ。
「野蛮な猿ども、とくと聞くがいい。美しき我が名を。我こそは神託の盾六神将、薔薇の……」
「おや、鼻垂れディストじゃないですか」
意気揚々と名乗りを上げようとしたディストをジェイドの華麗なツッコミが遮る。
「薔薇! バ・ラ! 薔薇のディスト様だ!」
「死神ディストでしょ」
と言うのはイオンの前に立つアニスだ。
「黙らっしゃい! そんな二つ名、認めるかぁっ! 薔薇だ、薔薇ぁっ!」
まるでだだっ子の様に自分の二つ名にこだわるディスト。うっとうしいことこの上ない。
「知り合いか?」
一応の義務感として問いかける。
「私は同じ神託の盾騎士団だから……。でも大佐は……?」
「そこの陰険ジェイドは、この天才ディスト様のかつての友」
そんなディストの言葉を、ジェイドはどこ吹く風とばかりに笑い飛ばした。
「どこのジェイドですか? そんな物好きは」
その後も二人はコントか会話か分からないものを交わしていた。……アホらしいのでさっさと終わらせるか。俺は譜術が使えるマルクト兵に合図して譜術を放って貰った。不意打ち? 卑怯? なんとでも言え。ゲームじゃあるまいし開始の合図があって戦闘に入る訳じゃない。ジェイドと会話して油断していたディストはマルクト兵の放った譜術をまともに食らって吹き飛んだ。
「ぐぎゃっ! ……ムキーーーーーーー不意打ちなんて卑怯じゃないですかぁ!」
アホか。それと譜術をまともに食らったのに平然としてるんじゃねーよ。ゴキブリみたいに生命力のある奴だな。
「この私のスーパーウルトラゴージャスな技を食らって後悔するがいい! 行きなさい、カイザーディストR!」
その言葉と共に甲板上に巨大な譜業兵器――ロボットが大きな音を立てて降り立った。どこに隠していたんだよ! カイザーディストR、ええい長いのでロボットで充分だ。とにかくそのロボットは右手に獣の牙の様なアームを、左手に突起のついたドリルの様なアームを装備している。ロボットは甲板上の俺達を確認するかの様に軽く身じろぎするとこちらに襲いかかってきた。
「ジェイド! 水の譜術を!」
こいつの弱点が水属性なのは見なくてもわかる。一応後衛のマルクト兵が、魔物などの情報を読み取る道具「スペクタクルズ」を使用してくれるだろうが。俺はジェイドに水の譜術を使って貰うように指示すると前に出てその巨体を受け止めようとした。
「ルーク! 無茶するな!」
傍に居たガイも同様に前に出てくる。こっちには十人のマルクト兵と連絡船の警備を担当するキムラスカ兵も居るのだ。ゲームと違い多勢に無勢だ。きっと勝てる。俺やガイ、キムラスカ兵達はそれぞれの持った武器でロボットのアームや体を受け止めるた。
「出でよ。敵を蹴散らす激しき水塊――セイントバブル!!」
弱体化していないジェイドが強力な水の上級譜術を唱えてくれる。一発食らわせただけでロボットは濡れ鼠になり動きが鈍くなった。
「あああ、カイザーディスト号―っ!」
ディストが悲壮な声を上げているが無視だ無視。攻撃を続ける。
「牙連崩襲顎!!」
「魔神月詠華!!」
俺とガイの奥義がそれぞれヒットする。アームの接合部を狙ったその攻撃で、敵のアームはギシギシと音を立てて止まった。そこにキムラスカ兵達が剣などを刺しいれる。そこに二発目のセイントバブルが炸裂し、ロボットは完全に動きを止めたのだった。
後に取り残される形となったディストはジェイドの譜術で大きく吹き飛ばされ、海の彼方に落ちた。
「よかったのか? 知り合いだったんだろう?」
「殺して死ぬ様な男ではありませんよ。ゴキブリ並みの生命力ですから」
殺してしまったとは露ほども思って居ない様だ。まあ俺もアレでディストが死んだとは思っていないけどな。空を飛んでいたから逃したが、地上にいれば容赦なく殺しておきたい所ではあったが。
「船橋を見てきます。マルコ、貴方はイオン様を頼めますか?」
「はっ!」
さて、これでこの船の上での戦闘は終わりだ。とはいえ油断は出来ないがな。船内には生き残りが居るかも知れない。バチカルに着くまで油断は厳禁だ。
「平和の使者も大変ですよねぇ……」
アニスが疲れた様に軽く肩をすくめている。全くだな。しかもタチの悪い事に、この和平の道行きはまだ半分も終わっていないんだよ。
神託の盾の襲撃があったその日から数日後、連絡船キャツベルトはバチカルに到着した。
甲板でのタルロウXのミニゲームはカットで。というかここまで説明しませんでしたが、
カイザーディストとの戦闘も簡素なもので。ジェイドがLV45のままですからね。セイントバブルも使えますし。