超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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女神もでない! トランスフォーマーもでない!

それでもクロスオーバーか!!(自問自答)


第82話 彼女が発掘隊に加わった理由

 プラネテューヌのとあるホテル。

 その一室の椅子に深く腰掛け、レイは深く息を吐く。

 

 さて、これからどうしよう。

 

 自分が立ち上げた市民団体の様子を見るつもりで帰って来たのに、その市民団体はレイがいなくなったことで自然解散していた。

 市民団体に所属していた何人かを訪ねたが、全員、綺麗さっぱり脱女神運動をやめていた。

 

 ……その代わり反オートボット運動をしていたりして、その見境のなさに悲しいやら、呆れるやら。

 

 自分も含め、その程度の運動だったということだろう。

 

 その上、市民運動の拠点兼住居にしていた雑居ビルも、何か月も留守にしたことで契約を切られていた。中の物も処分されたそうな。

 そこでフレンジーがホテルを取ってくれて、今に至る。

 

 ここでレイは、市民団体にも自分の家だった場所にも、ほとんど未練がないことに気が付いた。

 あまりにも濃厚な基地での生活に比べれば、かつての自分の生活は充実感や使命感どころか現実感さえもなかった。

 

 そんな彼女だが、今は少し悩んでいた。

 

 ――困った、やることがない。

 

「温泉……は、基地で十分堪能してるし。買い物……欲しい物が思いつかない。映画……今、見たいのやってないなあ」

 

 基地にいる時は、雛たちの世話に会議に時々出撃に……とやることが山ほどあった。

 いざ、そこから解放されると、何をしていいのか分からない。

 

「このままダラダラ過ごすのもいいけど……。何か、したいわよね……」

 

 じゃないと、せっかくのお休みが勿体ない。

 我ながら貧乏性だなと思いつつ、さしあたって買ってきた新聞を広げてみる。

 

『ネプテューヌ様の支持率、また下がる。イストワール様、胃痛で入院か? オプティマス氏、男泣き』

『新作ゲーム発売! 販売店には長蛇の列。ネプテューヌ様の姿も』

『リーンボックスの大企業、近々新商品発表の噂』

 

 と、新聞紙の隅の小さな記事がレイの興味を引いた。

 

『プラネテューヌ国立博物館にて、タリ展開催! オプティマス氏特別協力!!』

 

「タリ……」

 

 思い出されるのは、惑星サイバトロンに転送された、あの事件。

 元はと言えばあの事件は、レイがタリの遺跡に言い知れぬ既視感を憶えたことに始まった。

 遺跡の石柱や発掘品に触れるたびに、頭痛と共にフラッシュバックする知らない記憶。

 未だ見つからぬ、自分の過去、中身。

 

「……行ってみるかな」

 

 博物館なら、ここから遠くはない。

 

 この機会に自分探しも、悪くはない。

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌ国立博物館の一角の特設展示場では、タリ展と評して、古の大国タリに関する展示が行われていた。

 

 各地で発掘された遺物、後年の研究による資料の数々。

 中でも目を引くのは、あのストーンサークルの遺跡から発掘された壁画だ。

 

 見上げるほど大きなそれは長い年月を経てなお、鮮やかな色合いを失っていなかった。

 火山と思わしい台形の山の麓に、白と黒で色分けられた建物が規則正しく並ぶ町並みが広がっている。

 奇妙なのは、町の上空に島のような物が浮いていることだ。

 

 その前にできた人だかりに向かって、シルクハットの教授が壁画について説明していた。

 

「これは、かの古の大国タリの首都を描いたと思われる壁画です。白と黒に塗り分けられた建物が、ちょうどチェス盤のように並んでいるのが分かるでしょう? このことからも、タリが非常に優れた文明を持っていたことが分かります」

 

 聴衆の中にはマスコミの姿もあり、カメラを回したり話を録音したりしている。

 その内の一人が手を挙げて質問する。

 

「教授、それでその宙に浮かんでるのはなんです?」

「はい。あれはタリの空中神殿。タリの女神はあそこに坐して、自分の国を見下ろしていたそうです。……ただし、この時代にあんな巨大な物を空に浮かべるのは不可能だとして、後年の創作であるとも言われています。では次も創作の話をしましょう」

 

 教授は壁画の横に置かれた彫像を示した。

 それは、女性を象った坐像であった。

 

 しかしその表情たるや、牙をむき出しにして憤怒とも怨嗟つかぬ表情を浮かべた恐ろしい物だ。

 頭から生えた二本の角が天を突き、背には猛禽の翼を広げ、長い髪は蛇となっていた。

 

「この像はタリの女神を模した物です」

「過去の女神は、このように……その、異様な姿をしていたと?」

「いえ、これは後年に作られた物で、当時の人の想像や脚色がかなり入っています。実際の女神について、分かっていることは少なく、分かるのは、やはり暴政を敷き、反乱の末に倒されたということですね。……次に、その話をしましょう」

 

 教授はさらに隣の展示物の前に移動した。

 

 人間の男が、大きな翼と二本の角が特徴的な女神の腹に剣を突き刺している姿の刻まれた石版だ。

 

「呪われた魔剣ゲハバーン、皆さんも耳にしたことはあるでしょう。遡れる限り、ゲハバーンの名が最初に現れるのは、タリ滅亡の日……女神が倒された時です。ある剣闘士がこの剣を振るい、悪逆の女神を討ち取ったと言われています……しかし、人々を待ち受けていたのは平和ではありませんでした」

 

 教授は次へと移動する。

 

 壁に掛けられているのは古めかしい油絵だ。

 

 暗雲に覆われた空。

 

 火と黒煙を噴き上げる山。

 

 裂ける大地。

 

 降り注ぐ火山弾。

 

 炎に包まれる町。

 

 そして町に流れ込む溶岩……。

 

 一つの町が滅ぶ態が鬼気迫るタッチで描かれている。

 

「女神の呪いか、突如として火山が噴火し、タリの首都は一夜にして地面の下に埋もれて姿を消しました。……俗に言う『タリ最後の日』です」

 

 教授はそこで聴衆に向き直り、話を締めくくる。

 

「タリについて、我々が知り得ていることはあまりに少ない。だからこそ、我々は遠い過去に言い知れぬロマンを感じるのです」

 

  *  *  *

 

 話が終わると、聴衆は散らばって各々で展示物を見る。マスコミを中心に早々に帰ってしまった人も多い。

 聴衆に混じって教授の話を聞いていたレイは、あのタリ首都の壁画の前に立っていた。

 

「…………」

 

 ――知っている。私は、この光景を知っている。

 

 欠落した記憶を脳内から何とかして掘り出そうと難しい顔で壁画を睨みつける。

 

「空中神殿……あれはたしか名前が……」

「エターナル・スローン」

 

 突然横から聞こえた声に驚いて顔を向ければ、シルクハットの教授が立っていた。

 教授はニッコリと笑う。

 

「あの空中神殿は、永遠なる玉座(エターナル・スローン)とも呼ばれています。かの国の女神はほとんどの時間をあの宮殿で過ごし、地上には滅多に降りず、財宝に囲まれて酒池肉林に耽ったとか」

「はあ、なるほど……」

「失礼、私はこの壁画を発掘した、トレインという者です。これでも考古学者の端くれでして、ルウィー国立大学で教鞭を取っています」

「これはご丁寧に……私はキセイジョウ・レイと言います。しかしどうして私に声をかけたんです?」

 

 レイが軽く頭を下げつつ質問すると、トレインはシルクハットのつばを摘まみつつパチリとウインクした。

 

「随分と難しい顔をされていたので、つい。それに、あなたが一番真面目に私の話を聞いてくれていたので。よろしければ、ご案内しましょう」

 

 紳士的な口調と態度に、レイも相好を崩す。

 ここは好意に甘えるとしよう。

 

「では、せっかくですので、お願いします」

「こちらこそ。それではまずは……」

 

  *  *  *

 

 それからしばらく、レイはトレイン教授に案内されてタリ展を回った。

 

 ストーンサークルの遺跡から発掘された品々は、どれもレイに奇妙な懐かしさをもたらした。

 

 しかし、あの恐ろしい女神像を見ると胸の中がモヤモヤした。

 

 展示物の一つ一つに対し、トレイン教授は丁寧かつ分かりやすく解説し、レイはそれにフムフムと相槌を打つ。

 

 記憶は戻らなかったが、中々に楽しい時間だった。

 

「今日はどうも、楽しい時間でした」

「こちらこそ。では……」

「ああ、ミス・レイ」

 

 閉館時間も近づき、二人は和やかに挨拶しあう。

 レイはさて、とホテルに戻ろうと思ったが、トレイン教授に呼び止められた。

 

「どうでしょう? よろしければ、この後一緒に食事でも。ワインの美味しい店を知っていますので」

「う~ん、そうですねえ。じゃあこれも何かの縁ですし……」

 

 その時、二人の持つスマホが同時に振動した。

 二人は互いに失礼、と断ってから物陰に入ってスマホの通話ボタンを押して耳に当てる。

 

「レイちゃん! 何やってるのさ! そんな男にホイホイ付いていくんじゃないよ!」

 

 レイのスマホから聞こえてきたのは、フレンジーの声だ。

 さもありなん、このスマホはフレンジーが変形した物なのだから当然である。

 

「え? でもせっかくのご厚意なんですから……」

「何言ってんの! こんなの、食事とか言って酔わせてホテルにご同伴コースじゃん! そのままレイちゃんをいただいちゃうつもりなんだよ!」

 

 どうも、心配してくれているようだが、それは見当違いと言うものだろう。台所ロマン劇場の見すぎだ。

 

「大丈夫ですよ、フレンジーさん。そんな人には見えませんし、私みたいな魅力のない女を……まあ、そういう目的で誘おうとはしませんよ」

 

 レイとて、自分が不細工だとは思わない。

 しかし、男が好くような美人だとも思わない。

 ことゲイムギョウ界に置いて、美の基準は女神にある。

 ルウィーではあどけない容貌が美人と言われるし、リーンボックスでは大人っぽい容姿が好まれる。

 その点、自分はどこの国の美人にも当てはまらないだろう。

 思わずケラケラと笑うレイに、フレンジーはムッツリとした声を出す。

 

「レイちゃん、それ本気で言ってる?」

「ええ。そういうのは、もっと若くて可愛い子か、色気のある人を狙うはずですからね」

「……もういいや。とにかく、男といっしょに食事なんて許さないからね!」

 

 話は終わりとばかりに、電話を切る音まで出して……当然、スマホはフレンジーその物なので、これは単なる演出だ……黙り込むフレンジー。

 レイは少し困った顔をしてから、ちょうど通話を終えたトレイン教授に向き合う。

 

「すいません、せっかくのお誘いですが、ちょって用事ができまして……」

「ああいえ。こちらこそ、ちょっと問題が起きまして。その対処に当たらなければならないので……」

 

 どうやら向こうも急用ができたらしく、お互いにペコペコと頭を下げる。

 

「残念です……いったい、何があったんです?」

「実は明日からタリの首都があったとされる場所に調査に出かけるのですが、発掘隊の料理人が急病で同行できなくなったそうで……誰か代わりを探さないと。」

 

 何気なく放った質問だったが、この時レイの頭にある考えが浮かんだ。

 

 ――自分の記憶の手がかりがタリにあるのは間違いない。ならば……。

 

 レイは、できるだけ相手を警戒させないように笑顔を作って言葉を出した。

 

「あの、よろしければ私が料理人になりましょうか?」

 

  *  *  *

 

 翌日。

 渡りに舟とばかりのトレイン教授から承諾を取り付けたレイは、発掘隊の集まる場所にいた。

 発掘隊はそれなりに大人数だが、前任者が食事のメニューを決め材料が揃えておいてくれたので、レイは作るだけである。

 メニューはやはり簡単に量を作れる煮込み料理が多かった。

 

「せっかくの休暇なのに、働いてどうするのさ!」とフレンジーがごねていたが、まあレイとしてはやることが多い方が楽しい。

 

 トレイン教授や発掘隊の面々に挨拶をしていると……。

 

「ガラッ! ガラッ! ガラッ!!」

 

 何故か扉を横に開けて(ちなみにここは屋外だ)あちこちにデフォルメされたドクロがあしらわれたフリフリのピンクの衣装に身を包んだ小柄な少女が現れた。長い金髪で、頭には大きなリボンを結んでいる。

 呆気に取られる面々をよそに、少女は後から付いて来た、撮影機材を持った黒子に向かって笑顔を振りまく。

 

「全国の幼年幼女のみんな~、アブネスチャンネルの時間よ! 今回は発掘に密着取材しちゃうぞ☆ アブネス、楽しみ! ……よっし、取りあえずこれでいいわね!」

 

 物凄く自己主張の激しい少女にレイは面食らう。

 

「あれは?」

「ああ、スポンサーが連れていけと……どうも、あの番組のファンらしくて……」

 

 トレイン教授は何とも言えない顔になる。

 それもだが、レイは少女が自分にとって知己と言える相手であることに驚いていた。

 

「アブネスさん?」

「ん? 何よ、サインなら後で……って! あー! あなた!!」

 

 声をかけられて億劫そうにしていた少女……アブネスは、レイの顔を見とめるや指を突きつけて大声を上げて駆け寄ってくる。

 

 この少女(?)、自称『幼年幼女の味方』アブネスはネット番組のレポーターをしているのだが、脱女神を掲げており、その繋がりでレイとも知り合いである。

 かつてレイが軽率に漏らした言葉を聞いたアブネスは先走って教会に突入、強引な取材を敢行してオートボットに咎められたことがあった。

 

「レェェイ! ルウィーではよくも適当なこと言ってくれたわね! おかげで機材一式オシャカになったのよ!」

「その節はご迷惑をおかけしました。しかし、碌に裏も取らずに突撃したアブネスさんにも問題があるのでは?」

 

穏やかに頭を下げつつしっかりと反論をするレイに、アブネスは怪訝そうな顔になる。

 

「あなた、何か雰囲気変わった?」

「ああ、伊達眼鏡をやめたので」

「いや、そうじゃなくて……とにかく! あなたには機材の賠償を……」

「はいはい、そのくらいにしときなさいな」

 

 さらにがなり立てようとするアブネスを横から止める者がいた。

 

 それは派手なピンク色のメカニカルなスーツに身を包んだ男(?)だった。

 

「一応はこれからいっしょに仕事をするんだから、あんまり喧嘩しちゃだめよ。」

 

 女口調のメカニカルスーツだが、聞こえる声はまぎれもない男のものだ。

 その異様さに、レイとアブネスは圧倒される。

 トレイン教授が咳払いをした。

 

「あー……この方はミスター・アノネデス。彼は機械のプロフェッショナルでして、今回の調査に使う科学分析装置を調整、操作していただきます」

「へ、へえ……人は見かけによらないと言うか見た目通りと言うか……」

 

 ドン引きしているアブネスだが、一方のレイはアノネデスのことを知っていたので少し顔をしかめる。

 知っていると言っても一方的な物で、直接の面識はないが。

 

 アノネデスは雇われハッカーで、今は色々あってオートボットに協力しているが、一時期ディセプティコンに接触していたことがある。

 しかし、ほんの僅かな間だ。

 思う所がないワケでもないが、すぐに割り切って笑みを浮かべる。

 

「え、えっとアノネデスさん? 私は臨時で料理人になりました、キセイジョウ・レイと言います。短い間ですが、よろしくお願いします」

「ええ。こちらこそ。同じ女の子同士、仲良くしましょう♡」

 

 ちゃっかり自分を女性扱いするアノネデスにアハハと苦笑してしまうレイだった。

 アブネスは微妙に機嫌悪げだ。

 

「ま、何でもいいけど。これで全員なら、さっさと出発して仕事を終わらせましょう。スポンサーに言われて来たけど、わたしは遺跡なんかどうでもいいんだから!」

 

 どうやらアブネスは発掘調査には興味はなく、あくまで仕事として来ているらしいが、それを隠すこともないのは如何な物か。

 しかしトレイン教授は大して気にした様子もない。

 

「いえ、もう一人……いえ二人ほどまだですね。もうそろそろ来るころですが……」

 

 懐中時計を取り出して時間を確認する。

 そんな時だ。

 

「ごめーん! 遅れちゃったー!」

 

 底抜けに能天気な声が、響いた。

 

 その声はレイにとって忘れがたく、また因縁深い物だった。

 

 ギョッとして声の聞こえた方を向くと、案の定『彼女』がいた。

 

 あちこち跳ねた短い紫の髪に、十字キーのような髪飾り。

 

 『ジャージワンピ』なる濃い紫のワンピースに白いパーカー。

 

 プラネテューヌの女神、オートボット総司令官オプティマス・プライムの恋人。

 

 

 

         ネプテューヌがこちらに向かって歩いて来くる。

 

 

 

 満面の笑みで片手をブンブンと振り、もう一方の手は女の子の手を引いている。

 明るい金色の髪と青い瞳の可愛らしいが元気そうな、黒と黄の子供服を着た女の子だ。こちらも笑顔である。

 さらにその後ろから青いモンスタートラック型のラジコンカーが追従しているのが、一瞬目に留まった。

 

 でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。重要な事じゃない

 

「な、な、な!?」

「なんであなたがここにいるのよー!?」

 

 口をパクパクとさせているレイに代わってアブネスが絶叫した。

 

 こうして、レイの休暇は思わぬ方向へと転がっていくのだった……。

 

 

 

~~~~~

 

 閑話:フレンジーの定時報告

 

「……と、こんな感じでして……」

 

 プラネテューヌのホテル。

 レイが眠ったのを見計らって、フレンジーはメガトロンに今日あったことを通信で報告していた。

 

「ご苦労。しかし、タリ、か……」

「はい。大人数といっしょに行動することになりますので、ディセプティコンに関する情報を漏らさないように色々注意させます。まあ、今のレイちゃんなら、そんなボロは出さないでしょうが。俺もフォローしますんで、問題ないでしょう」

 

 それこそ、全く予測もしていないような、レイやフレンジーの度肝を抜くような、そんなことが起こらない限り。

 

 少しの間、メガトロンは沈黙する。

 

 ――思い出さない方が、幸せかもな。

 

 そう、メガトロンが小さく呟いたのを、フレンジーは聞き逃さなかった。

 

 やはり、メガトロンはレイについて本人も知らないことを知っている。その鍵はタリとやらにあるのだろう。

 

「とにかく、定時報告を欠かすな。……今日なんぞ男にホイホイついていきそうになったようだしな」

「はい……」

 

 メガトロンの声は極めて平坦だが、フレンジーはジリジリと焼かれるような思いだった。

 通信越しでも怒気が膨れ上がるのが分かり、我知らず震えあがる。

 

 ――やべえ! これ怒ってる、何でか分からないけど、超怒ってる!!

 

「めめめ、メガトロン様! レイちゃんはこう、自己評価が低いと言いますか、自信がないと言いますか、そんな感じですし! ちょっと空気読めない発言しちゃうのはいつものことじゃないですか!」

 

 必死にフォロー(?)するフレンジーだが、メガトロンは平坦な調子を崩さない。

 

「ふむ。……どうやら、彼奴(レイ)には俺の所有物であるという自覚が足りないらしいな。帰ってきたら、とっくりと刻み込んでやるとしよう。とっくりとな」

「あ、あの、あんまり乱暴なのは……。スタースクリームじゃないんですから」

「乱暴にはせんわ。……乱暴にはな。では、しっかりやれよ。通信終わり」

 

 宥めすかそうとするフレンジーだったが、メガトロンは一方的に通信を切った。

 

「……ええと、何これ?」

 

 意外と何をしでかすか分からないレイと、自分には怒るポイントが分かり辛いメガトロン。

 二人に挟まれる形になり、二重の意味で無いはずの胃が痛い気がする。

 

「……………………今度は俺が休暇貰おうかなあ」

 

 フレンジーはこれから先のことを考えて、深く深く嘆息するのだった。

 




タリ発掘隊の面子

トレイン教授、臨時料理人レイ、密着取材アブネス、機械操作担当アノネデス、特別ゲストのネプテューヌとピーシェ、ついでにホィーリー。

オプティマスはお留守番。

今回の解説

タリ展
一応、前から伏線は張ってました。

展示物①壁画『タリ首都全図』
ストーンサークルから発掘してきた物。
無理に持ってきたワケではなく、元々崩れて壁から離れてました。

展示物②タリの女神像
後年の人が伝聞からタリの女神を想像して作った物。
実際の歴史でも、昔の神(宗教)や指導者を悪く描くことは、ままあります。

展示物③石版『タリの女神とゲハバーン』
61話でハイドラヘッドが見てたのと同じ物。

展示物④絵画『タリ最後の日』
言うまでもなく、元ネタは『ポンペイ最後の日』

空中神殿エターナル・スローン
ネプテューヌTHE ANIMATIONの最後の方に出てきた『アレ』
古の大国なんだから国土があれだけってことはないだろう、じゃあ『アレ』は何?
と考えた時に、女神の座す神殿なんじゃないかなあと思いまして。
ちなみに綴りはEternal.Throne、縮めてE.T。(E.Tはア○リ社崩壊を招いたとも言われる伝説のクソゲー)

では。

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