超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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思いついた短編の詰め合わせになります。

力を抜いてお楽しみいただければ、幸いです。

……なぜかディセプティコンの比率が高いです。


第79話 短編詰め合わせ

① この短編は青少年のなんかに配慮しており猥雑は一切ない

 

 オートボットの基地。

 

 そのリペアルームは、軍医ラチェットの城である。

 

 何分、無茶をしがちなオートボットたちのこと、ラチェットにお世話になったことのない者はいない。

 傷を隠して無理をしようとすれば、もれなくラチェットに引きずられていって診察(おしおき)されることになる。……ルビがおかしい? 気にするな。

 

 とにかく、いつも忙しいラチェットのリペアルームだが、今日は変わった人物が訪れていた。

 

 それは……。

 

   *  *  *

 

「トランスフォーマーを癒す方法?」

 

 椅子に腰かけたラチェットの正面の患者用の椅子に、チョコンと腰かけたネプテューヌは、コクンと頷く。

 

「うん。オプっちさ、最近は趣味とか見つけたけど、時々、なんて言うか……悩んでたり、疲れてたりする感じなんだ」

 

 ネプテューヌの言葉に、ラチェットは顎に手に当てて思考を巡らす。

 

 オプティマスのことをよく観察している。彼は、自身の苦悩や疲労を決して表に出そうとしない。

 総司令官としての処世術であり、オプティマス本人の癖のような物だ。

 それに気が付くとは、さすがは恋人。

 あるいは、いかな強靭な精神を持つオートボットの総司令官と言えど、恋人の前では気が緩んで、弱い部分を見せてしまうのか。

 

 どちらにしても、オートボット総司令官としては問題があるだろう。

 

 だが、ラチェット個人としては、よい兆候だと思えた。

 

 ――いい部分だけ見ているようでは、本当に愛し合っているとは言えんからな。

 

 駄目な部分、弱い部分をさらけ出し、受け入れることができてこその、愛。

 

 陳腐と言われようと、それがラチェットの考えだ。

 

 ネプテューヌは、悩ましげに話を続ける。

 

「それでね。何とか、オプっちのことを癒してあげたいんだ。……わたしにできることなんて、少ないのは分かってるんだけど……」

「何を言っているんだい。君が傍にいてくれるだけで、オプティマスはとても救われているんだよ」

 

 サイバトロンを発つ前のオプティマスがどれだけ、苦しんでいたか。

 

 旧知の仲である自分やアイアンハイド、公私に渡る女房役のジャズにさえ苦悩を吐露しようとせず、自分で抱えこもうとしていた。

 部下たちの前では弱音一つ吐かず、泣くこともなかったが、その代わり笑うことも少なくなっていき、比例するかのように、段々と敵への容赦がなくなっていったオプティマス。

 

 それに比べれば、今のオプティマスの何と穏やかでイキイキしていることか!

 

 しかし、ネプテューヌは首を横に振った。

 

「……もう少し何とかしたいんだよ。このままじゃオプっち、いつか潰れちゃいそうで……」

 

 ――おいおい、オプティマスのことを気にするあまり、君が思いつめちゃ本末転倒だろう? 君はマイペースで能天気なのが持ち味じゃあないか。

 

 そう言ってあげたいラチェットだったが、ここは具体的な『できること』をあげた方がいいだろう。

 ラチェットは少し思考してから、答えを出した。

 

「……つまり、オプティマスの心身をリラックスさせてあげたいワケだね。それならいい方法がある。……精神直結と言うんだがね」

「精神直結?」

 

 聞きなれない単語に、ネプテューヌは首を傾げる。

 

「精神直結と言うのは、読んで字の如く特殊な器具を使って異なるヒト同士の精神を繋げることだ。これをすると、トランスフォーマーは充足感と多幸感を得ることできる」

「へえー。でもわたし、トランスフォーマーじゃないから無理なんじゃ?」

「そこらへんは大丈夫! 私とホイルジャックとネプギア君で発明した、この『ネープギア』を使えば、あなたと私でLAN直結できるのさ!」

「おお~!」

 

 ネプテューヌは感嘆の声を上げる。

 何だかよく分からないが、それはいい。

 

「もっと詳しく教えて!」

 

  *  *  *

 

 数日後。

 ネプテューヌら各国の女神と、そのパートナーであるオートボットは例によって、あんまり意味のない会議を終えて、基地の中にある談話室で休んでいた。

 

 ノワールとベールが談笑する横で、アイアンハイドとジャズはオイルを飲み交わし、ブランは佇んでいるミラージュの足に寄りかかって本を読んでいる。

 

 そしてオプティマスは、ネプテューヌを交えてラチェットと話し込んでいた。

 

「あ、そうだオプっち!」

「ん、何かなネプテューヌ?」

 

 見上げてくる恋人に、オプティマスは問う。

 するとネプテューヌは満面の笑みを浮かべた。

 

「わたしと、精神直結しよ♡」

 

 ピキッと、オプティマスが固まった。

 

 それだけではなく、ミラージュはズッコケかけ、アイアンハイドが派手に吹き出したオイルが、対面にいたジャズにかかる。

 ノワールとブランはそんなオートボットたちに怪訝そうな顔になるが、ベールだけは顔を赤らめた。

 

「ね、ネプテューヌ!? 何を言い出すんだ!」

「ねえ~、いいじゃ~ん。精神直結しようよー」

 

 硬直が解けたが戸惑いを隠せていないオプティマスに、ネプテューヌはさらに上目使いでねだる。

 

「全く、見せつけてくれるねえ。こっちはクロミアと離ればなれでご無沙汰だってのに」

「真昼間からとは、オプティマスも隅に置けないなあ」

 

 驚きから回復してニヤニヤとからかうように笑うアイアンハイドとジャズを、努めて無視して、オプティマスは何とかネプテューヌを諌めようとする。

 

「……ネプテューヌ。女の子が精神直結なんて言うもんじゃない。その、なんだ、……はしたない」

「むー! なにさー!」

 

 はしたないと言われて一転怒り出すネプテューヌに、オプティマスは困ってしまう。

 

「って言うか、分かんないんだけど、精神直結って何?」

「……知らない」

「精神直結と言うのは、異なる二者の精神を接続することです」

 

 置いてきぼりのノワールとブランが首を傾げていると、ベールが頬を紅潮させたまま説明した。

 驚いた二人に見つめられたベールは、曖昧に微笑みながらも説明を続ける。

 

「精神直結をすると……その、とても充足感が得られてストレス発散になるのですが……心身に負担がかかることがある上、し過ぎると中毒になったりすることもあるので……オプティマスさんはそれを心配しているのでは……」

「なら、オートボットの誰かとすればいいじゃない」

「普通、精神直結は、異性間で行うものですわ。同性でもできないこともありませんが、アブノーマルであるのは否めません」

「……アーシーは?」

「その、精神直結は、親しいヒトとするのが普通で……例えば恋人とか……そういう深い関係でもないのに精神直結をするのは、何と言うか……とても不道徳なことらしいですわ」

「それって……」

「ああ、そういうことなのね……」

 

 恥ずかしげに顔を伏せるベールに、ノワールとブランは何となく察して顔を見合わせる。

 二人とも心なし顔が赤くなっていた。

 

「それにしてもベール、あなた随分と詳しいわね」

 

 ノワールから何気なく放たれた問いに、ベールは赤く染まった頬を両手で押さえ、チラチラとジャズの方を見ながらオズオズと言葉を絞り出す。

 

「ええと……わたくし、とても寂しい思いをすることがありまして……それで、そのつい、ヒトとの繋がりと言うか、全てを忘れさせてくれる何かと言うか、そういうのを求めてしまいまして……ですから、あの、その……」

「……もういいわ。なんか、ごめん」

 

 リンゴのようになってしまったベールに、ノワールは嘆息混じりに謝る。

 それから、まだオプティマスともめている紫の女神のほうへ歩いていった

 

「オプっちは、わたしと、したくないの?」

 

 目じりを涙で濡らして曇り顔で見上げてくるネプテューヌに、オプティマスはブレインの中で「しちゃおうよ精神直結! 本人がこう言ってるんだし、恋人同士だし。何を迷う必要がある? 今は悪魔が微笑む時代なんだ!」と言った気がしたが、グッとこらえる。

 

 と言うか、悪魔が微笑む時代ってなんだ?

 

「ねえってばー」

「ネプテューヌ、ちょっと待ちなさい」

「え!? な、何さノワール?」

 

 ノワールは、ネプテューヌの肩を掴んで無理やり自分の方を向かせる。

 その顔は、紅潮しつつも真剣だった。

 

「精神直結についての情報をちょって整理してみるから、何も言わずに聞きなさい」

「え、ええー? なんでー?」

「い、い、か、ら!」

「わ、分かったよ……」

 

 強く言われて、ネプテューヌは黙り込む

 ノワールは、何で自分がこんな役をと思いながらも、大きく溜め息を吐いてから語り始める。

 

「じゃあ、始めるわよ。

 

①精神直結は、トランスフォーマー、ないし女神が精神を繋げること。

 

②精神直結を行うと充足感や多幸感が得られる……つまり気持ちいい。

 

③公衆の面前で精神直結を連呼するのは、はしたないこと。

 

④精神直結は、心身に負担はかかり、中毒になることもある。

 

⑤精神直結は、普通異性間でする。同性同士だと、奇異に見られることもある。

 

⑥精神直結は、恋人などの深い関係の間柄でするもの。そうでなくすると不道徳。

 

……こんなとこね」

 

 噛んで含めるように説明されるうちに、ネプテューヌの顔が見る見るユデダコのように真っ赤になっていき、目がグルグル回りだす。

 

 気付いたからだ。精神直結とは、人間でいうところの……。

 

「うん、つまり交尾行動、言いかえるならS○Xだね!」

 

 皆があえてボカしていたことをラチェットはドヤ顔で言い切った。

 

「あ、あ、あ、あううううう……!!」

 

 ネプテューヌは顔を押さえて床に崩れた。

 

 それに構わず、ラチェットは実に良い笑顔で話し続ける。

 

 この軍医、自重しない。

 

「いや、いいじゃないか○EX! 恋人同士がする分には、実にKEN☆ZENだよ! ほら人間同士でするSE○と違って、妊娠する心配もないし、体は綺麗なままだし、いっそ楽しめば……ん? オプティマス、なぜテメノスソードを抜くんだい? っていうか顔がマジで顔剥ぐ5秒前、略してMK5みたいな感じですごく怖いんだが!? ちょ、お、オプティマス!? ま、待つん、だっばぁああああ!?」

 

 この後、ラチェットはリペアルーム送りになり、ネプテューヌとオプティマスはしばらくギクシャクしてましたとさ。

 

 めでたし、めでたし。

 

  *  *  *

 

 

「……ああ分かった。ユニにも伝えておく」

「どうしたの、スワイプ? お姉ちゃんたちから?」

「ああ、今日は泊まってくるそうだ。なんかラチェットがやらかして、その後始末だとか」

「そうなんだ。……ケイも仕事で出張してるし、今日は二人きりね」

「……お、おう、そうだな」

「…………ねえ、スワイプ?」

「なんだい、ユニ?」

 

 

 

 

 

 

「精神直結、しない?」

 

 

~~~~~

 

② 帰ってきた超次元ゲイム ネプテューヌ THE 『Q』TRANSFORMATION

 

 さて今回の超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATIONは、ディセプティコン基地の司令部から物語を始めよう!

 

 ここにメガトロンと三大参謀が揃っていた。

 

「ドウヤラ、オートボット ト 女神 ハ、今日モ ラブコメ ッテルヨウダ」

「は! 相変わらず下らないことをしておるな!」

 

 腹心サウンドウェーブの報告に、メガトロンは嘲笑を浮かべる……のだが、すぐに怪訝そうな表情になった。

 

「しかし、サウンドウェーブよ。お前は今次の作戦のために基地を離れているはずでは……」

「問題ない。ここは所謂メタ空間」

「サウンドウェーブ!? お前、何を普通に話しているのだ!?」

 

 突然エフェクトヴォイスを捨てた腹心に、メガトロンはオプティックを丸くする。

 

「何言ってるんですかメガトロン様。メタ空間なんだから、キャラ捨てても問題ないんですよ」

「いったい何を言っておるのだスタースクリーム!?」

「では我が君、私めが代表して今回のお題を発表したいと思います」

「ショックウェーブよ! お題とは何のことだ!?」

 

 混乱する主君を差し置いて、ショックウェーブはお題を言う。

 

「今日のお題は、『ディセプティコンに足りない物』でございます」

『ディセプティコンに足りない物~?』

「はい。我らディセプティコンが人気者になるために、我々に足りない物を考えるのです!」

「え、何なのだこの展開。皆なんかオカシイし。付いていけない俺が悪いのか?」

 

 勝手に進んでいく話に、メガトロンは戸惑うばかりである。

 そんな中、スタースクリームが手を挙げた。

 

「じゃあ、まずは俺な。やっぱり必要なのはニューリーダー! 今や変革の時、ディセプティコンは老いぼれていない新しいリーダーを求めている!」

「あ、やっぱお前は変わらないのな。ちょっとだけ安心」

 

 お馴染のことを言い出す航空参謀の顔面にフュージョンカノン(弱)を叩き込みながらも、メガトロンは実家のような安心感を得ていた。

 

 続いてサウンドウェーブが倒れ伏すニューリーダー(笑)を無視して手を挙げる

 

「イジェークト!」

「え、何それ掛け声?」

 

 驚愕するメガトロンを無視して、サウンドウェーブは話を続ける。

 

「ディセプティコンに足りない物、それは『萌え』だ」

『萌え~!?』

 

 ショックウェーブといつの間にか復活したスタースクリームが揃って首を傾げる。

 

 なおメガトロンは事態を静観することにした。

 

 サウンドウェーブは頷く。

 

「そうだ。思えばディセプティコンには萌えキャラが足りない!」

「あ~……まあ、関連するオートボット側は百花繚乱の女神とメーカーキャラがいるのにこっちは年増、チンピラ、オバハンだからな。アリスも離脱しちまったし」

 

 納得した様子のスタースクリーム。

 

「……萌えとは何だ?」

「萌えというのは、一種の俗語で、男心をくすぐられると込み上げてくる感情のことです。あまりにも多くの価値観を内包し定義は曖昧ですが、この場合は女性的な魅力と考えていただければよろしいかと」

 

 一方、よく分かっていないメガトロンにショックウェーブが説明する。

 

「そんなワケでここは一つ、私の部下あたりを人間型に改造して萌えキャラにしようと思う」

「いや、それは……どうだろう……」

「サウンドウェーブ、疲れているのか?」

 

 なんか凄いことを言い出したサウンドウェーブに、ショックウェーブと状況を理解できていないメガトロンがツッコミを入れる。

 だが、サウンドウェーブは止まらない。

 

「ラヴィッジを猫耳僕っ子に! レーザービークはツンデレ系鳥少女! さらにスコルポノックあたりなら健気系! そして、トゥーヘッドはツインテール真面目っ子だ!!」

「いやお前、ディセプティコンをどうする気だよ」

「トゥーヘッドの改造は、断固断るぞ」

 

 燃え上がるサウンドウェーブに、冷めた視線を送る参謀たち。

 

「それなら、5pb.を味方に! それで萌え指数がかなり上がる!」

 

 ――それが本音か……。

 

 楽屋ネタだからってキャラを投げ捨てて煩悩全開の情報参謀に、スタースクリームとショックウェーブは言葉を失う。

 他方、メガトロンは顎に手を当てて考え込んでいた。

 そして、おもむろに発言する。

 

「……思ったのだが、レイは、女性として魅力的ではないのか? あれはあれで美しい女だと思うのだが」

『え?』

「え?」

 

 突然の言葉に参謀たちは呆気に取られ、メガトロンはその反応に呆気に取られる。

 

「……ぶ、ヒャーッハッハッハ! ないない、ないですって! 生憎とあの女に『女』としての魅力はありませんって! なんせ年増ですからね!」

「統計学的に見て、もっと若い女性が好まれるのは確か。さらに外見年齢の割に落ち着きがなく、可愛いで攻めるにも、大人の魅力で攻めるのも中途半端。原作的にも●●(ネタバレにつき一応伏字)とカテゴライズされるキャラクターの中では不人気」

「論理的に考えると、少なくとも王道の萌えは外しているかと」

「……そんなもんか」

 

 三参謀に駄目だしされて、メガトロンは心なし残念そうだったが、すぐに考え直して獰猛に笑う。

 

「しかし考えてみれば、萌えとやらを持っていないと言うことは、俺が独り占めと言うことだな!」

『え』

「そうだろう? そもそもレイは俺の所有物なのだからな。俺の所有物を奪おうなどという愚か者が現れないのは、むしろ好都合よ!」

 

 自身たっぷりに胸を張る姿に、三大参謀はメガトロンのカリスマ性を再確認したような気がした。

 

 恐るべきは、メタ空間をよく分かってないのに、こう言い切ること。

 

「……メガトロン様。自分の言ってる意味、分かってます?」

「この愚か者めが! 俺は耄碌しておらんぞ! レイはこれからも俺の物と言うことだ!」

 

 ――あ、これ分かってない……。

 

 スタースクリームは、もう勝手にやってくれと大きく溜め息を吐くのだった。

 

 オチ? ああ? ねえよそんなもん。

 

 

~~~~~

 

③ ある日のディセプティコン

 

 ゲイムギョウ界のどこかにあるディセプティコンの秘密基地。

 その廊下を一体のディセプティコンが歩いていた。

 

 背に翼とブースター、顔には髭のようなパーツ、腰は曲がり杖を突いている。

 

 氷の中での長い眠りから目覚めたジェットファイアである。

 

 ジェットファイアは不思議そうに辺りを眺めながら、足を引きずるようにして歩いていく。

 

「ふ~む……ここはどこだ?」

「ジジイ! テメエ、なにほっつき歩いてやがる! 待機してろって言ったろうが!」

 

 頭の上にハテナを浮かべるジェットファイアに、後ろから急ぎ足で近づいて来る者がいた。

 航空参謀スタースクリームと砲撃兵ブロウルだ。

 

「お前らか。飯はまだか? 俺は腹が減ったぞ!」

「爺さん、さっき食べただろう?」

「お、そうだっだか?」

 

 ブロウルに支えられるジェットファイアを見て、スタースクリームは額を押さえる。

 

「まったくボケちまってもう……」

 

 深く排気するスタースクリーム。

 さもありなん、伝説の戦士という触れ来みのジェットファイアは、長年の凍結とエネルゴン不足、そしてセレブロシェルの影響で思考がおかしなことになっていた。

 

「ほい、それじゃあ爺さんいくぞ~」

「飯はまだか!」

「さっき食べただろう」

 

  *  *  *

 

 メガトロンは、司令部の玉座に腰かけていた。

 オプティックを瞑り、一見休息しているように見えるが、実際には様々な情報を整理しているだけだ。

 

 メガトロンのスケジュールに、安息の二文字はない。

 

 そのセンサーは常に油断なく、周囲を探っていた。

 

 だから、部屋に入ってきて自分に近づいてくるレイとフレンジーにも気付いていた。

 

「……レイか。何用だ?」

「お休み中のところ、失礼いたします。メガトロン様。……この子たちのことについてです」

 

 一礼してから、そう言ってレイが示すのは、ガルヴァとサイクロナス、それにスカージとその分身たちだ。

 

「そろそろ体も大きくなってきましたし、少し基地の外の世界を見せてあげたいんです。……テレビやインターネットばかりというのも、アレですし」

「ふむ、確かに。良いディセプティコンは、刺激の中で育つものだ。……しかし、外が安全でないのはお前も知っておろう?」

「ええ。ですので……フレンジーさん?」

「あいよー」

 

 レイの声に応えて、フレンジーが中央の円卓に備えられたホログラム発生装置にアクセスする。

 すると、基地のある島の様子が映し出された。

 

「この島の南側には観光地が広がっていますが、反面北側はほとんど開発されておらず、ヒトもいません。念の為夜間にしたうえで、護衛として何人かつけていただければ、問題はないかと……」

 

 レイの説明に、メガトロンは少し考え込む。

 そこでレイは、もう少しダメ押しをしてみることにした。

 

「これも、ガルヴァちゃんたちをより良き兵士に育てるためです。外の空気は大切ですよ」

 

 その言葉と、期待でオプティックを輝かせる雛たちに、メガトロンは腕を組んで厳然と言い放つのだった。

 

「…………いいだろう」

 

  *  *  *

 

 かくして、夜。

 

 島の北側には、崖に囲まれた小さな入り江があった。

 

 未だ人の手の入らぬ自然のままの入り江で、海岸には白い砂浜が三日月型に広がっている。

 海面に満月が映り込んでいるのが、何とも幻想的だ。

 

 そんな中、波打ち際ではガルヴァ、サイクロナス、スカージと分身たちの計9体の雛が遊んでいた。

 

 監督役は、バリケードとボーンクラッシャー、フレンジーだ。

 

 ガルヴァは波に逆らって泳いでいこうとしてバリケードにとっ捕まっているし、サイクロナスとフレンジーは海底を歩いて遊んでいて、スカージたちはボーンクラッシャーが作ってくれた砂山に登っている。

 

 レイは海岸の岩に腰かけ、雛たちが楽しそうに遊んでいるのを満足げに眺めていた。

 その恰好は、大人しめのセパレーツの水着である。色は黒で、アクセントとして薄青のラインが入っている。(選んだのはフレンジー)

 

「失礼するぞ」

 

 と、いつの間にか隣にジェットファイアが立っていた。

 基地を抜け出したのだろうか?

 

「隣に座っても?」

「どうぞ。私の許可なんかいりませんよ」

 

 言われて、ジェットファイアは手頃な岩にゆっくりと、「どっこいしょ」と声まで出して腰かける。

 レイは隣の老ディセプティコンに微笑みかけた。

 

「あなたも、ガルヴァちゃんたちのことが気になったんですか? さっきもメガトロン様が、様子を見に来ました」

「まあ、そんなトコだ……」

 

 ジェットファイアは、しばらくバリケードやボーンクラッシャーが海から上半身を出し、その体に雛たちが登るのを眺めていたが、やがて声を発した。

 

「不思議なもんだな。ディセプティコンってのは、あんまり子供を大切にしないもんだが」

「そうなんですか? ……あの子たちは、『オールスパークが最後に産み落とした子供たち』なんだそうです。だからかもしれませんね」

「…………」

「多分、私はその意味を正しくは理解していません。私に分かるのは、メガトロン様たちが、あの子たちのことを大切に思っていることだけです」

「いずれ、兵士にするとしてもか?」

「だからこそじゃないでしょうか。……私は、それだけではないとも信じていますけど」

 

 静かな声のレイに、ジェットファイアは納得がいったのか、いかないのか、考え込むように髭を撫でている。

 

「お~い、レイちゃ~ん! レイちゃんも遊ぼうぜ~!」

 

 フレンジーがバリケードの肩から手を振っていた。

 雛たちもキュイキュイと鳴いている。

 

「あ、は~い。今行きまーす! じゃあジェットファイアさん、また後で」

 

 フレンジーや雛たちに呼ばれて、レイは立ち上がるとジェットファイアに軽く頭を下げてから海に走っていった。

 

「……俺の知るディセプティコンとは、だいぶ勝手が違うようだ……」

 

 ジェットファイアは、口の中で小さく呟く。

 

「ああ! こんなトコにいやがった!」

 

 と、ジャングルの中からスタースクリームが姿を現した。

 いつの間にか姿を消したジェットファイアを探していたらしい。

 

「おお、お前か若いの。いい夜だな」

「いい夜だな、じゃねえよ! 面倒かけんなつっただろ!!」

 

 呑気なジェットファイアに、スタースクリームは怒鳴り声を上げる。

 だが、老ディセプティコンに堪えた様子はない。

 

「こんな夜は、ひとっ飛びしたくならないか?」

「いやだから、俺に面倒をだな……」

「俺の若いころは、面倒くさい計器や制御装置に頼らず、勘で持って大空を飛びまわったもんだ」

「あーもう! とにかく帰るぞ!!」

 

 スタースクリームに支えられてジェットファイアは立ち上がってヨロヨロと歩き出すのだった。

 

「ところで若いの。飯はまだか! 俺は腹が減ったぞ!」

「さっき食ったろうが!!」

 

 

~~~~~

 

④ ハグレ者珍道中

 

「ルウィー、キター!」

「この国はロリばっかだな。しかし、教祖は中々のオッパイだぜ!」

「アンタたちね……」

 

「ラステイション、キター!」

「この国の女神は公式にはCカップらしいが、見たとこDはあるな。妹の方も前途有望とみた!」

「アンタたちね……」

 

「プラネテューヌ、キター!」

「ここの女神は、結構なオッパイ揃いだな! 正直性欲を持て余す……あれ、なんだろう寒気が……」

「アンタたちね……」

 

「リーンボックス……アリス、大丈夫か?」

「……ん、正直、まだ心の整理がついてないわ」

「まあ、しゃあねえわな。女神やオートボットと出くわさねえようにルート割り出しとくぜ」

「ああ。物資を補給したら、この国を離れよう」

「アンタたち……ええ、ありがとう」

 




① この短編は青少年のなんかに配慮しており猥雑は一切ない
精神直結の元ネタ? ああ、(トランスフォーマーには)ねえよそんなもん! ……攻殻機動隊の昔より、生体プラグとかが登場する物語では、思考を直接つなぎ合うのが、S○Xの代替行為として使われてまして(有名所だとニンジャスレイヤーのLAN直結)、これならトランスフォーマーと女神でも擬似的にニャンニャンできるのではないと……。

なお、ベールやユニが精神直結してる場面を読みたい方はワッフルワッフルと(略)

② 帰ってきた超次元ゲイム ネプテューヌ THE 『Q』TRANSFORMATION
Q:もう二度とやらないって言ったじゃないですか!

A:思いついたんだからしょうがない。

実際のところ、書きたかったのは「レイが人気がない? ラッキー! 俺が一人占めじゃん!」と言っちゃうメガトロンだったり……。

③ ある日のディセプティコン
メガトロンによって締められ、雛育成のためにまとまってる今のディセプティコンは、昔を知るジェットファイアから見ると……というお話。

ジェットファイアの世話役をやるならスタスクしかいません(G1的な意味で)


④ ハグレ者珍道中
オチ的ななんかが欲しくて、急遽書いた四コマ漫画的ななんか。

ハグレ組はハグレ組で楽しくやってるという話。

次回はサウンドウェーブの話を予定していますが、来週旅行に行くので遅くなるかもしれません。

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