超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

91 / 203
ゲハバーンの話は今回で終わるはずだったけど、まとめきれなかったよ……。

そんなワケで分割。


第77話 女神殺しの魔剣 part3

 ネプギアは真っ暗闇の中をひたすらに走っていた。

 

 自分が何処に向かっているのか、そもそも何処にいるのかも分からない。

 

 ひた走るネプギアの周囲に、いくつもの顔が浮かび上がる。

 

 大人、子供、老人、若者、男、女、痩せている者、太っている者……いずれも激しい憎悪と苦悶に満ちた表情を浮かべて同じ言葉を繰り返す。

 

 女神を殺せ。女神を殺せ。女神を殺せ。

 

「いや! そんなことできない!!」

 

 頭を抱えて絶叫するネプギアだが、顔たちは永延と呪詛を吐き続ける。

 

 女神の科した税のせいで、私の一家は飢え死にした……。

 女神の起こした戦のせいで、俺は殺された……。

 女神の定めた法のせいで、僕は処刑された……。

 

 女神のせいで、女神のせいで、女神のせいで……。

 

「やめて!」

 

 女神なんかいらない。女神なんか必要ない。女神なんか殺してしまえ。

 

 やがて闇に浮かんだ無数の顔は一つに融け合い、巨大な顔へと姿を変える。

 

 古代の仮面を思わせるその顔の表情は底なしの狂気に歪み、両眼は果てしない憎悪によって真っ赤に輝いていた。

 もし、ネプギアに僅かでも余裕があれば、この顔がディセプティコンのエンブレムに似ていることに気が付いたかもしれない。

 しかし、そんな余裕は欠片も無かった。

 その顔は、遥かな闇の彼方から轟くかのような、悍ましさを孕んだ声でネプギアに囁きかける。

 

 女神を殺すのだ……。それがこの剣を持つ者の宿命……。

 

 絶えることのない怨念はネプギアの精神を冒し、その隅々に至るまで浸透していく。

 

「め、女神を、殺す……」

 

 女神を殺せ、殺せ、殺せ……! 一人として残すことなく……!!

 

「女神を……殺す!」

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌ山中の遺跡。

 かつて、トランスフォーマーの賞金稼ぎロックダウンの一味がアジトとして使っていたここを、ハイドラは再利用していた。

 

 銃を手にした兵士たちが警戒する入り口に、一台のトラックが近づいて来た。

 

 赤と青のファイヤーパターンのトレーラートラックで、大きなコンテナを牽引している。

 

 兵士たちの横を素通りして遺跡の中に入ったトラックは、やがて広間でコンテナを切り離し、全体をギシギシと軋ませながらオプティマス・プライムへと変形する。

 

「上手くいったようだな……」

 

 いつの間にかオプティマスの足元に、マジェコンヌが立っていた。

 オプティマスはぎこちなく首を動かしてマジェコンヌを見下ろすと、胸の装甲を展開し始めた。

 火花を散らしてパーツが寸断され、移動し、現れたオプティマス……のような何かの胸の内には無数のコードに繋がれて、顔の無い仮面の男が収まっていた。

 

 トランスフォーマーに有るべきスパークの代わりにハイドラヘッドがそこにいた。

 

「ははは! いやトランスフォーマーの視点というのは、面白い物だな!」

 

 笑いながら特殊なスーツからコードを切り離し、ハイドラヘッドは軽やかに地面に降りる。

 

「最高だぞ、このネメシス・プライムは!」

「お気に召したようで、何より」

 

 はしゃぐハイドラヘッドに対し、マジェコンヌはそっけなく返す。

 

 このオプティマスを模したロボット、ネメシス・プライムは、マジェコンヌが持ち込んだデータを基に、遂に完成した人造トランスフォーマーの試作一号機である。

 頃合いを見計らってマジェコンヌの後ろから赤い髪に眼鏡の女、マルヴァが現れた。

 

「ヘッド。調整が終わりました。実戦に出すには、まだ少し時間がかかりますが、これであの女神候補生は我々の奴隷です。」

「よろしい。これで我々は大きな戦力を得たことになる。……そして、『これ』によって粒子変形の秘密を解き明かし、さらなる戦力を得る!」

 

 マルヴァの言葉を受け、ハイドラヘッドがパチリと指を鳴らすとコンテナが開く。

 中には、拘束された状態のままのトゥーヘッドが横たえられていた。

 マジェコンヌはトゥーヘッドの傍まで近づくと、その表面を撫でてから口角を吊り上げた。

 

「私の持っている人造トランスフォーマーのデータは粒子変形についての部分が不完全だったからな。これで、完全なデータが得られる」

 

 人造トランスフォーマーについて、マジェコンヌの持っていたデータは不完全な物だった。

 それだけではなく、ディセプティコンの本拠地や、詳しい目的などについても『知らない』とされている。

 

「そこなんだけど、何故、粒子変形に拘るの? 従来通りの変形ではダメなの?」

「普通の変形では並の科学者や技術者では再現し切れないほど複雑な上に、どうしても高コストになってしまう。粒子変形の方が簡単かつ安価で済むのさ。……量産にはその方が都合がいいだろう?」

 

 マルヴァの問いにマジェコンヌが噛んで含めるように説明すると、マルヴァも納得して頷く。

 

 その時、警報が鳴り響いた。

 

『緊急警報! 緊急警報! オートボット接近! 繰り返す、オートボット接近!』

「オートボットだと? 何故、ここが分かったんだ?」

 

 ハイドラヘッドは首を傾げるが答える者はいない。

 ……マジェコンヌが薄く嗤っていることに気付く者もまた。

 

「まあいい。マルヴァ、例の物はいつ発進できる?」

「今少し時間がかかるようです」

「仕方ないな、時間を稼ぐぞ! 私もコイツで出撃する!」

 

 矢継ぎ早に指示を出したハイドラヘッドは腕に着けた装置を操作して、背後で屈んでいるネメシス・プライムに信号を飛ばす。

 するとネメシス・プライムは手を伸ばしてハイドラヘッドを操縦席……便宜上そう呼ぶ……まで持ち上げる。

 操縦席に収まったハイドラヘッドのスーツにコードが接続され、これによりハイドラヘッドの思考と機体の動きをリンクさせる。

 立ち上がったネメシス・プライムの眼に光が灯った。

 

「ネメシス・プライム、行きまーす!」

「……なんだそれは?」

「いや、一度やってみたくてね!」

 

 ノリノリで出撃するハイドラヘッドに、マジェコンヌは冷ややかな視線を送るのだった。

 

  *  *  *

 

「おい、移動だ。被検体は安定しているか?」

「ああ、問題なく移動させられる」

 

 基地の一室で、ネプギアは椅子に座らされていた。

 手足は拘束され、頭部には周囲の機器とコードで接続されたヘルメットが被せられている。

 周囲では科学者と思しい白衣の人間たちが様々な機器を操作していた。

 ネプギアの隣には、ゲハバーンがガラス製のシリンダーに収められ、妖しく輝いていた。

 

 その輝きが、何かに反応するように強くなる。

 ネプギアは露出した口元をゆっくりと動かした。

 

「女神を……殺す」

 

  *  *  *

 

 遺跡の近くの道を、ビークルモードのオプティマス率いるオートボットが走り、その上をネプテューヌ、ベール、ユニ、ロム、ラムら女神たちが飛行していた。

 アイエフとコンパもそれぞれのパートナーに搭乗している。

 

「ネプギアの奴、敵に操られるなんて、一発喝を入れてやらないとね!」

「わたしたちでネプギアの目を覚まさせてあげましょう! ね、ロムちゃん!」

「うん、ラムちゃん! 頑張ろう!」

 

 気合いを入れる女神候補生たちにベールは遠くを見るような目で薄く微笑む。

 彼女たちは、ネプギアを心配して各国から駆け付けたのだ。

 

「頼もしいですわね。……それにしてもネプテューヌ、確かですの? この先にネプギアちゃんがいると言うのは」

「正直、分からないわ。……でも、ダメ元で行ってみるしかない」

 

 隣を飛ぶベールの問いに、ネプテューヌは前方を見据えて答える。

 罠だという可能性も捨て切れない。

 それでも、無視するという選択肢はなかった。

 

 やがて前方にピラミッド状の遺跡が見えてきた。

 その周辺に機械に無理やり手足を付けたような自動兵器と、パワードスーツのハイドラ兵が展開していて、中央にオプティマスのビークルモードに酷似したトレーラートラックがいた。

 

「フフフ、久し振りだねえオプティマス」

 

 ハイドラ基地側のトラックから声がしたかと思うと、ギシギシと軋みながらロボットへと変形する。

 

 その姿もまた、オプティマスと瓜二つだった。

 

 胸の装甲が開き、内部のハイドラヘッドが顔を見せる。

 

「ハイドラヘッド……!」

「どうかな、オプティマス? ……このネメシス・プライムは! 君をモデルに作った、人造トランスフォーマーだよ。これで我々は、対等と言うワケだ」

 

 ハイドラヘッドはくぐもった笑いをもらす。

 

「加えて、今はこちらにも女神と女神殺しが有る。これでいよいよ君と戦争ができる!」

「何よアンタ! そこまでして女神を殺したいワケ!?」

 

 親友を操られて怒り心頭のユニが声を張り上げる。

 ベールやロム、ラムも鋭い視線をハイドラヘッドに向けるが、本人は余裕を崩さない。

 

「もちろん、殺したいね。……君たちは感じたことはないかな? 女神という存在が、人間を縛り、その可能性を狭めていると! 女神が法を決め、規律を課し、世界を創る。それに人間が従う。だが女神の治める世界は……あえて言おう! 温いと!!」

「……温い?」

 

 理解できずオウム返しに聞くネプテューヌに、ハイドラヘッドは我が意を得たとばかりに大きく頷く。

 

「そうだ! 人間は本来、争う生き物だ! 傷つけ合い、殺し合う生き物だ! それこそが自然なのだ! だが女神は優しさを、慈愛を、友情を押し付け、平和と言う名の退廃に貶めた! 女神さえいなければ、人はもっと……強欲に、凶暴に、残酷になれる……女神を抹殺した時こそ、人間は真の自由を手に入れる! 人間の、人間による、人間のための世界が始まるのだ!!」

 

 堂々たる大演説。

 周囲のハイドラ兵たちが歓声を上げ、拳を突き上げる。

 異様な光景に表情を険しくする女神とオートボットだが、ネプテューヌだけは訝しげに首を傾げた。

 

 プラネタワーに現れた時と言っていることが違うし、あのゾッとするような悪意を感じない。

 まるで、上手いが感情のこもっていない芝居を見ているかのようだ。

 

 だが、今は気にしている暇はない。

 

「言いたいことはそれだけかしら? 生憎とあなたたちの思想に興味はないわ」

「…ギ…ア…『を返してもらう!!』」

 

 ネプテューヌの言葉を継いで、バンブルビーが吼える。

 ベールも長槍を構えて臨戦態勢を取る。

 

「あなた方だけで、わたくしたち全員を相手にするおつもりですの? それはいくらなんでも思い上がりが酷すぎるのでは?」

「もちろん、我々だけで全員を相手取るのは不可能だろう。……だから。もう一手打たせてもらう! ……来い、ロックダウン。仕事だ」

 

 ハイドラヘッドの言葉に答えるが如く、遺跡の上にポンチョを着込んだトランスフォーマーの賞金稼ぎと、その配下の傭兵、犬型金属生命体のスチールジョーの群れが現れる。

 

「オプティマス、相変わらず女神と仲良しゴッコのようだな……。ヤブ医者のラチェットと小娘どもにも、腕の礼をたっぷりとしてやる」

 

 ゴキリと首を鳴らし、ロックダウンは両腕を武器に変形させる。

 

「では、前置きはこれぐらいにしよう。これがゲームなら、イベントデモが長くてプレイヤーが飽きてるところだ。……攻撃開始!」

 

 ハイドラヘッドの号令に合わせ、ハイドラの兵器と傭兵たちが銃撃を始める。

 

「オートボット、攻撃(アタック)! ネプギアを取り返すぞ!」

『おおー!!』

 

 オートボットや女神、アイエフとコンパもオプティマスの号令の下、各々の武器を手に敵に突っ込んでいく。

 

 先行するのはやはりオートボットたちだ。金属製の頑丈な体で銃弾を受け止め、女神や人間たちを守る。

 女神たちは銃弾をかわし、あるいは障壁で防ぎながら天高く舞い上がる。

 

「シレットスピアー!」

「エクスマルチブラスター!」

『アイスコフィン!』

 

 地上の敵に、長槍の投擲が、光線が、氷塊が襲い掛かる。

 

 アイエフやコンパは、サイドスワイプの後ろに隠れながらも、的確に敵を狙い撃つ。

 

「ラチェット、いい加減に貴様との因縁も終わりにしてやる!」

「それはこちらの台詞だよ! 前回と同じくEMPで眠れ!」

 

 ロックダウンのフックをかわしてEMPブラスターを発射するラチェット。

 見事命中するが、ロックダウンの着込んだポンチョは、EMPを弾いてしまう。

 

「俺が二度も同じ手を食うと思ったのか? この外套は絶縁性だ!」

「の、ようだね。……では直接切り刻むとしよう!」

「はッ! 正義の味方の台詞じゃないな!」

 

 回転カッターとフックの応酬を繰り広げる二人。

 

 そしてオプティマス・プライムとネメシス・プライムは戦場の真ん中で対峙していた。

 

「轟く銃声と怒号。硝煙と炎の臭いでむせるようだ。……素晴らしい、これこそ戦争だ」

 

 ネメシス・プライムは両腕を大きく広げ、芝居がかった調子でオプティマスに話しかける。

 

「さてと、そっくりそのまま同じ外見なのもややこしいし、お色直しだ」

 

 言うやネメシス・プライムの表面が炎に包まれ、塗装を燃やし尽くす。

 そして、闇の中に浮かぶ鬼火を想起させる黒と薄青のファイヤーパターンと、ディセプティコンの物とよく似た赤いカメラレンズが特徴的な姿へと変わる。こうして会話している間にもバトルマスクを外さないこともあって、どこか幽鬼めいた印象を受ける。

 

「さあオプティマス、戦争をしよう!」

「……いいだろう。だがその前に一つ言っておくことがある」

 

 嬉しそうなネメシス・プライムに対し、オプティマスは怒気を立ち昇らせて低い声で返す。

 

「それは、貴様の悪趣味には、もうウンザリだと言うことだ!」

 

 瞬間、オプティマスは巨体からは想像もできないスピードでネメシス・プライムに向けて斬りかかる。

 ネメシス・プライムは両腕のエナジーブレードを起動して交差させ、それを受け止める。

 両者の力は全くの互角で、硬直状態に陥る。

 

「貴様のやっていることは、ただの猿真似だ! そのガラクタはトランスフォーマー足りえない!」

 

 いったん距離を取ったオプティマスは、レーザーライフルを抜き撃つ。

 狙い違わず命中……とはいかず、ネメシス・プライムの前面にバリアが張られ、光弾を防ぐ。

 

「どうかな? ネメシス・プライムには君より優れている点もある。……それは君たちが生きていくのに必要な機関を、全て武器に置き換えられる点だ!」

 

 ネメシス・プライムが肩や腹の装甲を展開する。

 両肩からキャノン砲、腹部にマイクロミサイルランチャー、腕には連発式ロケット砲、さらに脚部にパルスマシンガン。

 各種兵器が体内からニョキニョキと生えてきたかと思うと、それらが全てオプティマスに向けて発射される。

オプティマスは盾を構えて頭と胸を守りながら弾幕の中を直進して、ネメシス・プライムにタックルし、自らのまがい物を押し倒し、そのままマウントポジションで顔面を殴りつける。

 だがネメシス・プライムの頭部が四つに割れかと思うと、大経口のビーム砲が現れ、オプティマスに向かって発射される。

 

 ネメシス・プライムには、自分で考える頭脳さえ必要ないのだ。

 

 吹き飛ばされ倒れたオプティマスを見て、ハイドラヘッドは哄笑する。

 

「アーハハハ! どうだい、オプティマス! 人造トランスフォーマーも中々だろう?」

「……ふざけるな……!」

 

 ゆっくりと立ち上がったオプティマスは剣を正眼に構え、吼える。

 

「スパークの有るべき場所には貴様が収まり、思考するべき頭には武器が詰まっている……そんな物がトランスフォーマーであってたまるものか! オートボットもディセプティコンも、ネプギアの生み出したスティンガーも、自分の意思を持っていた! 『それ』のような、意思のない人形ではない!」

「……はッ! 意思が何だって言うんだ? 戦場で戦う兵士に意思なんか必要ないだろう?」

 

 吐き捨てるように言ったネメシス・プライムに、オプティマスは激しい怒りと……それから僅かな憐みを込めた視線を送る。

 

「意思も魂も持たないのなら、それはもう兵士でも、戦士でもない。……それは、単なる『兵器』だ」

「ッ……!」

 

 ネメシス・プライム、いやハイドラヘッドが動揺するような素振りを見せる。

 だが一瞬後には余裕を取戻し、嘲笑する。

 

「……そうそう、ネメシス・プライムには、もう一つ利点がある。唯一無二の存在である君と違って、数を用意できると言うことだ!!」

 

 いつの間にか、オプティマスとネメシス・プライムの周囲に五台のトレーラートラックが現れていた。

 

 黒と薄青のファイヤーパターンのトラックだ。

 

 それらが全て、ギィギィと軋み火花を散らしながらネメシス・プライムへと変形する。

 

 さすがにオプティックを見開くオプティマスだが、闘志は萎えない。

 

 ハイドラヘッドの乗る一号機の手振りに合わせて二号機と三号機がエナジーブレードを展開して左右からオプティマスに飛びかかる。

 オプティマスは二号機に向き合い、三号機に背を向ける。

 その隙を逃さず三号機が背中に斬りかかる。

 

「クロスコンビネーション!」

 

 次の瞬間、閃光のような速さで飛来したネプテューヌが三号機に連撃を浴びせる。

 たまらず後ろに跳びのいた三号機を捨て置き、ネプテューヌは二号機を蹴り飛ばしたオプティマスの傍に飛ぶ。

 

「こいつらは意思も魂もないお人形。……それに、もう一つ持っていない物があるわ」

「ああ、こいつらには……君がいない。それは無限大の差だ」

 

 背中合わせに笑み合う二人は、絆の証となる言葉を叫ぶ。

 

「行きましょうオプっち! この茶番に幕を引いてあげましょう!」

「ああ! 君と共になら、こんな木偶どもなど恐れるに足らん!」

 

『ユナイト!』

 

 ネプテューヌの身体が光に包まれ、四枚の前進翼を備えた未来的な戦闘機へと変ずる。

 戦闘機は幾つかのパーツに解れてオプティマスの体へと合体していく。

 

 機体後部とブースターはジェットパックとして背負い。

 

 機首は二つに割れてビーム砲『プラネティックキャノン』とビームガトリング『ヴァイオレットバルカン』として両腕に合体。

 

 余剰パーツが肩や下腿にアーマーとして装着。

 

 そして胸に合体したキャノピー部分が縦に割れ、オートボットのエンブレムと丸っこく象形化されたNの字が重なったマークが出現。

 

 これぞ、オプティマスとネプテューヌの絆の証、融合戦士ネプテューンパワー・オプティマス・プライムの勇姿である!

 

 ネメシス・プライムはオプティマスから感じる絶大なパワーにたじろぐが、やがて堪え切れずに叫ぶ。

 

「……何だそれは! オプティマス、君にはガッカリだ!! 君はもっと、純粋な戦士だと思っていたのに、戦場で愛だの絆だのに縋るとはな!! 」

「愛や絆は、揺るぎなく私の力の源だ!!」

『その通りよ。今までも、これからも、変わることなく!!』

 

 ハイドラヘッドの妄言を、オプティマスとネプテューヌはバッサリと斬り捨てる。

 

「ならば……ここで死にたまえ!! 全機、最大火力!!」

 

 一号機の指示に合わせて周囲のネメシス・プライム全機があらゆる火器を発射。

 砲弾が、ロケット弾が、ミサイルが、オプティマス目がけて殺到する。

 

 しかしオプティマスは全周囲に障壁を展開、初弾を凌ぎ、その隙にブースターを吹かして飛び上がるやビームキャノンとビームガトリングを掃射する。

 

 ネメシス・プライムたちはバリアを張って降り注ぐ光弾を防ぐが、次の瞬間急降下したオプティマスが六号機に砲身を突き刺すような勢いでプラネティックキャノンを突き付け発射。六号機は反応する暇もなく爆発四散した。

 

 振り向きざまに背中のジェットパックから多弾頭ミサイルを発射。二、三、四号機は飛び退いてかわしたが、六号機は間に合わずに爆炎の中に消える。

 

 さらに手の中に剣を召喚して残る四機の張る弾幕を突っ切り、四号機に大上段から斬りかかる。

 

 四号機はバリアを張って斬撃を防ごうとするが、テメノスソードは容易くバリアを切り裂き、四号機の脳天から股間まで両断する。

 

「……ッ! ここまで圧倒的とは……!」

 

 瞬く間にネメシス・プライムたちを倒していくオプティマスに、ハイドラヘッドは戦慄する。

 

「そろそろ負けを見とめたらどうだ!」

『あなたに勝ち目はないわ! 大人しくネプギアを返しなさい!』

 

 仁王立ちするオプティマスと、彼と一体化しているネプテューヌの言葉に、しかしハイドラヘッドは敗北を認めない。

 

「まだだ! ここからが……」

 

 その時、遺跡の上部で爆発が起こり、そこから飛び出した何かがオプティマスとネメシス・プライムの間に降り立つ。

 

 それは……。

 

『ネプギア!?』

 

 そう、女神化した状態のネプギアだ。

 だが、その手には禍々しく輝くゲハバーンがしっかりと握られていた。

 

「女神を……殺す!」

 

 ネプテューヌが話しかけるよりも早く、ネプギアはゲハバーンを振りかざしてオプティマスに向かっていく。

 

「くッ! やはり操られているのか!」

 

 オプティマスはゲハバーンをテメノスソードで受け止めるが、ネプギアは信じがたい斥力でオプティマスを押し始める。

 

「なんだ!? 誰が女神を出撃させた!?」

 

 一方で、ハイドラヘッドも突然の乱入者に困惑していた。

 基地内部に通信を飛ばし、ことと次第を確かめようとする。

 

「私だ! マルヴァ、いったいどうなっている!?」

『こちらマルヴァ。そ、それが、いきなり女神が拘束を破って飛び出していって……現在、女神はこちらのコントロールを受け付けていません!』

「なんだと……!? いったいどうなっている……?」

 

 そうしている間にもネプギアはオプティマスへの攻撃を緩めない。

 

「女神を殺す。女神を殺す……!」

 

 同じ言葉を繰り返しながら、何度も何度も剣を振り下ろす。

 

『オプっち! ネプギアの狙いは私みたい。いったん分離しましょう!』

「ネプテューヌ、しかし……」

『お願い、オプっち。ここは任せてちょうだい』

「……分かった。では、ネメシス・プライムは私が引き受ける!」

 

 オプティマスの体から分離(セパレート)したパーツが戦闘機に再合体するや、光に包まれて女神の姿に戻る。

 

「ネプギア……」

「女神……殺す。殺す!」

 

 光のない目と、表情の消えた顔で、同じ言葉を壊れたレコーダーのように繰り返すネプギア。

 そんな妹を見て、ネプテューヌは意を決し太刀を構える。

 

「ネプギア……今、助けてあげる!」

「女神を殺す! はぁああああ!!」

 

 姉妹の握る武器が交錯し、衝突するパワーが閃光を生み出す。

 

 女神殺しの魔剣を巡る、最後の戦いが始まった。

 




次回、ネプギア説得祭り。

今回の解説。

ネプギアの見た幻(?)
またお前か。

マジェコンヌの『知らない』こと。
ディセプティコンの本拠地、詳しい目的。
仮面の女の正体。
粒子変形についての情報。
……都合よすぎです。

ネメシス・プライム
実質、乗り込み式の戦闘ロボット。ハイドラヘッドが乗っているの以外は無人機。
『炎に包まれて正体を現す』『全身兵器の塊』『バリア装備』と、昭和版メカゴジラのオマージュが多いです。武装のモチーフはビックオー。
『実は複数いる』『腕にロケット砲』なあたりはショッカーライダーオマージュ。
頭の中に武器は、分かりやすく『コイツは単なるロボット』だと思ってもらうための演出であり、スティンガーやトゥーヘッドが自由意思を持っていることとの対比を狙っています。

演説に悪意のないハイドラヘッド。
これは彼に悪意がないから……ではなく、彼の正体に関する伏線……にできたらいいなぁ。

では次回こそ、ゲハバーンの話は終わり……の、はずです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。