超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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副題『暗躍する者たち』

会話ばっかりの回です。


第76話 女神殺しの魔剣 part2

 ディセプティコンとの戦いの最中、突如暴走したネプギア。

 彼女は最愛の姉であるネプテューヌを傷つけ、いずこかへと姿を消した。

 そして……。

 

  *  *  *

 

 オートボット基地、司令室。

 司令室のモニターには、オートボット各員の顔、特殊な電磁波で拘束されたトゥーヘッド、そして自室のベッドに寝かされたネプテューヌと、彼女を看病するコンパが映し出されていた。

 

「ゲハバーン?」

 

 オプティマスの声に教会から通信してきているイストワールは頷く。

 

『はい、ゲハバーンは女神殺しと言われる伝説の魔剣です。古代の女神の怨念が宿っているとも、悪に堕した女神に迫害された人々の無念がこもっているとも言われ、その剣で命を奪われた者は魂を剣に喰らわれると言われています』

「以前やったゲームにも出ていたアレか。実在していたとは……」

『私も、おとぎ話の類かと思っていました。しかし、過去の記録を調べてみたところ、あの剣はゲハバーンで間違いなさそうです』

 

 イストワールの言葉にオプティマスは元から難しい表情だったのが、さらに険しくなる。

 オプティマスの隣に立つラチェットは、イストワールに継いで報告を始めた。

 

「その魂を喰らうという伝説と関係があるのかは分からないが、ネプテューヌ君の体内に存在するシェアエナジーが、ほとんど消失している。それこそ、急に倒れてしまうほどに。今はシェアが供給され、回復に向かっている」

 

 ラチェットは淡々と続ける。

 今は感情的になる時ではない。

 

「それと、ネプテューヌ君の傷口から微量のダークマターが検出された。……それも信じがたいほど高濃度の。恐らく、あの剣に付着していたのだろう」

 

 暗黒物質(ダークマター)とは、未知のエネルギー物質であり極めて貴重な鉱石で、ほとんど分かっていることはない。

 メガトロンがエネルギー源にしていると言う話もあるが、詳しいことは不明だ。

 

「……分かった。では次にネプギアの行方だが……」

 

 オプティマスの声に応えて、ラチェットの後ろに控えていたアーシーが一歩前に出た。

 

「目下、私とプラネテューヌ教会の諜報部が全力を挙げて捜索しているけど、未だ見つかっていないわ。……どこに消えたのか、皆目見当もつかない」

「……引き続き捜索を頼む。ジャズ、氷結したトランスフォーマーの回収はどうだ?」

『何せ、地下の奥深くだからな。回収には骨が折れそうだ』

 

 画面の向こうのジャズの答えに、オプティマスはもう一度頷いた。

 

「引き続き頼む。それとホイルジャック、例のディセプティコンの様子はどうだ?」

『大人しくしてますよ。軽く調べてみましたが、粒子変形こそこちらの技術の流用だが、他はあちこちアレンジされてて、いやはや、やはりショックウェーブは天才だね』

 

 トゥーヘッドを調べているホイルジャックの報告を受けて、オプティマスは厳かに支持を出す。

 

「作戦を遂行中の皆も、各国の皆も、警戒を怠らないようにしてくれ。メガトロンは、この期に必ず行動を起こすはずだ。……私もこれから、ネプギアの捜索に加わる。以上だ」

『待った! オプティマスはネプテューヌといっしょにいてやれよ』

『そうだな。こんな時は、恋人の傍にいてやれ』

 

 ジャズとアイアンハイドが口々に言うが、オプティマスは首を横に振る。

 

「いや、こんな時こそ私は陣頭指揮を取る。……ネプテューヌのためにも。以上、通信終わり」

 

 それだけ言って、オプティマスは通信を切る。

 ネプテューヌの傍にいたいのはやまやまだが、オートボットの総司令官として、すべきことは多くある。

 

  *  *  *

 

 「ふ~む、ま~た抱え込んでるねえ……」

 

 通信を終えたホイルジャックは、悪癖が出た総司令官に排気しつつ振り向く。

 

 ラボの中央ではトゥーヘッドが逃げられないように粒子変形を封じる特殊な電磁波を発生させる装置に乗せられて拘束されており、その前にプルルートが座り込んでいた。

 

「プルルート君、君はネプギア君を探しに行かなくていいのかね?」

 

 ホイルジャックがたずねると、プルルートは顔だけそちらに向けて答えた。

 

「ギアちゃんは~、ビーたちが探してるから~、きっと大丈夫~。あたしは~ここでショッ君を待つよ~」

「ショックウェーブを?」

「うん~。トゥー君は~、ショッ君のトモダチだから~、きっと助けに来ると思うんだ~」

 

 ノンビリとしたプルルートの言に、ホイルジャックは首を捻る。

 あのショックウェーブが、仲間を助けに来るだろうか?

 ホイルジャックの疑問を察したのか、プルルートはらしくもない神妙な顔で続ける。

 

「来るよ~、きっと来る~。……もしこないなら~、何か理由があるんだと思う~」

 

 プルルートの言葉に、ホイルジャックは顎を撫でて考え込む。

 確かに、トゥーヘッドはディセプティコンにとっても漏洩したくない技術の塊。

 それを何の手も打たずに放置しておくとは、考えにくい。

 オプティマスに相談しようにも、彼は作戦行動中だ。

 

「……仕方がない。警戒レベルをさらに上げるか」

 

 ホイルジャックは手元の機械を操作して、電磁波を発生させている機械ごとトゥーヘッドを移動させる。

 その後ろをプルルートがトコトコと付いてきた。

 

「トゥー君を、どこへ連れてくの~?」

「スティンガーの安置されている区画だよ。あそこは警備が厳重だからね……」

 

 廊下を渡り、大きく重い扉を開けると、広い部屋の中にバンブルビーのデータを基に作り出された人造トランスフォーマー、スティンガーが横たえられていた。

 ホイルジャックはスティンガーから少し離れた場所に、装置ごとトゥーヘッドを置く。

 

「さあ、外へ出よう。ここは私しか開けることができないから、安心だよ」

「……うん」

 

 少し考えた末、プルルートは納得して部屋の外に出る。

 

 

 

 

 ……しばらくして、捕らえられてから今まで、一切の動きを見せなかったトゥーヘッドの目に光が灯る。

 

「…………」

 

 トゥーヘッドは二つの頭に一つずつある目で、隣に置かれたスティンガーを不思議そうに見ていた。

 

「これが、私の技術の基になった人造トランスフォーマーの第一号か……」

 

 ふと呟くトゥーヘッド。

 自身はあくまでもマスターたるショックウェーブの作品であるが、大本となった存在には興味があった。

 

「試してみるか……」

 

 少しだけ精神を統一し、手の先から機械触手を伸ばす。

 これは精密作業などに使用するマニピュレーターで、粒子変形によるものではなく、トゥーヘッドに通常の変形に近い方法で展開している。よって、電磁波に阻害されることはない。

 機械触手は、スティンガーの頭部まで伸びていくと、後頭部にあるソケットに接続される。

 

「思った通り、規格は同じだな……ついでだ。コイツについて、もう少し情報を収集していこう」

 

 真新しい情報があるとも思えないが、せっかく機会が来たのだ。土産は、多い方がいい。

 ほとんど機能していない電脳を探り、さらに全身のデータを吸い取っていく。

 

 ――君は誰ですか?

 

「……何?」

 

 声が聞こえた。

 この場にはトゥーヘッドと機能停止したスティンガーしかおらず、通信も開いていない。

 と、すると……。

 

「……お前か」

 

 ――はい、スティンガーは久し振りの話し相手に若干興奮しています。……繰り返します、君は誰ですか?

 

「……私はトゥーヘッド。ドリラー、あるいは実験体46号と呼ばれたこともある。お前の……同類だ」

 

 ――トゥーヘッドは、人造トランスフォーマーなんですね。製作者は誰ですか?

 

「……ディセプティコン科学参謀、ショックウェーブ。お前に使われている技術を基に作られたのが、私だ」

 

 ――そうですか……。

 

「マスター……ショックウェーブが憎いか?」

 

 ――……正直、よく分かりません。スティンガーの思考は、憎悪を正しく理解していません。ショックウェーブはスティンガーの精神を改造し肉体を破壊しましたが、(スパーク)を殺すことはできませんでしたし、スティンガーはディセプティコンと戦うことを使命として製作されましたが、そこに憎悪はありません。

 

「……私にも、憎しみと言う感情はよく分からない。データとして入力されてはいるが、実体験を伴っていないからな。そんな私たちが、憎悪だ何だ語ったところで、滑稽なだけだろう?」

 

 ――肯定します。……でも、分かることはあります。

 

「それは何だ?」

 

 ――愛です。私を作ってくれたヒトたちが注いでくれた愛情。私を兄弟と、仲間と呼んでくれたヒトの愛情、そして、スティンガーからのそのヒトたちへの愛です。

 

「……ああ、それなら私にも分かる。私もマスターのことが好きだからな」

 

 ――似た物同士ですね。私たち。

 

「かもな。オートボットとディセプティコンであることを除けばな」

 

 ――その区分も、実体験を持たないスティンガーにはよく分かりません。スティンガーはずっと闇の中で一人でした。だからずっと考えていたんです。オートボットとディセプティコンの戦争は果たして意味があるのかと……答えは出ませんでしたが。

 

「……難しいことを考えるんだな、お前」

 

 ――スティンガーを作ってくれたヒトたちはスティンガーに思考する自由をくれました。私たちは愛するヒトのために何ができるか思考することができます。これは何よりの贈り物だと思います。

 

「…………」

 

 ――トゥーヘッド、一つお願いがあります。……あなたは、これからどこかへ移動するのでしょう?

 

「何故分かる? ……愚問か。こうして接続しているのだから、お互いの思考がある程度読めるのも当たり前だ」

 

 ――はい。……トゥーヘッド、スティンガーを連れて行ってください。ネプギアの下へと。

 

「お前は、私が何をしようとしているか分かっているはず。……それでもか?」

 

 ――それでもです。……感じるんです。ネプギアは今、とても辛く悲しんでいる。だから、スティンガーはネプギアたちを助けたい。……例え、それが微力だとしても。

 

  *  *  *

 

 森の中に存在するオートボット基地の入り口は、その前身である地下倉庫の入り口がそのまま使われている。

 しかし、施設自体の価値が上がるにつれ、様々な警備が後付された。

 普段はゲートが閉じ、周囲には最低二人の警備兵が見張っている。

 

 その入り口の前に市街地から続く道から一台のトレーラートラックが走って来た。

 赤と青の鮮やかなファイヤーパターンが特徴的な大型のトラックだ。

 ゲート前で停まったトラックに、警備兵の一人が訝しげに声をかける。

 

「オプティマス? どうしたんです、みんなといっしょにネプギア様を探しに行かれたのでは……」

「……ああ、少しな。すまないが緊急なのだ。通してくれ」

「え? ああ、はい」

 

 言われて警備兵はゲートを開ける。

 

 オートボットの総司令官を疑う道理はない。

 

 ゲートを潜ったオプティマスは地下駐車場から基地の中に入る前にロボットモードに変形する。

 その変形は嫌にゆっくりとしていて、体のあちこちから火花が散りギィギィと音がする、ぎこちないものだった。

 ともあれロボットへと変じたオプティマスは、壁に掛けられた見取り図をジッと眺めてから基地の奥へと入っていった。

 

  *  *  *

 

「ふ~む、これほどの濃度と純度のダークマターは見たことがない。……本当に剣に付着していただけなのだろうか?」

 

 自分のラボで、ホイルジャックはトランスフォーマーサイズの巨大顕微鏡でネプテューヌの傷口から摘出されたダークマターを調べていた。

 ダークマターはオートボットの科学技術を持ってしても分からないことだらけの物質だ。

 ディセプティコン側には、ダークマターの扱い方が秘術めいて伝えられているとも言われるが、真偽は不明である。

 

「う~む……」

 

 腕を組んで唸るホイルジャック。

 

「……そしたら~、お腹の中にグリグリ~って~」

「いいなそれ。今度の武器でやってみるか!」

「それでね~、頭がバリバリ~って感じにね~」

「おお! いやお嬢ちゃん、センスあるぜ! 俺らの仲間になんねえか?」

「う~ん、どうしよ~?」

 

 一方、プルルートはロードバスターやレッドフットと意気投合していた。……かなり、物騒な感じに。

 トップスピンも、プルルートの言葉にウンウンと頷いている。

 

 ある意味、ここにいる全員が実にマイペースであった。

 

 急に扉が開き、誰かがラボの中に入ってきた。

 

 赤と青のファイヤーパターンも鮮やかな、神話の英雄を思わせる勇壮なオートボット、オプティマス・プライムだ。

 

 突然現れた総司令官に、ホイルジャックとレッカーズは面食らう。

 

「オプティマス? どうしたんですかな、いったい? ネプギア君は見つかったんですか?」

 

 代表してホイルジャックが問うと、オプティマスはいやにゆっくりと顔をホイルジャックの方に向けた。

 

「……ああ、ネプギアの捜索は、皆に任せてきた。その間に私は、すべきことがある」

「はあ……しかし、ちょうど良かった。収容しているトゥーヘッドの件ですが、プルルート君が言うには、ショックウェーブが救出に現れる可能性が高いと……」

「君はプロの兵士だろう? プロが素人の言うことを聞くのか?」

 

 冷たい調子で言葉をさえぎられ、ホイルジャックはオプティックを丸くする。

 それに構わず、オプティマスは言葉を続けた。

 

「……しかし、確かにここでは敵に人造トランスフォーマーが取り返される危険がある。よって、他の場所に移送する」

「で、どこに移すってんだ? ここ以上に安全な場所なんてあるのか?」

「……答える必要はない」

 

 当然の疑問を呈するロードバスターに、オプティマスはそっけなく答えた。

 訝しげな顔になる一同を見回し、オプティマスは冷たい声で言い放つ。

 

「……これは命令だ。速やかに人造トランスフォーマーを別の場所に移す」

「なんか~、今日のオプっち、感じ悪い~」

 

 プルルートはありったけの不満を込めた視線でオプティマスを射抜くが、オプティマスは意に介することなくさらに命令を下す。

 

「移送は私がするので、お前たちはそのまま待機していろ。質門は受け付けない。繰り返す、これは命令だ」

 

 ホイルジャックとレッカーズは渋面を作るが、命令と言われては従わないワケにはいかない。

 そしてプルルートは、不審そうにオプティマスを見上げるのだった。

 

  *  *  *

 

 プラネタワーの最上階、女神の寝室。

 自室のベッドで目を覚ましたネプテューヌが上体を起こした。

 

「う~ん……」

「ねぷねぷ! 起きたですか!?」

 

「コンパ……そうだ、わたしネプギアに……そうだ! ネプギアは!?」

 

 何があったかを思い出し、ネプテューヌは最愛の妹の行方を聞く。

 コンパはゆっくりと首を横に振った。

 

「それが……あの後どこに行ったか分からなくて……」

「そっか……、じゃあ探しに行かないと!」

 

 ネプテューヌはベッドから降りて立ち上がろうとするがふらついてしまい、コンパに支えられる。

 

「ねぷねぷ、まだ寝てなきゃダメですよ!」

「ネプ子が起きたの!?」

 

 と、部屋にアイエフとイストワールが入ってきた。

 

「ネプ子! アンタはまた無茶して……」

「ネプギアさんなら、オートボットのみなさんが探してくれていますから、ネプテューヌさんは休んでてください」

「あいちゃん、いーすん……」

 

 二人に諭されて、ネプテューヌはフッと微笑む。

 

「二人がわたしに『休んでて』なんて、なんかいつもとあべこべだね! いつもなら『仕事しなさい!』って怒るのに」

「まあ、こういう時くらいは……」

 

 あえて明るく振る舞っているのだろうネプテューヌに三人はいたたまれない。

 

「じゃあお言葉に甘えて、もう少し寝てるよ。いーすんやあいちゃんが優しいなんて、めったにないし。……それで少し寝たら、ネプギアを探しに行くね」

 

 ネプテューヌはベッドに横になる。

 

 イストワールはアイエフとコンパを伴って、部屋から出て行った。

 

 少しでも回復を早めるべく、目を瞑って眠りにつこうとするネプテューヌ。

 

 あの時のネプギアは、明らかに正気ではなく、とても苦しそうだった。

 早く助けてあげなければ……。

 

「愚かだな……」

 

 突然、声がした。

 機械的に変声された男の声。

 慌てて上体を起こして辺りを見回すと窓の傍に男が立っていた。

 青い軍服に身を包んだ、顔の無い仮面の男。

 

「ハイドラヘッド……!」

「そう、私だ」

「どうしてここに……、いやまあゲーム的にはよくある展開だけど」

「相変わらずだなお前は」

 

 ハイドラヘッドはゆっくりとベッドの傍まで歩いてくる。

 

「ところで、私の演出した出し物はどうだったかね? 名付けて『殺し合う女神』」

 

 その言葉を聞いて、ネプテューヌは事実を確信した。

 

「あなたが黒幕なんだね……!」

「ある意味ではな。……だがある意味では、この事件の黒幕はゲハバーンその物だ。剣が、そして剣に宿った人間の怨念が、女神の魂を喰らいたがっているのだよ」

 

 仮面の下からくぐもった笑いを漏らすハイドラヘッドに、ネプテューヌは顔を歪める。

 

「あなたは……!」

「……私はな、うんざりなんだよ。女神という存在に依存するゲイムギョウ界がな……!」

 

 ゾクリと、ネプテューヌの背筋に悪寒が走った。

 仮面の奥から感じる怒りと憎しみは、今までハイドラヘッドから感じた悪意よりも生々しく強烈だ。

 

 あの、メガトロンに組みする仮面の女のように。

 

「人間どもは女神に傅き、女神を崇めて生きてゆく……。だが実態はどうだ? 女神を生かすのは人間の持つ信仰心であり、それなくして女神は無力……あまりにも歪な関係だ。……まるで、お互いが奴隷であり主人であるかのように!!」

 

 凄まじい怒気を立ち昇らせるハイドラヘッドに、ネプテューヌは黙り込む。

 

「私はその歪さがどうにも気に食わない。だから私がゲイムギョウ界の頂点に立ち絶対者となることで、このシステムを破壊する。そうすることで、女神と信仰が、いかに無意味であるかを知らしめるのだ!!」

 

 高らかに宣言したハイドラヘッドは、ネプテューヌの顔を覗き込む。

 

「そしてお前の可愛い妹は、そのための武器だ。ゲハバーンは女神の魂……いや、シェアエナジーを吸い取り、その威力を上げていく。殺された相手だけではなく、振るう者のシェアもな」

 

 ハイドラヘッドの言葉に、ネプテューヌは顔を青くする。

 

 ――つまり、ネプギアのシェアもだんだんと剣に奪われているということか。そしてシェアを全て失えば、女神の命は……。

 

「気付いたようだな。そう、ゲハバーンはネプギアの生命をも蝕んでいる。やがて待つのは、死だ」

「そんなこと、させない!!」

 

 ベッドから跳び起き、ネプテューヌは刀を手元に召喚する。

 ハイドラヘッドは一歩下がるものの、気圧された様子もなく嘲笑を漏らす。

 

「お前に何ができる? ……まあいい、ネプギアの居場所を教えてやろう。プラネテューヌ市街地から北東の山奥にある遺跡だ。……そこで貴様は、さらなる絶望を見ることになる」

 

 瞬間、ハイドラヘッドは踵を返して部屋の外へ走り去る。

 ネプテューヌはすぐにそれを追った。

 

 だが、生活スペースにはすでにハイドラヘッドの姿はなかった。

 

「…………北東の遺跡」

 

 ネプテューヌは決意を込めて刀を握り締める。

 ハイドラヘッドが何故、わざわざ誘うようなことを言ったのかは分からない。

 それでも、ネプギアを助けることができるなら、行くしかない。

 部屋の中の通信端末を弄り、オプティマスを呼び出す。

 

「オプっち聞こえる? ……ネプギアの居場所が分かったよ」

 

  *  *  *

 

 プラネテューヌ教会から少し離れた路地裏。

 顔のない仮面の男。ハイドラヘッドが立っていた。

 彼はいかなる方法で教会に忍び込み、そしてまた抜け出したのか、それは分からない。

 

 だが確かなことは……彼、いや彼女はハイドラヘッドではなかったということだ。

 

 ハイドラヘッドの姿は歪み、別な人間へと変わる。

 

 黒衣とトンガリ帽子の魔女のような女性、マジェコンヌへと。

 

「ふっふっふ、女神にオートボット、ディセプティコン、それにハイドラ。最後に勝つのは誰になるかな?」

 

 マジェコンヌは不敵な笑みを浮かべ、闇の中へと消えていく。

 

 やがて路地を囲うビルの間から見える空を一羽の鳥が飛んで行った。

 

 その鳥は、金属の体を持っていた。

 




Q:バンブルビーどこ行った?

A:ネプギアを探して駈けずり回ってます。

そんなワケで、ハイドラ、マジェコンヌ、トゥーヘッドが各々の陰謀を進めるいう回でした。
三つ巴の大乱闘!みたいなのを期待してた方には、肩透かしかもしれません。

劇中でハイドラヘッド(偽)の言っていることは、マジェコンヌの考えと思っていただいて差支えありません。

上手くいけば、次回でゲハバーンの話は終わりです。

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