超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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仕事が年末スケジュールで疲労が半端なく、序盤をチョコチョコ改稿してることもあって更新が遅れました。

しかし、まさかコンストラクティコンの話で三話も使うことになるとは思わなかった……。


第69話 マスタービルダー part3

 ラステイション首都近くの山中。

 

 ちょうど、ソーラータワーとは町を挟んで反対側に、真羅公社が建設する真光炉は存在した。

 奇しくもソーラータワーと同時期に完成した真光炉は、本日テストを兼ねてデモンストレーションを行うこととなったのだ。

 円錐台型の建屋の前に、豪華な式典会場が設置されている。

 そこにラステイション各界の重鎮たちや、教会の関係者、マスコミ各社が集められていた。

 

「……そのようなワケで、この真光炉には計り知れない巨費を投じました。我が社としても手痛い出費でしたが、これも我が国の発展と安寧のため。真光炉は必ずや、ラステイションに莫大な富をもたらすことでしょう」

 

 檀上に立って演説しているのは、あのジョン・スミスだ。

 その内容はひたすらに真光炉にどれだけの金をかけたかと言う点ばかりを強調するもので、ハッキリ言って中身などないに等しい。

 それでも、話に一区切りつける度に観客席から拍手が飛ぶ。

 

 当たり前だ。

 

 この場に集められたのは、真羅公社の息のかかった人間がほとんどだ。

 

 企業は実質的に真羅傘下ばかり。

 

 マスコミは、全て真羅の太鼓持ち報道をするように金を握らされ、あるいは脅されていた。

 

 教会関係者でさえ、真羅と何らかの関係を持つ者ばかり。

 

 満足げに会場を見回すスミスだが、特別に設えられた貴賓席に座る少女が手を挙げているのが目に入った。

 さすがに彼女……女神ブラックハートことノワールを無視することはできない。

 

「はい、何でしょうか? ……ブラックハート様」

「質問があるのだけど、真羅公社はライバル企業から、かなり強引な手段で人材を引き抜いたという噂、あれは本当かしら? 他にも、労働者の扱いがかなり悪いとも聞いたけど?」

「ははは、根も葉もない噂ですよ」

 

 眼光鋭いノワールだが、スミスは愛想笑いを崩さない。

 一しきりスミスを睨みつけたノワールは席に戻り息を吐いた。

 その横に、立体映像のアイアンハイドが現れた。

 

『随分と胡散臭せえ野郎だな。あんなのに金を出すのか?』

「新エネルギー開発をコンペ形式にしたのは私だもの。それで最後まで残ったのが、この真光炉だからね。しょうがないわ」

 

 ノワールは難しい顔をする。

 正直、真羅公社はかなりきな臭い。

 以前起きた教会からデータを盗むようアノネデスに依頼した黒幕は、この企業であるという疑惑もある。

 それでも、自国に益となるならと断腸の思いでこの場にやってきたのだ。

 

「それでは、そろそろ真光炉のテストに移りたいと思います!!」

 

 女神の思いを露知らず、スミスは目の前に置かれたスイッチを押す。

 背後の真光炉が唸りを上げて稼働を始める。

 内部の巨大な機械が動き、炉に火が灯った。

 一際盛大な拍手が巻き起こる。

 

 スミス以下真羅の人間達はこれから得る富を夢想してほくそ笑み、ノワールやアイアンハイドは苦い表情だ。

 

 その時、会場になっている広場に数台の建機がエンジン音を立てて乗り込んで来た。

 

 ブルドーザー、ダンプカー、ダンプトラック、クレーン車、パワーショベル、ホイールローダー、そしてミキサー車。

 

 全七台の建設車両が、観客席を取り囲むように停車する。

 そしてギゴガゴと音を立てて恐ろしげなロボットへと変形していく。

 観客達は混乱するが、女神たるノワールは冷静だった。

 

「アイツらは……、アイアンハイド! すぐに来て!」

『応!!』

 

 近くに待機している相棒を呼び寄せ、ノワールはすぐに女神化する。

 だが、スミスのいる演壇の前に陣取ったミックスマスターが先んじて叫ぶ。

 

「動くんじゃねえ! 女神も、オートボットもだ! おかしな真似したら、ここにいる奴らに犠牲が出るぜ!!」

「く……! 聞こえてたでしょう?」

『糞がッ!』

 

 さしもの女神も、コンストラクティコンの誰かが観客を害するより前に全員倒すのは無理だ。

 人命を優先し、ここはミックスマスターの言う通りにする。

 

「な、何が目的だ!? 金か? 金が欲しいのか!?」

 

 檀上のスミスは完全に余裕を失い喚き散らすが、周囲のディセプティコン達にジロリと睨まれ黙り込んだ。

 

「……こいつが、真光炉か……。カーッぺッ!! 何てぇ不細工な建物でえ!! あちこち溶接が甘いし、支柱がまるで足りてねえ!! てんでなってねえじゃねえか!!」

 

 ミックスマスターは、機械仕掛けの重厚な建物を見上げ、粘液と共に吐き捨てた。

 演説台の裏に隠れていたスミスが顔を出して怒鳴る。

 

「な、何だと! この真光炉には莫大な資金を投じたのだぞ!!」

「その割には、随分と作りが甘いですねえ。鋼板はギリギリまで薄くしてあるし、コンクリの量も明らかに少ない。中枢の炉以外はハリボテも同然ですよこれ」

 

 軽くスキャンしたスクラッパーも呆れ果てたような声を出す。

 それを聞いたノワールは、スミスら真羅の人間達に鋭い視線を向けた。

 

「デ、デタラメを言うな!」

「そうだ! 適当なことを言って、我々を貶める気だな!!」

「このガラクタの塊め!!」

 

 口々に反論する真羅の幹部達だが、周囲のコンストラクティコンが武器を構えるのを見て口をつぐむ。

 ワナワナと体を震わせていたミックスマスターはギラリとオプティックを光らせ、震えるスミスと真羅幹部たちに向かった静かに言った。

 

「なあおい、これが、こんなもんが、労働者を使い捨てて、技術者使い潰して、必死に頑張ってる奴らの夢を壊してまで造るもんなのか?」

「な、何のことだ!?」

「惚けるなよ。テメエらのやったことは分かってんだ。……いや、俺らが何言ったって、お前らにとっちゃあディセプティコンの戯言だろうよ。……だから、俺らはディセプティコンらしく振る舞うだけだ」

 

 ミックスマスターは、スミスに向かって腕を大きく振り上げる。

 ノワールが飛び出そうとするが間に合わない。

 

「待て!!」

 

 だが、腕が振り下ろされようとした瞬間、誰かの叫びにミックスマスターは驚いたようにピタリと動きを止めた。

 声を発したのは、ツナギ姿で作業用ゴーグルを頭にかけた、青い髪の女性だった。

 その後ろには、肥満体系の中年男性を思わせる姿の赤いオートボットも立っている。

 ソーラータワー建設の中心人物であるシアンと、技術者集団レッカーズの一員レッドフットだ。

 

「お前ら、どうしてここに……?」

「みんなの姿が見えないから、探してたんだよ! それで真光炉の方が騒がしいから、もしかしたらと思って……こんなことして、何になるんだよ!!」

 

 必死に止めるシアンに、コンストラクティコンたちは戸惑った様子を見せる。

 だが、ミックスマスターは低い声で言った。

 

「復讐には、なる。偉ぶって俺らを下に見る奴らに仕返ししてやるのさ。これまでも、そうしてきたんだ」

 

 他のコンストラクティコンたちも、それに頷く。

 

 やられたら、やり返す。

 

 それがディセプティコンのやり方なのだ。

 

 ここまで黙っていたレッドフットは、全身の火器を展開して構える。

 

「テメエも、このクソどもを庇うのか?」

「俺はオートボットだからな。……こんなクズどもでも、守るのが使命だ」

 

 それきり黙ってレッドフットとミックスマスターは睨み合い、周囲のコンストラクティコンたちの殺気も高まってゆく。

 

「なあ、やめてくれよ。……お前たちは、あんなにすごい技術を持ってるじゃないか。なのに、戦うなんて……」

「これも、オートボットとディセプティコンの宿命ってやつさ」

「今までが、短い夢みたいなもんだったんだよ」

 

 シアンは彼らを何とか説得しようと声を張り上げる。

 だが、二人は止まらない。

 

オートボットとディセプティコンが出会った以上、戦いはさけられないのだ。

 

 その時だ。

 

 突如としてけたたましいアラーム音が鳴り響いた。

 音は、真光炉から聞こえてくる。

 それだけではなく、建屋全体が不自然に振動しているではないか。

 

「こ、これは……」

「いったい?」

 

 異常な事態に、ミックスマスターとレッドフッド、コンストラクティコンたちは武器を収める。

 スクラッパーはただちに建物をスキャンして悲鳴じみた声を出した。

 

「なんてことだ! 炉の温度がドンドン上昇してます! きっと爆発してしまいますよ!!」

 

 檀上に駆け上がったシアンは、蹲っていたスミスの首根っこを掴んで無理やり立たせる。

 

「おい! 真光炉を止めろ!!」

「む、無理だ……、方法を知らん」

「ならコイツを制御してる技術者と連絡をつけろ! それぐらい分かるだろ!!」

「そ、そうか……」

 

 言われてスミスはスマホを取り出して真光炉内部に連絡する。

 

「私だ! いったいどうなっているんだ!? 早く真光炉を停止させろ!!」

『そ、それが、すでに我々の制御を受け付けません! 真光炉は完全に暴走しています!!』

「な、なんだと!?」

 

 絶望した顔になるスミス。

 近くにやってきたノワールは状況を察し問う。

 

「これが爆発したら、どれくらいの規模になるの?」

「み、未知数です。す、少なくとも町に被害出るのは確実かと……」

「なんてこと……」

 

 天を仰ぐノワールだが、すぐに冷静さを取り戻し、周りの教会関係者に檄を飛ばす。

 

「すぐに教会の全職員及び全警備兵に連絡! 市民を避難させなさい!! この場にいる人間も避難して! 真羅の人たちは……」

「いつの間にか、一人残らずいなくなってますが……」

「ッ!? ええい、逃げやがったわね!! 全員、すぐに行動開始! 急ぎなさい!!」

『はッ!!』

 

 真羅との関係があろうと、そこは女神に仕える教会の職員たち。速やかに指示に従う。

 一方のミックスマスターは少し悩んでいたようだが、やがて意を決して仲間たちに向かって声を上げた。

 

「コンストラクティコン! このままじゃみんなまとめてお陀仏だ。爆発を止めるぞ!! まずはスクラッパー! 真光炉をスキャンしてどうすればいいか指示しろ!」

「はい!」

 

 スクラッパーは、真光炉全体を見回す。

 

「炉にパイプを繋げて、余剰エネルギーを排出するんです! それから、炉の周りを補強してください!」

「よっしゃあ! やるぞ、野郎ども!! コンストラクティコンの力を見せてやれ!!」

『おおー!!』

 

 コンストラクティコンたちは一糸乱れぬ動きで真光炉の建屋に向かっていく。

 その中には当然とばかりにレッドフッドも混じっていた。

 ノワールは先ほどまでとのギャップに戸惑う。

 

「あなたたち、何を……」

「女神様、ここはあいつらに任せてください!」

『ノワール、今はみんなを避難させることを優先しよう』

 

 シアンとアイアンハイドに言われ、ノワールは少し悩んだものの、この場は彼らに任せてみることにする。

 今は少しの時間でも惜しい。

 そして、避難誘導するべく飛び立とうとするが……。

 

「……?」

 

 ほんの少し、違和感があった。

 まるで、何かに力を吸い取られているかのような……。

 

『ノワール? どうした?』

「……ううん、何でもない! さあ、行くわよアイアンハイド!」

『応!!』

 

 しかし、今は僅かな違和感に構っている暇はない。

 ノワールは町に向けて飛んで行くのだった。

 

  *  *  *

 

 巨大な建屋の中に突入したコンストラクティコンとレッドフット。

 その目の前には、真光炉の本体があり、あちこちから蒸気を吹き出しながら鳴動していた。

 

「カーッペッ! 案の定スカスカだな、おい!」

「これじゃあ、事故も起こるぜ!」

 

 立派なのは外見ばかりで、中身はがらんどうという雑な造りに、ミックスマスターとレッドフッドが文句をつける。

 その間にも、炉は危険に振動している。

 

「まずは、ロングハウル、オーバーロード! 使えそうなもんをジャンジャン持ってこい! スクラッパーとハイタワー、ランページはパイプを増設してエネルギーを逃がすんだ! ランページ、スカベンジャー、お前らは俺といっしょに炉の周りを補強するぞ!!」

 

 リーダーの指示に、コンストラクティコンたちは散っていく。

 ミックスマスターは傍らのレッドフットとシアンにも指示を出す。

 

「レッドフットは制御室に向かってくれ!」

「命令すんじゃ……まあいいか」

 

 走っていくオートボットを見送り、ミックスマスターも作業に移る。

 

 果たして、真光炉の爆発は止められるのだろうか!?

 

 ロングハウルとオーバーロードが集めてきた資材を、ハイタワーが持ち上げ、スクラッパーが接続する。

 スカベンジャーは大きな鋼板を持ち上げ、ランページが跳び回りながら溶接し、さらにミックスマスターはドラムで調合した特殊コンクリートを隙間に流し込む。

 レッドフッドはシステムにアクセスして、少しでも制御を取り戻そうとしていた。

 

 各々が、自分にできることを全てやっている。

 

 それでも、炉の振動は止まらず温度は高くなってていく。

 

「くそう! このままじゃ……」

「馬鹿言ってんじゃねえやい! ターンバレーの戦場で基地を建てた時に比べりゃ、これぐらいピンチの内にも入んねぜ!!」

 

 スクラッパーの泣き言を即座に封じ、ミックスマスターは作業を続ける。

 しかし、いかに彼らがプロフェッショナルと言えど、僅かに八人。

 

 余りにも手が足りない。

 

 ――畜生、ここまでかよ……。

 

 一瞬、諦めがミックスマスターのブレインをよぎる。

 

「おーい! みんなー!」

 

 この場にいないはずの人間の声が聞こえて、ミックスマスターはそちらを向く。

 

 シアンがそこにいた。

 

 いや彼女だけではない。

 パッセの、そしてパッセに協力した技術者たちがこちらにやって来るではないか。

 

「お、お前ら、どうしてここに!?」

「真光炉を止めるために決まってるだろう? ここにいるのはこれだけだけど、声をかけられる技術者には全員声をかけてきたから、後からもっと来るぜ!」

「馬鹿野郎! 今にも爆発しそうなんだぞ!」

 

 ミックスマスターはシアンに向かって怒鳴る。

 ここはすでに、人間にとっては危険極まりないのだ。

 

「何言ってんだ! ここは私たちの国だぜ! ラステイションがダメになるかの瀬戸際なんだ! 黙って見てなんかいられないぜ!」

 

 だが、シアンはソーラータワーを建設している時と変わらない笑顔で答えた。

 

「そうとも! 人手はいくらあったって困らないだろう!」

「放射線とかは出てないみたいだし、大丈夫さ!!」

「うちは製鉄工だ! これくらいの熱はヘッチャラだぜ!」

「精密機械の調整なら任せてくれ!」

 

 他の職人たちも、皆やる気に満ちている。

 周りを見回せば、コンストラクティコンの仲間たちが笑んでいた。

 

「カーッペッ! 全くよう……、どいつもこいつも馬鹿ばっかりだぜ……」

 

 込み上げる何かを我慢するようにミックスマスターは呟き、そして檄を飛ばす。

 

「野郎ども! 何グズグズしてやがる! 仕事にかかれえい!!」

『おおおおおぉおお!!』

 

 ここに、技術者たちは一丸となった。

 

  *  *  *

 

「みんな、少しでも真光炉から離れるのよ! 急いで!」

 

 ノワールは女神の姿で避難誘導をしていた。

 耳に付けたインカム型通信機に、ユニから連絡が入る。

 

『お姉ちゃん! 東地区の避難はもうすぐ終わるよ!』

『こちらアイアンハイド! 西地区も問題ない!』

『サイドスワイプだ! 北地区も大丈夫だ』

 

 仲間たちからの報告に続いて、教祖ケイからも連絡が入る。

 

『ノワール、教会周辺の避難はあらかた終わった。君もそろそろ退避するんだ』

「いいえ、私は避難が完了するまで残るわ」

 

 こと国難に当たっては、国民を守るのが女神のあるべき姿だ。

 

『……分かった。でも君は、この国にとって大切な存在だ。無理をしないでくれ』

「ありがと、ケイ。まあこっちも間もなく終わりそうだから……」

 

 そこまで言った所で、ノワールの視界の端に走っているスミスが映った。

 

「あいつ!」

『ノワール?』

「ごめん、また後で連絡するわ!」

 

 ノワールは通信を切ると、近場の警備兵に避難誘導を続けるよう指示を出してスミスを追っていく。

 当のスミスは、人混みをかき分けて逃げていた。

 

 真羅の人間に、下の者を守ると言う発想は、ない。

 

 もはや、自分が全ての責任を押し付けられた上で切られるのは目に見えていた。

 

 こうなったからには、持てるだけの資金を持って別の国に逃げるのみ。

 

 多くの人が傷つくだろうこの状況に置いて、僅かなりとも良心があれば、そんなことはできないだろう。

 しかしスミスには良心どころか、愛国心も、女神への信仰も、真羅公社に対する忠誠心すらない。

 只々、己の都合だけが大切だった。

 

 だがその目の前に、降り立ったノワールが大剣を突きつけてきた。

 

「待ちなさい! これだけのことをしておいて、逃げる気!? 無責任にもほどがあるでしょう!!」

「ま、真光炉を計画したのは社の上層部だし、建てたのは労働者どもだ! わ、私に責任なんかない!」

「どこまで見下げ果てた奴なの! この落とし前は必ず付けてもらう!! ……あなたにも、真羅にもね!!」

 

 怒りに満ちたノワールの視線にさらされ、スミスはガックリと項垂れるのだった。

 

  *  *  *

 

 人間、オートボット、ディセプティコン、種族の異なる技術者たちが、その全ての、いや限界を超えて力と知恵を出し合った結果、真光炉の暴走は徐々に治まりつつあった。

 

「よし! 後は、炉の上から重量をかけて圧迫すれば、爆発は防げるはずだ!!」

「しかし、そんな重量、どうやってかけるんだ!?」

 

 作業を続けていた技術者たちは声をかけあい、知恵を絞る。

 一方のミックスマスターは、自信ありげに笑う。

 

「心配いらねえ! いくぞ野郎ども!!」

「みんな息を合わせてください!」

「再びこの時が来たんダナ!」

「うおおお! やったるんじゃぁああ!!」

「さあ、美しくいきましょう!」

「よっしゃぁああ!! 見せ場だぜぇええ!!」

「今度こそ名誉挽回だっぺ!!」

 

「よし! コンストラクティコン部隊、トランスフォーム、フェーズ1!!」

 

 ミックスマスターが高らかに号令すると、コンストラクティコンたちは建機へと姿を変える。

 ホイールローダー、ダンプカー、ブルドーザー、クレーン車、ダンプトラック、パワーショベル、そしてミキサー車。

 

「アゲイン、トランスフォーム、フェーズ2!!」

 

 七体の建設車両が、轟音を立てて寸断され折れ曲がり移動し、立体パズルのように組み上げられていく。

 

 ロングハウルとランページが屈強な両脚に。

 

 スクラッパーとハイタワーが破壊的な両腕に。

 

 オーバーロードが堅牢な腰回りに。

 

 スカベンジャーが強固な上半身に。

 

 そしてミックスマスターが、神話の怪物のような頭部に。

 

 全ての行程を終えたとき、そこにコンストラクティコンの姿はなく、代わりに山のような機械の怪物が立っていた。

 

 これこそ、コンストラクティコンが七体合体することで誕生する大型ロボ、デバステーターである!!

 

 デバステーターは真光炉の鳴動にも負けない咆哮を上げると、炉の上によじ登っていく。

 炉は未だ強烈な熱を放っており、その体を焼くが、巨獣は構わずに登頂し、全身の体重を両手に乗せて炉に圧をかける。

 

 やがて炉の揺れが治まり、熱が引いていった。

 

 アラームが止み、辺りはシンと静まり返った。

 

 爆発は防がれたのだ。

 

「うおおおお!!」

「やったぁあああ!!」

「すっげぇえええ!!」

 

 技術者たちの歓声を背に、デバステーターはもう一度大きく吼える。

 

 破壊のために生まれた怪物は、初めて誰かを救うためにその力を振るったのだ。

 

 炉の上で七体に戻ったコンストラクティコンたちは、各々手を振って歓声に答える。

 しかし、いつまでも呑気にはしていられない。

 じきに女神たちがやってくるだろう。

 

「……さてと、そろそろお暇しないとな」

「もう行っちまうのかい?」

 

 名残惜しげなシアンだが、彼女も引き留めることはできないと、分かっていた。

 対してミックスマスターは、フッと笑った。

 

「ディセプティコンがいつまでもいるワケにはいかねえやい。……なあ、シアンよう」

「なんだい?」

「ソーラータワー、完成させろよ。お前らなら、必ずできる。俺が保障してやるよ」

 

 それだけ言うとミックスマスターは炉から飛び降りるやビークルモードに変形して走りだした。

 他のコンストラクティコンたちもそれに続く。

 

「それじゃあ皆さん、お元気で!」

「達者で暮らすんじゃぞ!」

「さよなら、なんダナ!」

「アバよぉおおお!!」

「またいつか、お会いできるといいですね」

「みんなバイバイだっぺ!」

 

 パッセに現れた時と同様に、嵐のように建機軍団は去っていった。

 制御室を抜けてシアンの隣にやってきたレッドフットはどこか苦い顔で言う。

 

「やれやれ、言いたいことだけ言って逃げやがって。……挨拶ぐらいさせろってんだ」

 

 後半は、シアンに聞こえないような小さい声だった。

 そして、脇に立つ人間に言葉をかける。

 

「それで? これからどうすんだ?」

「決まってるだろ」

 

 そしてシアンは迷いなく答え、レッドフットは満足げに頷くのだった。

 

  *  *  *

 

 数週間後。

 

 何とか期限までに臨時基地を造り上げたコンストラクティコンたちは、完成した基地の一室で輪になってオイル盛りをしていた。

 エネルギー変換機の修理が終わり、ようやく禁油が解かれたのである。

 グビッとオイルを一気飲みするミックスマスターの手にはラステイションで発行されている新聞があった。

 

 その一面の見出しは……。

 

『ソーラータワー、完成!』

 

『下町の職人たちが夢をかけた新型エネルギープラントが、ついに完成した。

視察に訪れた女神ブラックハート様からの評価も上々で、教会からの正式認可も近いと思われる』

 

『プロジェクトの中心人物である、万能工房パッセの責任者、シアン女史は語る』

 

『このプロジェクトは、皆が力と知恵を出し合ったからこそ完成した物であり、ソーラータワーによってラステイションがさらに素晴らしい国になることが私たちの願いだ』

 

『そして、タワー完成のために誰よりも尽力してくれた、8人の偉大な技術者に、言葉にできないほどの感謝を捧げる』

 

『いつか、またいっしょに仕事しようぜ!』

 

 




とりあえず、これでコンストラクティコンたちの話はおしまい。

次回は、プルルートとショックウェーブの話になる予定です。

クリスマスなどの季節行事ネタはやってる余裕がなさそうです。

TAVは一応完結。
でも、まだまだ続く余地はありそう。

今年の更新は、多分これで最後になりそうです。

では皆さん、よいお年を!

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