超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
最近、最初のほうの話を改稿してますんで、よろしかったら見てみて下さい。
オイル欲しさに、ソーラータワーの建造を目指す人間たちの下で働くことになったコンストラクティコンとレッドフット。
オートボットとディセプティコンが揃って人間の下で働くという前代未聞の状況で、果たして彼らがどうなっているかと言うと……。
* * *
下町の人々が夢と希望を込められたソーラータワー。
組まれた足場の上を、作業員に混じってエビのような姿の巨大な影が作業していた。
「おーい、ランページさん! こっちのほうの溶接頼まあ!」
「おう、任せんさい!」
ランページは巨体のコンストラクティコンの中にあって、比較的小柄であることと動きが軽いことを生かして、あちこちを跳び回りながら作業してした。
「ロングハウルさん、悪いんだけど建材をもっと運んできてくれ!」
「はいはい。……まったく、みんなしてボクのことを運び屋扱いなんダナ。嫌になっちゃうんダナ」
「まあ、そう言わないでくれよ! 報酬のオイル、アンタの分少し増やすからさ!」
「ほ、ホントなんダナ? よーし、それじゃあ張り切っちゃうんダナ!」
ブチブチと文句を言っていたロングハウルも、上手く乗せられてやる気を見せている。
「俺は運ぶの大好きだぜぇえええ!!」
「ハハハ、ありがとな、オーバーロードさん」
「いいってことよぉおおお!!」
作業員たちと話しながら、ダンプトラック姿のオーバーロードは、あちこちに機材を運んでいる。
「オーライ! ハイタワーさん、ありがとうよ!」
「いえいえ。……しかし、人間のむせ返るような男のスメルも、中々オツですね……」
クレーン車の姿で高い所に鉄骨を吊り上げるハイタワーは、聞こえないようにボソリと呟いた。
「うーん、この場所に穴を掘るのは難しいな……」
「ほいほい、穴掘りならオラに任せるっぺよ。これくらいなら軽いっぺ!」
「おお、助かるよ!」
スカベンジャーは他の施設の土台作りために地面を掘り返している。
「あ~あ……、結局、全員で来ちゃって……」
「おめえもだろ」
コンストラクティコンたちは、ここでの仕事は少人数で順番に来ることにして、臨時基地のほうの設営を優先することに決めたのに、オイル欲しさに全員こっちに来てしまっている。
そのことに呆れるスクラッパーだが、隣に立つミックスマスターが短く突っ込んだ通り、本人もこの場に来ているので言えた義理ではない。
「はあ、まあそうですけどね……、ああ、シアンさん。ちょっとタワーの設計について意見があるんですけどいいですか?」
スクラッパーも否定はせず、近くで一休みしていたシアンに話しかけた。
「いいけど、もうここまで出来上がってるんだぜ?」
「もちろん、今からでも変更可能な部分についてですよ。ソーラーパネルについてですが、もう少し角度をずらしたほうが、より太陽光を吸収できるはずです」
「なるほど……、ちょっとみんなを集めて話してみるよ!」
優秀な建築家であるスクラッパーの言葉に、シアンは頷く。
休憩中のミックスマスターは人間に混じって働く仲間たちを、心なし満足げに眺めていた。
と、機械の調整や整備を担当しているレッドフットがやってきた。
「う~い、計器周りの調整終わったぜ~」
「おう、ご苦労さん!」
「ディセプティコンが! 気楽に話しかけんじゃねえやい!!」
「カーッペッ! なんでえ、その言い方はよお!! 礼儀がなってねえとはお里が知れるぜ!!」
「こちとら、元々礼儀なんざ知ったこっちゃねえんだよ!!」
至近距離でガンをつけ合いながら、言い合うレッドフットとミックスマスター。
だが、スクラッパーや周りの作業員たちは「またか」というような顔で呆れていた。
この二人、何かにつけて喧嘩をしているのだ。
言い合い、罵り合いは当たり前。殴り合いになることも珍しくないし、時にどちらかが武装を展開することさえある。
だが、周囲の者たちは慌てもしない。
この後のオチが分かっているからだ。
「あ~、喧嘩すんならオイルなしで……」
「よっし! 俺はそろそろ作業に戻るぜ!」
「俺も、もう少し機械を調整しなけりゃな!」
シアンがボソッと言うと、ミックスマスターとレッドフットはすぐさま喧嘩をやめた。
長年の因習も、オイルへの欲求には負ける。
そこまでオイルが欲しいのかと問われたら、欲しいと即答するだろう。
「はあッ……、まったく……」
いいように人間に使われるリーダーに、スクラッパーは排気する。
だがしかし、それ以上文句は言わない。
分かっていたからだ。
ミックスマスターも、他の仲間たちも、そして自分も、心のどこかでこの状況を楽しんでいる。
建設中のソーラータワーを見上げ、スクラッパーは思う。
――まあ、こいつを前に興奮しない奴は、建築屋を名乗る資格はないからな。
下等な人間たちの、そのまた下等とされる類の人間たちが、夢と希望を込めて作っているソーラータワー。
サイバトロンの建築技術を修めたスクラッパーの目から見ても、この建物は素晴らしいの一言に尽きた。
他の仲間たちも、皆そう思っているのだろう。
偉大な建築物のため、一丸となって働く。
懐かしい、感覚だった。
――いつからだろう、建築がただの『作業』になってしまったのは……。
クリスタルシティを建造していた頃は、確かに耐えがたいほど大変だったが、それでも誇りがあった、達成感があった、仲間たちとの信頼と友情があった。
しばらく昔を懐かしんでいたスクラッパーだったが、ふとセンサーが町からの道をこちらに向かって走って来る車を捉えた。
「シアンさん、こっちに向かって来る車がいますよ。車体に『真羅』って書いてありますけど……」
「ッ! 真羅だって!?」
そろそろ仕事に戻ろうとしていたシアンは、それを聞いて目を見開く。
「真羅の連中が何しに……、いやそれよりお前らの姿を見られるとマズイ!」
「ですね。ミックスマスター、聞いてたでしょう!」
「おう! 野郎ども! トランスフォームだ!!」
『アラホラサッサ~!』
近くにいたミックスマスターはすぐに部下たちに通信で号令を出し、全員がそれに応じる。
タラップから地面に飛び降りたランページとロングハウルはブルドーザーとダンプカーに変じ、整地していたスカベンジャーも巨大パワーシャベルに変形する。
ハイタワーとオーバーロードは元よりクレーン車とダンプトラックの姿で作業していたので問題なし。
スクラッパーとミックスマスターもホイールローダーとミキサー車になり、これでロボットの集団は消えて建設車両の集団が現れたというワケだ。
そうこうしている内に、車が人間の目でも見える所までやってきた。
黒塗りのリムジンで、車体にデカデカと真羅の文字と真羅公社の社章が描かれている。
リムジンはやがてシアンの近くに停車し、一人の男は降りてきた。
上等なスーツに身を包みサングラスをかけた、いかにもビジネスマンと言った風情の男だ。
男はムッツリとした顔のシアンに目を止めると、近づいてきた。
「失礼ですが、あなたがパッセの責任者のミス・シアンでよろいでしょうか?」
「そうだけど、真羅の人が私に何の用だい?」
「アポイントメントなしの急な訪問で失礼。私は真羅公社の真光事業部、責任者のジョン・スミスと言う者です」
慇懃な口調だが、感情を感じさせない声のスミスにシアンは顔をさらにしかめる。
「あなたに折り入ってご相談があるのですが」
「私には、話すことなんかないね。来て早々悪いが、さっさと帰ってくれ」
けんもほろろなシアンだが、スミスは全く動じない。
「そうはいきませんね。これも仕事ですので。……ズバリ言いましょう、ソーラータワーの建設を中止していただきたい。中止していただけるなら、ここまでタワーを建設するのにかかった費用全額に、20%ほど上乗せしてお支払いたします。どうです? 悪い話ではないでしょう」
「断る! だれがそんな話に乗るか!」
話しにならないと、シアンは踵を返すが、スミスはその先に回り込んだ。
「そうおっしゃらずに。聞けば、このタワーを建てるのに結構な費用がかかっているとか。町工場にとっては、社運をかけたイチかバチかの賭けと言ったところですか。しかし、その賭けに勝つことはできませんよ」
顔に僅かな嘲笑を浮かべ、スミスは続ける。
「なぜなら、わが社の真光炉には、あなた方のタワーの十倍以上の費用を投資しているからです」
「私たちのタワーだって、性能なら負けてないさ!」
「性能は関係ありません。巨費を投じたという、イメージが重要なのです。人は無意識に、値段の高い物と安い物なら、高い方が良い物だと考えるものです」
「高けりゃいいってもんじゃないだろ! 聞いてるぞ、おまえら真羅は、技術者や作業員を無理なスケジュールを押しつけて使い潰しては、とっかえひっかえしてるそうじゃないか!!」
ピクリ、とミキサー車をはじめとした建機たちが揺れた。
それに気付かず、スミスはヤレヤレと肩をすくめた。
「人聞きの悪いことを言わないでいただだきたい。双方合意の上での雇用契約です。法律にも触れていません」
「そういう問題じゃない! 技術者をそんな風に扱う奴らを信用できるか! その上、安全性にも問題があるって話じゃないか!」
「それは根も葉もない噂ですよ。真光炉は、100%安全です」
しかし、シアンは厳しい顔を崩さない。
スミスは、ハアッと息を吐く。
「…………やれやれ、分かっていませんねえ。あなたたちのような小さな町工場が作った物と、わが社のような大企業が作った物、社会がどちらを信用するかは明らかでしょう。弱小企業が図に乗らないでいただきたい」
「このタワーは、俺たちの夢だ。諦めるものか」
「夢ぇ?」
睨みつけてくるシアンに、スミスはいよいよ嘲笑を大きくした。
「そんな物がなんの役に立つと言うのです? これはビジネスなのですよ。大企業と国家が大金を投じたビックビジネス。そこに夢なんて物の入り込む余地はありません」
「俺だってビジネスを否定する気はない。タワーが完成すれば、この技術でこのラステイションはもっと豊かで素晴らしい国になる。こいつはそんなビジネスさ」
堂々とした態度のシアンに、スミスは少しだけ後ずさるが、すぐにまた嘲笑を浮かべた。
「油と錆に塗れて働くくらいしか能のない、使い捨ての労働者風情が偉そうに。あなたがたのような労働階級は、我々大資本の顔色を窺って小金に一喜一憂していればいいのです」
シアンたちのような労働者を見下した、傲慢極まる言葉。
さすがに限界だった。
シアンが怒鳴ろうとすると同時に、コンストラクティコンたちも変形しようとするが、どちらも叶うことはなかった。
突然、スミスの首根っこを何者かが捕まえて、摘み上げたからだ。
「おう、なんでい、この根性の腐った野郎は」
レッドフットだ。
どうやら、機械いじりに夢中でミックスマスターからの通信に気付かなかったらしい。
「な、な、な!? お、オートボット!?」
猫の如く持ち上げられたスミスは、肥満体系のトランスフォーマーを見て初めて驚愕した。
「話しは聞かせてもらったが、大資本が何だってんだ! どんなに偉い奴だろうが、職人や技術者がいなけりゃ、スプーンの一つも作れねえだろがよ!!」
「き、貴様、私にこんなことをしてタダで済むと思っているのか!?」
「まず、この場でテメエがタダで済むと思ってやがんのか?」
レッドフットはニヤリと笑って見せる。
オートボット屈指の荒くれ者である彼は、気に食わない人間を潰すことなど、何とも思わない。
スミスは完全に生殺与奪を握られていることに気付き、顔面蒼白になる。
「レッドフット、降ろせ」
だが、シアンがそれを咎めた。
レッドフットは怪訝そうに視線をそちらに向けた。
「そいつに何かあったら、俺ら全員の問題になるからな。それは困る」
「ん。それもそうか」
納得したレッドフットはスミスを放してやる。
地面に落下して尻餅を突いたスミスは痛がりながらも立ち上がる。
「くッ! まさかオートボットが協力しているとは……」
「そういうこった。ま、これで俺らにも勝ち目があんのが分かっただろ! 分かったらとっとと失せな!!」
レッドフットに凄まれ、スミスは這う這うの体で車に乗り込み、去って行った。
「ったく! 何でえ、ありゃあ!!」
スミスの車が見えなくなった頃にミックスマスターがロボットモードに戻って吐き捨てた。
「……あれが真羅の人間さ。金と権力が何より重要って言う……」
「まあ、これに懲りて、もうこねえだろう」
厳しい顔を崩さぬままのシアンにレッドフットはアッケラカンと言う。
一方、ミックスマスターは難しい顔をしていた。
あの手のは総じて諦めが悪く、逆恨みに走りがちだ。
このまま黙って引き下がるだろうか……。
「さ~て、どうなるかね……」
聞こえないように呟かれた言葉に、答える者はいなかった。
* * *
『ふむ、それでは、そのソーラータワーにオートボットが関わっていると?』
「は、はい」
どこか暗い場所、真羅公社の社員、ジョン・スミスは誰かと通信していた。
その相手は声のみだが、スミスはとてつもなく恐縮していた。
『困るなあ。それでは万が一にも計画が狂ってしまいかねないじゃあないか。
しかし、まさかオートボットがクリーンエネルギーなんてつまらない物に関わるなんて』
ラステイションが国を挙げて取り組む大事業をつまらないことだと、通信の声はそう言った。
『どうせなら、兵器でも作ればいいのに』
「おっしゃる通りです!!」
別に通信の声に同調したワケではないスミスだが、ビジネスマンとして同意する素振りを見せておく。
『それに、このソーラータワーのコンセプトも気に食わない』
「はい、まったく! たかだか労働階級風情が集まったとて……」
『ああ、違う、そうじゃないんだ』
さらに通信の声に合わせるスミスに、通信相手はやんわりと言い含める。
『私はね、このソーラータワーが安全な上に環境に影響がなくて大量のエネルギーを作り出せる所が嫌なんだ。
物事には対価があってしかるべき、ローリスクハイリターンなんてつまらないだろう?』
「は、はあ……」
『どうせなら、危険がいっぱいで環境を滅茶苦茶にして、その上で作れるエネルギーはほんの少しってほうが面白い』
そろそろ一介のビジネスマンには同意しかねる内容になってきた。
『まあ、こっちでちょっと手を回してみるとしよう』
「は、はい! ありがとうございます、ハイドラヘッド!!」
* * *
それから数週間が過ぎた。
さすがに臨時基地のほうを放っておくワケにもいかず、コンストラクティコンたちは代わる代わる参加していたが、建設は順調に進み、ついに完成の日を迎えたのである。
『カンパーイ!!』
ソーラータワーの麓で、タワー建設に関わった全ての者たちが集まって完成記念の宴を開いていた。
「いやーお疲れさん!」
「色々あったけど、無事完成にこぎつけることができて、よかったぜ!」
作業をしていた工員たちや、その家族が肩を叩き合い笑い合いながら、テーブルの上に並べられた料理や飲み物に舌鼓を打っている。
誰の顔にも達成感と満足感があった。
ラステイションの下町の中小企業の人間たちが、これほどの物を造り出せたことが何より嬉しいのだ。
ワイワイと喜び合う人間たちから少し離れた所で、コンストラクティコンたちが静かにオイルを飲んでいた。
「いやー、やっぱし仕事を終えた後のオイルは格別じゃのお」
「分捕ればいいとか言ってたのは、何処の誰なんダナ?」
「もう、忘れてくれんさい。われだってなんだかんだ言いながら楽しんどったんじゃろ」
「……まあ、否定はしないんダナ」
ランページとロングハウル。
「はあぁああ! オイルがしみるぜぇええ!」
「ふふふ、こういうのも悪くありませんね」
「だな! ソーラータワーは宇宙一ぃいい!」
「ええ、宇宙一です」
オーバーロードとハイタワー。
「飲み過ぎて、帰れなくならないようにしてくださいね」
「分かってるっぺよ。……ヒック! でも嬉しいっぺ! こうして自分たちの作ったもんが形になると!」
「……そうですね。本当に」
スクラッパーとスカベンジャー。
「…………」
そして、ミックスマスター。
普段なら馬鹿騒ぎするところの彼らだが、今は静かにソーラータワー完成の達成感と満足感に浸っていた。
「テメエら、こんなトコにいやがったのか」
人間たちに交じって騒いでいたレッドフットが近づいてきた。
そしてミックスマスターの横に、ドカリと座り込む。
いつもなら罵詈雑言の応酬が始まるところだが、両者とも今日に限ってはそういう気分にならなかった。
「まあ、なんだ」
オイルをチビチビと啜りながら、ミックスマスターは誰に言うでもなく呟いた。
「やっぱり、楽しいな。仲間たちといっしょに物を作るってのはよ」
何気なく放たれたその言葉には、しかし万感の思いが込められていた。
レッドフッドはそれに答えることなくオイルを一口飲んでから、こちらもミックスマスターのほうを向かずに呟く。
「俺はディセプティコンが嫌いだ。オートボットとしても俺個人としてもな」
「おう、知ってる」
普通なら喧嘩が始まりそうな言葉も、ミックスマスターは静かに受け入れた。
「……が、俺はオートボットである前に技術者だ。だから、技術者として言わせてもらう」
レッドフッドは彼らしくない、真面目くさった表情と声で続ける。
ミックスマスターは黙ってそれを聞いていた。
「テメエらはスゲエ技術者だ。こと建築って分野で、おまえらよりスゲエ奴らを見たことがねえ」
「……テメエも、まあ大した技術者だよ。機械周りに関しちゃ明らかに俺らより上だ」
フッと、ミックスマスターは笑むような素振りを見せる。
二人は、無言で手に持ったオイル缶を合わせて乾杯するのだった。
それは、技術者としての矜持がオートボットとディセプティコンの間の憎しみを凌駕すると言う、一瞬の奇跡だった。
泡沫の夢のように儚い、だからこそ尊い光景だった。
「お~い!」
シアンが人の輪の中から静かに飲んでいる金属生命体たちのほうへ駆けて来た。
「何やってるんだ、みんなもこっちに来てくれ!
ソーラータワーが無事完成したのは、みんなのおかげなんだから!」
にこやかに金属の巨体たちを招くが、彼らはオートボットもディセプティコンも揃って難しい顔をする。
「しかしな、シアンよお。俺たちゃ、ディセプティコンだぜ? それとこれ以上仲良くってのは、おまえさんたちにも迷惑なんじゃねえか?」
ミックスマスターの言葉は当然と言えた。
すでにディセプティコンは女神と国の、ひいてはゲイムギョウ界全体の敵として広く認知されている。
それと深くこれ以上深くかかわるのは、双方にとって良い結果を生まないという、彼ららしくない、しかし彼らなりの気遣いだ。
だがシアンは、快活に笑う。
「何言ってるんだ! 同じ物を作った仲なんだから、もう仲間みたいなもんだろ! さあ、とっておきのオイルを用意したんだから、飲んでくれよ!」
「そこまで言うなら……」
ここまで誘われて断るのも失礼だろうと考え、金属生命体たちはおっとりがたなで立ち上がる。
その時だ。
突如、ソーラータワーの上層で爆発が起こり、炎が燃え上がった。
人間も、オートボットも、ディセプティコンも愕然とそれを見上げた。
「いったい何が起こったんだ!?」
「分からん! 怪我人は出てないか!?」
「ソーラータワーが……」
たちまちの内に怒号が飛び交い、混乱が場を支配する。
「ッ! 野郎ども! 急いで消火だ! ソーラータワーを守れえええ!!」
ミックスマスターは、何とか正気に戻って部下達に号令をかける。
コンストラクティコンとレッドフッド、そしてシアンは、燃え盛るソーラータワーに向かって走って行った。
* * *
「……つまらん仕事だ」
ソーラータワーを狙撃したロックダウンは、顔面から伸びた砲塔を収納しながらゴキリと首を鳴らした。
右往左往する人間とオートボット、ディセプティコンたちをセンサーが捉えていたが、狙撃可能なギリギリの距離にいる自分に気付いた様子はない。
特殊な弾を使ったので証拠も残らない。
センサーの向こうでは、ミックスマスターが必死で消火剤を調合し火に放り込み、レッドフットが崩れかける柱を支え、人間たちがお互いに助け起こしている。
「……ハン」
それを一瞥したロックダウンだったが、一つ不機嫌そうに排気すると、その場を去るのだった。
* * *
結局、下町の職人たちが精魂を込めて造り上げた夢の塔、ソーラータワーは半壊した。
全壊こそ免れたものの、エネルギープラントとしての使用は当面不可能だろう。
いつしか降り出した雨の中、ミックスマスターは、それを見上げていた。
「畜生……。畜しょぉおおおう!!」
ミックスマスターは誰にともなく叫び、ガックリと頭を垂れた。
「せっかく、みんなで造った塔じゃったのに……」
「どうしてこうなったんダナ……」
「輝くばかりに美しかったタワーが……」
「うおおお! 何てこったぁあああ!」
「みんな、頑張ったのに……。悲しいべ……」
その後ろに並ぶコンストラクティコンたちも沈痛な面持ちだった。
「それで、これからどうしますか?」
スクラッパーが、それでも問う。
それが副官としての彼の仕事だからだ。
ミックスマスターは少しの間、その問いに答えなかったが、やがて顔を上げた。
「決まってんだろ。……これをやらかした奴をとっちめる」
ソーラータワーが爆発炎上する寸前、ミックスマスターのセンサーはどこからか弾丸が飛来するのを捉えていた。
誰が撃ったのかまでは分からない。
だが、誰が黒幕かは分かる。
「……いいんですか?」
スクラッパーは、再度問う。
シアンら職人達は、何とかタワーを再建しようと案を練っているらしい。
それに加わらなくていいのかと。
ミックスマスターは大きく頷くと、居並ぶ部下達に向けて言い放った。
「ディセプティコンには、ディセプティコンなりの、やり方がある。この落とし前をつけさせるぞ!」
『おおぉー!!』
コンストラクティコンたちは、鬨の声を上げ、建機に変形して走り出す。
技術者の誇りと夢を踏みにじった輩に、相応の末路を与えるために。
まさかの三分割(大切なことなので)
ゲイムギョウ界の企業は大にせよ中小にせよ、ほとんどが良心的な企業ばかりです。
だからこそ、良心のない輩が成功したりするわけで……。
今週のTAV
ついに動き出したメガトロナス。
そして帰還したオプティマス!
次回でTAVも一応の最終回。
ビーやスチールジョーはどう動くのか!?
今回の解説
ジョン・スミス
モチーフとなったキャラはなし。
ジョン・スミス=欧米ではありきたりな名前=(作品的に)どうでもいい奴。
決して某キョンではありません。
名無しでも良かったかもしれないけど、名乗らないのはおかしいので、こういう形に。
では、ご意見ご感想、切にお待ちしております。