超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
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初めて感想をいただきました。
自分は夢でも見てるんでしょうか? 嬉しくしてたまりません!
しかし今回も、女神たちの敗北描写があります。
そういうのが嫌いな方は、引き続きご注意ください。
※2015年12月16日、改稿。
オプティマス・プライムは赤と青のファイヤーパターンのトレーラートラックの姿、所謂ビークルモードで、何もない平原を走っていた。
走りながら、自分の状態を改めて自己診断していく。
運動機能・・・・・・・・・通常の70%ほどだが、問題なし
各種センサー・・・・・・・問題なし
トランスフォーム機能・・・問題なし
イオンブラスター・・・・・使用不能。プラネテューヌで確認済み。
両腕部エナジーブレード・・使用不能
他、各種武装・・・・・・・使用不能
状態は最悪と言っていい。
さしものプラネテューヌの科学者たちも未知のロボットの武装を直すほど、お気楽ではなかったようだ。
仲間に召集をかけることも考えたが、時間がない。
何よりこれから起こる戦いは、言ってしまえばオプティマスの私闘のようなものだ。
総司令官として軽率な行いであることは理解していた。
責務を優先するなら、どこかに身を隠し、自身の回復と仲間の捜索に努めるべきだ。
だが、そうはしない。
許すことのできない敵たちが、この世界でも破壊と略奪を繰り返しているのだから。
本来なら許されない罪を許してくれた、自分を友と呼んでくれた少女が、戦っているのだから。
* * *
本土と油田を繋ぐ海上道路にさしかかり、オプティマスは各種センサーを働かせて油田の状況を探る。すでに戦闘は始まっているようだ。
女神たちの特殊なエネルギー反応が、自分の良く知る反応とぶつかり合っているのが分かった。
オプティックに映る映像を最大限拡大し、女神たちと、それと戦っているディセプティコンを視認した。
ディセプティコンは全部で三体。
いずれも故郷では名を知られた猛者ばかりだ。
ブラックアウトとグラインダーは、自分の宿敵、その忠臣として知られる義兄弟。
多彩な重火器で武装した危険なハンターだ。
ブラックアウトがいるということは、どこかにスコルポノックもいるはずだ。
あの怪物は低級の金属生命体だが、ブラックアウトの部下として幾多の戦士を葬ってきた油断ならない相手だ。
そしてスタースクリーム。
オプティマスは油田のはるか上空にセンサーを向ける。
彼のセンサーは超高速でブランとベールと呼ばれていた二人の女神が、スタースクリームと空中戦を繰り広げているのを捉えていた。
ベールが目にも止まらぬ速さで槍を投擲し、ブランが無数の光弾を放っているが、スタースクリームはジェット戦闘機の姿で、攻撃を全てかわし、そのまま女神二人の横をかすめて飛ぶ。
巻き起こる衝撃波に翻弄される女神たちに、瞬時にロボットモードに変形したスタースクリームが銃撃を浴びせる。
こと空中と言う戦場に置いて、スタースクリームは女神達を圧倒していた。
女神たちが弱いわけでは断じてない。
もし彼女たちの攻撃がまともに入れば、いかな金属生命体と言えども無視できないダメージを負うはずだ。
だが、空ではスタースクリームのほうが一枚も二枚も上手なのだ。
奴は空を飛ぶために生まれ、空で戦い続けてきたのだから。
ネプテューヌとノワールは、ブラックアウトとグラインダーを相手に互角の戦いを演じているが、姿の見えないスコルポノックの存在が気がかりだ。
その時、オプティマスは前方の道路が途切れていることに気が付いた。
故意か偶然か、おそらくは前者だろう、ディセプティコンが破壊したに違いない。
しかしオプティマスはさらにスピードを上げていく。
そして最高速のまま破壊された箇所に突っ込み、そのまま飛び越える。
油田の入り口に到着したオプティマスは、ロボットには戻らず、そのまま油田に突入する。
手抜き工事に加え、ディセプティコンによる破壊のせいで脆くなっている壁や天井をぶち抜き、戦場となっている上層部を目指す。
やがて主戦場であるヘリポート脇の構造物へと近づいてきた。
各種センサーはスコルポノックにネプテューヌとノワールが捕らえられていることを示していた。
もはや一刻の猶予もないと感じたオプティマスは、ビークルモードのまま突撃を慣行する。
構造物の壁を突き破り、サソリメカが自己防衛に入る前に跳ね飛ばす。
スコルポノックは衝撃と痛みに、うまいこと女神たちは放してくれた。
解放されるや紫と黒の女神は、スタースクリームに攻撃され倒れ伏している白と緑の女神たちを助け起こす。
その行動を見て、オプティマスは内心感動していた。
彼女たちは自らが危険にさらされたにも関わらず、他者を思いやっている。女神とは、自分たちトランスフォーマーと同じく博愛の精神を持っているのだ。守らねばならない。
女神たちとディセプティコンたちの間に止まり、ロボットモードへと変形する。
「オプティマス・プライム!!」
「オプっち……」
敵と、守るべき相手の声が自分の前後から聞こえてくる。
チラリと後ろを見やると、ネプテューヌがブランを支えながらこちらを見ている。
ノワールも少し離れた所でベールとともにこちらを見ていた。
皆、ダメージはあれど生命活動に支障をきたすほどではなかったようで安堵した。
武器は使用不能だが、やるしかない。
* * *
「て、テメエもこっちに来てやがったのか!」
スタースクリームは驚愕していた。
オプティマスが突然現れたことはもちろん、それ以上に彼が女神とか言う妙な奴らを助けたことにだ。
奴は惑星サイバトロンでは、知らぬ者のいない戦士であり、オートボットの英雄だ。
敵ではあるが、大物には違いない。
そのオプティマスが、ムシケラに毛が生えたようなチビどもを守っている。
スタースクリームからすれば、訳の分からない状況だった。
「ずいぶんと、好き勝手やってくれたようだな。スタースクリーム」
オプティマスは拳を構え、こちらを睨みつけてくる。
正直な話、勝てる相手ではない。
馬鹿正直に正面から戦えば、オプティマスのほうが戦闘力は上だ。
撤退も視野に入れ、ブレインサーキットを回転させるスタースクリームだが、後ろに立つヘリ型ロボ(兄)が殺気立っているのを感知した。
「オプティマァァス。 貴様よくもスコルポノックを……」
オプティマスに気をやりつつ後ろをうかがえば、ブラックアウトの足元にペットのドローンがキィキィと鳴きながらすり寄っていた。
地味に横のヘリ型ロボ(弟)もやる気満々だ。
――たかがドローンになんでそこまで入れ込んでんだよ。
実力差くらい分かってんだろうが。
空気読めよ。
スタースクリームのブレインサーキット内をそんな言葉が駆け巡るが、とりあえずおいておく。
この上は、とりあえずこの馬鹿ヘリ兄弟をオプティマスにぶつけて、自分は隙をうかがおう。
……戦うにせよ、逃げるにせよ。
そう決めたスタースクリームは、遠距離戦が得意なのに突っ込んでいくブラックアウトと、それを援護するべく火器を展開するグラインダーを無視して、ジェットを吹かし少し離れた場所に移動する。
仮にも仲間と言えるヘリ兄弟たちがどうなろうが、知ったことではなかった。
* * *
ローターブレードを起動し、オプティマスに斬りかかるブラックアウトだったが、それを紙一重でかわしたオプティマスは、すれ違いざま黒い機体の顔面に拳を叩き込む。
「このガラクタが!」
銀色の同型機がプラズマキャノンを発射するが、オプティマスは避けようとせず、そのまま突っ込む。
飛来するプラズマ弾をギリギリのところでかわし、面食らい急いでローターブレードを展開するグラインダーの胴体に飛び蹴りをかます。
「貴様などスクラップがお似合いだ!」
そこで共生者を助けようと背後に忍び寄っていたスコルポノックを振り向きざま蹴り上げ、その尻尾を掴んで振り回し、起き上がろうとしていたブラックアウトに投げつけてやる。
「醜い怪物め! 主人とともに眠っていろ!!」
だが所詮は徒手空拳。
二体のトランスフォーマーと一体のドローンはふらつきながらも大したダメージもなく立ち上がり、オプティマスに襲いかかる。
オプティマスは大きく咆哮し、それを迎え撃つ。
* * *
「なんなんだよ、ありゃあ……」
ブランがネプテューヌに支えられながら茫然と言った。
ネプテューヌも同感だった。
アニメや漫画で見るロボットバトルとは全然違う、激しく、荒々しい戦い。
金属と金属がぶつかり合い、轟音が響き、大気が震える。
何よりも驚くべきは、オプティマスの戦いだ。
一対三でもまったく問題にならないばかりか、対峙して話していた時とは印象が大きく異なる暴れっぷり。
あれが本来の彼なのだろうか?
「口悪すぎだろ、アイツ」
「……それを、あなたが言う?」
ブランがポツリと言った一言に、思わずちょっと笑ってしまった。
その時、気がついた。
戦い続けるオプティマスの背後に、近づいていく者がいる。
あのアイスクリームだか何だかという奴だ。
オプティマスは気づいていない。
「ブラン、立てる?」
「舐めんな、もう大丈夫だ」
ならば、彼を助けなければ。
自分たちを助けてくれたのだから。
友達になったのだから。
* * *
スタースクリームは顔に笑みが浮かぶのを止められなかった。
オプティマス・プライム、奴は弱っている。
代名詞のエナジーブレードもイオンブラスターも使わない。いや、使えないのだ。
加えてブラックアウトとグラインダーが気を引いてくれている。
――これならいける!
腕をミサイル砲に変形させ、狙いをつける。
自分が宿敵を討ち取ったと知ったらメガトロンはどんな顔をするだろうか?
勝利を確信し、スタースクリームはミサイルを撃とうとして……撃てなかった。
あの女神どもの一匹、紫の奴が斬りかかってきたからだ。
「クロスコンビネーション!!」
咄嗟に腕で防いだが、鋭い連撃が装甲の薄い関節部に叩きこまれる。
気づけば、自分の腕が宙を舞っていた。
「……ぐわああああああッ!?」
「ブランとベールの分よ。まとめてお返しするわ」
「腕がッ!! 俺の腕がああ!! よくもぉぉ!!」
のたうちまわり、それでも痛覚センサーを切り、紫のチビを殺してやろうと残った腕をミサイル砲に変形させる。
その瞬間、通信が入った。
この状況では一番聞きたくない声だった。
『何をしておる、スタースクリーム。この愚か者めが!』
* * *
ブラックアウトの胴に拳をめり込ませた瞬間、背後でミサイルを撃とうとしていたスタースクリームの腕をネプテューヌが斬り落としたことを感知した。
――また助けられてしまったな。
そう、思っていると、ディセプティコンたちの様子がおかしいと気付いた。
何か浮き足だっている。
その視線の先を追うと、水平線の彼方から何かが飛んでくるが見えた。
この状況では一番見たくない姿だった。
* * *
突然、トランスフォーマーたちの動きが止まった。
ネプテューヌが彼らの視線を追うと、灰銀色のジェット機がこちらに向かって飛んでくるのが見えた。
見たこともない形だ。
ジェット機は油田の上に到着すると、ギゴガゴと音を立てて人型に変形する。
そして、戦場を見下ろせる場所……最初にスタースクリームがいた場所だ……に着地した。
全身が灰銀色の、オプティマスより一回りは大きく攻撃的な巨体。
あちこち細かい傷だらけだが、それが逆に凶悪なイメージを助長している。
悪鬼羅刹を思わせる顔には、赤くギラギラと輝く双眼。
何よりも、物理的な圧力さえ感じるほどの覇気。
「まずは自己紹介といこう。……俺は破壊大帝メガトロン。ディセプティコンのリーダーだ」
灰銀のロボットは牙だらけの口を開き、そう言って戦場と、そこに立つ全ての者たちを睥睨する。
スタースクリームは、その一段下に素早く移動し、首を垂れた。
「申し訳ありません、メガトロン様。わたくしめは必死にエネルギープラントを守ろうと努力したのですが、思わぬ邪魔が入り碌にエネルギーを回収できておりません。それと言うのも、あのヘリ兄弟が不甲斐ないからで……」
「もうよいわ、スタースクリーム。貴様の不甲斐なさは嫌というほど理解しておったつもりだが、こんな簡単な任務一つこなせないとは、まったく、貴様は俺の予想を超える愚か者だな」
メガトロンはピシャリとスタースクリームの言い訳をさえぎる。
スタースクリームは黙りこみ、屈辱のあまり握りこぶしをワナワナと震わせた。
近くに移動してきたブラックアウトが忍び笑いのような音を漏らし、グラインダーがやれやれと首を横に振る。
「うわあ…… 情けない」
「わたしは、あんなのにやられたのかよ……」
「自分が情けなくなりますわね……」
「あなたたち、それ以上はやめてあげなさい。ああいうのに限って、プライドは高かったりするんだから……」
その様子を見て女神たちが複雑な顔になった。
特に直接対決して敗れたブランとベールの視線と声音は、底抜けに冷たい。
「聞こえてんだよ、テメエら!!」
案の定、プライドの高かったらしいスタースクリームが反応するが、メガトロンに睨まれて再び黙り込む。
メガトロンは女神達を見下ろし、再度口を開いた。
「まあ、当初の予定どおり、女神どもをおびき寄せることには成功したようだがな」
「私たちを……おびき寄せるですって!?」
その言葉を聞いて女神たちが驚く。
特にノワールは自分の国でのことだけに衝撃が大きい。
「その通り。貴様ら女神とやらと話がしたくてな」
「えっと、聞いて……ないんですが?」
スタースクリームはメガトロンの言葉を聞いて驚いた素振りを見せる。
どうやら、作戦の目的を伏せられていたらしい。
「言ってなかったからな。それにしても……」
メガトロンは、非難がましい顔のスタースクリームを無視して言葉を続ける。
「まさか、全員釣れるとは思っていなかったぞ。ここラステイションとやら、それにせいぜい、ここから近いプラネテューヌの女神だけだろうと思っておったのに。さらに、思わぬオマケつきだ」
その視線が、メガトロンを見上げるオプティマス・プライムへと注がれる。
オプティマスのオプティックは鋭く細められ、視線には女神たちが感じたことがないほどの怒りで満ちていた。
「メガトロン、貴様は……」
「オプティマス・プライム、貴様の相手は後だ。……さて、女神ども。話し合いといこうではないか」
「話し合い……ですって?」
ネプテューヌが訝しげにメガトロンを見上げる。
これだけのことをしておいて、いまさら話し合おうと言うのか?
メガトロンは発声回路から深く響くような笑いを漏らした。
「なに、簡単な話だ。貴様らの持つあらゆるエネルギーと資源。それを全て我々に譲渡してもらおう。そうすれば貴様らと、貴様らの国民の生命を保障しよう」
ネプテューヌたち女神は唖然とする。
これは話し合いなどと言うものでは断じてない。
「ふざけないで!」
ノワールが怒りを込めて叫ぶ。
自分の国を荒らされた上に、この物言い。怒らないほうがおかしい。
「悪い話ではあるまい? 寄越さないと言うのなら、貴様らの国を襲い、奪うだけだ。貴様らを倒したあとで、ゆっくりとな……」
どこまでも傲慢に、メガトロンは言い放つ。
そこには女神たちに対する敬意など微塵も無い。
「……どうやら、答えは決まったわね」
ノワールは屹然とメガトロンを睨みつけた。
「ああ、コイツには話し合いの意味をたっぷり、教育してやらねえとな」
ブランが手の中に戦斧を再構成させる。
「ああいう傲慢なかたには、一度痛い目を見てもらわないといけませんわね」
ベールが槍をクルリと回す。
「ほう……、では交渉は決裂、ということで良いのだな?」
メガトロンは、女神たちの敵意を浴びているにも関わらず、むしろ面白そうな声をだす。
「ええ、あなたに私たちの国に手出しはさせない。ここであなたを倒す!」
ネプテューヌが太刀を正眼に構え、言い切る。
こんな奴に、これ以上好き勝手はさせない。
確かにその迫力と覇気には圧倒されるが、四対一……いや、オプティマスを含めれば五対一なら十分勝てるはずだ。
「愚かなことよ。彼我の実力差すら測れんとはな。貴様らのような愚か者どもが支配しているのでは、民が可哀そうというものだ」
メガトロンは楽しくて仕方がない、と言う風に嗤って見せる。
どこまでも女神たちを馬鹿にした、あきらかな嘲笑を浮かべて。
「メガトロン、貴様の相手は、私だ!」
それまで黙って事を見守っていたオプティマスが女神たちを庇うように移動する。
「ククク、無理をするなプラァイム。本調子ではないのだろう? そんな状態で俺と戦おうというのか? そんなムシケラどもを守るために?」
「貴様がこの世界に、我々の世界にしたような暴虐を振るうというのなら、私はこの世界に生きる者たちを守るために戦う!!」
オプティマスは雄々しく言い放つとともに拳を構える。
「そっちで勝手に話を進めないでくれるかしら?」
「わたしたちを忘れてんじゃねえぞ」
「とりあえず戦えるくらいには、回復しましたわ」
「オプっち、いっしょに戦いましょう!」
ノワール、ブラン、ベール、そしてネプテューヌ。
四人の女神が金属の巨人の周りに居並ぶ。
「いや、君たちは下がっていてくれ。これは私とメガトロンの戦いだ」
しかしオプティマスは、そんな女神たちを制す。
「ふざけないで! これはラステイションの問題よ!!」
ノワールがオプティマス、次いでメガトロンを睨みつけた。
他の三人も武器を手にメガトロンを睨む。
「フハハハ! 頼もしい仲間ではないかプラァイム! いいだろう、興が乗った!」
メガトロンは背後に降りてきた部下達に顔を向ける。
「お前たちは、このプラントからエネルギーを搾り取ってこい!」
「はっ? しかし、こ奴らの相手は……」
スタースクリームが思わず聞くが、メガトロンはニヤリと笑う。
見る者の背筋を凍りつかせる笑みだった。
「俺様が、まとめて相手をしてやる」
「はっ、かしこまりました。……おい、ブラックアウト! テメエのドローンがマッピングした情報を寄越せ!」
スタースクリームがブラックアウトに横柄に言うと、黒いディセプティコンは、渋々ながらも自分のドローンとリンクして情報をダウンロードし、それをスタースクリームに転送する。
航空参謀は送られてきた情報を基に、この油田で最も石油が蓄えられている場所を探り当てる。
「行くぞ、ヘリ兄弟!!」
そう言って、二体のヘリ型ディセプティコンとサソリメカを伴い、さっきオプティマスが開けた穴を広げ、油田の奥へと侵入していく。
途中でネプテューヌに斬り落とされた腕を拾うことも忘れない。
それを確認してから、メガトロンは大きく腕を広げて見せた。
「さて…… くるがいい」
「うおおおッ!!」
オプティマスが大きく吼え、メガトロンに殴りかかるが、メガトロンは素早く右手をチェーンメイスに変形させ、それをオプティマスの顔面に叩き込む。
たまらずよろけるオプティマスの横をすり抜け、ネプテューヌが右から、ノワールが左から斬りかかる。
「クロスコンビネーション!!」
「レイシーズダンス!!」
しかし、メガトロンは右手を砲に変形させ、自分のすぐ前の床を撃った。
衝撃と舞い上がる無数の破片に、紫と黒の女神は思わず動きを止めてしまう。
「小賢しい」
次の瞬間、横薙ぎに振るわれたチェーンメイスがネプテューヌとノワールに襲い掛かった。
『きゃああッ!!』
二人が弾き飛ばされたその瞬間、ブランがメガトロンの直上から、その頭部めがけ凄まじい勢いで戦斧を振り下ろした。
「ゲッターラビィーネ!!」
轟音が鳴り響く……。だが戦斧はメガトロンの頭部ではなく、頭部を庇った左腕に僅かに食い込んだだけだ。
「はずれだ」
「そんな……」
「もらいましたわ!」
いつの間にかメガトロンの足元に移動していたベールが、連続で破壊大帝の体を突く。
「レイニーラトナビュラ!!」
しかし、槍による刺突の雨はことごとくメガトロンの装甲に弾かれた。
「かゆいな」
「嘘……」
メガトロンは左手を振るってブランを払いのけ、返す刀で彼女に拳を打ち込み、さらに回し蹴りでベールを蹴り上げる。
その衝撃に、彼女たちの身体は大きく弾き飛ばされた。
「うわああッ!!」
「きゃああッ!!」
ネプテューヌとノワールは油田の床に倒れ、ブランとベールは油田の構造物の壁にめり込んでいる。
女神たちは皆、かろうじて意識はあるがダメージが大きく、ネプテューヌ以外の三人は変身が解けている。
一人も海に落ちなかったのがせめてもの幸運だ。
オプティマスは体勢を立て直し、メガトロンに突っ込む。
「くッ……! メガトロン!!」
「フハハハ、なんだそれは? 俺を失望させるなオプティマス」
もはや武器を使うことすら不要と見たのか、メガトロンはオプティマスと格闘を繰り広げる。
しかし、赤と青の巨人の拳も蹴りも、全て虚しく空を切るか防がれた。
かわりに灰銀の破壊者の攻撃は面白いようにオプティマスに食い込んでいく。
そして右腕をチェーンメイスに変形させる。
今度は鎖を伸ばさず、鉄球が腕から直接生えた形に変形させ、それをオプティマスの胸に叩き込んだ。
「ぐわあああッ!!」
轟音とともにオプティマスの体が宙を舞い、油田の床に仰向けに倒れ込む。
「オプっち!!」
「この程度か……。肩慣らしにもならんな」
メガトロンは首を回しながら、大きく排気して見せる。
「こ、こんな……、女神四人とオプっちが束になっても、まるで歯が立たないなんて……」
ネプテューヌは信じられなかった。
たしかに、自分たち女神はさっきの戦いで大きなダメージを受けている。
オプティマスが本調子ではないのも分かる。
だからと言って、こんなにもあっさりと負けるものなのか?
倒れたきりピクリとも動かないオプティマスを見て、女神たちの顔に恐怖が浮かぶ。
敗北を知らないわけではない。
女神同士戦いあっていた時には、勝ったり負けたりを繰り返していた。
強大なモンスターとの戦いでは死にかけたことだってある。
しかし、こんな大敗は初めてだ。
突如、オプティマスとメガトロンの間の床が爆発し、その爆炎の中からスタースクリームが飛び出してきた。
スタースクリームはネプテューヌに斬られた腕を持ったまま、メガトロンの前に移動すると恭しくお辞儀をする。
「メガトロン様! ご言いつけの通り、エネルギーを回収いたしました。質、量ともにアレですが、まあ無いよりましでしょう」
「……まあ、今回は女神どもを誘き出すのが目的だったからな。良しとしておこう。……本命がまだあることだしな」
メガトロンはスタースクリームが開けた穴を見やる。
そこからは巨大ヘリに変形したブラックアウトとグラインダーが浮上してくるところだった。
輸送ヘリである二体の中には、オイルを入れたタンクを満載しているのだろう。
スコルポノックはすでにブラックアウトに回収されたようだ。
「では、行くとするか」
「よろしいので?」
「かまわん。飽きた」
そう言うと、メガトロンはオプティマスと女神たちに背を向ける。
「メガトロン……」
オプティマスはなんとか立ち上がり、爆炎の向こうのメガトロンに向けて絞り出すように声を出した。
「兄弟よ……。世界を違え、次元を超えてなお、同じ過ちを繰り返そうというのか?」
「今度は上手くやるとも。今度こそはな」
そう言うと、メガトロンはギゴガゴと音を立てて異形のジェット機……エイリアンジェットへと変形し飛び立った。
……真上へと。
「いったい何を? ……まさか!」
スタースクリームはなにやら慌てた様子でジェット機に変形して飛び去り、ヘリ兄弟も油田から離れていく。
「……いかん!」
オプティマスも何かに気づいたらしく、緊迫した声を出し、女神たちの方へ走り出した。
* * *
油田の遥か上空に到達したメガトロンは、そこでロボットモードに変形する。
足裏のブースターを吹かすものの、その巨体は重力に引きずられ落下していく。
しかしメガトロンは一切慌てず、両腕を組み合わせて変形させ、巨大な砲を作り上げる。
これこそ、メガトロンの必殺武器、フュージョンカノン砲である。
メガトロンはフュージョンカノンを真下に……油田に向け構える。
「飽きたが、止めは刺しておかなければな」
* * *
オプティマスは冷静に……少なくとも、そうしようと努めて……思考を巡らす。
メガトロンのフュージョンカノンに自分はともかくネプテューヌたちが耐えられるとは思えない。
しかし、ネプテューヌたちは飛行して逃げられる状態ではない。
仮に直撃を免れたとしても、この油田自体が、すでに限界のはずだ。
おそらく崩壊は免れないだろう。
ならば見捨てて逃げる? 有り得ない!
オプティマスは女神四人を手で急いで、しかし細心の注意を払って掴み上げる。
自分が力を込めれば、彼女達の体を潰してしまいかねない。
女神達は無抵抗だった。抵抗する体力も気力もないだけかもしれない。
ネプテューヌが何か言おうとしたが時間が無い。
オプティマスは、四人を抱えたまま、油田の端に向かって走っていく。
ビークルモードに変形する時間すら惜しかった。
* * *
メガトロンのオプティックは、遥か下で女神たちを掴んで退避しようとするオプティマスを正確に捉えていた。
――愚かなことだ。百歩譲って同じトランスフォーマーなら理解できる。しかし相手は有機生命体。意思を持たないドローンにも劣るムシケラ。奇妙なエネルギーを持っているようだが、それだけだ。何故護ろうとする?
「いや、お前は昔から、そういう奴だったな」
いらない仏心を出し、厄介事を背負いこむ愚か者。
あらゆる生命に価値が有ると信じる哀れな理想主義者。
それがオプティマス・プライムだ。
「だが、それも終わりだ」
メガトロンはフュージョンカノンで発射した。
紫色の光弾が砲口から放たれ、油田に向け一直線に飛んでいき着弾。
その瞬間、着弾点で爆発が起こり、さらに油田の各所で連鎖的に爆発が起こる。
油田は遂に耐えきれることが出来ず、全体が傾き、崩れ、海に沈んでいく。
最後に大爆発が起こり、海底油田B‐106は完全に炎に包まれた。
「さらばだ。……兄弟」
エイリアンジェットに変形する間際に放たれたメガトロンの呟きは、爆発音にかき消され、誰にも届くことはなかった。
TF的伝統その3 口の悪い司令官。
やっぱりバトルって難しいですね。もっと精進しなければ……
メガトロンが強すぎるように感じられたかもしれませんが、メガトロンがほぼ全盛に近い状態なのに対し、作中でも書いたとおりオプティマスは本調子ではない上に武器が使用できない、女神勢は直前の戦闘のダメージが蓄積しているという状態なので、こういう結果になりました。
それはそうと、書きためていた分は今回で全部になります。ですので、これからは、いままでに比べ、ゆっくり投稿していくことになると思います。
しかし、トランスフォーマーたちに馬鹿をやらせるのがテーマなのに、なかなかその段階まで進めませんね……