超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION 作:投稿参謀
そのせいで時間がかかった割には短いです。
クリスタルシティ。
かつては栄華を誇った科学の聖地。
今はディセプティコンの攻撃により、廃墟と化した都市。
オートボットと女神たちは紆余曲折あったものの、ここに辿り着いていた。
そしてここはその中枢、メインタワー。
地下鉱山で合流した者たちを外に待たせ、女神とそのパートナーたち、ドリフト、ハウンド、クロスヘアーズ、そしてアルファトライオンが最奥を目指していた。
「もうすぐじゃ。この奥でオメガ・スプリームが眠っておる」
先頭を行くアルファトライオンはそう言った。
「オメガ・スプリーム?」
聞きなれない名前に、アイアンハイドの隣を歩いていたノワールが首を傾げる。
義父たるアルファトライオンの横を歩くオプティマスは一つ頷くと説明する。
「オメガ・スプリームというのは、クリスタルシティを統括するメインコンピューターのことで、いわばこの都市の守護神だ。今は眠りについているが、奥にある本体を操作すれば再起動できるはずだ」
「その通りです。オメガ・スプリームはこの都市で起こった全てを記録している。きっとスペースブリッジについても知っているはずです」
継いでドリフトが補足した。
「なるほどね……」
納得した様子のノワール。
巨人のための通路を歩き続ける一同は、やがて巨大な扉の前に行き当たった。
「ここがオメガ・スプリームの本体が収められている間じゃ。さすがのディセプティコンもここまではこじ開けられなかったようじゃな」
「どうやって開けるの?」
「合言葉を唱えるのじゃ。見ていなさい」
ブランの問いに答えたアルファトライオンは、見るだけで分厚く頑丈なことが分かる扉を見上げながら杖を掲げる。
「ヴァーウィップ、グラーダ、ウィーピニボン! これは宇宙共通の挨拶……に、なってくれればいいなと先人が作った言葉じゃ。『宇宙は一つ、皆兄弟』という意味じゃよ」
どこか昔を懐かしむように微笑むアルファトライオンの前で、音を立てて扉が開いていく。
扉の奥は広大な空間になっていた。トランスフォーマー基準でも奥行があり、天井も非常に高く、奥には『何か』があった。
それは壁を背に座り込んだ巨大な人型であり全身が太いチューブで壁と繋がっていた。
「こ、これがオメガ・スプリーム!?」
驚きの声を上げるノワールにオプティマスは頷く。
「そうだ。オメガ・スプリームとは、古代の巨人族の最後の生き残りなのだ。私も本体を見るのは初めてだ……」
「残念ながら、動くことはできんがの。いかな巨神も時の流れには勝てないと言うことじゃ……」
寂しげに言うアルファトライオンは、巨神の目の前に置かれたコンソールまで歩いていき、それを操作する。
「ふむ……。まだダメージから回復しきっていないが、これなら再起動できるじゃろう」
しかるべき手順を踏み、最後に決定ボタンを押す。
少しの間、静寂が巨神の寝床を支配した。
やがて部屋全体が細かく振動し始め、宇宙服のヘルメットを思わせる巨神の頭部に光が宿った。
「……オメガ、起動。……アルファトライオン、久し振りだ」
巨神オメガ・スプリームの発する声は、その姿に相応しい重厚さだったが、同時に静かなものだった。
「友よ、久しいの。起こして早々すまないが今一度力を貸してくれぬか……」
「それはもちろん、構わない。だがすでに地上に動かせる戦力はない。力を貸す、と言っても何をすればいい?」
かつてのディセプティコンの奇襲により、オメガ・スプリームの手足となるガードロボットや無人戦車、対空砲台はほぼ破壊されている。
だがオメガ・スプリームとて、目の前の老歴史学者が戦力を当てにして自分を目覚めさせたのではないことは分かっていた。
アルファトライオンは頷く。
「このクリスタルシティのどこかには、スペースブリッジの試作品が眠っているはずじゃ。その場所を知りたい」
「それならば、このメインタワーの地下、こことは別の区画に封印されている。……どうやら、何者かが私の眠っている間にそこに立ち入ったようだな」
「ロックダウンだ。……奴の言っていたことは本当だったか」
オプティマスは納得した様子で言葉を出す。
やはりあの賞金稼ぎは、この都市からゲイムギョウ界に跳ばされたのだ。
「それで!? そのスペースブリッジは使えるの!?」
待ちきれないとばかりにノワールが声を上げた。
ゲイムギョウ界に帰還できるかどうかの瀬戸際だ。焦るのも仕方がなかった。
ここまで来て無駄骨じゃあ、笑い話にもなりはしない。
対しオメガ・スプリームはゆっくりと答えた。
「使用可能だ。だが、何分古い物だからな。エネルギーのチャージに時間がかかる上に、あと一回の転送が限度だ」
その答えに女神たちは一様にホッとする。
とりあえず、これでゲイムギョウ界に帰る目途が立った。
アルファトライオンはさらにコンソールを操作して、情報を引出す。
「ふむ。スペースブリッジはリフトで地上に移動できるようじゃな。そのほうが何かと都合がよいし、地上に移動させよう」
ポチッとスイッチを押すと、どこからか振動と共に機会の駆動音が聞こえてきた。
「さあ、外に出てみよう」
そして一同は元来た道を戻りメインタワー前の広場に出た。
広場の中央の地面が扉のように開き、下から巨大な何かがせり上がってくる。
それは巨大な輪が地面に横たわっているかのような形をした機械だった。
「……この、ドーナツのお化けみたいなのが、スペースブリッジ?」
思わず声に出すブラン。
タリの遺跡で見たのとは随分形が違う。
「試作型だからな。あらゆる機械は試行錯誤を繰り返して完成する。あれはその過程の一つというわけだ」
その訳を簡単に説明するオプティマス。
ブランとしても動いてくれれば問題ないので、それ以上は何も言わない。
スペースブリッジはリング型の本体の横に、操作盤らしき機械が置かれていた。
それを操作するアルファトライオン。
「転送先の座標は前回のデータを使えばよさそうじゃが、確かにこれは、チャージに時間がかかりそうじゃわい」
「どれくらい!?」
切羽詰まった声を出すノワール。
これで云百年とか言われた日には目も当てられない。
「幸いにして、都市の地下にはプラズマエネルギーが貯蔵されておる。そうだの……、半日といったところか」
意外とすぐすむようだった。
ホッと胸をなで下ろす一同。
アルファトライオンはそんな一同を見回し、言った。
「それまでの間、休憩といこう。……これでしばしの別れになるのだから」
その言葉に頷くオプティマスだが、ふと、クリスタルシティに到着してからここまで何も言わないことに気が付いた。
皆の後ろにポツリと所在なさげに立つ態は、いつも元気な彼女らしくない。
「ネプテューヌ? どうしたんだ、元気がないようだが」
ネプテューヌに近づき話しかけるが、彼女は上の空だ。
「ネプテューヌ?」
「……え!? あ、なにオプっち?」
慌てた様子で笑顔を作るネプテューヌを見て、オプティマスは訝しげな顔になる。
「何やら様子がおかしいぞ。いったいどうしたというんだ?」
「お、おかしくなんかないよ! わたしはいつも通り!」
「しかし……」
両腕を広げてニッコリと笑って見せるネプテューヌ。
と、その周りを囲うように女神たちが近づいてきた。
「ネプテューヌ」
「な、何さノワール」
代表して言葉を発したノワールに、ネプテューヌは軽い調子で返す。
だがノワールをはじめとした女神たちは厳しい顔だ。
「ちょっと話があるわ。ヒトのいない所に行きましょう」
「え、ええ~? 何、ひょっとして告白? いや~、残念だけどわたし百合属性はないんだよね! 勘違いされがちだけど!」
ふざけた調子のネプテューヌ。
「いいから! ちょっとこっちに来なさい!」
「ええ~!?」
ネプテューヌの背を押して、建物の中へと入っていくノワール。
その背をブランとベールも追う。
「ネプテューヌ!」
「……ここはわたしたちに任せてちょうだい」
「女の子には、女の子同士の話しがあるのですわ」
オプティマスが呼び止めようとするが、ブランとベールがそれを制する。
なおも何か言おうとする総司令官の肩を、義父である老科学者が掴んだ。
振り向いたオプティマスに、アルファトライオンはゆっくりと首を横に振る。
オプティマスは後ろ髪を引かれながらも、一同に号令をかけるのだった。
「……では、スペースブリッジの準備が整うまで、休息とする」
* * *
「……それで何さ、ノワール?」
どこかの建物の中。
ネプテューヌはノワール、ブラン、ベールに囲まれていた。
何とも異様な雰囲気の中、ノワールはネプテューヌに問う。
「こっちに来てから、あなた変よ」
「へ、変て何さ! もう、オプっちもノワールも……」
「誤魔化さないで! 見てて痛々しいのよ!」
ビクリとネプテューヌは体を震わせた。
「い、痛々しいって……」
「ネプテューヌ」
ブランも厳しい声を出す。
「……オプティマスのことでしょう」
「な、何でここでオプっちが出てくるのさ!」
「あんな切なげにオプティマスさんを見ていたら、誰だって分かりますわ」
動揺するネプテューヌに答えたのは、ブランではなくベールだった。
「何があったのよ。正直に話してちょうだい」
「…………」
目を逸らそうとするネプテューヌの肩を掴み、その顔を覗き込むノワール。
「ッ!」
「……私たち、仲間でしょ?」
だからこそ、心配なのだ。
あまりにもらしくない、その姿が。
しばらく沈黙していたネプテューヌだが、やがて根負けしたようにポツポツと語り出した。
アルファトライオンやドリフトから聞いた、オプティマスの過去。その全てを。
* * *
「なるほどね……」
話しを聞いて、ノワールは納得したように呟く。
それは確かに、いかなネプテューヌとて気落ちしてしまうのも仕方がない。
「……それで、あなたはどう思ったの?」
ブランは一番大切なことを聞いた。
確かにオプティマスの過去は壮絶だ。
だが、それを聞いてネプテューヌが何を感じたのか。それをボカされているように、女神たちは感じていた。
「……わたしさ、エリータってヒトのことを聞いた時、何だか変な気分になったんだ。よく分からないけど……。それで、それで……」
ネプテューヌは間を置いて、何とか声を絞り出した。
「エリータがもういないって分かった時、わたし、わたし……。少しだけホッとしたんだ。……ホッとしちゃったんだ」
気が付けば、ネプテューヌの目から涙がこぼれていた。
「酷いよね。最低だよね……」
ネプテューヌの独白を聞いた女神たちは顔を見合わせる。
そして、まずノワールが息を吐いた。
「そうね。確かにそれは最低だわ」
「……だよね」
「でもね。あなたはそれを最低だって思って、それ以降はそう思わないようにしてる。それはいいことだと思うわ。変に言い訳したり、開き直ったりしてない」
その言葉に、ネプテューヌは顔を上げる。
ノワールは優しい笑みを浮かべていた。
ブランも頷く。
「……というか、そんなの誰だって思うわよ。あなたはまだマシなほう。わたしだったら、嫉妬のあまりキレてたかもね」
「……あはは」
少しだけネプテューヌは笑う。
ベールはたおやかに微笑んだ。
「そうですわね。恋をすれば、楽しいばかりではありません。痛くて苦しいものですわ」
「うん。…………うん?」
思わず頷いたネプテューヌだったが、聞き捨てならない単語に気が付いた。
――恋? 誰が? 誰に?
「こここ、恋って! そんな、わたしは別にそんな……」
慌てて否定するネプテューヌに、女神たちは面食らう。
――え? ひょっとして自覚なかったの? あれだけオプっちオプっち言って引っ付いてたのに?
目を点にする女神たちにネプテューヌは慌てて反論する。
「だだだ、だってオプっちはトランスフォーマーだし!」
「……そんなの関係ないわ。……そう、『何故か』関係ないと思えるの」
ブランはどこか思案するように言う。
「そそそ、それに! 恋したらもっと楽しいって言うか、嬉しい感じなんだと思うんだけど!」
「先ほども言いましたけど、恋をしたら楽しいばかりではありませんわ。むしろ辛いことのほうが多いのです」
なおも言い訳がましいネプテューヌを、ベールが柔らかい口調で、しかしバッサリと切り捨てる。
「う、う~……」
「ああもう! 鈍感なのはハーレムラノベの主人公だけで十分よ! もう一度、良く考えてみなさい! ……あなたがオプティマスのことをどう思っているのか」
頭を抱えるネプテューヌに、ノワールはやや強い口調で問う。
結局、そこが大事なのだ。
「わたしが、オプっちのことをどう思っているか……」
最初出会った時は、無邪気にはしゃいだ。
金属製の巨体を持つヒーロー。そういうものだと思った。
実際、彼は勇敢で真面目で強くて。まさにネプテューヌの思い描くヒーローそのものだった。
だが付き合いが長くなるうちに、それだけではないと気が付いた。
本当の彼は優しくて、繊細で、少しだけ天然で。
戦闘時の口の悪さも、本性と言うよりは、相手を傷つけることに対する罪悪感を誤魔化すためのものだと思う。
そしてこの星に来て、オプティマスの背負う物の重さを知った。
……たった一人で背負うには、あんまりにも重すぎるということを。
しかし、周囲はそれを背負うことを彼に期待する。
オプティマスは決して不満一つこぼさない。
優しくて、強くて、でもどこか壊れてしまいそうな一面を持つオプティマス。
そんな彼を自分は……。
「わたしは……」
黙考を続けていたネプテューヌはようやっと答えを見つけたのだった。
「わたしは、オプっちのことが、好きだ……」
「よろしい。やっと一歩前進ね」
満足げにノワールは頷いた。
「で、でも好きだったらどうしたらいいんだろう……?」
「……それは自分で考えなさい」
答えは出たものの、まだ不安げなネプテューヌにブランが言う。
厳しいようだが、ここから先はネプテューヌ自身が何とかするしかない問題だ。
自分たちは、できる範囲で手助けしていけばいい。
「正直な所、わたくしたちもアドバイスできるほど経験豊富な訳ではありませんしね」
苦笑気味に、ベールが締めた。
確かに、と頷く一同。
なんせ女神たちは恋愛という経験がほとんど、ないしまったくないのだから。
国を治める女神としての立場もあるし、『女神』はそもそも人間とは全く違う生物なのだから。
それが、金属生命体に惚れてしまったのは何の因果やら。
もっともブランとベールもパートナーとは友達以上恋人未満だし、ノワールに至っては恋愛感情を持っていないのだが。
女神たちは、誰ともなく苦笑しあうのだった。
* * *
「……時に、息子よ」
スペースブリッジ前。
アルファトライオンは制御盤を操作しながら、後ろに立つオプティマスに言葉をかけた。
他の者たちは、警備や物資の調達などに散っている。
「何でしょうか、父上?」
「いやなに。大切ことを聞くのを忘れておったからな」
この場に自分たち二人しかいないことを確認した上での、重要な話題であると前置きである。
これは大事の予感がすると、オプティマスは内心で身構える。
「お主は、あの娘のことをどう思っておるのじゃ」
「……は?」
「ネプテューヌ君に、どういう感情を抱いておるのかと言っておる」
その問いにオプティマスは面食らう。
もっと深刻な話しかと思っていたのに。
「その答えなら簡単です。彼女は私にとって大切な友人です」
「本当にそれだけか?」
淀みなく答えるオプティマスに、アルファトライオンは鋭い視線を向ける。
「……お主の中に深い悩みが見える。それを聞かせてはくれまいか」
「それは……」
父と慕う老オートボットの言葉に、しかしオプティマスは彼らしくない煮え切らない態度を見せる。
「悩み、と言えるほどの物かは分かりません。オートボットの総司令官としてはあまりに小さな問題で……」
「では今は、ただのオプティマスに戻ると良い。少しの間くらいなら代々のプライムも許してくださるじゃろう」
内心を見通すような視線を受けてオートボット総司令官はどこか所在なさげだったが、やがて一句一句絞り出すように語り始めた。
「彼女と共にあると、私の心が穏やかになっていくのを感じるのです。戦いの狂気も過去の悲しみをひと時の間忘れてしまうのです。……それだけはありません。私は彼女に愚かにも強い執着を感じているのです。彼女が他の者と共にあると、精神は安定を失い、怒りと不安に満たされるのです」
「ふうむ……」
難しい顔で髭を撫でるアルファトライオン。
「オプティマスよ。それはつまり……」
「……はい、その通りです。私は彼女に恋愛感情を抱いているらしいのです」
そう言うオプティマスの顔は、決して恋に燃え愛を語る男の顔ではなかった。
まるで死刑執行を言い渡された罪人のように、罪悪感と自己嫌悪に満ちていた。
「愚かな、愚かな、愚かなことです。私は金属生命体、彼女は有機生命体、到底恋愛が成立するわけないのです。さらに私はプライムになった時、全ての責任を背負うと決めたにも関わらず、彼女と共にいるとそれを忘れてしまうのです」
「……オプティマス」
「ネプテューヌといっしょにいると楽しい! 彼女が私に笑いかけてくれることが嬉しくてたまらない! だけど、だけど、それは許されないことなんです! ……私はプライムなのだから!!」
血を吐くように言葉を絞り出すオプティマス。
アルファトライオンはその慟哭を黙って聞く。
「私が! 私がプライムとしてこの戦争を続けることを選んだのです! その私が楽しみや喜びの中にあるなど、散っていった戦士たちに顔向けができません! まして、まして私は……」
泣きそうな顔で、オプティマスは言葉を吐き出した。
「エリータ・ワンを助けることができなかったのだから!!」
それは
この場にオートボットの戦士たちがいたならば、自分たちのリーダーの情けなさに失望してしまうことだろう。
オプティマスがこういう弱音を吐けるのも、父たるアルファトライオンの前だけなのだ。
「……オプティマス」
少しだけ間を置いて、アルファトライオンは言葉を発した。
「オプティマス。よく聞きなさい」
息子の肩に手を置き、義父は続ける。
「エリータはな。幸せであったと儂は思うよ。彼女は己の意思の下に生きたのだから」
「幸せ?」
オプティマスのためにずっとずっと戦い続けて、あんなに無残な最期を遂げたのに?
アルファトライオンは大きく頷いた。
「そうじゃ。自由とは、己の意思に従って生きることだ。おまえに責任がないとは言わん。だが、必要以上に思いつめることもないと思う」
諭すようにアルファトライオンは言葉を続ける。
「確かにおまえは重い責任を背負っておる。だが、何も一人きりでそれを背負うことはない。ここらで一つ、重荷を分かち合う相手がいてもいいとは思わんかね」
「……ネプテューヌに、私の重荷を背負わせろと?」
そして、あのエリータのように悲惨な死を迎えさせろと言うのか?
「……できません。それだけは、できません」
「……やれやれ。おまえは昔から、変な所が頑固だったの。……よかろう。これは一朝一夕に片付けられる問題ではないようじゃ。では、儂から言えることはこれだけ」
オプティマスの顔を真っ直ぐ見ながら、アルファトライオンは告げた。
「女神と共に進め。答えはきっと、そこにある」
「それはいったい……」
訝しげな顔になったオプティマスが言葉の意味を問おうとした時だ。
『オプティマス! 緊急通信! 緊急通信!』
突然ジャズからの通信が入った。緊迫した声だ。
「私だ。どうした、ジャズ」
『オプティマス、すぐ来てくれ! 6時の方向に機影多数、ディセプティコンだ!!』
「やはり来たか。総員に戦闘態勢取るよう伝えろ。私もすぐ行く」
『了解!』
実に総司令官らしく威厳ある態度で短く命令すると、オプティマスは通信を切る。
ここにしかスペースブリッジがない以上、メガトロンも必ずここに来ると思っていた。
「アルファトライオン。この話しはまた今度にしましょう。私は行きます」
「うむ。……しかしオプティマス、一つ問題がある」
「何です?」
駆け出そうとしたオプティマスだが、思わせぶりなアルファトライオンの言葉に立ち止まる。
「このスペースブリッジだが、エネルギーが充填されると自動的に転送が開始されるようになっておる。そして、思っていたより早くエネルギーがたまりそうなのじゃ」
オプティックを見開くオプティマス。
それはつまり、ゲイムギョウ界に転送される好機が前倒しされたということだ。
「それはいつです!?」
「そうじゃの。……今じゃ」
その瞬間、巨大なリング状機械の内側にエネルギーが満ち、光の柱が天に向かって立ち上がった。
唖然としてそれを見上げるオプティマスだが、すぐに正気に戻り通信を飛ばす。
『ジャズ、アイアンハイド、ミラージュ! すぐに女神たちをスペースブリッジに連れてこい!』
内心頭を抱えるオプティマス。
ディセプティコンが攻めてきた瞬間にスペースブリッジが開くとは、まるで『図ったような』タイミングだ。
「アルファトライオン、あなたはここにいてください!」
それだけ言うとオプティマスは仲間たちの指揮を取るべく、今度こそ駆けていった。
アルファトライオンは立ち昇る光の柱を見上げた。
このタイミングでメガトロンがやってきたのは、ある意味において好都合だった。
……少なくとも、アルファトライオンにとっては。
「許せとは言わん。恨むなら恨んでくれ」
それは重い悔恨を含んだ言葉だった。
「しかし、おまえ『たち』に課せられた使命は、決して単なる勝利などではないのだ。……オールスパークよ、どうか導きたまえ」
その呟きは、誰にも届くことなく大気に溶けたのだった。
いいじゃないですか、弱音くらい吐いたって。
いいじゃないですか、涙くらい流したって。
いいじゃないですか、泣き言くらい言ったって。
最後に立ち上がることができたなら、そいつは間違いなくヒーローなんです。
今週と先週のQTF
ディセプティコン回は安定して面白い。
サン○オなのに、内容が何と言うかオヤジ臭いけど、しょうがないね。
……夜の超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMETION、……やれと?(錯乱)
今回の小ネタ。
オメガ・スプリーム
当初はあくまでコンピューターでいく予定だったけど、結局出しちゃった巨大トランスフォーマー。
キャラとしては初代よりスーパーリンクに近いかも。
宇宙共通の挨拶
ザ・ムービーにてチャーが披露。
一見ギャグだが、挨拶が通じる=コミュニケーションが取れる=分かり合える、と考えるとそこに込められた祈りは重い。
リング型のスペースブリッジ
初代より。
次回は近いうちに投稿予定。
長かったサイバトロン編も終わりの予定です。(ゲイムギョウ界に帰れるとは言ってない)