超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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今回から中編に突入。
導入編なので短め。


中編 Call of the Cybertron(サイバトロンの呼び声)
第50話 過去の呼び声


 プラネテューヌのとある山中。

 ここでは、ある考古学者の一団が古代の遺跡を発掘していた。

 この遺跡は中央に巨大な石柱が置かれ、その周りに円を描くように石柱が配置されているいわゆるストーンサークルだ。

 

「教授! このストーンサークルはすごく神秘的ですね!」

 

「ああ、そうだな。これこそ古の大国、タリの遺跡に違いない!」

 

 発掘隊のリーダーであるシルクハットの教授が、助手の言葉に興奮気味に返す。

 タリとはプラネテューヌが興るより、遥か前に滅んだ国だ。

 かつてはこのゲイムギョウ界のほとんどを支配していたと言われていて、それゆえに様々な場所で遺跡が発見されるのである。

 

「この遺跡を調べれば、タリの謎解明!となるかも知れない! 皆注意して作業をしてくれ!」

 

 興奮しながらも発掘の指示を出す教授。

 

「教授! 教授! こっちに来てください!」

 

 と、中央の石柱の表面から土を落としていた発掘員が何かに気付いて教授を呼ぶ。

 

「なんだ、どうしたのかね?」

 

「これを見てください!」

 

「ん? ……おお、これは!?」

 

 呼ばれてきた教授も驚く。

 発掘員の示す、石柱の表面。そこには『柔和そうなロボットの顔を象ったエンブレム』が刻まれていた……。

 

  *  *  *

 

 ゲイムギョウ界のどこかにあるディセプティコンの秘密基地。

 その有機生命体たちのための食堂で、マジェコンヌとワレチューはテレビを見ていた。

 

『……今も発掘作業が進められている、この遺跡は今から数千年は前の物で……』

 

「遺跡っちゅか、まるで興味がわかないっちゅね。んなカビの生えたもん泥だらけになって掘り返して、何が面白いっちゅかね?」

 

「まったくだ。食えもしない物に、何の価値がある」

 

 テレビの内容に対して、好き勝手言うワレチューとマジェコンヌ。

 そこにキッチンで料理をしていたレイとリンダが、食事を持ってやってきた。

 

「どうしたんすか? マジェコンヌの姐さん」

 

「ふん、なんでもない。それより腹が減ったぞ、飯をよこせ!」

 

 リンダの疑問には答えず、食事を要求するマジェコンヌ。

 やれやれと首を振ったリンダは、食事をテーブルに並べる。

 レイは苦笑しつつ自分も料理を置いていたが、ふとテレビが目に入った。

 

『この遺跡は古の大国、『タリ』の物とされており……』

 

「ッ!?」

 

 瞬間、頭に激痛が走った。

 そして映像が垣間見えた。

 たくさんの人々が巨石を運んでいる。並べられていく巨石。そして石柱の前に立つ自分。

 

 ――知っている。私は、この遺跡を知っている。

 

 レイは食い入るようにテレビを見る。

 その異様な様子に、周りの者たちは訝しげな表情になった。

 

「ど、どうしたんですか姐さん?」

 

「……メガトロン様!」

 

 心配そうなリンダを無視して、レイは駆けだした。

 後には唖然とする三人が残された。

 

  *  *  *

 

 秘密基地の司令部。

 玉座に座ったメガトロンの前に、サウンドウェーブがかしずいていた。

 

「……ではやはり?」

 

「ハイ、レーザービーク ノ情報ガ確カナラ、アノ遺跡ハ……」

 

 情報参謀がそこまで言ったところで、司令部の扉が開かれレイが飛び込んできた。

 

「メガトロン様!」

 

「……何事だ。騒々しい」

 

 メガトロンが視線をそちらにやると、レイは肩で息をしていた。

 

「め、メガトロン様、お、折り入ってご相談が、あ、あります!」

 

「申せ」

 

 幼体たちのことかと思い、メガトロンは短く先を促した。

 

「す、少しの間、お、お暇をいただきたく……」

 

 しかし、レイの話の内容はメガトロンの意に沿うものではなかった。

 即座にメガトロンは言い放つ。

 

「だめだ」

 

 もちろん、レイだってこう返されることは分かっていた。その上で食い下がる。

 

「お願いします! ここのことは誰にも言いません! 絶対に帰ってきます! だから……」

 

「だめだ。おまえは色々と知り過ぎた。今更外へなど出せるか。……雛たちのためにもな」

 

 レイが万が一オートボットに捕まって、ここのことを話してしまったら、雛たちはどうなる? メガトロンはそう言っているのだ。

 少しの間メガトロンを見つめていたレイだったが、やがて諦めた。破壊大帝メガトロンに、自分の我が儘が通るわけなどないのだ。

 

「……すいませんでした。仕事に戻ります」

 

 一つ頭を下げ、踵を返すレイの背にメガトロンが何気なく声をかけた。

 

「そうしておけ。我らはプラネテューヌの遺跡を襲撃する計画を立てねばならないからな」

 

 その言葉に、レイはピタリと歩みを止め、振り返る。

 

「プラネテューヌの遺跡!? それって、ストーンサークルですか!」

 

「あ、ああ。そうだが」

 

 突然のレイの剣幕に、メガトロンは少しだけ面食らう。

 そして次にレイが放った言葉で、今度こそ驚愕した。

 

「お願いします! その作戦、私もいっしょに出撃させてください!」

 

「…………何だと!?」

 

  *  *  *

 

 数日後、再びプラネテューヌ山中のタリ遺跡。

 現在は発掘隊は退避し、異様なメンバーがここに集結していた。

 ゲイムギョウ界四ヵ国の女神と、彼女たちをパートナーとするオートボットである。

 

「で、オプティマスに呼ばれてここに集まったわけだけど……」

 

 最初にノワールが口を開いた。

 

「いったいどういうことなわけ?」

 

「……正直なところ、私にも理解しきれているわけではない」

 

 オプティマスも重々しく言葉を出す。

 

「ただ、この遺跡からオートボットのエンブレムが発見された。つまり……」

 

「ここへ来たトランスフォーマーは、あなたたちが最初ではなかった、ということね……」

 

 ブランの解に、オプティマスは頷く。

 今まで、オートボットも女神たちも、オプティマス率いるオートボットとメガトロン率いるディセプティコンが、ゲイムギョウ界に初めて現れたトランスフォーマーだと思っていたのだ。

 ダイノボットの例もあるが、彼らは極めて特殊な存在だ。

 だが、この遺跡の存在は、その考えを覆すものだ。

 ジャズも自分の意見を言う。

 

「問題は、このストーンサークルだな」

 

「どういうこと?」

 

 ネプテューヌが首を傾げると、オプティマスが難しい顔で答える。

 

「さっきスキャンをかけて見たんだが、このストーンサークルを構成している巨石は、石なのは見た目だけで、内部は機械の塊だ」

 

「え、そうなの!? それって大発見じゃん!」

 

 何が大変なのかはよく分かっていないものの、ネプテューヌが声を上げる。

 

「そう、そしてこの機械は恐らく……」

 

「ッ! オプティマス、6時の方向に機影。ディセプティコンの空中戦艦だ!」

 

 オプティマスの言葉をさえぎって、アイアンハイドが警告する。

 その場にいる全員に緊張が走った。

 

「来たか。皆、話は後だ。とりあえずこの場をしのぐぞ!」

 

『了解!』

 

 オプティマスの号令にオートボットたちと女神化したネプテューヌたちは戦闘態勢を取る。

 そうしている間にも、空中戦艦が遺跡上空に到達し、そこから次々とディセプティコンが降下してくる。

 

 首魁たる破壊大帝メガトロン。

 スタースクリーム、サウンドウェーブ、ショックウェーブの三大参謀。

 直属部隊の面々。

 

 そして……。

 

「? あれは……?」

 

 バリケードの足元にいるフレンジーの隣に、見慣れない姿があるのをネプテューヌが見つけた。

 全身を黒い外套で覆いフードを深く被っている。

 おそらくはマジェコンヌやリンダのような、ディセプティコンの協力者だろう。

 

「……カラス?」

 

 そしてその人物は、カラスを思わせる仮面を被っていた。

 樹脂製らしく艶やかな光沢を放つ黒い仮面。

 その口元は嘴のように前に突き出して尖っている。

 

「また、仮面ね。流行ってるのかしら?」

 

 最近、何かと仮面の人物に縁がある。

 

「メガトロン! やはり現れたな!」

 

「フハハハ! この遺跡にはそれだけの価値があるからな!!」

 

 吼え合うオプティマスとメガトロン。

 オプティマスは宿敵を睨む。

 

「戦っても無意味だぞ! すでに救援がこちらに向かっている!」

 

 その言葉の通り、すでにオプティマスはバンブルビーをはじめとした仲間たちに急行するよう連絡を取っていた。

 

「ククク、抜け目のないことよ。だが、救援に来た奴らが見るのは、貴様の骸だ! ディセプティコン軍団、攻撃(アタック)!!」

 

「そうはいかんぞ! オートボット、迎え撃て!!」

 

 両雄の号令とともに戦いが始まった。

 メガトロンとオプティマスが先頭に立って激突し、スタースクリームのミサイルをネプテューヌの剣技が切り払う。

 サウンドウェーブにジャズが飛び蹴りを喰らわせ、ブラックアウトの弾幕をベールがかいくぐる。

 アイアンハイドとブロウルが壮絶に撃ち合い、ノワールの剣技がグラインダーに襲い掛かる。

 ミラージュのブレードをバリケードがブレードホイール・アームで受け止め、ブランの戦斧をよけてボーンクラッシャーがカウンターを繰り出す。

 ショックウェーブは戦いに加わらず、メガトロンの命令で近くの石碑から情報を読み取っていた。

 静謐な太古の遺跡を爆音と金属のぶつかり合う音が満たす。

 

「さすがに数が多いですわね!」

 

「耐えるんだベール! もうすぐ増援が来る!」

 

 うんざりとした声を出すベールを、ジャズが励ます。

 ディセプティコンの猛攻に、女神とオートボットはストーンサークルの内側へと追い詰められていく。

 

「フハハハ! どうやらここまでのようだな、オプティマァァス! パープルハートもろとも地獄に堕ちるがいい!!」

 

「地獄に堕ちるのは貴様だ、メガトロン!!」

 

 メガトロンはオプティマス目がけて突進し、ストーンサークルの内側に飛び込むが、オプティマスはそれを受け止める。

 いったん距離を置いた両者だが、オプティマスはテメノスソードを抜き、メガトロンはデスロックピンサーを展開して、雄叫びを上げて斬り合う。

 

 そんな中、カラス面の人物はフレンジーとともに戦闘を迂回してストーンサークル中心の巨石に近づいていた。

 

「あわわわ……、これが戦場……!」

 

 オッカナビックリ進むカラス面の下から、少し情けない声が漏れる。

 フレンジーはそんなカラス面に怒ったような声をかける。

 

「レイちゃん、だから言っただろう! レイちゃんに戦闘は無理だって!」

 

「ううう……、だって……」

 

 反論しようとしたカラス面……無理を言って出撃についてきたキセイジョウ・レイの頭上を、砲弾が通り過ぎる。

 

「ひぃいいい!!」

 

「ちょ! 危ないよレイちゃん、もっと頭下げて!」

 

 フレンジーの声に、レイは慌てて姿勢を低くする。

 何でこんな所に来てしまったのだろうかと、レイは自問する。

 過去の記憶を求めてメガトロンたちに着いて来たはいいけれど、戦闘は彼女の予想以上に過酷だった。

 ディセプティコンたちに囲まれて生活し、それなりに度胸もついたつもりだったが、やはり轟く爆音と怒号は恐ろしい。

 それでもレイが前へと進めるのは、不自然に失われた過去の記憶の手がかりが、この遺跡にある気がしたからだ。

 メガトロンに着けさせられたカラスの顔のような仮面は、万が一にも身元がばれないようにという配慮であるらしい。奇妙な形だが、視界や呼吸の妨げにはならない。

 外套の下の、このけったいな服は、一種の強化服で生半可な攻撃は防げると言うが……。

 そうこうしているうちに、ストーンサークル中央の石柱の前に辿り着いた。

 恐る恐る石柱の表面に触れる。

 すると、レイの脳裏に強烈な痛みとともに映像が流れ込んできた。

 どこか、広い場所でたくさんの人に囲まれている自分。

 酷く時代錯誤で閑散とした集落のような場所で、誰の恰好もやはり時代錯誤だ。

 老若男女、皆、笑顔でこちらを見ている。

 

 ――もしかして、この人たちが私の……。

 

「待ちなさい!」

 

 突然、意識が現実に引き戻された。

 声のしたほうを向くと、そこにはスタースクリームの攻撃を振り切ってきたネプテューヌがいた。

 

「何をしているのか知らないけど、ディセプティコンの好きにさせるわけにはいかないわ! そこから離れなさい!!」

 

「め、女神……」

 

 凛としてこちらを睨むその姿を見た瞬間、声を聞いた瞬間、レイの身内に強い嫌悪が沸き起こり、やがてそれは怒りを経て憎しみへと至った。

 相変わらず理由は不明で、ゆえに虚しい憎しみだが、レイは抵抗する暇もなく、それに飲み込まれる。

 

「女神ぃいい!!」

 

「え?」

 

 次の瞬間レイは、外套を脱ぎ捨てネプテューヌに飛びかかった。

 

 ネプテューヌは戸惑う。

 

 外套の下から出てきたのは、ライダースーツのような服を纏った女性だった。

 長い薄青の髪が風になびいている。

 

「ッ!」

 

 しかし、驚いたのも一瞬のこと。

 ネプテューヌはがむしゃらに振るわれる腕をかわし、すぐさま反撃に移る。

 さすがに殺す気にはならないので、太刀の峰でその身体を叩く。

 立ち振る舞いからして相手は戦いの素人。それで終わるはずだ。

 

「がッ!」

 

 案の定、レイは太刀によって弾き飛ばされ、近くの出土品の並べてある棚に倒れ込んだ。

 

「なにしやがる! このアマ!」

 

 それを見たフレンジーも、ネプテューヌに向けてディスクカッターを発射する。

 身を反らして飛来するディスクカッターをかわしたネプテューヌは、小柄なディセプティコンに斬りかかった。

 しかし小さい上に素早いフレンジーには当たらない。

 

「うぅ……」

 

 一方のレイは、体は痛むものの何とか立ち上がろうともがく。

 その手が何かを掴んだ。

 出土品の一つである『杖』だ。

 それに触れた瞬間、またしても頭痛とともに映像が流れる。

 

 炎に包まれる町、崩れる建物、響く怒りと怨嗟の声、そして何もかもが壊れて……。

 

「これで終わりよ! ディセプティコン!」

 

 瞬間、憎き女神の声でレイは白昼夢から覚めた。

 フレンジーに紫の女神の太刀が迫っている。

 

「ッ! フレンジーさん!!」

 

 弾かれたようにレイは駆けだした。

 思わず手に握った杖を振りかざして。

 

「うおおおおお!!」

 

「え!?」

 

 驚いたもののヒョイと退くネプテューヌ。

 叫びとともに突き出された杖は、あっさりとかわされ、ネプテューヌの後ろにあった石柱を叩いた。

 ネプテューヌは少し呆れる。

 このカラス面の女性はへっぴり腰で、狙いも甘い。

 

「あなた、何を……」

 

「ッ! 女神ぃいい……!」

 

 女性は振り返った瞬間、カラス面の奥の目と視線がぶつかった気がした。

 一瞬、ほんの一瞬、ネプテューヌはゾッとした。

 その、あまりにも強く深い憎悪に。

 マジェコンヌやハイドラヘッド、そしてメガトロンのような悪意に晒されたことはある。

 女神同士でいがみ合っていた時代もあった。

 だが、これほど強い憎悪を向けられるのは、初めてかも知れない。

 冷や汗が一筋垂れ、太刀を握りしめる力が強くなる。

 睨み合う、ネプテューヌとレイ。

 

 期せずして、オプティマスとメガトロン、オートボットとディセプティコンのリーダーたちがこのゲイムギョウ界に来て最初に出会った者同士が、オートボットとディセプティコンの衝突する戦場で初めて対面した。

 

 しかし、両者がお互いのことを詮索する暇もなく、異変は起きた。

 

 最初に気付いたのはネプテューヌだった。

 ほぼ同時にレイも気づく。

 

 石柱の表面の割れ目から、光が漏れている。

 青い光が脈打つように明滅を繰り返している。

 突如、石柱の頂点から上空に向かって光の柱が立ち昇った。

 

「こ、これは?」

 

「いったい……?」

 

 異様な事態に、ネプテューヌとレイは声を漏らす。

 それに呼応するように、周りの石柱からも光が天に伸びる。

 異変に気付き、ストーンサークルの内側にいた女神とオートボットも、外側にいたディセプティコンたちも戦闘を中断する。

 鍔迫り合いをしていたオプティマスとメガトロンは同時に声を上げた。

 

「ッ! 起動してしまったか!!」

 

「このストーンサークルに隠された、『スペースブリッジ』が!!」

 

 オプティマスは、すぐさま仲間たちに指示を飛ばそうとする。

 

「みんな、早くこの場から……」

 

「駄目だ! もう間に合わん!!」

 

 宿敵の言葉をさえぎってメガトロンが叫んだ瞬間、光が溢れてストーンサークルの内側にいた全てを飲み込んだ。

 

「なに!? 何がどうなってるの!?」

 

「分かりませんわ!」

 

「どうなってんだよ、これは!!」

 

 ノワール、ベール、ブラン。

 

「ノワール! 掴まれ!」

 

「くそ! せめてマトモなとこに跳ばされてくれよ!」

 

「……ッ!」

 

 アイアンハイド、ジャズ、ミラージュ。

 

「レイちゃん、俺から離れんなよ!」

 

 フレンジー。

 

「ネプテューヌ! ネプテューヌぅうう!!」

 

「おのれぇええ! またしてもぉおお!!」

 

 オプティマスとメガトロン。

 そして対面していた、ネプテューヌとレイ。

 その全員を。

 

「……これは?」

 

「……声?」

 

 光りに飲み込まれる瞬間、ネプテューヌとレイは、誰かが呼ぶ声を聞いた気がした。

 

  *  *  *

 

「あれは……?」

 

 仲間たちともにストーンサークルに向かって急行していたネプギアは、突然立ち昇った光の柱に驚愕する。

 

「お姉ちゃん?」

 

 その光を見た瞬間、なぜか最愛の姉の顔が、頭をよぎった。

 

  *  *  *

 

「放せ! レイたちを助けにいく!」

 

「俺も行くぞ! メガトロン様をお救いせねば!」

 

 飛び出そうとするボーンクラッシャーとブラックアウトを、バリケードどグラインダーがそれぞれ抑えていた。

 

「待て! もう手遅れだ!」

 

「兄者も落ち着け!」

 

 混乱するディセプティコンたち。

 メガトロンがいなければ、統率に欠けるのがディセプティコンなのだ。

 そして、その中にあって自発的に行動できる者は稀である。

 

「ッチ! オートボットの別動隊が近づいて来やがるな。ディセプティコン、この場は退き上げるぞ!」

 

 ゆえに、その稀な『自発的に動けるディセプティコン』である航空参謀スタースクリームは、すぐさま指示を飛ばした。

 

「スタースクリーム、貴様! メガトロン様を見捨てる気か!!」

 

 ブラックアウトがすぐさま激昂する。ボーンクラッシャーも不満げな顔だ。

 面倒くさそうに口を開こうとした航空参謀だが、その前に意外な人物から声が上がった。

 

「いや、論理的に考えて、この場は退却するのが無難だ」

 

 ショックウェーブだ。

 狂気的なまでの忠誠心を持つ科学参謀が発したとは思えぬ言葉に、当のスタースクリームをはじめ全員が面食らう。

 

「ショックウェーブ殿、どういうことだ?」

 

 ブラックアウトが当惑しつつもたずねた。

 それに対し、ショックウェーブは淡々と答える。

 

「メガトロン様がどこに跳ばされたかは分かっている。加えて、あのスペースブリッジは転送一回分しかパワーが蓄えられていなかったようだ。現状でメガトロン様を救出するのは、論理的に考えて不可能だ。いったん撤退して対策を考えるべきだ」

 

「ソレデ」

 

 そこで発言したのは今まで黙っていた、もう一人の忠臣サウンドウェーブだ。

 

「ソレデ、メガトロン様ハ、何処ニ跳バサレタ?」

 

 その問いに、ショックウェーブはやはり穏やかに答える。

 

「スペースブリッジに残されていたデータからして……、行きつく先は唯一つ」

 

 そこでわずかに、ほんのわずかに、ショックウェーブの声が震えた。

 

「我らの故郷、惑星サイバトロンだ」

 




そんなわけで、トランスフォーマー恒例イベント、『惑星サイバトロン訪問』編、始まりました。

今週のQTF、まさかのディセプティコン回。まさかの三大参謀揃い踏み。
そしてあのエンディングは、笑えばいいのか泣けばいいのか……。

今回の小ネタ。

シルクハットの教授
レイ○ン先生。

カラスの仮面のレイ。
言うまでもなく、フィルチさんモチーフ。

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