超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

56 / 203
今回は表題の通り脇役たちの話であり、いわゆる一人称小説に挑戦してみた実験回。
そして、死に設定になる前に設定を拾っとく回。


第47話 脇役の話

 やあ、俺の名はモーブ・ソノタ。

 生まれも育ちもプラネテューヌはハネダシティで、もちろん、パープルハート様を信仰しているんだ。

 警備兵として働いていたけれど、今はオートボットの協力組織GDCで兵士している。

 今日は俺と一緒に、GDCの仕事を見ていこう!

 

  *  *  *

 

 GDC、正式名称Gamindustri Defence Command(ゲイムギョウ界防衛軍)は、四ヵ国が戦力を出し合って創設された特殊部隊だ。

 その仕事は、ディセプティコンが出現した時の速やかな避難誘導や、モンスターの駆逐、言ってしまえばオートボットと女神様たちのお手伝いだ。

 地味ながら大切な仕事として俺は認識している。

 

  *  *  *

 

 GDCの本部はプラネテューヌ内のオートボット基地の近くに作られている。

 と言うか、近くにあったプラネ軍の基地をそのまま利用している形だ。

 基地の内部、コンピュータールームでは、二人の人物が喧嘩をしていた。

 

「だーかーらー! いちいち人のプログラムにケチつけんなビル!」

 

 片一方は眼鏡と隙のないスーツ姿が『出来る』印象を与える女性。

 だが、今は顔を真っ赤にしている。

 

「だってしょうがないでしょ? ツイーゲちゃんの作るプロテクト、穴だらけだし」

 

 もう一方はオカマ口調で喋る、ピンクのメカニカルな姿の男(?)だ。

 GDCにコンピューター部門として参加しているプログラマーのツイーゲと、超法規的な措置によりオートボットの協力者となった、雇われハッカーのアノネデスだ。

 

「穴だらけとは何ビルか! このなんちゃってオカマ!」

 

「なんちゃってって何よ、なんちゃってって!」

 

「女性をストーキングするようなのは、なんちゃってで充分ビル!」

 

 二人はともにGDCのコンピューターセキュリティを担当しているのだが、何せプログラマーとハッカー。

 作る者と乱す者は、オートボットとディセプティコンばりに相性が悪く、よくささいなことで喧嘩しているのだ。

 まあ、二人の切磋琢磨が、結果的によい方向に働いているのも確かだ。

 

「酷いわねえ……。そんなんだから、いい年こいて恋人もできないのよ」

 

「な!? ひ、人が一番気にしていることを……」

 

 だからって、俺の目の前で喧嘩せんでも……。

 ちなみに何で俺がこの場にいるかというと、単なる手伝いである。

 なんせ、この二人に付いていけるコンピューターの腕を持った人間は稀だ。

 幸か不幸か、俺は多少なら付いていける。

 しかし、そろそろ別の仕事の時間だ。

 

「恋人がいないのが何だってんだビル! 私は仕事一筋に生きるビル!」

 

「はいはい、後で後悔しないようにね。合コン(安売り)する時は誘ってちょうだい」

 

「キイィー!!」

 

 言い合う二人を残して、俺はその場を後にするのだった。

 

  *  *  *

 

 さて次に俺が訪れたのは、武器やら何やらを開発する開発室である。

 

「お! 来たでありますね!」

 

「やれやれ、待ちくたびれたぞ。影薄き戦人(ステルスソルジャー)よ」

 

 そこで俺を出迎えたのは、軍服っぽい服に身を包んだ四角眼鏡とクシャクシャの金髪が特徴的な少女と、トンガリ帽子と白衣に青い髪と泣きボクロの少女だ。

 

「どうも、ジェネリアさんにMAGES.さん。遅くなりました」

 

 これが、この二人の名だ。

 二人とも一見そうは見えないが、優秀な技術者であり開発室のエース的存在だ。

 オートボットのホイルジャックやレッカーズにも気に入られていると言うのだから、その技術力は推して知るべしだろう。

 ……ただし、自制心はない。つまりマッドサイエンティストなのがたまに傷。

 

「さあ、ソノタ殿! さっそく実験に付き合ってもらうでありますよー!」

 

「くくく、貴様という哀れな生贄のために、特別な趣向を考えたのだ」

 

 目をギラギラと輝かせて俺に迫ってくるジェネリアとMAGES.。

 可愛い女の子二人に迫られているにも関わらず、まったく嬉しくない。

 

  *  *  *

 

 そして医務室。

 

「それで結局、いつもの爆発オチですか」

 

「はい……」

 

 あの後、結局、ジェネリアとMAGES.の作った新兵器が爆発してこのザマである。

 たった一つの幸運は、こうして看護員のコンパさんに手当してもらえることだろう。

 何かと変人ぞろいのこの部隊で、心優しいコンパさんは数少ない癒しである。

 

「それにしても、ソノタさんも大変ですね」

 

「まあ、慣れっこです」

 

 苦笑し合う俺とコンパさん。

 

「はい、おしまいです!」

 

 これっていい感じじゃね? と自惚れてしまいかねない笑みのコンパさんだが、彼女は、まあ何と言うか、そういうのに妙に疎い。

 と言うか、アイエフ隊長とのレズ説がまことしやかにささやかれていますが、そこらへんどうなんですか?

 俺の内心の疑問に答えてくれるはずもなく、コンパさんはニコニコと微笑むのだった。

 

 その時だ。突然警報が鳴り出した。

 

 俺とコンパさんは同時に立ち上がる。

 警報が何を意味するかは、お互い言わずとも分かっていた。

 

  *  *  *

 

「総員整列!」

 

 演習場に、凛とした声が響き渡る。

 GDC攻撃部隊の隊長、アイエフの声だ。

 彼女はディセプティコンとの戦闘経験を買われて隊長に任命された。

 最初は、彼女が年端もいかない女の子であることと、元々は畑違いの諜報員に過ぎないことで周囲から舐められ、さらには教祖イストワールの側近であることと、女神パープルハートの親友として知られていることから、縁故採用などと陰口を叩かれたものだった。

 しかし、アイエフはそんな男どもを叩き伏せて見せ、さらには高い指揮能力を見せたことで、周囲に自分を認めさせた。

 今では軍隊の荒くれどもを従える女傑である。……本人に言うと怒るが。

 

「今しがた、太陽光発電所にディセプティコンが出現したわ。すでにオートボットの攻撃部隊と女神様たちが展開している。私たちの任務は、避難誘導と周囲に展開しているモンスターの撃破! 10分でしたくなさい。残りはここで待機よ!」

 

 居並ぶ男たちは敬礼で答えとし、速やかに行動を開始する。

 

  *  *  *

 

 輸送ヘリの中で、完全装備の兵士たちは、しかし落ち着かない部分がある。

 

「やれやれ、ディセップの野郎ども、少しは休ませてほしいもんだ」

 

 班長の雨宮リントが、冗談めかして愚痴った。

 彼は元々ラステイションの兵士で、女神戦争時代にも従軍していたベテランだ。

 指揮能力と判断力に秀で、剣を使いこなす傑物だが、なぜか銃を使うと誤射率が高く剣だけ振るっててくれともっぱらの評判である。

 

「まったくね。これじゃショッピングにも行けないわ」

 

 俺の班で唯一の女性隊員、肩になんかよく分からない怪物のぬいぐるみを乗せた女性、ビオも愚痴り気味だ。

 余裕のある大人の女と言った風情の彼女だが、実は腐女子らしく、男性隊員同士の絡みを妄想するという困った癖がある。

 

「…………」

 

 隅に座った全身をアーマーで覆った男、本名不詳、通称ミスターチーフは、ただただ黙っていた。

 彼のことはよく分からない。無口な上に、人とあまり関わろうとしないからだ。

 分かっているのは、リーンボックスの治安を維持する特命課のOBで、凄まじい実力の持ち主だということくらい。

 他のメンバーも海千山千の強者揃いである。

 

 ……俺? 俺はこう見えて狙撃兵。仲間を影ながら支援する、そのイメージ以上に重要な役職だ。……ちなみに階級は俺が一番下である。

 

「さて、一同よく聞け。命令は三つ! 死ぬな! 死にそうになったら逃げろ。そいで隠れろ。運が良ければ不意をついてぶっ殺せ! ……これじゃ四つか」

 

 任地に近づくと、リントさんがいつもの調子で訓示を言う。

 人、それを死亡フラグとも言うが、いつも生還するのがこの人だ。

 

  *  *  *

 

 任地である町につくと、そこはすでに戦場だった。

 遠くで爆音が響いている。女神様たちが戦っているのだろうか。

 すでに警備兵の指示に従い、住人は避難していた。

 

「第一班から三班までは町の東に展開! 四班から六班は西、残りは私といっしょに正面よ! モンスターを掃討するわ!」

 

 俺たちは、アイエフ隊長の指示に従い速やかに行動を開始する。

 手に持ったアサルトライフルの重みを確かめながら破壊の跡の残る町並みを注意深く進んでいく。

 物陰から、球体にモノアイをはっ付けたような、いわゆるビット型のモンスターが飛び出してくるが、冷静にこれを撃ち落とす。

 向こうではミスターチーフが四足戦車型のモンスターを的確に弱点を撃ちぬくことで倒していた。

 ビオも得意の拳銃で、ビット型を次々撃ち落としていく。

 リントさんは剣で中型を切り裂いていく。

 俺たちの得物は理屈の上では、ディセプティコンにもダメージを与えうるのだから当然だ。

 そもそも、このゲイムギョウ界では剣一本でモンスターと戦うよう奴は、珍しくもなんともない。

 忍者もいる、魔術師もいる、超能力者だっている。

 それでも、ディセプティコンはそんなゲイムギョウ界の猛者を圧倒するほど強いのだ。

 まあ、俺たちGDCの兵隊がディセプティコンと直接戦う機会は中々ない。今回もそうだろう。

 

 ……人、それをフラグという。

 

 どこからか砲弾が飛来し轟音とともに爆発が起こった。

 隊員たちはすぐさま物陰に隠れる。

 物陰から少しだけ顔を出すと、砲弾の飛来した方には、緑を中心とした迷彩柄の戦車が、砲口から煙を上げていた。

 リーンボックスの第三世代戦車だが、通常の物と違いゴテゴテと武装が追加されている。

 

「くそ! ついてないぜ! また俺は人間どもの相手かよ!」

 

 果たして戦車はギゴガゴと音を立てて立ち上がり、巨大で歪な人型に変形した。

 ディセプティコンの砲撃兵、ブロウルだ。

 実の所、コイツと遭遇するのは初めてではない。むしろ顔なじみの域だ。

 

「しかも、またおまえらか! まったく、俺はいつも貧乏くじだぜ!」

 

 愚痴りながらも、全身の火器を発射してくるブロウル。

 その大火力の前に、俺たちはいつも為す術がない……、なんてことはなく。

 いつのまにかブロウルの背後に回り込んだミスターチーフが、その後頭部に正確な銃撃を与える。

 

「ぐお! てめえか、ゴツイの!」

 

 ブロウルはそれに気付き、右腕のガトリングをミスターチーフに向ける。

 だがミスターはそれより早く身を隠した。

 それを見てリントさんが素早く指示を出す。

 

「ビオ! 火力支援だ!」

 

「了解! 生憎、チマチマやるのは趣味じゃないの! これでも食らいなさい!」

 

 ビオがどこからかロケットランチャーを取り出し、それをブロウルに向けて発射する。

 ロケット弾は狙い違わずブロウルに命中。

 ブロウルは大きくのけ反る。だが、致命には遠く及ばない。

 

「テメエら! 今日こそ覚悟しやがれ!」

 

 反撃すべく、両肩のミサイルポッドをこちらに向けるブロウル。

 

「やれ! ソノタ!」

 

 リントさんの声が聞こえた瞬間、俺はアサルトライフルを構え、狙い、引き金を引く。

 銃口から飛び出した弾丸が、発射寸前のミサイルの弾頭に当たった。

 

「ぐわあああ!!」

 

 爆発を起こすミサイル。

 だが、これで倒れる相手ではないのは全員が分かっている。

 

「貴様らあ! 調子にのんじゃねえ!!」

 

 案の定、ブロウルは倒れておらず、腰だめの主砲を撃とうとしていた。

 反射的に、こちらも次の動きに移ろうとした瞬間、どこからか地獄から響くような声が聞こえてきた。

 

「ディセプティコン軍団! 退却だ!」

 

 それはディセプティコンの親玉、破壊大帝メガトロンの声だった。

 どうやら、オートボットとディセプティコンの戦いは、こちらに軍配が上がったらしい。

 

「……チッ、この決着はいずれ付けるぜ!」

 

 それだけ言うと、ブロウルは素早く戦車に変形して去っていった。

 

「追う?」

 

「いや、これ以上は無意味だ」

 

 なおも好戦的に銃を構えるビオを、リントさんが制する。

 長期戦になれば、タフネスの差からこちらが不利になる。

 短期で仕留めきれなかった時点で、勝機は薄くなっていたのだ。

 それが分かっているからこそ、ビオも少し悔しげだった。

 

  *  *  *

 

 その後、町の各所に散らばったモンスターを掃討し、輸送ヘリの着陸している広場に戻って来た俺たち。

 そこでは、女神様たちとオートボットたちが住民から賞賛されていた。

 

「女神様、ありがとうございました!」

 

「わー、オートボット、カッコいい!!」

 

 ……正直、少し妬ましく思うことはある。

 俺たちだって、必死に戦っているのに、ってさ。

 もちろん、オートボットの連中が嫌いなわけじゃないんだ。

 ただ、やっぱり女神様の隣にいたいって願望はある。

 

「ねえ、兵隊さん」

 

 そんな益体もないことを考えていると、急に服の裾が引っ張られた。

 見るとそこには、幼い少女がいた。

 少女は、はにかんだように笑う。

 つられて、こちらも微笑んだ。

 

「どうしたんだい、お嬢ちゃん?」

 

「あのね、兵隊さんたちに、お礼が言いたくて……。わたしたちの町を護ってくれて、ありがとう!」

 

 それは、屈託のない笑みだった。

 

「……俺たちは、そんな大したことはしてないよ。女神様やオートボットたちにお礼を言ってあげたらどうだい?」

 

「でも、兵隊さんたちも戦ったんでしょ? だから、ありがとう!」

 

 思わず出てしまった捻くれた言葉にも、少女は笑っていた。

 その瞬間、俺は心の中の何かがストンと楽になるのを感じた。

 

 ――ああ、そうだよな。

 

 女神様に仕えたいのは本当だ。

 賞賛だって欲しい。

 でも、一番したいのは、人々を護ることだ。

 だから警備兵になり、GDCに参加したんだった。

 確かに俺たちは脇役だ。

 画面外で色々やってる、その他大勢さ。

 でも、そんな俺たちでも守れるものはある。

 だから戦える。

 

「なにニヤついてんだよ。帰るぞ」

 

「はい! 今行きます!」

 

 リントさんにツッコまれた俺は、少女に手を振りながら、輸送ヘリに乗り込むのだった。

 

  *  *  *

 

 とまあ、こんな感じがGDCのお仕事風景さ!

 俺たちGDCは、これからも女神様やオートボットの手伝いを続けていくことになるだろう。

 もし、この作品のどこかで俺たちを見かけたら、応援してくれよ!

 

 じゃあ、またどこかで!




ざっと、簡単なゲスト解説。

ツイーゲ
アニメ版より登場。使い捨てじゃなかった。

アノネデス
ご存じ、オカマハッカー。

ジェネリア
本名ジェネリア・G。激神ブラックハートより、Gジェネレーションシリーズの擬人化キャラ。

MAGES.
シリーズ常連のメーカーキャラ。5pb.の親戚。
かつてラヴィッジを直したのも彼女。

雨宮リント
シリーズ常連のモブキャラ。
ゴッドイーターシリーズの登場キャラ、雨宮リンドウのパロディキャラ。

ビオ
激震ブラックハートより、バイオハザードシリーズの擬人化キャラ。

ミスターチーフ
めがみつうしんより、HALOシリーズの主人公、マスターチーフのパロディキャラ。

……まあ、画面外ではモブも頑張ってんだよ。というお話でした。

次回はロックダウン再登場回(と言う名のキョウダイ活躍回)を予定しています。
ちなみに予定は予告なく変更される場合がございます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。