超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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ダイノボット編、三話め。

今更ながら原作ダイノボットだと、絶対ありえない描写がでてきます。


第42話 ダイノボットの対決

 セターン王宮跡から撤退した女神とオートボットたちはキャンプに戻って来ていた。

 トランスオーガニックに破壊された中から使える物を引っ張り出し、寝泊りできる環境を作る。

 

「あれ? オプティマスは?」

 

 取りあえず作業が一段落つき皆で休憩していた時、総司令官の姿が見えないことにノワールが気付いた。

 

「さっきまでそこにいたけど……」

 

「わたくしは見ていませんわ」

 

 ブランとベールも、どこに行ったか知らないようだ。

 

「ほっといてやれ。今は一人になりたんだろう」

 

「なによ、それ?」

 

 したり顔でアイアンハイドが言うと、ノワールは首を傾げる。

 

「いろいろあるのさ。男ってやつには」

 

 ジャズもどこか達観した様子で言葉を出し、ミラージュも無言で頷く。

 

「『司令官……』」

 

 バンブルビーは心配そうにラジオ音声を流す。

 だが、追うようなことはしない。

 きっと乗り越えてくれると信じているからだ。

 

 その場にプルルートの姿もないことに皆が気付いたのは、すぐ後のことだった。

 

  *  *  *

 

 ジャングルの中、オプティマスは立ったままオプティックをつぶり瞑想していた。

 大きく排気を繰り返し、意識を透明(クリア)にしようとする。

 

『あいつ、弱い。弱い奴に、姫様、守る資格、ない』

 

 だがグリムロックの放った言葉が、突然心に浮かび上がった。

 

 ――いかんな。平静を保たねば。

 

 胸の内に渦巻く激情を抑え、冷静さを取り戻そうとするオプティマス。

 

『あいつ、弱い』

 

 ――黙れ。

 

『姫様、守る資格、ない』

 

 ――黙れ!

 

『守る資格、ない』

 

「黙れぇええ!!」

 

 激昂したオプティマスは近場の樹木に拳を叩き込む。

 樹木は中ほどから折れ、メキメキと音を立てながら倒れた。

 

「ッ! 何てことだ……」

 

 ネプテューヌを今一歩の所で救えなかったことが、撃ち込まれた楔のようにオプティマスの心を苛み、怒りが意識を支配している。とても逃れられそうにない。

 

「こんなことでは、総司令官失格だ……」

 

 いつも笑顔の紫の女神が近くにいないだけで、歴戦の戦士であるはずのオプティマスの精神は千々に乱れる。

 冷静さを欠いた者が指揮をしても、悪戯に犠牲を増やすだけだ。

 

「何してるの~? オプっち~」

 

 と、項垂れるオプティマスに呑気な声がかけられる。

 それは、もう一人のプラネテューヌの女神、プルルートだった。いつの間にかオプティマスの後ろに立っている。

 

「……プルルートか。どうしたのだ」

 

 平静な声をなんとか発声回路から絞り出すオプティマス。

 

「あのね~、オプっちに~、お話があってきたんだよ~」

 

「話とはなんだ?」

 

 どこまでも呑気なプルルートに、オプティマスは辛抱強く問う。

 

「うん。オプっちが~、無理してるような気がして~」

 

「……無理などしていない」

 

 意識せず、その言葉には憮然とした響きが出てしまった。

 

「ううん~、無理してるよ~。だって~、ねぷちゃんのこと~、助けに行きたいんでしょ~?」

 

「……もちろんだ」

 

「だったら~、助けにいけばいいんじゃないかな~?」

 

 プルルートの言葉に、オプティマスは首を横に振る。

 

「ダイノボットは強大だ。総司令官としては仲間たちの安全を考え、策を練ってから……」

 

「そういうのより~、オプっちがどうしたいかが~、大事なんじゃないかな~」

 

 オプティマスの発言をさえぎって、プルルートはいつも通りノンビリと、しかしどこか決然と言った。

 

「……………」

 

 その言葉に考え込む素振りを見せるオプティマス。

 そんなオプティマスを見て、プルルートはさらに言葉を続ける。

 

「ねえ~、総司令官としてって~。そんなに大事~?」

 

「大事だとも。総司令官としての責任は私の命よりも遥かに重い」

 

「ネプちゃんよりも~?」

 

「それは……」

 

 言葉に詰まるオプティマス。

 するとプルルートは微笑みを大きくする。

 

「オプっちは~、本当にねぷちゃんのことが大事なんだね~」

 

「……ああ」

 

 少なくとも、危険な状態にあると思うと、心が乱れるくらいには。

 

「あのね~、オプっちはね~、少しわがままになったほうが~、いいと思うな~」

 

「わがままに、か……」

 

 真面目に考え込むオプティマスを微笑みを浮かべて見つめるプルルート。

 やがて、小さな声で呟いた。

 

「……少しだけ~、ねぷちゃんが羨ましいな~」

 

「ん? 何か言っただろうか?」

 

「ううん~、何でもないよ~」

 

  *  *  *

 

 島の中央部の山の上。

 かつては栄華を誇ったセターン王国の王宮跡。

 その玉座の間では、この国を守護する騎士たち……巨躯のトランスフォーマー、ダイノボットたちが宴を開いていた。

 輪になって床に直接座り込み、笑い合いながら地下から取ってきたエネルゴンクリスタルを齧り、島に湧くタールを自分たちにあったサイズの杯にそそいで飲む。

 

「その時、我、グリムロック、言った! 『この島を荒らす不届き者! 滅ぼす!』」

 

 片手に勇ましいポーズを取って、自らの武勇伝を語るグリムロック。

 

「またその話かよグリムロック!」

 

「俺、スラッグ! その話、何回も聞いた!」

 

「退屈」

 

 しかし、他のダイノボットたちの反応はいまいちだ。

 彼らはグリムロックの話を長い付き合いの中で何回も聞かされているのだから仕方がない。

 

「わー! すごいすごーい!!」

 

 だが、ダイノボットの輪の中央ではしゃいでいるピーシェはその限りではない。

 ネプテューヌたちを追って単身、王宮に潜入した彼女だが、アッと言う間に見つかってしまい捕らえられた。

 しかしダイノボットたちは誇り高き騎士。か弱い(?)幼子を傷つけるような真似はせず、またピーシェが姫君たちの知人であるということもあって、彼らなりに客人として持て成しているのである。

 

「なんだかなー……」

 

 和気藹々としているピーシェとダイノボットを見て、ネプテューヌは溜め息を吐く。

 横に座るネプギアも苦笑気味だ。

 彼女たちは高い位置にある二つの玉座に座って、いや座らされていた。

 相変わらず、ダイノボットたちは紫の女神姉妹をセターンの姉妹姫と勘違いしたままだ。

 目の前にはテーブルが置かれ、その上に色とりどりの果物が並んでいる。

 他に肉や魚もあったのだが、ダイノボットが調理すると消し炭になってしまった。

 とにかく、久し振りの食べ物だ。美味しくいただいている。

 

「まったく、どうしてこうなっちまったんだか……」

 

 ピーシェに巻き込まれて捕まったホィーリーは、果物ジュース……ダイノボットが大きめの果物を指先で潰して作った……をネプテューヌの杯にそそぎながら愚痴る。

 彼は騎士たちに客人扱いしてもらえず、女神姉妹の給仕としてこき使われているのだ。

 

「ねえねえ、ぐりみー!」

 

 ピーシェが声を上げる。『ぐりみー』とはグリムロックのことだ。

 呼ばれた騎士の長はキラキラと目を輝かせる幼子を見下ろす。

 

「ん? 何だ、ピーシェ」

 

「もっとおはなしきかせて!」

 

「いいだろう。グリムロック、話する」

 

 ピーシェのおねだりに快く頷くグリムロック。

 ドッカリと座ると、タールをグイッとあおり、語り始めた。

 

「じゃあ、今度は、姫様たちと初めてあったころのこと、話す」

 

  *  *  *

 

 侵略者を蹴散らし、なおも衝動のままに暴れ回るダイノボット。

 そんな彼らの前に現れたのは、たった二人の少女だった。

 彼女たちは言った。

 

「私たちと勝負しよう!」

 

「勝負だと! 笑わせるな、チビめ!」

 

 当然ながら、グリムロックは一笑に伏した。

 最強の力を持つ自分たちが、なぜこんなチッポケな生き物と勝負しなければならないのか?

 嗤う暴君竜の化身に、しかし姉姫ヴイ・セターンは不敵に笑い返してみせた。

 

「おまえたちは、最強なのだろう?」

 

「当たり前だ! 我、グリムロック! 誰よりも、何よりも、強い!!」

 

 高らかに吼えるグリムロック。彼は自らこそが、何者よりも強いと信じて疑わなかった。

 

「そうですね。私たちはあなたがたより遥かに弱い。そんな私たちの挑戦が受けられませんか?」

 

 姉姫の隣に立つ妹姫ハイ・セターンが冷静に声を出した。

 

「それとも負けるのが怖いか?」

 

 妹の言葉を継いでヴイは挑発的に微笑む。

 それを見てグリムロックは激昂した。

 

「グリムロック、負けるの怖くない! 負けることない! おまえら、弱い! 戦う価値、ない!!」

 

 咆哮し、メイスを姉妹の僅かに横に振り下ろす。

 轟音と砂埃が巻き起こる。

 何も本当に叩き潰そうというわけではない。

 弱々しい人間など、これで怯えて逃げ出すはずだ。

 だが、姉妹姫は逃げなかった。

 それどころか、真っ直ぐにグリムロックを見つめている。

 

「……なぜ逃げない?」

 

「私たちが、この国の姫だからだ」

 

「この国を護るために、死力を尽くすのが、私たちの役目なのです」

 

 そう言う二人の顔は誇らしげだった。

 本気でこの国を愛し、国のためにダイノボットと戦おうというのだ。

 その行為は愚かだ。愚かだが、尊く誇り高い。

 

「……いいだろう。その挑戦、受けて立つ!!」

 

 グリムロックは姉妹と戦うことにした。

 覚悟は見せてもらった。次は力だ。

 ヴイはニッと笑う。

 

「その前に……、私たちが勝ったら、私たちの言うことを聞くんだ! いいな!」

 

「分かった! 負けたら、言うこと聞く! でもグリムロック、負けない!」

 

 グリムロックの言葉にハイが念を押す。

 

「二言はありませんね!」

 

「ない! 誇りに賭けて、誓う!!」

 

 そして、戦いが始まった。

 その内容は……。

 

「よし、竜の戦士よ! 私たち姉妹と、『歌勝負』だ!!」

 

  *  *  *

 

「ちょ~っとまったあー!」

 

 語られるグリムロックの過去に、ネプテューヌがツッコミを入れる。

 

「歌勝負!? なんかさんざん盛り上げといて、歌で勝負!? 明らかにグリムロックたちのキャラじゃないよ!!」

 

「? ヴイ姫様、何言ってる? ダイノボット、歌得意!」

 

 不思議そうに首を傾げるグリムロック。

 

「いやいや、そんなトランスフォーマーにない設定出されても、読者が困惑するよ!」

 

「お姉ちゃん、ここは押さえて……」

 

 立ち上がってメタなことを言い出すネプテューヌをネプギアが止める。

 この状況で自分たちがセターンの姉妹姫でないことに気付かれたら、自分たちはもちろんピーシェの身が危ない。

 

「じゃあさ、おうたきかせて!」

 

 そのピーシェは憮然として座り込むネプテューヌを余所に、無邪気な様子だ。

 グリムロックをはじめとしたダイノボットたちは、酒(タール)が入っていることもあって快諾する。

 

「分かった。ダイノボットの歌、聞かせる」

 

「何がいいかな? なんせ久し振りだからな……」

 

「俺、スラッグ! 『故郷の歌』がいい!」

 

「同意」

 

 ダイノボットたちが、どの歌にするか決めるとグリムロックが立ち上がり、まずは自分が歌いだす。

 

 それは、故郷を想う歌だった。

 

 高い山の上から、あるいは深い森の奥から聞こえてくるような、不思議な響きに満ちていた。

 

 続いてストレイフが歌に加わった。

 

 大地の豊かさと、水の清らかさを。風の優しさと、炎の暖かさを。

 

 座ったままスコーンも歌う。

 

 気まぐれな自然の厳しさを、それでも懸命に生きる人々の尊さを。

 

 最後にスラッグも歌い出した。

 

 一人の人間が生まれ落ちて、大人になり、愛し、子を成し、老いて安らかに眠るまでを。

 

『我らこの地に、永久に、永久に……』

 

 四人の騎士が歌い終えた時、辺りはシンと静まり返った。

 そして。

 

「す、すごーい! すごーい!!」

 

 最初に歓声を上げたのはピーシェだった。

 続いてネプテューヌも声を上げる。

 

「いや、ホントにすごかったよ! 作者の音楽センスがゼロなのが悔やまれるよ!」

 

 ネプギアは何も言えなかった。

 それぐらい、本当にすごい歌だった。

 ダイノボットたちは照れくさげに一礼すると杯を掲げグイッと中身を飲み干す。

 

「我ら、この国、好き」

 

 そしてグリムロックがポツリと呟いた。

 

「この国が好きな、姫様たちが好き」

 

 その言葉には、どこか懐かしさが込められていた。

 他のダイノボットたちもしみじみと頷く。

 

「だから、我ら決めた。この国、護る! ずっとずっと、永遠に!」

 

 もう一度、杯を煽り力強く宣言する。

 

「姫様たち、戻って来た! きっと、民も戻ってくる! 姫様たちが治め、ダイノボットが護る! セターン王国、不滅なり!!」

 

「「「セターン王国、不滅なり!!」」」

 

 斉唱するダイノボット。

 ネプギアは何と言っていいか分からなかった。

 ダイノボットたちの狂おしいなまでの愛国心を理解してしまった。

 それでも、自分たちはセターンの姫ではない。治めるべき国はここではなく、愛する国はプラネテューヌだ。

 しかし、それを言ってしまったら、この騎士たちはどれだけ傷つくだろうか。

 

「……ふわあ」

 

 と、ピーシェが大きく欠伸をした。どうやら、お眠らしい。

 

「ああ、ピーシェ、そこで寝ちゃだめだよ!」

 

 ネプテューヌが声を出しつつ駆け寄る。

 しかし、ピーシェはもう眠気が限界に来ているらしく大あくびをする。

 

「しょうがないあー、奥に部屋があったからそこで寝よう。ネプギア、ホィーリー、いっしょに来て」

 

「あ、うん!」

 

「はいはいっと」

 

 ピーシェを抱き上げ、奥の部屋へと向かうネプテューヌと、それを追うネプギアとホィーリー。

 三人と一体が奥に消えた後、ふとストレイフが漏らした。

 

「なあ、なんか姫様たち、おかしくないか?」

 

「同意」

 

 それにスコーンも頷くが、スラッグは首を傾げる。

 

「俺、スラッグ。別に、変、思わない」

 

「スラッグはおバカだからなあ……」

 

「なんだと!」

 

 ストレイフがからかうように言うと、すぐさまスラッグが怒りだした。スコーンも笑う。

 

「スラッグ、馬鹿。事実」

 

「グルルルゥ! 喧嘩、買った! かかってこい!」

 

「承知!」

 

 たちまち殴りあうスラッグとスコーン。

 

「やれやれ~!」

 

 それを煽るストレイフ。

 彼らにとって喧嘩は一種のレクリエーションである。

 だが、長たるグリムロックが殴りあう両者の首根っこを摑まえて止める。

 

「二人とも、今は喧嘩、やめる! ……確かに、姫様たち、何かおかしい。変なことばかり言う」

 

 さすがのグリムロックも、記憶にある姉妹姫と、今の二人の違いに違和感を感じていたらしい。

 

「う~ん、でもどうしてだろう?」

 

「不明……」

 

「俺、スラッグ。全然分からない」

 

 全員して首を捻りウンウンと唸るが、答えは出てこない。

 そもそも彼らは考えるのはあまり得意ではないのだ。

 

「ならば、その答え、俺が教えてやろう」

 

 突然、どこからか重低音の声が聞こえてきた。

 ダイノボットのものではなく、もちろんネプテューヌたちの声でもない。

 警戒心を向き出しにして、ダイノボットたちが声のほうを向くとそこには灰銀のトランスフォーマーが立っていた。ディセプティコン破壊大帝、メガトロンだ。

 その後ろにはスタースクリームとショックウェーブもいる。

 

「貴様!」

 

 グリムロックが傍らに置いたメイスを拾い上げ、他のメンバーも武器を構えるがメガトロンは動じない。

 

「まあ、待て。今日は話し合いにきたのだ」

 

「俺、スラッグ! 話し合い嫌い! 戦い好き!!」

 

 二本の剣を構え一歩進み出るスラッグ。

 スタースクリームは逆に一歩下がり、ショックウェーブは表情を変えないが、どこか単眼の輝きが妖しい。

 そしてメガトロンは余裕の笑みを崩さない。

 

「そう言うな。姫君たちが、なぜおかしくなったのか知りたくないのか?」

 

「グルルルゥ……、詳しく話せ」

 

 スラッグの肩を掴んで黙らせたグリムロックは先を促す。

 メガトロンは口角を吊り上げた。

 

「姫君たちがおかしくなった理由。それはオートボットとそのボス、オプティマス・プライムにある」

 

「オプティマス・プライム?」

 

「おまえも見たはずだ。赤と青の炎の模様の奴だ」

 

 疑問符を浮かべるグリムロックに、メガトロンは説明してやる。

 

「……あいつか」

 

 一昨日のことを思い出し、グリムロックは顔を歪める。

 弱い癖に、姫様たちの傍にいた奴。

 

「奴は残虐非道な大悪人で、この島を支配しようと企んでいる。そのために姫君たちを浚い、洗脳したのだ」

 

「……なんだと!?」

 

 驚愕するグリムロック。

 そこまで邪悪には見えなかったが……。

 メガトロンの話がよく分からないらしく、スラッグはポリポリと頬を掻く。

 

「俺、スラッグ。せんのうって、何?」

 

「洗脳と言うのは、自分の思う様に操ることだ。オプティマスは自分こそが正義の味方だと嘯き、姫君たちに『ネプテューヌ』と『ネプギア』という偽りの名前を与えて自分たちのパートナーに仕立て上げたのだ」

 

 もちろん、嘘である。

 だが、メガトロンの言葉は自信に満ち、体を不自然に触ったり視線を逸らしたりといった嘘を言う者特有の動作もなく、むしろ堂々としていた。

 その姿に自然と注目が集まる。

 そしてダイノボットたちが注目している隙に、小さな羽虫のようなものが彼らの身体に取り付いていった……。

 

「だが、オプティマス、姫様たち、守っていた」

 

 グリムロックが問うと、メガトロンは狼狽えるどころか、大きく笑って見せる。

 

「それが奴らの手なのだ! 友好と平和を謳いながら、守ると見せかけて懐に入り込み、何もかも奪い去る……。まさに外道の所業よ!!」

 

 身振り手振りを交え、迫真の演技を見せるメガトロン。

 

「そんなのウソだよ!」

 

 と、少女らしい高い声が響いた。

 それは、ピーシェを寝かしつけたネプテューヌだった。隣にはネプギアもいる。

 

「まったく、そんな分かりやすいウソ、今時小学生だって吐かないよ!」

 

 怒り心頭でメガトロンを睨むネプテューヌ。

 だがメガトロンは笑みを消さない。

 

「見よ、この有様を! まるで別人のようではないか! この洗脳を解くためにはオプティマスとオートボットを倒すしかないのだ!!」

 

 その堂々たる宣言に、ダイノボットたちもその気になる。

 

「グルルルゥ、許せん! 我、グリムロック! オプティマスとオートボット、叩き潰す!!」

 

 雄叫びを上げるグリムロックをさらにメガトロンが煽る。

 

「そうだ! セターン王国に仇なす者に死を!!」

 

『セターン王国に仇なす者に死を!!』

 

 武器を掲げ、鬨の声を上げるダイノボットたち。

 完全にオートボットへの敵意に染まったその姿を見て、ネプテューヌとネプギアが声を上げる。

 

「待って! メガトロンの言うことなんて聞かないでよ!」

 

「オートボットは私たちの味方なんです! ディセプティコンこそゲイムギョウ界を侵略しようとしてる悪者なの!」

 

「この通り、姫君たちは正気を失っておられる。この方々は我らが見ているから、貴殿らは心置きなく、オートボットを捻り潰すといい」

 

 だが、姉妹の必死の呼びかけさえも、狡猾な破壊大帝は利用して見せた。

 欺瞞の民(ディセプティコン)の長に相応しく、心安らぐような優しい声を出す。

 

「グルオオォォ!! ダイノボット、出陣!!」

 

『うおおおおお!!』

 

 長たるグリムロックを先頭に咆哮を上げてダイノボットたちは部屋を出て行った。

 

「待ってよ! 君たち絶対、通知表に『人の話をよく聞きましょう』って書かれてたでしょ!」

 

 こうなったらと、ネプテューヌは女神化しようとするが。

 

「やめておいたほうが賢明だぞ。俺たちと、ダイノボット(あいつら)から逃げられるわけがないからな」

 

 メガトロンはダイノボットと語りかけた時とは違い、いつもの地獄から響くような重低音で警告してきた。

 ネプテューヌとネプギアはウッと女神化するのをやめる。勝てないのもそうだが、奥にいるピーシェとついでにホィーリーを巻き込むわけにはいかない。

 抵抗を諦めた女神姉妹を見て、メガトロンは皮肉っぽくニヤリと笑う。

 

「……さてと、だ。それでは我々と共に来ていただきましょうか、姫君ぃ?」

 

 ワザとらしく猫なで声を出すメガトロン。

 

「むー! こんなことして、今にやっつけてやるんだからね!」

 

「ククク、楽しみにしておこう」

 

 憎々しげに睨みつけてくるネプテューヌとネプギアをメガトロンは嗤いながらいっしょに来るよう促し、後ろに立つ参謀二人に指示を飛ばす。

 

「ショックウェーブ、二人を連れてこい! スタースクリーム、おまえはここを探索しておけ」

 

「へ? 何で俺が……」

 

「他におらんだろうが。つべこべ言わずにやっておけ!」

 

 文句を言うスタースクリームにピシャリと言い放ち、ショックウェーブと女神姉妹を伴って去るメガトロン。

 それを見送ってから、スタースクリームは嫌々ながら王宮を探索することにした。

 

「……ったく、こんなのは下っ端の仕事だろうが。メガトロンの野郎、今に見てやがれ」

 

 グチグチと呟きながら移動しようとした、その時である。

 

「ふわあ……、ねぷてぬ~?」

 

 奥の部屋から、ピーシェが欠伸をしながら出て来た。どうやら起きてきてしまったらしい。

 その足元ではホィーリーが航空参謀を見上げ固まっている。

 

「す、スタースクリーム……!」

 

「あ! すたすくだー!」

 

 唖然とするスタースクリームの存在に気付き、ピーシェが声を上げる。

 

「お、おま!? 何でこんなとこにいるんだ!?」

 

 動揺して変な声を出すスタースクリーム。

 対するピーシェはあっけらかんと答えた。

 

「ねぷてぬがしんぱいだから、おっかけてきた!」

 

「あー……、そうなの」

 

 大きく排気するスタースクリームだが、すぐさま思考を切り替える。

 よく分からないが、いるんならしょうがない。

 万が一メガトロンに見つかったら、自分のニューリーダー就任計画はオジャンだ。

 かと言って、ここに一人にしておくのは危険だ……いやホィーリーもいっしょだが、ボディガードとしては役に立つまい。

 

 ――なら仕方ないか。

 

「その『ねぷてぬ』とやらだが、俺ん家にいるぜ」

 

「ほんとう!」

 

「ああ、本当だとも。だからいっしょに来てくれ」

 

「うん、いくー!」

 

 こんな時ばかり頭の回転の速いニューリーダー志望は、とりあえずピーシェを連れ帰ることにした。

 それも、メガトロンに見つからないようにだ。

 ホィーリーは、またぞろ厄介なことになったと深く嘆息するのだった。

 

  *  *  *

 

 キャンプで一夜を明かした女神とオートボットは、突如聞こえてきた地響きに面食らう。

 ジャングルの向こうから、咆哮が聞こえてきた時、理解した。ダイノボットがやってきたのだ。

 オプティマスの決断は早かった。

 

「このキャンプを放棄する! 全員退却だ!」

 

 すぐさま全員、それに従う。

 プライドの高いノワールやブランは悔しげに顔を歪め、バンブルビーは電子音声で怒りを表現するも、ダイノボットの恐ろしさは理解している。

 まともにやりあって勝てる相手ではない。

 

「全員準備できたぞ! さあ、オプティマスも早く!」

 

 ジャズが報告とともに避難を促すが、オプティマスはその場に仁王立ちになって微動だにしない。

 

「オプティマス?」

 

「……すまん、ジャズ。指揮を任せるから先に行っていてくれ」

 

「何を言ってるんだ!?」

 

 ジャズにはオプティマスの言っていることが理解できなかった。

 皆も何事かと足を止める。

 そうこうしているうちに、ジャングルの木々をかき分け、恐竜形態のダイノボットたちが姿を現した。

 

「オプティマス・プライム! セターンの敵、滅ぼす!」

 

「悪者どもめ! 覚悟しな!」

 

「撃滅!」

 

「俺、スラッグ! オートボット、ぶっ壊す!」

 

 開口一番物騒なことを言い出すダイノボット。

 しかし、オプティマスは冷静だった。

 冷静に、有り得ない発言をした。

 

「セターン王国の名高き騎士、グリムロックよ! 貴殿に一対一の決闘を申し込む!!」

 

 その瞬間、周囲の全ての女神とトランスフォーマーの動きが止まった。

 

「な、なに言ってるのよ!?」

 

 最初に正気に戻ったノワールが思わず悲鳴じみた声を出す。

 あの恐ろしいダイノボットと戦うなんて、正気の沙汰とは思えない。

 しかし、オプティマスはかまわず言葉を続ける。

 

「どうした、私の挑戦を受けるのか! まさか臆したとでも言うのか!」

 

「……なぜ、戦う?」

 

 対するグリムロックの声は、意外にも平静だった。

 オプティマスは静かに答える。

 

「理由はいろいろある。オートボット総司令官として仲間を守るため、ネプテューヌを守れなかった自分への戒め、そして……」

 

「そして?」

 

「男としての意地だ」

 

 それを聞いて、女神とオートボットは驚愕する。

 責任感が強く冷静であろうと心掛けている、オプティマス・プライムらしからぬ言葉に。

 一方、グリムロックは一つ咆哮を上げると騎士の姿に戻る。

 

「我、グリムロック! セターン王国が炎の騎士にしてダイノボットの長! 決闘、受けて立つ! 何者も手出し無用!!」

 

 後ろに居並ぶ三騎士を含めたその場にいる全員に宣誓し、グリムロックはメイスを構えた。

 オプティマスも両腕のエナジーブレードを展開し、構える。

 

「オートボット総司令官、オプティマス・プライム! 参る!!」

 

「来い!!」

 

 さあ、戦いの始まりだ!

 

 エナジーブレードを振るい、自分の二倍はあるグリムロックに斬りかかるオプティマス。

 メイスを大上段に振るってそれを迎え撃つグリムロック。

 間一髪の所で横っ飛びでそれをかわし、オプティマスは敵の懐へ飛び込む。

 だがグリムロックは速やかに右腕をモーニングスターに変形させ、それでオプティマスを打ち据えようとする。

 これもスレスレでかわして見せるオプティマス。

 グリムロックのどの攻撃も一撃必殺の威力を持つ。命中すれば頑強な装甲を誇るオプティマスであってもただではすまない。

 

「ねえ! 止めましょう!」

 

「……そうね。勝ち目があるようには見えないわ」

 

 ノワールが剣を呼び出したまらず飛び出していこうとし、ブランもそれに同調してハンマーを召喚する。

 

「まちな、二人とも。これは男の意地を賭けた戦いだ」

 

「邪魔するのは野暮だ」

 

 だが、アイアンハイドとミラージュがそれを制した。

 ノワールがパートナーを見上げ抗議する。

 

「な!? それ本気!」

 

「もちろん本気さ。男ってのは、そういう生き物なんだよ。多分、トランスフォーマーでも人間でもな」

 

 アイアンハイドの言葉に残りのオートボットたちも頷く。

 さらに、ジャズが口を開いた。

 

「それにな。少しだけ……、ほんの少しだけだが、俺は嬉しいんだ」

 

「嬉しい?」

 

 疑問に思ったベールが、小首を傾げるとジャズは頷く。

 

「ああ、いつもオートボット全体のことを優先して、自分のことを後回しにしがちなオプティマスが、今回は自分の意地のために戦っている。俺はそれが嬉しいんだ」

 

「男同士の友情、ですわね……」

 

 納得しきれないながらも、オートボットに倣って手出しは控えるベール。

 ノワールとブランも武器を下ろす。

 

「……男って、分からないわ」

 

 ゆっくりと首を振りながら、ノワールは嘆息とともに呟き、プルルートだけが平時と変わらず呑気な笑みを浮かべるのだった。

 

 そうしている間にもオプティマスとグリムロックの戦いは続いていた。

 

 振るわれるメイスを紙一重でかわし、巨体のダイノボットの足を斬りつけるオプティマス。

 だが、超高熱の刃を持ってしてもグリムロックの鎧には僅かな傷しかつかない。

 

「ハハハハ! その程度か! やはり、おまえ、弱い!」

 

「なんの! 戦いはこれからだ!」

 

 しかし、オプティマスの闘志は折れない。

 さらに轟音を立てて迫るメイスとモーニングスターをかわしながら、オプティマスはさらに何度も何度も斬りつけ続ける。

 その姿は風車に立ち向かう老騎士のようのも見える。

 

「何度やっても無駄! なぜ、それが分からない!」

 

「それはどうかな!」

 

 いかに堅牢な鎧でも、何度も同じ所を攻撃されれば、やがて砕ける。

 それがオプティマスの狙いなのだ。

 そして、横薙ぎに振るわれるメイスをビークルモードに変形してかわし、すぐさま

 ロボットモードに戻ってグリムロックの右足に最後の一撃を入れる。

 だが。

 

「!? 刃が……通らない!」

 

「小賢しい!!」

 

 凄まじいパワーでオプティマスを蹴り飛ばすグリムロック。

 あらゆる策を力でもってねじ伏せるのがダイノボットの流儀なのだ。

 

「これで、終わりだ!!」

 

 大上段にメイスを振りかぶり、倒れ伏したオプティマス目がけて振り降ろす。

 もはや逃れることはできない。

 

 もはやこれでまでなのか!?

 

「まだだああああ!!」

 

 しかしオプティマスは両腕のエナジーブレードを交差させてメイスを受け止めたではないか。

 地面に足がめり込み全身の関節から火花が散りギシギシと嫌な音を立てるが、それでも耐えて見せた。

 

「!? なんだと?」

 

「うおおおお!!」

 

 雄叫びを上げ、万力を込めてメイスを跳ね飛ばす。

 だが代償に、エナジーブレードは二本とも砕け散った。

 まさかの事態に動揺するグリムロックだが、すぐさま正気を取戻し、再度メイスを振るおうとする。

 だが、それよりもオプティマスの行動のほうが早かった。大きくジャンプして、グリムロックの顔に勢いよく拳を叩き込む。

 

「グ…グ…グ!」

 

 そして、グリムロックは片膝を着いた。

 いままで無敵を誇っていたダイノボットの長がである。

 

「グ、グルオオオオオオ!!」

 

 だが、それがグリムロックの怒りに火を点けた。

 恐ろしい咆哮を上げ、グリムロックは暴君竜の姿へと変形する。

 

「死ね! オプティマス!」

 

 牙だらけの口がオプティマスに迫る。

 しかし牙が届くよりも一瞬早く、オプティマスは右へと飛ぶ。さらになんと暴君竜の体にしがみつき、よじ登ったではないか。

 

「グルオオオオ!! 降りる! 離れる!!」

 

 体を大きく振りオプティマスを振り落とそうとするグリムロックだが、オプティマスは離れない。

 やがて頭部の二本角に手をかけ、首元に取りつくと背中からイオンブラスターを抜き、暴君竜の後頭部にゼロ距離で撃ち込む。

 

「グオオオ!!」

 

 さしものグリムロックもこれにはたまらず叫び声を出す。

 さらに身を振り、走り回り、口から炎を吐いてオプティマスを落とそうとするが、オプティマスは離れずゼロ距離射撃を続ける。

 その姿はまるでロデオだ。

 巻き込まれないようにと、女神もオートボットもダイノボットも、いったん距離を取る。

 

「いい加減に、しろ!!」

 

「ぐおおお!?」

 

 凄まじいロデオの末、グリムロックはジャンプしてから体を回転させて、背にしがみつくオプティマスを地面に叩き付けた。

 グリムロックが身をよじって立ち上がった時、その下ではオプティマス・プライムが大の字になっていた。生きてはいるが、大きなダメージを受けたようだ。

 

「ぐ……、ぐううう!」

 

 それでも何とか立ち上がるが、グリムロックは、その目の前でオプティマスの取り落としたイオンブラスターを見せつけるように噛み砕く。

 

「これで、我の勝ち」

 

 勝ち誇るグリムロック。

 全ての武器を失い、傷だらけになったオプティマスにもはや勝ち目はない。

 

 だが、それでも、なおも、オプティマスの闘志は折れない!

 

 そのブレインサーキットを満たすのは、紫の女神の笑顔。

 

 ――ああ、ネプテューヌ……。君は嫌がるかもしれないが、私は自分で思っていたよりも、遥かに君に執着しているようだ。

 

 両の拳を握り、構えを取る。

 

「いいや、グリムロック……! 私はまだ戦えるぞ……!」

 

「……!」

 

 その不屈の闘志に、グリムロックは驚くとともに感心した。

 これほどの相手はかつて会いまみえたことがない。

 

「弱い、言ったこと、訂正する。おまえの、技、力、闘志、見事だ。おまえ、姫様たち、洗脳した悪人には、とても見えない」

 

 騎士形態に戻ったグリムロックは沸きあがってきた疑念を口にする。

 

 これほどの戦士が、メガトロンが言うような卑劣漢なのか?

 

 当然、オプティマスは訝しげな顔になる。

 

「……何のことだ? 私がネプテューヌたちを洗脳しているだと? 誰がそんなことを……」

 

「メガトロン」

 

「! そう言うことか……!」

 

 グリムロックの短い答えに、オプティマスはオプティックを鋭く細める。

 

「グリムロック! メガトロンこそ、この島だけでなくゲイムギョウ界を侵略しようとしているのだ! 頼む、信じてくれ!」

 

 オプティマスはグリムロックの目を真っ直ぐに見て、訴える。

 しばらく黙っていたグリムロックだったが、やがて口を開いた。

 

「……信じよう。おまえの言葉、信じるに、値する」

 

 何よりも力を信奉するがゆえに、どういう形であれ、それを示した者を信じる。

 それがダイノボットなのだ。

 

「……なんだかよく分からないけど、とりあえず敵対関係ではなくなったってことでいいのかしら」

 

 半ば茫然とオートボットの総司令官とダイノボットの長の戦いを見守っていたノワールが、ホウッと息を吐きながら言った。

 

「殴りあって認め合うなんて、まるでスポ根漫画ね……」

 

 ブランも、戦いのあまりの迫力に少し顔を青くしながら呟く。

 

「殴り合いから芽生える男同士の友情……。素晴らしいですわ!」

 

 そして、ベールはなぜか目を輝かせていた。

 それをあえて無視してジャズが口を開く。

 

「いやまあ、とりあえず良かったよ。さすがにあれ以上戦うようなら助っ人に入ろうと思ってたところさ」

 

 軽い口調だが、割と本気である。

 

「あら? 嬉しかったのではなくて?」

 

「それとこれとは、話が別さ」

 

 茶化すようなベールに、ニッと笑うジャズ。

 そんな二人を見て苦笑しつつ、オプティマスは本来の目的を遂げるべくグリムロックに向き直る。

 

「グリムロック、ネプテューヌたちはどこだ。二人が危ない」

 

「その質問には俺が答えてやろう!」

 

 どこからか、地獄から響くような重低音の声が聞こえてきた。

 聞き間違えようはずもない。メガトロンの声だ。

 見回すと、高台にメガトロンがショックウェーブを伴って立っていた。

 

「メガトロン!」

 

「卑怯者、降りてこい!!」

 

 オプティマスとグリムロックが怒声を上げるが、メガトロンは動じない。

 

「あの二人なら、ディセプティコンの基地で丁重に持て成しておるわ!」

 

「メガトロン! いい加減卑怯な策も打ち止めだろう! 大人しく二人を返せ!!」

 

「グルルルゥ! 嘘吐きめ! 罰を受けろ!!」

 

 怒髪衝天のオプティマスと殺気立つグリムロックだが、メガトロンは余裕の笑みを浮かべていた。

 

「フハハハ! グリムロックよ、伝説の騎士と言ってもオツムのほうは子供並みもいいとこだな! どうせならその力、俺が有意義に利用してくれるわ! ……ショックウェーブ!」

 

「御意。セレブロシェル、起動」

 

 メガトロンの指示を受け、ショックウェーブは手元の機械を操作しはじめる。

 すると……。

 

「ぐッ、ぐおおおお!?」

 

 突然、グリムロックが苦しみだした。

 

「う、うわあああ!!」

 

「苦……痛……!?」

 

「ぐううう!?」

 

 さらに他のダイノボットたちも頭を抱えて苦しみだす。

 困惑するオプティマスはメガトロンを睨みつける。

 

「グリムロック!? メガトロン、貴様何をした!!」

 

「次善の策を用意しておいたのだよ! そいつらと接触したときに細工をしておいたのだ!」

 

 邪悪に笑うメガトロンの横で、ショックウェーブが科学者としての性か注釈する。

 

「ただしダイノボットの闘争本能と自我が強すぎて、暴走状態にすることしかできませんが……」

 

「フハハハ、それで十分よ! さあ、ダイノボットたちよ、オプティマスを叩き潰すのだ!!」

 

 メガトロンの哄笑とともに、ダイノボットたちがゆっくりとオプティマスのほうを向く。

 その目から正気が失われ、単純な暴力衝動だけが残っていた。

 

「メガトロン……! 貴様……!」

 

 沸きあがる怒りを隠しきれないオプティマスだが、今はそれどころではない。

 目の前には、正気を失ったダイノボットが四体。

 

「グルオオオオ!!」

 

 ダイノボットたちは雄叫びを上げると、オプティマスに向け殺到してくるのだった……。

 




今週のTFADVは。

あのハリネズミは、革命家気取ってたけど、メガトロンみたいなガチの革命思想はなさそう。偉い奴が嫌いなだけっぽい。
幼児化バンブルビー、なんとなく初代バンブルを思いだしたのは自分だけじゃないはず。

それはともかく、今回の小ネタ解説。

歌うダイノボット
元ネタ特になし(おい)ゆえに原作ダイノボットでは絶対にありえないシーン。
イメージとしては我が魂の映画の一つ、ホビットの第一作でドワーフたちが歌う離れ山の歌。
美女美少女が歌うのも大好きだけれど、無骨な戦士たちが哀愁込めて歌うからこそ意味がある。

セレブロシェル
初代アニメにおいて、インセクトロンの一人ボンブシェルが使った能力。
同名の物体をトランスフォーマーの頭に打ち込むことで操ることができる。
洗脳ネタは他にもいくつかあるが、他がシャレにならないのでコレをチョイス。

上手くいけば次回でダイノボット編も完結。

では。

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