超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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 今回、初登場の『彼』の、独特の会話方法をなんとか再現しようとした結果、作者の未熟ゆえ、読みにくくなってしまったかも知れません。
 もうしわけありません。

2015年12月13日、改稿。
結果、ほぼ別物に。


第4話 カワイイは正義

 女神候補生とは、現在の女神の妹であり、読んで字のごとく女神になるべく修行中の少女達である。

 彼女たちは姉である女神に時に教えを乞い、時にその背から学び、時に孤独になりがちな姉を支えて、日夜、女神を目指すのだ。

 

  *  *  *

 

 そんな女神候補生たちも今日は暇だった。

 どんな存在にも休息は必要であり、あれば嬉しいものだ。

 

 それが友達といっしょならなおさら。

 

 それぞれの姉である女神達に着いてきた候補生達であったが、姉達は自らの仕事に出向いてしまい、その間、姉に比べて仲の良い彼女達は、一緒に買い物に出掛ける事と相成った。

 

「……なんだけど」

 

 ラステイションの女神候補生、姉であるノワールに良く似た面立ちの黒い髪をツーサイドアップにした小柄な少女ユニは、思わず嘆息する。

 姉と同じくキツメな印象を与えるが、小柄で、どこか背伸びをしているような微笑ましさがあった。

 自分たちは、たしか買い物に出たはずなのだ。

 

 なのにである。

 

「わあ、この車カワイイ♡」

 

 目の前では親友であるプラネテューヌの女神候補生、ネプギアが古い車を前に目を輝かせていた。

 彼女の顔立ちは姉によく似ているが、長く髪を伸ばしていることや清楚な雰囲気と相まって大人びて見える。

 

「お、嬢ちゃんお目が高いねえ、その車はセミクラシックだよ、セミクラシック!」

 

 やたら陽気そうな色黒の男がネプギアと車を褒めちぎる。

 

 ここは中古車店。男は店主である。

 

「わ~い、ハリネズミだ、ハリネズミだ!」

「ハリネズミ……(ワクワク)」

 

 一方、ルウィーの女神候補生であるラムとロムはの双子、店のマスコットと思しき青いハリネズミの着ぐるみ(?)の周りを高いテンションでグルグルと走り回っていた。

 茶色の髪を長く伸ばし胸元にピンク色のタイを結んだ方がラムで、髪を短く切りそろえ水色のタイを結んだ方がロムだ

 二人は候補生の中でも一際幼い容姿をしており、子供らしく無邪気で愛らしいが、ハリネズミは少し迷惑そうである。

 

 ――どうしてこうなった。

 

 ユニは自問する。

 たしか、途中までは候補生四人で買い物を楽しんでいたはずだ。

 しかし、突然ネプギアが引き寄せられるようにしてフラフラとこの店に入ってしまい、慌てて追いかけて今に至る。

 

「いやあ、お嬢ちゃん綺麗だし、今日は特別価格で……」

「う~ん、この車も良いなあ」

 

 何とか車を買わせようとおべっかを使いまくる店主と、店主を完全に無視して車を物色する親友に、ユニは再度溜め息を吐く。

 

 ネプギアは、グータラ、趣味人、駄女神の名をほしいままにする姉と違って、真面目な娘だ。

 

 しかし、そんなネプギアにも変わった趣味があり、それが機械好き(メカマニア)であると言うこと。

 

 本人曰くカワイイ(あくまで本人基準)機械を目の前にすると目の色が変わるのだ。

 しかし、今日はいつも以上だ。

 

 ――そう言えば最近、車の免許取ったって自慢してたっけ。

 

 と、ネプギアの視線が、止まる。

 ユニもその視線を追うと、そこには一台の車が止まっていた。

 古く黄色いスポーツカーで、この店でも特にオンボロに見える。

 ネプギアはまるで吸い寄せられるように、その車に近づいていった。

 

「あの、この車はおいくらですか?」

「え? お嬢ちゃん……買うの? この車」

 

 店主の態度が目に見えて変わった。

 笑顔は消え、目の輝きが失せる。

 

「……いいよ、この車なら、タダで」

「え!? 本当ですか?」

 

 店主とは反対に、ネプギアの顔には喜色が満ちる。

 

「ちょっと待ちなさい! なんでタダなわけ!? なにか理由があるんでしょう!」

 

 ユニが慌てて止める。

 いくらなんでも怪しい。

 ユニに問い詰められて、店主は少し困った顔になった。

 そしてユニの睨みが奇跡的に効いたのか、根は人が良かったのか正直に話し出す。

 

「……これ、うちのじゃないんだよ。今朝いつの間にかおいてあったんだ。で、

どうしようか困ってた」

「な!? そんな怪しいものを売りつけようとするなんて!」

「売りつけるんじゃない。そっちのお嬢ちゃんが欲しいっていうから持ってってもらうのさ」

 

 そんな二人の会話の間も、ネプギアは黄色い車をあちこち触っている。

 その手つきは優しく、そしてどこか艶やかだ。

 やがて、思い立ったかのようにボンネットを開けると驚いた顔になる。

 

「……あの、これ本当に貰っちゃっていいんですか?」

 

 困り顔で振り向き、ボンネットの中を指差す。

 どうしたのかと、ユニと店主がボンネットの中を覗き込むと……。

 

「えっと……なに、これ?」

「何だあこりゃあ!?」

 

 そこには新品同様のピカピカのエンジンが詰まっていた。

 ユニはその意味を理解しかねたが、店主の驚きは凄まじかった。

 

「こいつは最新式……いや、それよりはるか先を行く代物だ! どうしたってこんなボロ車に?」

 

 ボロ車、の言葉が出た瞬間、黄色い車のクラクションが勝手に音を立てる。

 ユニはなんだか気味が悪くなってきた。

 

「ねえ、ネプギア。やっぱりやめとこう」

 

 しかしネプギアはすっかりこの車に魅せられてしまったらしい。

 

「あの、やっぱりお金を払います。この車、売ってくれませんか?」

「いや、金はいいよ」

「いいんですか!?」

「ああ、男に二言はない。それに……」

 

 店主の顔が神妙な物になる。

 

「こんな言葉がある。人が車を選ぶんじゃあない。車が人を選ぶんだ……ってな。ひょっとしたらお嬢ちゃんは、その車に選ばれたのかもな。大切にしてやんな」

 

  * *  *

 

「はあ、まったくもう……」

 

 ユニは、思わず嘆息する。

 結局、件の車を手に入れたネプギアは、その車に意気揚揚と乗り込むとユニたちを乗せて自分のプライベートなガレージに直行し、そのまま車のボンネットを開き、工具やらなんやら引っ張り出してきて車のエンジンを弄りだした。

 残りの三人は、ガレージの中の思い思いの場所に腰かけている。

 

「ネプギアったら、車いじってばっかりで、つまんな~い!」

「つまんない……(シクシク)」

 

 ユニはもちろん、さすがにロムとラムも呆れた様子だ。

 一方、ネプギアは一段落ついたのかボンネットを閉じる。

 

「ごめんね、三人とも。もう終わりだから」

「……はあ、ネプギアはなんかおかしいし、お姉ちゃんはロボットを見に行っちゃうし、今日はついてないわ」

「そうそう、ロボットなんか、ほっとけばいいのに!」

「ロボット……つまんない」

 

 ユニが嘆息し、ラムとロムがつまんないと言った瞬間、何故か車の周りの空気がズ~ンと重くなるが、気づく者はいない。

 しかし、ユニは友好条約の式典に突如乱入してきたロボットのことが、気にはなっていたので、楽しそうに車をいじくっているネプギアに問う。

 

「それでなんだっけ、そのロボットの名前」

「えっと、たしか、……オプティマス! オプティマス・プライムだよ!」

 

「『……!? 』『ほんとに!?』『その話マジかよ!?』」

 

 ネプギアがオプティマスの名を出した途端、車からラジオの音声が聞こえてきた。

 

「な、なに!? ネプギア、アンタ変なところいじったんじゃ?」

「ううん! 私なにもさわってないよ!」

「じゃ、じゃあ今のはなに!?」

「こわい……(ビクビク)」

 

 驚いて車から距離を取る四人の前で、車はギゴガゴと音を立て、姿を変えていく。

 パーツが細かく寸断され、組み変わり、まったく違う姿へと変形する。

 あのオプティマス・プライムと同じ金属の巨人へと。

 身を屈めた状態でガレージに収まるほどだが、それでも十分大きい。

 

「な、なんなの一体!?」

「アンタなに? モンスターなの?」

「モンスター……?」

 

 ユニ、ラム、ロムが突然出現した機械巨人に警戒する。

 すでに各々の手は得物が呼び出されていた。

 ユニは長銃、ラムとロムはお揃いの杖だ。

 しかしロボットは両手を上げて膝をついて、所謂降参のポーズを取った。

 

「『まってくれベイベー!』『当方に戦闘の用意なし、覚 悟 不 完 了 !!』『話を聞いてくれ!』」

 

 ラジオ番組から拾ってきたらしい音声と身振り手振りで必死に自分に敵意がないことを伝えようとしているらしいロボット。

 しかし、女神候補生達は警戒を解かない。

 

 

 ……ただ一人を除いて。

 

「ネプギア、隙を見て攻撃するわよ! ラムとロムは援護をお願い!……ネプギア?」

 

 ユニがこの巨大な敵に立ち向かうべく、仲間たちに指示を飛ばすが、相方役である親友の様子がおかしい。

 怪しい踊りの如き動きを見せる(オロオロしている)巨大ロボットを前にして、その目をキラキラと輝かせている。

 

「……かわいい」

 

『……へっ?』

 

 そして口からボソッと出た一言はロボットを含めた一同を驚愕させるには十分だった。

 

「かわいい! このロボット、すごくかわいいよ!! ユニちゃん!」

「え~っと、そ、そうかな?」

 

 ユニはロボットを見上げる。

 どこか丸っこい造形と青く円らな目、背中に配置されたドアが翼のようにパタパタと動いている。

 オロオロとする姿はどこか子供っぽく、かわいいと言えなくもない。

 しかし最初に出てくる感想がそれと言うのは違うんじゃなかろうか。

 

「うん! このロボットはきっと悪いロボットじゃないよ! だって、こんなにかわいいんだもん!!」

 

 満面の笑みを浮かべ、断言するネプギア。

 その様子にユニはもちろん、双子も呆気にとられる。

 

 一方、ロボットの方はと言うと、やれやれ、これで取りあえず話ができそうだと軽く排気していた。

 

「『それじゃあ』『ベイビーたち』『改めまして……』『初めまして』『僕の名前は』バ…ン…ブ…ル…ビー」

 

 たどたどしく、ノイズまじりの声だったが、なんとか伝わった。

 

「バンブルビー……、それがあなたの名前なんだ」

 

 ネプギアはすっかり、この不思議なロボットに魅せられていた。

 バンブルビーの足元に近づき、その顔を見上げる。

 ユニはまだ警戒しているものの、毒気を抜かれてしまった。

 一方のラムとロムは警戒を解き、ネプギアの後ろに隠れてではあるものの興味津々でバンブルビーを見ている。

 バンブルビーは頷き、しゃがみこんでネプギアに視線を合わせた。

 

「プ…ラ…イ…ム…『知っているのか?』『俺の仲間だ』『知っているなら』『会わせてくれ』」

 

  *  *  *

 

こうして、ネプギアとバンブルビーは出会った。

 

二人は力を合わせて数々の困難を乗り越えることになるのだが、それはまだ先の話だ。

 




 ネプギアはかわいい機械が好き。→バンブルビーはかわいい。→ネプギアはバンブルビーと仲良くなる。

 という発想により決まった、この組み合わせ。準主人公コンビでもあります。

 しかし、ビーの会話方法について、もっといい表現はないものか……
 良い方法があったら、どうぞお教えください。

※前半の中古車ショップでのくだりは、改稿前にはありませんでした。
元々、こういう流れになるはずだったのに、なぜか削った当時の自分。

……本当、何で削ったんだろう?

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