超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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始まりました、ダイノボット編。

独自設定のオンパレードですが、ご容赦ください。

※章追加、この章はあくまで第三章の一部とご考え下さい。


中編 Kingdom of Dinobots(竜騎士の王国)
第40話 ダイノボットの伝説


 遠い遠い、昔のお話。

 

 南の海のとある島に、とても豊かな王国がありました。

 人々は大地と風と水と、そして炎の竜に祈りを捧げながら、平和に暮らしていました。

 しかしある時、大陸からとても大きな別の国の兵隊たちが攻めてきました。

 王国の人々は果敢に抵抗しましたが、兵隊たちはとてもたくさんいて、剣と槍と弓を振りかざしていました。

 豊だった国は焼かれ、たくさんの人が傷つきました。

 人々は祈りました。大地に、風に、水に、そして炎に。

 

 そして、祈りは届いたのです。

 

 祈りに答え、竜の力をその身に宿した戦士たちが現れました。

 別の国の兵士たちの剣も槍も弓も戦士たちの鎧に弾かれ、戦士たちが暴れると炎が巻き起こり、大地が揺れ、大気が逆巻きます。

 たまらず、別の国の兵隊たちは逃げ出しました。

 しかし、戦士たちは止まりません。

 もっと戦いたい、もっと壊したいと、戦士たちは暴れ続けます。

 もういい、もうたくさんだ! と人々が叫んでも、戦士たちは聞く耳を持ちません。

 人々が困り果てたその時、ある姉妹が進み出て、歌を歌い始めました。

 

 するとどうでしょう。

 

 暴れていた戦士たちが大人しくなったではありませんか。

 戦士たちは姉妹に忠誠を誓い、王国を護ることにしました。

 こうして王国に平和が戻り、戦士たちは王国と姉妹を守る騎士となって、いつまでも幸せに暮らしたそうです。

 

【古代プラネ民話 四人の騎士と姉妹姫】より一部抜粋

 

  *  *  *

 

 太陽の輝く南洋、その上空を一機の輸送機が飛んでいた。

 このゲイムギョウ界に存在する中でも最大級の巨体を誇る機種だ。

 その両翼には、柔和なロボットの顔……オートボットのエンブレムがペイントされている。

 これこそ、オートボットの所有する輸送機だ。

 やがて、洋上を飛ぶ輸送機の前方に島が見えてきた。

 ジャングルに覆われた大きな島だ。

 輸送機は島の上空に到達すると、後部ハッチを開く。

 するとそこから人影が飛び出してきた。

 

「イヤッホー!! 全国1000億人のファンのみんなー! この作品の主人公、ネプテューヌだよー!」

 

 それはネプテューヌだった。自己主張も激しく落下していく。

 ネプギア、ノワール、ブラン、ベールもそれに続く。最後にプルルートが飛び出してきた。

 島目がけて降下していく一同だが、プルルートを除いた五人は女神化し彼女を捕まえて、ゆっくりと島の砂浜に降り立った。

 続いて、オプティマスをはじめとしたオートボットたちも、後部ハッチから飛び降りて来た。女神たちのパートナーとジョルトだ。彼らはさすがにパラシュートをしている。

 オートボットたちは女神たちの降りた場所から少し離れた場所に着地すると、パラシュートを切り離して女神たちの傍に歩いてきた。

 

「やー、どうだ、この主人公力! 何者も太刀打ちできまい!」

 

 着地するやいなや女神化を解いたネプテューヌは元気いっぱいにポーズを取る。

 それに対し、同じく女神化を解除したノワールがツッコミを入れた。

 

「何やってるのよ、ネプテューヌ」

 

「いやほら、わたしここんとこ活躍らしい活躍がなかったし、ここらで誰がこの物語の主人公なのか、ハッキリさせとこうと思って!」

 

 よく分からないことを言うネプテューヌ。

 

「まあ、ネプテューヌは、いつもの調子ですわね」

 

「……ここまでくると感心する」

 

 同じく人間体に戻ったベールとブランも苦笑する。

 

「それじゃあ、ここに来た目的を再確認しておきましょう」

 

 ノワールが真面目に声を出した。

 それに対し、プルルートが呑気に答える。

 

「え~と、南の島に~、遊びに来たんだよね~」

 

 素早くツッコミを入れるノワール。

 

「違うでしょ! 変な島が発見されて、そこから妙なエネルギー波が出てるからでしょ!」

 

 無論、彼女たちはバカンスにしゃれ込もうと言うわけではない。

 先日のこと、ルウィーの人工衛星が、いままで未発見だった島を捉えたのだが、その島から未知のエネルギーが感知されたのである。

 そのエネルギー波が島を覆い、発見を防いでいたらしい。

 

「ひょっとしたら、そのエネルギーの発生源が、プルルートさんのいた次元から転送された力なのかも」

 

 ネプギアが補足する。

 普段があまりに呑気なので忘れがちだが、プルルートは元々、彼女のいた次元からこちらの次元に転送された大きな力を探すためにやってきたのだ。

 そのため、今回の調査に同行することになったのである。

 

「ほえ~、そうだったんだ~」

 

 どこまでも呑気なプルルート。それでいいのか。

 さすがのネプテューヌでさえ苦笑している。

 

「ではこの島の調査を始める前に、物資を回収するぞ。少し離れた場所に輸送機から投下されたはずだ」

 

『了解!』

 

「おおー!」

 

 場を引き締めるオプティマスの言葉に、オートボットたちが答え、ネプテューヌも声を上げる。

 女神とオートボットたちは、移動を開始したのだった。

 

 それをジャングルの中から見ている者たちがいた。

 生気を感じさせず、しかしどこか生物的に蠢く者たち。

 それらはジャングルの奥へと消えていった……。

 

  *  *  *

 

「あ~あ、こんなことなら水着持ってくれば良かったなー」

 

 歩き出してからしばらくすると、ネプテューヌがこんなことを言い出した。

 しかし、今回はそれも無理のないこと。

 空と海は透き通るように青く、島の砂浜は抜けるように白い。

 しかも人のいない孤島という、バカンスには絶好のロケーションだ。

 

「馬鹿言ってないで、真面目に歩く!」

 

「ええ~!? いいじゃん、きっとみんな水着回を期待してるよー!」

 

 言い合うノワールとネプテューヌ。

 周りはオートボットも含めて、いつもの光景に笑顔を浮かべる。

 しばらく歩くと物資の入ったコンテナが投下されていた。

 それを開けようとした所でオプティマスが動きを止める。ネプテューヌが訝しげにたずねた。

 

「オプっち、どうしたの?」

 

「……中に生命反応がある」

 

「え?」

 

 予想外の答えが返ってきた。

 

「つまり、誰かが中にいるってことですか?」

 

 ネプギアの言葉に、オプティマスは頷く。

 一同に緊張が走る。……ネプテューヌとプルルート以外に。

 

「よーし! じゃあとりあえず開けてみよー!」

 

「おお~!」

 

 呑気な二人は一同の警戒も気にせずコンテナの蓋を開ける。

 するとそこには……。

 

「すぴ~……」

 

「あれ、ピーシェ?」

 

 そこにはピーシェが物資の隙間に入り込み、丸くなって眠っていた。

 

「う~ん……、ついたの~?」

 

 一同が目を丸くしていると、ピーシェは目を覚ました。まだ眠いのか眼を擦っている。

 

「……って! 何でここにいるのさ、ピーシェ!!」

 

「ついて来ちゃったの!?」

 

 さすがにネプテューヌとネプギアが声を張り上げた。

 するとピーシェはそれに気付いてむくれて見せる。

 

「だって、ねぷてぬたちばっかりおそとにあそびにいって、ずるい! ぴぃもいっしょにあそびいく!」

 

 どうやらピーシェは、ネプテューヌたちが遊びに行くものと思って、勝手に潜りこんだらしい。恐るべき行動力だ。

 

「あのね、ぴーこ、わたしたちは遊びに来たんじゃないんだよ。危ないかも知れないんだよ」

 

 厳しい声で諭すように言うネプテューヌ。

 

「……さっきまで水着がどうたら言ってたのは、誰だったかしら?」

 

「まあ、言わない約束よ」

 

 その姿を見て、ノワールとブランは呆れた声を出す。

 一方、オプティマスは厳かに声を発した。

 

「まあ、来てしまったものは仕方がない。……ホィーリー、いるのは分かっているぞ。出てこい」

 

「……うぃっす」

 

 物資の隙間から、青いトラック型のラジコンカーが姿を現した。

 

「なぜ止めなかった?」

 

「止めて止まると思うか?」

 

 オプティマスの疑問に、ホィーリーは力なく答えた。

 その態に、これは少しピーシェを止める手段を考えなければなと考えるオプティマスだった。

 

  *  *  *

 

 その日の午後は、キャンプの設営に時間を費やされた。

 設営が終わるころには日が暮れはじめ、本格的な調査は明日からになった。

 例のエネルギー波の影響で、通信が上手くできないため、迎えの船が来るまでは島にとどまることになる。

 一同は明日からに備え、まずは食事を取ることにしたのだった。

 女神たちはお鍋。オートボットたちはエネルゴンである。

 

「はーい、ごはんですよー♪」

 

「わーい、ごはんだ、ごはんだー!」

 

 食事を用意したネプギアがテーブルの上にお鍋を置くと、ピーシェが歓声を上げる。

 

「ありがと、ネプギア。やっぱりネプギアはよく働くわね」

 

 ノワールは働き者のネプギアにお礼を言う。本当に彼女は頑張り屋さんだ。

 

「しかし、こう言っちゃなんだが、ネプテューヌとネプギアは、姉妹なのにそこまで似てないな」

 

 エネルゴンチップを齧るジャズが冗談めかして言った。

 鍋を行儀よくつつくベールも同意する。

 

「そう言われれば、そうですわね。ノワールとユニちゃん、ブランとロムちゃんラムちゃんは雰囲気が良く似ていますのに」

 

「まあ、姉妹ってのにも、色々あんだろ」

 

 金属片をつまみにオイルを飲んでいたアイアンハイドが、そっけなく意見を言う。

 

「『でも』『性能は』『上位互換』」

 

 なぜだかドヤ顔で胸を張るバンブルビー。

 

「そ、そんなことないよ! 私なんかお姉ちゃんに比べたらまだまだ……」

 

 謙遜するネプギアだが、それは彼女の本心である。

 

「なんて言うか、お姉ちゃんには人を引っ張っていく力があるんです。皆さんも、そういうおぼえありませんか?」

 

「……そうね。そういう部分があるのは認めるわ」

 

「それ以外、大いに欠けてるのが問題だけどね……」

 

 ネプギアの言葉にブランが頷き、ノワールはどこか困り顔だ。

 オートボット、特にオプティマスはネプギアたちの会話に深く同意しているらしく苦笑しながらも頷く。

 

「そうだな。どんな困難にも挫けず周りを引きつけるのが、ネプテューヌの大きな魅力だ」

 

「それはそうと、そのネプテューヌの姿が見えませんけど……」

 

「何?」

 

 ベールの発言に、オプティマスはじめ一同が驚く。

 

「そう言えば、いないね~……」

 

「といれかな~?」

 

 首を傾げるプルルートとピーシェ。

 オプティマスは難しい顔をする。

 

「夜のジャングルは危険だ……。私は少し、ネプテューヌを探してくる。ジャズ、この場は任せたぞ」

 

「了解」

 

 副官に後を任せ、オプティマスはジャングルへと歩を進める。

 

「あ、私も行きます!」

 

「『オイラも』『お供しますぜ!』」

 

 その背を追って、ネプギアとバンブルビーもまたジャンゲルへと入って行くのだった。

 

「俺、セリフなかったな……」

 

 なんとなく黄昏ているジョルトを残して。

 

  *  *  *

 

 ジャングルの中は植物が鬱蒼と生い茂り、強い湿気に覆われている。

 もう夜であることもあって、あたりにはオプティマスとバンブルビーのライト以外に光源はない。

 ネプギアはバンブルビーから離れないようにして進む。

 

「お姉ちゃーん!」

 

「ネプテューヌー!」

 

 ネプギアとオプティマスの呼びかけにも、応答はない。

 オートボット二体はセンサーの感度を上げてネプテューヌの生命反応を探るが、見つからない。

 と、ネプギアが何かに気が付いた。

 

「あ! お姉ちゃん?」

 

 ジャングルの向こう側に人影らしきものを見たのだ。

 ネプギアはそれに向かって駆けていくが……。

 

「あれ? これは……」

 

 それはネプテューヌではなかった。それ以前に生き物ですらなかった。

 それは人の姿を模した石像だった。

 女性を象ったその像の反対側にもう一つ、向かい合う形で女性の石像がある。

 さらに周りには、向かい合う女性像を囲むように四つの大きな石像が立っていた。それらは武器を持ち、鎧に身を包んだ戦士像だ。

 

「これは、遺跡か……」

 

 思わず、オプティマスが感嘆の声を出す。

 長らく放置されていたであろうそれらは、長い時を経てなお、神秘的な魅力を放っていた。

 

「お姉ちゃんじゃなかった……」

 

 遺跡には驚いたが、少しガッカリしてしまったネプギアは踵を返すが、その時何かカチッと音がした。

 次の瞬間、ネプギアたちの足元がパックリと開いた。

 

「へ? えええええ!?」

 

「ほわあああああ!?」

 

「『唐突すぎるだろ、常考!?』」

 

 三人は、なす術もなく穴の中へ落ちていった……。

 

  *  *  *

 

「う、うん……?」

 

 ネプギアが目を覚ますと、そこは石造りの建造物の中だった。

 窓はないが、光を放つ鉱石が壁に埋め込まれていて光源になっている。

 

「ここは、いったい?」

 

 まったく見覚えがない場所のうえ、オプティマスとバンブルビーの姿も見えない。はぐれてしまったのだろうか?

 

「ううう、変な所に迷いこんじゃったー」

 

 泣き言を言うネプギアだが、いつまでもこうしてはいられない。バンブルビーたちと合流すべく、立ち上がって歩き出す。

 その時、通路の先に人影が見えた。その姿は見間違えようもなく……。

 

「ッ! お姉ちゃん! 無事だったんだね!」

 

 思わずその人影に抱きつくネプギア。

 

「……おい、人違いだぞ」

 

 しかし、それはまたしてもネプテューヌではなかった。

 

「え? キャア! ごめんなさーい!」

 

 慌ててその人物から離れるネプギア。

 落ち着いて見れば、その人物はとてもネプテューヌに似た少女だった。

 顔の作りや体型はそれこそ瓜二つだが肌の色は浅黒く、衣服は南国情緒に溢れた露出度が高く、しかしどこか時代錯誤な物だ。蛇を模した髪飾りを着けており、表情もネプテューヌに比べて勝気そうである。

 

「私はヴイ・セターンという。おまえは?」

 

「あ、はい! 私は……」

 

  *  *  *

 

 ネプギアはネプテューヌ似の少女、ヴイ・セターンに自己紹介と、ここに来た経緯を話した。

 

「ほう……、おまえも姉や仲間と離れてしまったのか。偶然だな、私も妹とはぐれてしまったんだ」

 

「え? そうなんですか!?」

 

 ヴイの話は、ネプギアのそれと似通ったものだった。

 

「よし! 協力してくれ、ネプギア! 仲間たちを探すぞ!」

 

「は、はい!」

 

 快く申し出に応じるネプギアに、気分を良くしたのかヴイは元気よく歩き出す。

 

 だが。

 

「危ない!」

 

「うお!?」

 

 ネプギアがヴイの手を掴んで止めると、ヴイの一歩先の床から鋭く尖った槍が飛び出してきた。

 

「ふう……。助かったよ、ネプギア」

 

 間一髪だ。

 ネプギアはヴイから姉同様、どこか放っておけないものを感じるのだった。

 

 こうして、先は不安ながら二人は遺跡探索を始めたのだった。

 

  *  *  *

 

 一方、オプティマスとバンブルビーも遺跡の中を探索していた。

 

「ここはかなり古い遺跡だな。少なくとも数千年は前の物だ」

 

 遺跡の壁を触り、その組成をスキャンしながらオプティマスが言った。

 

「しかし、興味深い遺跡だ。見ろバンブルビー、これはこの壁画から察っするに、ここの住人たち自然界のエレメントを神とする、原始的な自然崇拝を行っていたようだ。大地、風、水、そして炎を偉大な幻獣『竜』に見立てて、それを神としていたのだ。この場合の竜とは、モンスターのドラゴンとは違う、もっと観念的な存在だ」

 

 どこか興奮した調子で語るオプティマス。

 

「そして王国は、竜の化身である四人の『騎士』と呼ばれる戦士により守られていた。この騎士を操れるのは王族だけであり、すなわち王族は四属性の竜を祭る神官でもあったのだ。さらに、この遺跡の構成は古代プラネ様式に良く似ている。おそらく古代のプラネテューヌと何かしらの関係が……」

 

「『司令官』『今は……』」

 

「むう、すまん。ついな……」

 

 長く語る司令官を、バンブルビーは状況を鑑みてやんわりと止めた。

 元々オプティマスは歴史学者アルファトライオンのもとで育ち、司書として働いていた身。神秘的な遺跡を前に、歴史家だったころのエネルゴンが騒ぐのも道理というものだった。

 バンブルビーにとっては古代の遺跡より今の友。紫の女神姉妹を探すほうが先決だった。

 

  *  *  *

 

 遺跡探索を続けるネプギアとヴイ。

 どんどんと先行して片っ端から罠にかかるヴイをネプギアがフォローし、一歩一歩出口に向かっていく。

 怖い物知らずでグイグイと自分を引っ張っていくヴイに、ネプギアはいつしか姉を重ねていた。

 

「そういえば、ネプギアの仲間というのはどういう者たちなのだ」

 

 ふと、ヴイがたずねてきた。

 

「うーん、そうですね。私のパートナーは、甘えんぼで少し子供っぽいけど、すごく頼りになるんです!」

 

 驚かせないようトランスフォーマーであることはボカしつつ笑顔で語るネプギア。

 色々なことがあったが、そのたびに力を合わせて乗り越えてきた。

 

「そうか……、その者はネプギアにとっての『騎士』なのだな……」

 

 そう言うヴイの声には、わずかに寂しさが滲んでいた。

 

「おまえたちなら、『彼ら』と共にこの島を救えるかもしれないな……」

 

 ネプギアに聞こえないように呟くと、柔らかく微笑む。

 

「なあ、ネプギア。ここでこうして会ったのも何かの縁だ。これを、おまえに贈らせてほしい」

 

 ヴイがネプギアに差し出したのは二枚のカードだった。

 そのカードには二足歩行で歩く巨大な竜と、翼を広げる双頭の竜が、象形的に描かれていた。

 

「え? これは?」

 

「今は何も言わず受け取ってくれ。いずれ分かる時がくる」

 

「わ、分かりました。ありがとうございます」

 

 その言葉の意味は理解できないながらも、ネプギアはカードを受け取る。

 

「ネプギア~!」

 

 と、通路の先から声が聞こえてきた。

 聞きなれたこの声、今度こそ間違いない。

 

「お姉ちゃーん! こっちこっちー!」

 

 愛する姉のもとへと、ネプギアは駆けていく。

 

「頼んだぞ、『今の』女神たち……」

 

 その後ろでは、ヴイの姿がゆっくりと透けていった……。

 

  *  *  *

 

「ネプギアー!」

 

「お姉ちゃーん!」

 

 再会した姉妹はお互いに抱きつき、無事を確かめ合う。

 ネプテューヌに怪我はなく、元気そうだ。

 

「やっぱり助けに来てくれたんだー! 信じてたよー!」

 

「うん、ここにいるヴイさんといっしょにこの遺跡を……」

 

 姉に新しくできた友達を紹介しようと振り向くが、そこにはヴイ・セターンの姿はなかった。

 

「あれ? ヴイさーん! おかしいな、さっきまでここにいたのに」

 

「わたしもハイ・セターンちゃんといっしょに来たのに、いつのまにかいなくなってる!」

 

 ネプテューヌも驚いている。

 名前からして、ハイ・セターンと言うのは、はぐれたというヴイの妹だろう。合流できたので先に帰ったのだろうか?

 

「あ、そうだ。お姉ちゃん、私、ヴイさんからこれをもらったんだ」

 

 ふとネプギアは、さっきもらったカードを姉に見せた。

 

「ネプギアも? わたしもハイちゃんからこれもらったんだよ。いやー、ハイちゃんは礼儀正しくてカワイイ娘だったなー。ネプギアによく似てたよー」

 

 そう言ってネプテューヌも二枚のカードを取り出す。

 こちらには四足歩行の角の生えた竜と、背中に大きなヒレのある竜の絵が描かれている。

 これで計四枚のカードがあることになるが、これの意味は何なのだろうか。

 ヴイとハイは、いずれ分かるとしか言わなかった。

 

「ネプテューヌ、ネプギア! 無事だったか!」

 

「ギ…ア…『心の友よー!』『無事でなによりー!』」

 

 そこへ、通路の先からオプティマスとバンブルビーが歩いて来た。

 

「おー! オプっち、ビー! ちょっと、そこらを探検しようと思ったら、穴に落ちちゃってさー! 心配かけてゴメンねー!」

 

 あんまり反省の色の見えないネプテューヌだが、そんな彼女を見てオプティマスは安堵の表情を見せる。

 

「あまり無茶はしないでくれ。皆、心配する」

 

「はーい! ……そうだ、オプっち! わたしたち、さっきこの島の人たちに会ったんだ!」

 

 ネプテューヌのその言葉に、オプティマスとバンブルビーは顔を見合わせる。

 

「それはおかしい。この島は無人島のはずだ」

 

「それが違ったんだよ! ネプギアはヴイ・セターンちゃんと、わたしはハイ・セターンちゃんといっしょにここまで来たんだよ!」

 

 笑顔のネプテューヌの言葉を聞いた瞬間、オプティマスが驚いたようにオプティックを見開く。

 

「セターン、だと?」

 

「どうしたの、オプっち?」

 

 いくばくか緊迫しているオプティマスにネプテューヌがたずねると、総司令官は口を開いた。

 

「……いや、なんでもない。それよりも、早く地上に出て皆と合流しよう」

 

「え? あ、うん……」

 

 珍しく言葉を濁すオプティマスを訝しく思いつつも、意見には従う。そして気分を切り替え、元気よく声を出した。

 

「じゃあ、しゅっぱーつ!」

 

  *  *  *

 

 遺跡を脱出したネプテューヌたちはキャンプを目指して歩いていた。

 

「いやー、これでやっと、ご飯にありつけるよ! もうお腹ペコペコ!」

 

 さっきまで遺跡を彷徨っていたのにやたら元気なネプテューヌにオプティマスは苦笑する。

 しかし、不意に厳しい表情になると背中からイオンブラスターを抜いた。

 

「オプっち?」

 

「バンブルビー、戦闘態勢を取れ! 囲まれている……!」

 

 訝しげなネプテューヌに、部下への命令で答えとする。

 すぐさま、バンブルビーは武器を展開してネプテューヌたちを守るように進み出て、ネプテューヌたちも各々の武器を構える。

 

「しかし……、何だ? この反応は……」

 

 オプティマスが緊迫した面持ちで言う。

 モンスターに近いが、どこかおかしいのだ。

 

「『殺気がない』『敵意がない』『でも』『悪意を感じる』……」

 

 ラジオ音声を流すバンブルビーも、表情は硬い。

 

「……来るぞ!」

 

 オプティマスの言葉の一瞬後に、周囲のジャングルから『それら』は飛び出してきた。

 

「こ、これは……!」

 

「な、何、コレ!」

 

 自身の武器を構えながら思わず声を上げるネプギアとネプテューヌ。

 それらは、やはりモンスターだった。獣型、爬虫型、鳥型、昆虫型、様々な種類が一同に会している。

 だが、いずれも体のあちこちが金属に覆われ、武器を体に埋め込まれていた。

 口は開かれて唾液を垂れ流し、目は生気を失っている。

 

「こ、このモンスターたちはいったい?」

 

「わーはっはっは! そいつらはトランスオーガニックさ!!」

 

 機械化されたドラゴンを打ち倒したオプティマスまでもが戸惑う中、どこからか声が響いた。

 一同が声のしたほうに顔を向けると、空き地を見下ろせる高台に、複数の影が立っていた。

 二つは巨大な異形の人型、一つは巨大な異形の四足、そしてネズミパーカーを羽織った少女。

 ドレッズとリンダだ。

 その姿を見てネプテューヌが声を上げる。

 

「あなたたちは……、シタッパーズ!!」

 

「「ドレッズだ!!」」

 

「リンダだっつの!」

 

「ガウガウ!」

 

 当然抗議の声を上げるシタッパーズとリンダ。

 

「って言うかこのネタ二回目だYO! なに、定着してんの!? 定着させたいの!?」

 

「俺とクランクケースは、テックスペックでは地位8なのに……」

 

 怒り冷めやらぬクランクケースとクロウバー。

 そんなドレッズを無視して、オプティマスが聞く。

 

「そんなことより、トランスオーガニックだと?」

 

「そんなことって……。ま、まあいいぜ、教えてやる! トランスオーガニックってのは、ショックウェーブ様がモンスターと機械を掛け合わせて創った新戦力さ」

 

 オプティマスの物言いにムカつきながらも律儀に答えるリンダ。

 その手には、笛のような楽器が握られている。

 

「掛け合わせたって、そんな……」

 

「さすがのわたしもドン引きだよ……」

 

 命を軽視する所業に、ネプギアは口を押さえ、ネプテューヌでさえ、冷や汗を垂らしている。

 

「へへへ、そしてアタイはショックウェーブ様からコイツらを操る方法を教えてもらったんだ! さあ、おまえらやっちまいな!!」

 

 そう言うとリンダは手に持った笛に口をつけ思い切り吹き鳴らす。

 それとともに機械化モンスター……トランスオーガニックたちが襲い掛かってきた。

 

「キリがないよ! 何これ、無限沸き!?」

 

 機械化されたモンスターを切り伏せるネプテューヌだが、倒しても倒してもジャングルからさらに姿を見せる敵に声を上げる。

 

「仕方がない、いったん退却だ! 仲間と合流するぞ!」

 

「『了解!』」

 

 オートボットたちはすぐさまビークルモードになると、それぞれのパートナーを乗せアクセル全開で走り出す。

 

「アハハハ! 見ろよ、あいつら逃げてくぜ!」

 

「大勝利だYO! むしろ初勝利だYO!」

 

「ガウガウ!」

 

 撤退するオートボットたちを見て歓声を上げるリンダとクランクケース、ハチェット。

 冷静なのはクロウバーくらいだ。

 

「よし、追い詰めて止めを刺すぞ!」

 

「「おおー!!」」

 

「ガウガウ!」

 

 ドレッズとリンダは声を上げて、オートボットを追うのだった。

 

  *  *  *

 

 ジャングルの中を逃げるオートボットたちだが、どこに行ってもトランスオーガニックたちが湧き出してくる。

 何とか仲間と合流したいが、通信ができない現状ではそれも難しい。

 

 ――最悪でもネプテューヌたちの安全だけは確保しなければ……

 

 オプティマスがそう考えていた時である。そのネプテューヌが声を上げる。

 

「オプっち! 前、前!」

 

「ッ!」

 

 目の前でジャングルが途切れ、代わりに垂直に近い岩肌が広がっていた。とても登れる高さではない。

 岩肌には巨大な戦士像が彫られている。こんな場合でなければ、感心する所だ。

 

「なんてことだ……!」

 

 しかし今は逃げ道をふさぐ物でしかない。

 どうしたものかと思考する暇もなく、背後のジャングルから無数のトランスオーガニックが現れる。

 さらにはドレッズとリンダがトランスオーガニックの群れを割って現れた。

 

「へへへ、みっともなく逃げ回りやがって! 今度の今度こそ、最後だぜ!」

 

 勝利を確信して下卑た笑みを見せるリンダ。

 

「やむをえない! 皆、戦うぞ!!」

 

 パートナーを降ろしたオプティマスとバンブルビーは、ロボットモードに戻ると武器を構える。

 ネプテューヌとネプギアも女神化する。

 

「やる気か……。なら、死にやがれ!!」

 

 今一度リンダが笛を鳴らすと、オートボットと女神に向けトランスオーガニックたちが飛びかかっていく。

 オプティマスがイオンブラスターで機銃を撃ってくる鳥型を撃ち落とし、エナジーブレードで金属に身を包んだドラゴンを切り裂く。

 バンブルビーが四方から襲いくる砲を背負った獣型をジャズ直伝の回し蹴りで蹴散らす。

 

「クロスコンビネーション!」

 

「スラッシュウェーブ!」

 

 ネプテューヌが剣技でミサイルを発射しようとした昆虫型を斬り捨てれば、ネプギアがエネルギー波を飛ばして腕に銃を埋め込んだ爬虫類型を真っ二つにする。

 

「なんだ! 戦ってみれば大したことないじゃない!」

 

 呆気なくやられていくトランスオーガニックに、ネプテューヌは勝気な声を上げた。

 不気味な外観と数の多さに圧倒されていたが、戦ってみれば何のことはない。普通のモンスターよりは強いが、それだけだ。

 

「あーっはっはっは! これで終わりだと思ったか! ここからが本番だぜ!」

 

 しかしリンダは余裕を崩さず、さらに笛を鳴らす。

 すると、倒されたはずのトランスオーガニックたちが次々と立ち上がってくるではないか。

 それだけではない。上半身を失った獣型と爬虫類型が合体して双頭の異形になる。

 ドラゴン型が胸に開いた銃創を塞ぐように、落ちていた鳥形の頭部を拾って埋め込む。

 複数の昆虫型が失った部分を補うように集まって一つの合成昆虫と化す。

 その態は、あらゆる命を冒涜するが如き悍ましいものだった。

 あまりの光景に言葉を失う女神とオートボット。

 この状態を引き起こしたリンダとドレッズでさえ、顔を引きつらせ後ずさっている。

 

「なんということを……」

 

 やっと声を絞り出したのは、オプティマスだった。

 

「な、なんとでも言いやがれ! お、おまえら! いけ!!」

 

 震えながらも、笛を鳴らして攻撃を促すリンダ。

 それに応えて、さしずめ金属合成獣のゾンビと化したトランスオーガニックたちは獲物目がけて進軍を開始する。

 さらにジャングルから次々とトランスオーガニックたちが現れる。

 その異様さと圧倒的な数に気圧され、ジリジリと後ずさる女神とオートボット。

 

「このままじゃ……」

 

 ネプギアはMPBLを構えながら考える。

 いかな女神とオートボットと言えども、このままではジリ貧だ。

 何か、戦況をひっくり返す何かがなければ、ここで終わりになってしまう!

 

 その時、ネプギアは気が付いた。

 

 岩肌に刻まれた戦士像の足元に、ある物があることに。

 それは……。

 

「筐体?」

 

 カードゲームの筐体だった。

 ゲームセンターとか、玩具屋さんにあるあれである。

 この場には、あまりにも場違いだ。

 

 ――今は何も言わず受け取ってくれ。いずれ分かる時がくる。

 

 その時なぜか、ヴイの言葉が脳意によぎった。

 

「イチかバチか……!」

 

 ネプギアは手の中にヴイからもらったカードを呼び出す。

 突然奇妙な行動に出たネプギアに、ネプテューヌは怪訝そうな顔になる。

 

「ネプギア? 何をしているの?」

 

「もしかしたら……」

 

 そしてネプギアは、そのカードを筐体のスキャナに当たる部分に通した。

 

 ……しかし、何も起こらない。

 

「あーはっはっは! 何だそりゃあ! 馬鹿じゃねえの!!」

 

 拙い希望にすがるネプギアを容赦なく嘲笑い、リンダは改めてトランスオーガニックに攻撃命令を出すべく笛に口をつける。

 

 その時である!

 

 地面がグラグラと揺れ出した。

 突然の揺れに、地上にいる者たちは残らず動きを止める。オートボットもディセプティコンも、それ以外も例外なく。

 やがて異変が起きた。

 戦士像の表面がひび割れ、そこから炎が吹き出し表面の岩が崩れ落ちてくる。

 

 そして……。

 

「おおおおおおお!!」

 

 戦士像が内側から炎を巻き起こして爆発した。

 揺れと爆炎が治まった時、戦士像のあった場所には巨大な人影が立っていた。

 それは勇壮な戦士を思わせる金属の巨体だった。

 両肩に竜の頭の意趣を持ち、その大きさはオプティマスのゆうに二倍以上はある。

 額に角が生え、目の色は赤だ。

 手にはとてつもなく巨大なメイスを持っている。

 

「これは……、トランスフォーマー、なの?」

 

 突然のことにネプテューヌが唖然として言った。

 それに答えるわけではないだろうが、その巨体の戦士は咆哮するように言葉を発した。

 

「我、グリムロック! セターン王国を護る騎士! ダイノボットの長なり!!」

 

「ダイノボット……、『竜の騎士』か!」

 

 オプティマスが、どこか興奮した調子で騎士を見上げる。

 竜の騎士……グリムロックはオプティマスに構わず、ギロリとトランスオーガニックを睨みつける。

 

「我、グリムロック! 王国を荒らす者、滅ぼす!!」

 

 言うや否や、グリムロックは轟音を立ててトランスオーガニックの群れに突撃する。

 唸りを上げて振るわれるメイスが一瞬にして数体の機械合成獣を挽肉と屑鉄の山へと変え、右手をモーニングスターに変形させて振り回されれば、頑強なはずのドラゴン型があっけなくバラバラになる。

 横薙ぎにメイスが振るわれれば何体ものモンスターが遥か彼方に吹き飛んで行き、足元では昆虫型が踏み潰されて為す術なく地面のシミと化す

 それは正に一方的な戦い、いや戦いとさえ言い難い暴力だ。

 トランスオーガニックは巨獣に踏み潰される蟻も同じだった。

 だとしても、蟻は数を持って巨獣に挑む。巨大な騎士の周りを取り囲み、途切れることなく殺到する。この世に数の暴力に屈せぬ者のあるものか。

 

 ……否。

 

「しゃらくさい! グリムロック、トランスフォーム!!」

 

 ここに、数の暴力を、さらなる暴力で蹂躙する者がいる。

 グリムロックは原始的な咆哮とともに変形していく。金属のパーツが寸断され組み替えられる。

 そして現れたのは、破壊の化身。

 

「竜、か……」

 

 茫然として呟くオプティマス。

 それは二足歩行の巨大な古代の竜だった。

 長い尾に強靭な後足、短い前足と二本の角、何本もの鋭い牙を備えた口を持つ、恐るべき竜……恐竜。

 

「グォオオオオオ!!」

 

 大気を震わす咆哮と共に、その口から凄まじい勢いで炎が吐き出された。

 猛炎はアッと言う間にトランスオーガニックたちを飲み込み、生体部分を一瞬で消し炭にし、機械部分を融解させる。

 瞬く間にトランスオーガニックの群れは再生も不可能な残骸と姿を変えていった。

 

「リンダちゃん、逃げるYO!! こりゃとても敵わない!!」

 

「早くしろ!!」

 

「ガウガウガウ!!」

 

「……え? あ、あ……」

 

 クランクケースとクロウバーは圧倒的な、ただただ圧倒的な暴力を前に自失茫然としていたリンダを無理やりビークルモードのハチェットに押し込み、自身もビークルモードになって撤退する。

 グリムロックはそれを追うような真似はしない。

 

「臆病者、倒す価値、ない」

 

 吐き捨てたグリムロックが騎士の姿に戻った時、揺らめく炎以外に動くものはなかった。

 

「すごい……」

 

「確かにすごい、けど……」

 

 茫然とするネプテューヌとネプギア。

 今まで見てきた、どのトランスフォーマーとも違う、天災の如き圧倒的な力。

 命を救われたにも関わらず、二人は恐怖さえ感じていた。

 しかし、助けてもらっておいて礼を言わないのは礼儀に反する。

 

「やあまあ、とにかく助かったよー!」

 

 女神化を解き、彼女特有の物怖じしない態度で巨大な騎士に話しかけるネプテューヌ。

 その隣に同じく女神化を解いたネプギアも並ぶ。

 騎士はゆっくりとネプテューヌたちのほうを向いた。その迫力に、さしものネプテューヌも少したじろぐ。

 そして、グリムロックは次の行動に出た。

 

 片膝を突いて頭を垂れ、胸に片手を当てたのだ。

 

「姫様たち、久し振り。本当に久し振り」

 

 そう言ってグリムロックはさらに頭を下げる。

 

「え、え? お姫様って……、わたしが? って言うか、この光景、前にもどっかで……」

 

 既視感に襲われるネプテューヌを余所に、グリムロックは言葉を続ける。

 

「ヴイ姫様、ハイ姫様。我、グリムロック、お二人に永遠の忠誠、誓った」

 

「あー……、私たちを、ヴイさんたちと間違えてるのかな?」

 

 ネプギアは合点がいったとばかりに頷く。

 地下遺跡で出会った、ネプテューヌとネプギアによく似た姉妹。

 

「あ、あのさ、悪いけど人違い……」

 

「さあ、姫様、皆を目覚めさせに行く」

 

 ネプテューヌが間違いを正そうとした瞬間、グリムロックはネプテューヌとネプギアの体を片手で掴んで持ち上げた。

 

「きゃ!」

 

「ちょ、ちょっと! 話聞いてってば!」

 

 握り潰すようなことはないが、それでも抜け出せそうにはないくらいの力加減だ。

 

「待て、竜の騎士よ! その二人はおまえの主ではない!」

 

 いい加減、オプティマスがグリムロックを制止しようと声をかける。

 だが次の瞬間、オプティマスの体は宙を舞っていた。

 横薙ぎに振るわれたメイスに弾き飛ばされたのだ。

 地面に落下するオプティマスを見て、ネプテューヌが悲鳴を上げる。

 

「オプっち! ちょっと、何するのさ!!」

 

「石の中であいつの戦い、見てた。あいつ弱い。弱い奴に、姫様、守る資格、ない」

 

 冷たく吐き捨てると、グリムロックは踵を返す。

 その背にバンブルビーが組みつくが、あっさりと投げ飛ばされる。

 

「おまえ、もっと弱い」

 

 そして興味を失ったように、歩き出す。

 グリムロックの一撃は強烈で、オプティマスはただの一撃で強制スリープモードに落ちそうになっていた。バンブルビーも同様だ。

 

「ね、ネプテューヌ……」

 

 意識を失う寸前、オプティマスが最後に見たのは。

 

「ちょっと放してよ! オプっち! オプっち! オプっちぃいいい!!」

 

「ビー! ビー! いやぁあああ!!」

 

 必死に自分たちの名を呼ぶネプテューヌたちと、彼女たちを握ったままジャングルへと消えるグリムロックだった。

 




トランスフォーマーアドベンチャーは、ストロングアーム回。
堅物でマニュアルっ子なのに功名心は強いとは、中々困ったちゃんですな。
というか、いつもなら問題児枠のはずのグリムロックが一番協調性があるという恐怖。
ビーの胃(的な何か)が心配です。

そして今回の小ネタ解説。

ヴイ・セターン、ハイ・セターン
当作品のオリキャラ……ではなく、超次元ゲイム ネプテューヌ~めがみつうしん~というマンガに出てくるキャラ。
姉のヴイはネプテューヌに、妹のハイはネプギアによく似ている。
その正体は……。

グリムロックを復活させたカードと筐体
恐竜キ○グ、何の因果かS○GAのゲーム。
このほかにもSE○Aはジュラシッ○パークのゲーム作ってたり、ダイ○アイランなるギャルゲーを出してたりと、恐竜とやたら縁がある。

では、また次回。

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