超次元ゲイム ネプテューヌ THE TRANSFORMATION   作:投稿参謀

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第3話 姿が変わるのが売り

 ラステイションの油田が、突如巨大ロボットに襲撃された。

 

 それを聞いた瞬間、オプティマス・プライムの纏う雰囲気が変わった。

 

「詳しく聞かせてほしい」

「それはこっちの台詞よ! あなたの仲間なんじゃないの!? なんでもデ、ディ、デスト……ディセプティコンとか名乗ったらしいけど!」

「ディセプティコンだと!」

 

 その瞬間、オプティマスの顔が驚愕と、それから怒りに染まった。

 ノワールは気押されて一歩後ずさる。

 

「な、なによ……」

「私が行こう」

 

 オプティマスの声は奇妙なほど静かだった。

 何か爆発しそうな感情を抑えていると言う風に。

 

「ディセプティコンは私の……私たちの敵だ」

「どういうこと?」

「詳しく話している時間はない。奴らは邪悪で強力な軍団だ。女神の強さはインターネットを通じて知ったつもりだが、それでも奴らに勝てるかはわからない」

 

 それは、オプティマスにその気はなくとも、ノワールのプライドを刺激する言葉だった。

 ノワールは四人の女神のなかで最も真面目に女神としての職務をこなし、故に女神としての矜持も高い。

 ブランとベールも、同じような思いなのか厳しい顔になる。

 ネプテューヌだけが変わらず笑顔だった。

 

「よし! じゃ、ここで言い争っててもしかたないし、行こっか!」

 

 自然に、まるで、いっしょに遊びに行こうと言うように、ネプテューヌは言った。

 

「な、なんでそうなるのよ!? あなたには関係ないでしょ!」

 

 面食らうノワール。

 襲われている油田はラステイションの国内にある。

 同国の女神であるノワールが行くのは当然としても、他国の女神であるネプテューヌが戦う道理はない。

 

「ええ~、関係なくないよ~!」

「関係ないでしょ! あなたはプラネテューヌの女神で……」

「だって」

 

 ネプテューヌは笑う。

 

「わたしたち仲間だもん」

 

 当然とばかりに、あたりまえのように、ネプテューヌは言い放った。

 ノワールは一瞬ポカンとした後、顔を赤くする。

 

「かか、勝手にしなさいよ! どど、どうなっても知らないんだからね!」

 

 ブランとベールもしてやられたと言うように微笑む。

 イストワールはやれやれとため息を吐くが、止める様子はない。

 

「友好条約の証として、他の国の女神と共闘……。悪くないわね」

「ふふふ、こう言うのを燃え展開って言うんですわよね」

「はあっ、まったく……。無理はしないでくださいね、ネプテューヌさん」

 

 オプティマスは、そんな女神たちを見て微笑みを浮かべる。

 しかし、それも一瞬のこと、すぐに表情を引き締める。

 なんとかして彼女たちを説得せねばと口を開こうとしたその時だ。

 

「じゃあ、オプっちもいっしょに行こう」

「ネプテューヌ!? あなた本気!?」

 

 またも当然とばかりのネプテューヌ。

 それに神速でツッコむのはノワールだ。

 オプティマスとそのディセプティコンの関係はまだ分かっていないのだ。

 敵だと言っているが、それが本当だという証拠はない。

 

「本気だよ! ようするに悪者ロボットが暴れてて、オプっちはそいつらをやっつけに来たヒーローなんでしょ!」

 

 女神たちや、イストワール、オプティマスまでもが唖然とする。

 さすがにそれは、自分にとって都合の良い解釈ではないか?

 

「それに~、どうせなら大勢で戦ったほうが早く終わるじゃん」

 

 一応理には適っている。

 女神たちは自分の実力に絶対の自信を持っているが、これから戦うのが未知の相手であることには違いない。味方は多いにこしたことはない。

 

 足を引っ張らなければ、だが。

 

 ノワールはまだなにか言いたそうだが、オプティマスを回収したのはプラネテューヌであり、彼の身柄の決定権はこの国の女神、ネプテューヌにあるのだ。

 

「……足だけは引っ張らないでよ」

 

 ノワールはそれだけ言うとオプティマスから視線をはずした。

 

「善処しよう」

 

 オプティマスは簡潔に答えた。

 

  *  *  *

 

 一同は地下倉庫から地上へと出た。

 イストワールは情報収集のため、一端プラネタワーへと帰って行った。

 

「そうだ、ネプテューヌ。君はたしか、私が変身できるのかと聞いていたな」

 

 オプティマスが不意にそう言ってきた。

 ネプテューヌはオプティマスを見上げ、少し困った顔になる。

 

「うん! でも急いでるからまた今度……」

「いや、急いでいるからこそ今、姿を変えるべきなのだ」

 

 そう言うやいなやオプティマスの目から光が放たれた。

 光は出口の傍に停車していた大型トレーラートラックを包み込む。

 するとオプティマスの体に変化が起こった。

 タイヤ、フロントガラス、煙突マフラー、体全体にトレーラーの一部のようなパーツが組み上がり、その全体をより無骨な物にする。

 赤と青の体色は変わらないが炎を思わせる模様へと変化した。

 そして、変化が終わった時、オプティマスは変化前の意匠を受け継ぎながらも、どこかゲイムギョウ界的な姿になっていた。

 屈強な男性を思わせるその姿は機械で構成されていながら、神話に語られる英雄のような勇壮な趣があった。

 

「トランスフォーム!」

 

 オプティマスが叫ぶと、彼の体に再び変化が起きた。

 体中が細かく寸断され、移動し、組み変わる。

 そうして現れたのは、青地に赤のファイアーパターンが塗装されたトレーラートラックだ。

 

「これが私の変形能力(トランスフォーム)だ。これなら目立たず、かつ速やかに目的地に到着できるだろう? さあ、乗るといい」

 

 この巨人は、いったい何度自分たちを驚かせれば気が済むのだろうか。

 しかし、そろそろ慣れてきたのか強がりか、ノワールがフフンッと鼻を鳴らす。

 

「お生憎様。あなたに乗らなくても私たちのほうが早く動けるわ」

 

 そう言うとノワールの体が光に包まれる。

 光が治まった時そこにいたのは、髪が黒いツインテールから真っ白なロングヘアーになり、赤い瞳が青になり、少女だった姿が成人に近い姿へと変わり、黒いレオタード状の衣装に身を包んだノワールだった。

 

 これこそノワールの女神としての姿、ラステイションの守護女神ブラックハートである。

 

 さらに背中に光の翼を発生させ。地面から浮かび上がってみせる。

 

「どう? これが私の変身よ!」

 

 自慢げに胸を張るノワール。

 一方オプティマスは素直に関心したようだった。

 

「なるほど、エネルギーの絶対量が爆発的に増加している。しかも飛行できるのか。これは心強い」

「……フンッ!」

 

 期待していた反応と違ったらしく、ノワールは少し不満げだ。

 

「それじゃあ、わたしも」

 

 ブランがそう言うと、彼女もまた光に包まれ姿が変わる。

 薄茶の髪は水色へ、青の瞳は赤へ、衣装は白いレオタード状へと。

 

 ルウィーの女神ホワイトハートとは彼女のこと。

 

「では、わたくしもいきますか」

 

 そしてベールが光に包まれる。

 金色の長髪は薄緑のポニーテールへ、蒼玉の瞳は紫水晶に、衣装は露出の高いビキニ風。

 

 リーンボックスの女神グリーンハートここにあり。

 

「それじゃあ、最後はわたしだね! 見ててねオプっち。驚くから!」

 

 最後にネプテューヌが光を纏う。

 薄紫の髪はより濃い紫の長髪を三つ編みにしたものへ、髪と同色の瞳は目の覚める青へ、衣装はノワールとは異なる黒と紫のレオタードへと。

 プラネテューヌの女神ネプテューヌのもう一つの姿、パープルハートである。

 幼さの残る少女だった人間の姿と違い、この姿の時は凛とした雰囲気の妙齢の美女である。

 

 こうして四人の守護女神が居並んだ。

 全員、瞳の中に円と線で描かれた図形が光っている。

 国民の祈りを受け、それを力として人々を守る人ならざる者たち。それが女神である。

 

「じゃあ私たちは先に行ってるわ。あなたは後から来てちょうだい」

 

 ネプテューヌは、人間の姿の時と明らかに異なる、落ち着いた凛々しい声でオプティマスに指示を出す。

 

「了解だネプテューヌ。いや、パープルハートか」

「ネプテューヌで良いわ。それよりも場所は分かるの?」

「ではネプテューヌ、問題はない。場所はすでにインターネットで把握した。少し時間はかかるかも知れないが必ず合流する」

「じゃあ、期待して待ってるわ。オプっち」

 

 ネプテューヌが微笑みながらオプティマスに声をかける。

 オプティマスは了解とばかりにエンジンを吹かす。

 

「行くわよネプテューヌ! そっちのトラック便が到着するより前に終わらせてやるわ!」

 

 ノワールはそう宣言すると、プロセッサユニットを輝かせて飛び去り、ブランとベールも続けて飛び立つ。

 最後に、少し困ったような顔をオプティマスに向けつつ、ネプテューヌも飛び立ち、トレーラートラックが残された。

 オプティマスもまた全力でエンジンを回転させ、女神の後を追う。

 

  *  *  *

 

「急いで、ネプテューヌ! あのトラック野郎に一泡吹かせてやるんだから!」

「ちょっと落ち着きなさい、ノワール。あなた少し変よ」

 

 大空を高速で飛行しながら、女神たちは会話する。

 今日のノワールは少しおかしいとネプテューヌは感じていた。

 元々負けず嫌いな娘だが、ここまでだっただろうか。

 

「まず、あいつの得体が知れないっていうのが一つ、それに……ムカつくのよ、アイツ」

「確かにな。わたしたちがそのデなんとか言う奴らに負けるって、そういうふうに言ってるみたいだったぜ」

「まあ、わたくしたちを心配してのこと、と言うのは分かりましたけれど……」

 

 ノワールに続き、ブラン、ベールもそれぞれオプティマスに否定的な意見を出す。

 

「ああ、もう! やめやめ! あんなトラック野郎のことを考えてても始まらないわ。それより、私たち四人のなかで、だれが一番先にそのデなんとかって奴らを倒せるか、競争しましょう!」

 

 そう言って、ノワールはさらにスピードを上げる。

 

「よし乗った! 一番はいただくぜ!」

「ふふふ、負けませんわよ」

 

 ブラン、ベールも加速していく。

 女神は基本的にプライドが高く負けず嫌いだ。

 友好条約で互いに武力を振るい合うことは禁じられているが、こういう競争なら構うまい。

 

「大丈夫かしら……」

 

 唯一人、ネプテューヌだけが不気味な不安を感じていた。

 




あかん、改めてみると(作者はある程度、書き貯めしてから投稿してます)、ノワールがツンツンしすぎ……
あと、ネプテューヌが良い娘すぎたでしょうか?
各キャラの一人称は大丈夫なはずだけど、口調とか、二人称とか、雰囲気とか、大丈夫でしょうか?
不安を払拭できないまま、突っ走る当作品。

次回はいよいよ戦闘開始……の前に、人気者の彼の登場です。

2015年12月12日、改稿。

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